表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

194/543

06 暑いと考えに余裕がなくなるわけで


 「あの人とんでもないわね」

 「でも、あのくらい積極的じゃないと…」

 アリスとメタモは真似するんじゃないよ? あれほど悪い例はないんだから。


 止めとけよって感じで二人を見ていたら、不意に影がさしたので、そっちの方を見ると、女性が一人見下ろしていた。

 何ていうか…、めっちゃギャルだ。

 金髪を右側に大きくサイドポニーにして、執事服の胸元を大きく開け、上着を腰に巻きつけている。ベストがピッチピチだが、それよりも零れそうな程大きな胸が特徴的だ。長袖のシャツを捲って、手首に薄紫のシュシュをつけている。

 化粧も派手めで、大きなつり目がより派手さを醸し出す女性だ。


 「うっわ。マジぎゃんかわなんだけど」

 口調もまんまな人だわ。

 「後であーしとお話するっしょ。じゃーね」

 他の人みたいにもっと構われるかと思ったけど、あっさり中へ入っていった。


 「あ、あたし、あの人目指す。めっちゃかっこいい」

 「ホント、素敵だったわ。あれが将来の理想像だわ」

 えぇ……。この二人があんな風になったら、それこそ面倒なことになりそう。

 「あたし、あの人に教えてもらうわ」

 「そうね。クリス悪いんだけど、あの人に修行つけてもらうわ」

 「あ、うん。どうぞ」

 今までべったり付いていたのが嘘のように、あっさりと離れた。

 「お姉様〜」なんて言いながら小走りで追いかけていった。


 「はぁ〜………」

 おっきい溜息を吐きながら、熱いのも気にせず、その場にへたり込んでしまった。

 「どっと疲れたわ…」

 とりあえず、あの二人が離れたので、漸くゆっくりできる。ガゼボに行ってダラダラしましょ。幸いお菓子とお茶はあるのだから。

 そう思って、ガゼボへ歩き出そうとしたんだけど、背後から両肩をがっしり掴まれてしまった。

 振り返ると、お姉様とメアリーだった。


 「なんですか? 今から私はゆっくりするんで、用があるなら後にしてもらっていいですか?」

 「あら、なら好都合ね」

 「クリス様、本日分のお約束がまだですよ?」

 これはゆっくりできないやつでは?

 そう思ったんだけど、メアリーが私を抱え走り出す。

 その横をお姉様が私の持っていたお菓子とお茶を持って並走する。

 到着したのは目的だったガゼボだ。


 「はぁ〜」

 だらしなく座り、大きい溜息を吐くお姉様。

 そして、私にぴったりくっつきながら、お菓子を頬張るメアリー。

 もしかして……。

 お姉様が私の言いたいことを察したらしい。


 「そうよ。あの騒がしいのが家にいたんじゃ休まらないもの。面倒なのはお兄様におし……、任せて、私は避難したのよ」

 「じゃあ、メアリーは?」

 「え? 私ですか? 私はほら、いると邪魔になるんで、サボ……、クリス様のお世話を…」

 あぁ、つまり二人共、あの騒がしい一団と一緒に居たくないから逃げてきたと。

 メアリーに関しては、ただのサボりでしょ? 他のメイドさんがよく怒らないわね。


 「しっかし。今年はホント暑いわね。このままいったら冬には八十度くらいになるんじゃないかしらね」

 随分使い古されたネタを言うんだな。

 「そうですねー」

 「そんなわけないでしょ。ちゃんと突っ込みなさいよ」

 こんな時にそんなやり取り出来るわけないでしょ。


 しかし、ホントここは涼しいわねー。もう夏の間はずっとここにいたいわ。

 三人で暫くダラ〜っとしていたんだけど、遠くの方から人が近づいてくる気配があった。

 そっちに目をやると、何人かのメイドさんがいた。

 私と目が合うなり、小走りで走ってきた。


 「メアリー! こんなとこでサボってるなんて」

 「私はサボってるわけではなくて、お世話を…」

 「何言ってんのよ。寝てるじゃない」

 「……。え、えーっと、そう。暑さで立ちくらみが…」

 「取ってつけたよな嘘言ってんじゃないわよ。ほら来なさい。突然お客が来て忙しいんだから」

 「えぇー」

 「えぇーじゃない。ほら来る!あ、クリス様!」

 メイドさんが、今気づきましたというような感じで、私に声を掛ける。


 「い、忙しそうだね」

 「そうなんです。もう全然人足りないんです。あ、丁度良かったクリス様手伝ってくれませんか?」

 私一応、主なんだけど。まぁ、いいか手伝うくらい。

 「いいわよ」

 「さっすがクリス様。ほら、メアリーもしゃんとする。クリス様も手伝ってくれるんだから、あなたも来る!」

 「うえー」

 両脇を他のメイドさんに抱えられ、引きづられるように連行されるメアリー。


 「では、クリス様、こちらへ」

 それまで呆気にとられていたお姉様がやっと声をだす。

 「わ、私も行きましょうか?」

 「あ、サマンサ様は大丈夫です。余計に仕事が増えるので、この辺でダラダラしててください」

 「あっ…はい…」

 この家のメイドって、本当に怖いものないわよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ