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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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19 違和感

  

 食べ終わると、さっきまでの火照りが嘘のように無くなり、汗も止まっていた。

 ただあるのは、かき氷を食べ終わってしまった事への名残惜しさくらいかしらね。


 「じゃあ、ご馳走様。また来るわね」

 「あっちの二つの会計がまだだが…」

 「えっ! あっちは奢りじゃないの」

 「ははっ。冗談だよ。いいもの見れたからな。あれも奢りだ。また来いよ」

 「もう心臓に悪いわね。ま、美味しかったからまた来るわ」

 「おう。次もあの子達連れてきてくれよな」


 手をヒラヒラとさせているが、さっきまでの会話を思い出すと、どうも如何わしく見えてしまった。いけないわね。一応更生してるっていうのにね。

 「考えておくわ」

 そう言って店を出ると、二人の姿が見えない。

 本当に自由だなあの二人は。

 かき氷食べて、ありがとうのひとつも言わずにいなくなるなんて、現金な子達ね。


 まぁ、まだ遊びたい盛りなのかもしれないと、一つため息を吐いた所で、違和感に気づいた。

 違和感というより、異質な視線を感じる。

 ま、まぁ…私かわいいし? そりゃあ、注目の的になるのは仕方ないと思うのだけど、今回のはそう言ったのとは違うと断言できる。

 でも、その正体がなんなのか分からないのが、凄く気持ち悪い。


 その視線の先を確認すると、祈るようなポーズの人たちがいた。

 辺りを見回すが、それらしいものはない。

 空を見上げてみるが、雲ひとつない快晴だ。

 まぁ、何か願掛けでもしてるんでしょうね。

 気のせいだと思い、馬車乗り場の方まで歩いて行くんだけど、不思議な感覚はどんどんと大きくなっていった。


 「なんなのかしらね」

 立ち止まり顎に手を当て考えていると、街の子供達がわらわらと近づいてきた。

 「クリス様ー」「くりすしゃまー」「しゃまー」

 「あらあらどうしたの?」

 以前は『フリー素材』なんて言われていたけど、今日はちゃんと『クリス様』呼びになっている。

 ちょっと嬉しくなって子供達の視線に合わせるように屈んだ。


 「あのねー」「クリスしゃまにあったらー」「お祈りするといいっていってたのー」「なのー」

 なになに。今度は流星(ながれぼし)みたいな扱いになってるのかしら。と、若干気落ちしていたら、いつの間にか私を囲うように周りに人だかりができていた。

 その全員が祈りのポーズをとっていた。

 えぇ、なになに怖いんだけど。何かのドッキリかしら?


 周りを見渡しても祈る人たちしかいない。

 裏路地の辺りにドッキリの看板を持ってる人を探すがいない。

 例年以上に暑いから、頭がおかしくなってしまったのかしら? それで、幻覚を見ていて……なんてあるわけないわよね。

 どう見ても私に祈ってるもの。

 えぇ……。一向に終わる気配がない。

 でもただ祈ってるだけじゃなく、何かをぶつぶつ言っている。なんだろう?


 ―――――「クリス様、娘が学園の試験に合格しました」「クリス様、嫁の病気が治りました」「クリス様、三十年彼女のいなかった僕に彼女ができました」「仕事が見つかりました」「宝くじが当たりました」「クリス様のパンツゲットできました」「お金を持ち逃げした従業員が帰ってきました」「妻とやり直せました」「店が持ち直しました」「小ジワが消えました」「便秘が治りました」―――――


 みんな一様に感謝の言葉を呟いている。

 え、待って。私何もしてないし、関係ないよね。え、怖い怖い。

 目の前の子供たちも目をつぶってお祈りしている。

 これは暫くはこのまま状態が変わらない気がしたので、その場でジャンプし、建物の屋上に降りて様子を伺う。


 「あっ! 女神様がいなくなっている」「ホントだ!」「やっぱり天の使いだったんだわ」「願い事を持ち帰ってくれたのね」「あぁクリス様………」


 何が女神様よ。ただジャンプして消えただけじゃない。

 神様みたいに崇められるのはちょっと遠慮したいわね。

 しかし、ドッキリにしては凝りすぎているわね。一体なんの目的でこんな事を…。

 真夏なのに、悪寒が走って凄く寒いわ。


 建物の屋上を飛びながら、馬車乗り場まで移動する。

 通りにはさっきの場所へわらわらと人が集まっていくのが分かる。

 下を歩こうものなら、今度は連れられてどこかの祭壇に祭り上げられそうね。

 しかし、どうしてこうなった…。何か変な病気でも流行ってるのかしらね?


 馬車乗り場へ降り立ち、我が家の馬車に乗り込む。

 もしかしたら、先にアリスとメタモが来てるのかと思ったけど、居なかった。

 何か知ってるかもしれないと思い、少し待つが一向に現れない。

 もしかして、先に帰っちゃのかしら。

 そう思い、御者のおじいさんに出すようお願いしようと思ったところに二人がのんきにアイスを食べながら歩いてきた。


 「もう、どこ行ってたのよ」

 「あら、クリス。なぁに? そんなにあたし達が待ち遠しかった?」

 「もしかして、先に帰ってると思った? 寂しかったのかしらぁ? ねぇねぇ?」

 うぜぇ…。


 「いや、今出ようとしていたところよ」

 「もう少し待ちなさいよ」

 「そうよ。あたし達を置いてくなんて薄情ね」

 かき氷やさんから忽然と消えたあなた達には言われたくないわ。


 「というか、よくあんだけ冷たいのを食べた後で、アイスなんて食べられるわね。そんなお腹出した格好で食べたらお腹冷やすわよ?」

 「そんなおばあちゃんみたいな事言われても……」

 おばあちゃんて……、私そんなに小言多いかしら?


 「だってぇ、こうして舐めたらエロいでしょ?」

 「どう? ムラってきたかしら?」

 「いんや、全然」

 「「……………」」

 そのまま、静かにアイスを食べる二人を乗せて屋敷まで帰ったのだが、道中いつもみたいな軽口は一つもなかった。

 逆に何も言わないのは怖いわね。何か企んでないでしょうね?

 そんな感じで見るが、二人ともただこっちをじっと見返すだけだった。


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