07 メイド服は人をおかしくさせるらしい
「手伝っていただいて、アレなんですけど、クリス様メイド服ホント似合いますね」
「それって、私が可愛いってことでいいのかしら」
「そうですよ」
煽てられるのは嫌いじゃないからね。メイドさんたちとそんな他愛のない会話をしながら、廊下の掃除をしていたんだけど、見たことのないメイドさんがいた。
「あらクリス。クリスも手伝っているの?」
まさかのお母様。
「えぇ、なりゆきで」
「まぁ、いきなり人が大勢来ちゃったし、最近暑くて仕事とかも手抜きしてたから仕方ないわね。ところで、どうかしら」
そう言いながら横に一回転するお母様。全円のスカートがふわりと揺れる。
とても絵になっている。というか、まだ現役に見えるくらいだ。若い。
「えぇ、とても綺麗ですね」
「あらありがとー。と・こ・ろ・で、もう一人いるんだけどー」
そう言いながら、窓を拭いていたツインテールの青髪のメイドさんの肩を掴んで引っ張ってくる。
なるほど。お兄様もとても可愛らしい。
普段からゴスロリ服を着ているから、メイド服が似合わないはずがないんだよなぁ…。
「ぁ…、クリス…。ど、どうかな」
どうって、そんなの聞かなくてもわかりますよね。
グッと、サムズアップしてみせる。
「めちゃくちゃ可愛いですよお兄様」
「あう……」
普段から女装してるのに、メイド服を着ただけで恥ずかしがるなんて、お兄様の感性がよくわからないわ。
と、そんな風に親子で楽しんでたんだけど。
「あ、会長こんなとこに…って、会長がメイドに!」
あらら。アンさんに見つかってしまったようだ。これは自分も巻き添えを食らうかもしれないと、急いで天井に飛び、柱の陰に隠れる。
「姿が見えないと思ったらこんなところで一人で楽しんでっ」
「いや、楽しんでるんじゃなくて、みんなが来たから慌てて掃除を…」
「いいからいいから。こんな会長をみんなに見せないなんて損ですからね。あ、メイドさんすいません。会長借りますね」
「どうぞ〜」
そのメイドさんが伯爵夫人だと気づかずに、お兄様の腕をとって無理やりに連れて行った。
姿が見えなくなったところで、天井から降りる。
「あの子、意外と鈍いのね。というかクリス最近逃げるの早いわね」
「まぁ、捕まったらタダじゃすまなそうなので」
「そうね」
あ、否定しないんですね。
でも、そう言ったお母様は何か怪しい顔つきをしていた。
「あ、クリス様終わりました?」
「え、あぁ、はい。終わりましたよ」
「じゃあ、厨房の方手伝ってもらってもいいですか」
なんか短期バイトに応募した感じだな。しかし、メイドさんも使えるものは使うって感じですね。多分こういうのうちだけなんだろうな。
「あ、そこの新人さんは、次お庭の方いいですかー」
「あらあら、新人さんだって。うふふ。そんなに若く見えるのかしらー」
よっぽど嬉しかったのか、両頬に手を当ててくねくねしている。
「遊んでないで、仕事してもらえるかしら」
「………あっ、はい」
うちのメイドさんにお母様だと気づかれないのは、流石に問題じゃないですかね?
もしかすると、気づいてて態とやってる可能性があるけど、どっちなんだろうね。




