表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章
2/483

02 こんなにかわいいのに?

 知らない天井だ。

 一度言ってみたかったんだ。ただ天井というよりは天蓋なんだけれども。

 辺りを見渡す。カーテンから光が漏れているので、薄暗いがなんとか室内の様子が分かる。すごく広い部屋だ。ただ、家具の数は少ない。

 凄くシンプルだが気品を感じる部屋。

 那須か軽井沢のお高めのホテルにでも泊まったのだろうか?

 その辺の記憶は酷く曖昧だ。

 とりあえず起きようと移動するが、地面までが遠い。一体どんなサイズのベッドなのだろうか。

 漸く地面に足をつけると視線が低い。

 なるほど。これは夢だな。分かってるって。どうせアレでしょう? 歩こうとすると中々前に進めないやつ。

 「………」

 スタスタと歩けてしまった。

 夢じゃない? こんなに自分の意思で動けるという事は…。

 一つの可能性を考慮しながら姿見の前へ行く。

 そこには絶世の美少女が居た―――

 「やっば。かわいい。あ、声もかわいい」

 それはもう食い入るようにずっと自分を見ていた。ポーズをとったり、顔を近づけてみたり。顔がにやける。

 薄暗い部屋の中、姿見の前でにやけながら自分を見ているなんて端から見たら引かれてしまうだろう。

 でもしょうがないじゃない? 自分がこんな美少女ロリになっていたら、ニヤニヤしながら小躍りの一つでもしてしまうだろう。

 転生かな? 転生だよね? こんなにかわいいんだよ? 前世に未練などない。今更夢オチでしたなんて言われたら一体どこに苦情を出せばいいのだろう。

 このまま転生美少女ライフを満喫したいのだ。頬を抓ってもみても痛いもん。

 つまりこれは現実…。心の中で転生と断定。覆す予定はありません。

 「神様センキューセンキューセンキュー―――」

 と、両手を上げながら言ってみる。

 どこからか、ええんやでって聞こえた気がした。



 さて、気にならないといえば嘘になる。しかし、これからずっと付き合っていくんだ。確認はすべきだろう?

 着ていたネグリジェをたくし上げ、確認する。履いてない。いや、そんなことよりも重大なことがあった。

 「ついてる…」

 それは長年見慣れた物体。覚醒前の自分の分身があった。

 「はぁ? 男! 嘘? え? こんなに可愛いのに男……。アリだわ」

 実際、女装とかコスプレとか趣味でやってたし、元の素材がこんなに素晴らしいなら勝ち組なのでは?

 そんな事を考えていたら、コンコンと音がしてドアから人が入ってきた。

 「おはよーございまーす……」

 テレビのドッキリかな? と思うくらい小さい声でツインテールのメイドさんが入ってきたが、直後に、「えっ?」 と、驚き固まってしまった。

 「あの? 何を…、されてるんですか?」

 一瞬意味がわからなかったが、自分の今の状況を見たら誰でもそう言うだろうなと思った。

 スカートの中身と姿見とメイドさんを順番に3回くらい見たところで、

 「いや、あの…、元気かなって確認を?」

 他にいい言い訳が思いつかなくて、最低の選択肢を選んでしまった。

 にもかかわらず、メイドさんが瞬間移動かなってレベルの凄い速さで自分の前まで飛んできた。

 びっくりしてスカートをバッっと下ろし、軽くのけ反った。

 メイドさんが見上げながら不審そうな顔をする。

 「……お着替えですよね? 遅くなって申し訳ございません……。あれ? でも、いつもよりお目覚めが早いですね」

 「んっ…、んん。そ、そうだね」

 物凄く動揺して上ずった返事をしてしまった。幼児らしくない。

 「普段からお着替えを手伝ってますので、別に隠さなくてもいいですよ? 見慣れてますので」

 「そ、そうなんだ…あははっ…」

 事務的な物言いの割に、ものすごいジト目でメイドさんに見られる。

 答えに窮していると、メイドさんが立ち上がり、窓の方へ移動しカーテンを開ける。朝日が入ってくると部屋の中の色が判ってくる。そして、自分の髪の色と瞳の色も。

 スカイブルーの髪にウルトラマリンブルーの瞳。髪も瞳も青系統なんだなぁと繁々と姿見を見る。

 それを見たメイドさんが、不思議そうに見ている。

 「今日はどうなされたんですか? いつもは鏡なんて見ないではないですか? それにいつもは不機嫌なのに…」

 随分、直截な言い方するな。でも、そう言ってしまうくらいに違和感あるんだろうな。どう、乗り切るか…。

 「そ、そんなことより着替えをお願い!」

 「かしこまりましたー」

 無理矢理に話を中断する。いつも不機嫌なら話をぶった切っても違和感ないよね? 多分。



 用意されたのは男の子の服だった。

 「ドレスじゃないんだ…」

 そう溢す様に呟いてしまった。

 勿論、メイドさんが聞き逃す筈もなく…。

 「はい。用意しても絶対に着ないとおっしゃるので、本日は最初から男物のお着替えを用意したんですが…、ドレスの方が良かったですか?」

 「うん」

 それはもう着たいですよ。即答するレベルで。

 前世で女装が趣味すぎて、普段着が女性物の服ばっかり着ていたんだもの、今更男物の服を着ろなんて今世でも無理ですわ。

 そしたらメイドさんが口に手を当て目を軽く瞑りながら涙を流した。

 やばい。やっぱり、男の子がドレスが着たいなんて言ったら引かれるよね普通。あれ? でもいつも用意してるって言ってたな。どういう事?

 「うぅ…こんな日が来るなんて…夢の様です」 

 そっちかー。え?という事はドレスを着させたがっていたって事ですよね? 今、利害が一致したのかな?

 「でも、急にどうしたんです? 諦めた…、訳でもないようですし…」

 これはもう、本当の事を話してしまった方が、後々楽になるよね。

 「あの、口って固い?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ