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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第4章

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03 育てかたに失敗したパターンでしょ


 屋敷の廊下は絨毯がひいてあるので、裸足で走っても痛くないのでありがたい。

 しかし、今私ノーパンなんだよなぁ、しかも薄手の白いネグリジェ。

 誰にも見つからないようメイド長のアンジェさんのところまで行って、厳重に抗議してもらおう。

 私が何言っても、聞く耳持たないままなんだもん。


 チラッと後ろを振り返ると、壁を蹴りながら走ってくるアリスとメタモ。

 「待てこら!」

 「そうよ。大人しく奴隷になれ!」

 とんでもない奴らだな。ただ追ってくるだけならいいけど、クナイを投げてくるのはやめてほしい。


 エントランスホールへ出たので、階段を一気に飛び降り、向かって左側へ走る。

 突き当たりの一番奥の部屋がメイド長の執務室だ。その手前にはメイドさん達の会議室やら休憩室があるので、誰か出てくる前に一気に走り抜ける。

 流石にここで騒ぐとまずいと思ったのか、黙りながら走って追ってくる二人。

 幸いなことに私の方が足が速いようだ。


 メイド長の執務室の扉の取っ手を掴み開けた瞬間、ネグリジェの後ろを思いっきり引っ張られる。

 しかし、そんなことで怯むクリスさんではないのだよ。

 前に重心を傾け倒れるように入り込む。


 「ちょ、ちょっとどうしたんですかクリス様………って、アリスにメタモも何をやっているのです」

 よっしゃ。これで勝ったぞ。朝からこんなに動き回るなんて。疲れた。

 今は暑いから、剣の訓練も休止中なのに、めちゃくそ汗をかいてしまった。


 「アンジェさん助けて!」

 「⁉️」

 「クリス様、何があったのかお聞かせ願えますか?」

 そうして、事の顛末を全て話した。

 そしたら、ちょっと予想外の答えが返ってきた。


 「うちの娘が大変失礼な事をしました。申し訳ございません」

 ん? 娘? これが? この二人がアンジェさんの娘?

 こんな淑女の鏡のような女性の娘が、貞淑の欠片もないメスガキだというの? 嘘でしょ?

 でも、この感じだとそうなんだろうなぁ。教育に失敗してるじゃん。


 「アンジェさん…、おいたが過ぎるので、この二人を私に近づけないようにできますか?」

 「「!!!!!!」」

 なんでそんな被害者みたいな表情できるのさ。こっちが被害者だっていうのに。

 二人とも正座したまま、アンジェさんに抗議する。

 「いや、違うのよママ。これは朝起きないクリスを起こそうと…」

 「そうよママ。誤解があったのよ。たまたまクリスの顔の上に私の股間があっただけよ」

 抗議とは一体…。


 「そうですか。ところで、クリス様が下着を履いていないのは、あなた達が脱がせたんですか?」

 「「え?」」

 いや、これは暑くて履いてないだけで、これに関しては、二人は関係ないんだけど。二人とも驚きの表情でこっちを見てくる。


 「はぁ…。クリス様」

 「なんでしょう」

 「おそらく浮かれてたんだと思います。二人ともクリス様の事が好きなので」

 好き? 私を? おかしくない? それなら何でお兄様と一緒に学園に行ったのさ。

 「それなら何で、お兄様付きのメイドとして王都の学園へ行ったんですか? あれは確か応募してトーナメント勝ち抜きでしたよね」


 「実はね…」

 「ダメっ!」

 「ちょ、ママそれは言っちゃダメよ」

 「好きな子にはいたずらしたくなるのと一緒なんですよ。それで、気を引こうとルイス様に付いてったんですよ」

 えぇ…。なにそれ。

 チラと二人を見ると、顔を赤らめてそっぽを向いた。マジか。

 小学生男子が好きな子にちょっかいかけて泣かせるやつか。まさか自分がされるとは思ってなかった。


 「クリス様、娘達にはきつく言っておきますので、どうかご容赦願えませんか?」

 まぁ、そう言われちゃうとねぇ…。まぁ、まだ子供だし、許してあげましょうか。

 「はぁ…。今回だけよ。次やったら、分かるわね?」

 「「はい…」」

 こんな塩らしい二人を見たのは初めてだわ。


 「はぁ…。私としてはそのまま娘達と仲良くして欲しかったのですが…」

 「え?」

 「だって、そうすれば、私の娘の娘婿になるじゃないですか」

 「あっ……」

 この人完璧だと思っていたら、結構とんでもい人だったわ。

 頬に手を当てて、目を細めながらそんなことを言う。

 今までの接し方を見て、既婚者だから私に興味ないと思ってたけど、とんでもない方向からアプローチかけてきたわ。


 でもなぁ…。私、ウィリアムと違って既婚者は範囲外なのよね。

 すっごい好みなんだけど、ごめんなさい。

 そんな感じで、心のなかで合掌していると、アリスとメタモが私の肩に手を置いていた。

 「ふふーん。親公認ね」

 「じゃあ、これからもよろしくね」

 「いや…、常識の範囲内なら…」

 「「やたーーーー!」」

 やたー。じゃないよ。そもそも、二人とも年下だし、今までの事やこれからのこと考えると、対象外だわ。


 「ところで、クリス様、その格好でこちらまで?」

 「えぇ、そうよ」

 今更そんな改まって何を…。そう思って自分の服をみると、汗で張り付いている。張り付いている部分はうっすらと透けている。

 つまり、下着をつけていない今の自分は。


 「とても…、扇情的ですね…」

 アンジェさんが生唾を飲み込むのを初めて聞いた気がする。

 両隣の二人も、私の股間部分をずっと鼻息荒く凝視するのはやめてくれないかな。

 鼻息が当たってくすぐったいのよ。


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