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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章
17/430

17 とりあえず相談してみよう

 相談出来そうなのがメアリーしか居なかったので、事の顛末を話した。

 「何という事を、あんのクソ王子。私が居たらそんな事させなかったのに」

 相談する相手を間違えたな。

 「しかし、隣のアンバーレイク領にも年頃のご令嬢が居るのに、クリス様を選ばれるとは、案外見る目があるかもしれませんね」

 「ないよ! 節穴だよ。私男なのよ?」

 貶してるんだか、褒めてるんだか分かんないな、これ。

 「でも、あのサマンサ様が義理の姉になるかもしれないのに、クリス様をお選びになるというのは、よっぽど好意を持たれてるんですね。私、悔しいです。将来は私とクリス様が結ばれる予定だったのに……」

 はっはっは…。そんな約束はしてないんだよなぁ。

 「クリス様、婚約破棄は難しいですが、暗殺なら可能かもしれません」

 「はぁ? 何言ってんの?」

 「我々オパールレイン家メイド隊は、元々は王妃様直属の近衛部隊。城の中は隠し通路から屋根裏まで把握してます。ちょっと行ってコロっとしてくるなんて訳ないですよ?」

 「ダメダメ! 絶対ダメ! そういうのはナシ!」

 「でも、婚約破棄より簡単ですよ?」

 「ダメ! そういう物騒な発想はダメ! 嫌いになるよ?」

 「うっ……。すいません。短絡的な発想でした。暗殺はしないので嫌いにならないでください」

 物騒な奴だな。危ない危ないね。そんな、コンビニ行ってくるって感覚で王族の暗殺行くって発想がもう末期的。でも、相談しなかったら勝手に行きそうで怖い。

 「約束よ?」

 「はい!」

  返事はいいんだよなぁ。こんな笑顔なのに、背筋が凍りそうよ。

 「ねぇ、他にメアリーみたいな発想しそうなメイドとか居るの?」

 「ん~……。大体はその発想に行くつくかと…。そもそも元隊長の奥様がそういう発想の持ち主ですし…」

 「よーく分かったわ。他のメイドにはメアリーからやらないように言っておいて、お母様には私から言っておくわ。ここ最近のお母様は血に飢えてそうだからね」

 打ち首エンドを回避したいのに、率先して打ち首エンドに向かうなんて正気の沙汰じゃないわ。私は平穏無事に暮らしたいのよ……。


 そういえば、メアリーってお母様の部下って言ってたわよね?

 今私、十一歳だけど、メアリーって何歳なのかしら?

 好奇心半分、怖いもの見たさ半分で聞いてみる。

 「ねぇ、メアリーって今幾つなの?」

 「クリス様、女性に歳を聞くものではありませんよ?二十三です。結婚適齢期内です」

 「え? 若くない? 逆算すると、十二歳くらいでもう働いていたの?」

 「スルーしないでくださいよ! ……まぁ、そうですね。小さい頃にいろいろありまして、縁あって奥様のところで住み込みで働くようになりましたね。だいたい二年くらいですかね」

 何か、その辺の話深堀したら面白そうね。

 「あの時の仲間は全員この家でメイドやってますよ」

 過去を懐かしむように話している。が、一、二年そこらでそんなに強くなれるんだろうか? もしかしたら、元から強くて騎士団の方にスカウトされたか、何かやらかして騎士団に預けられたかのどっちかだな…。

 まぁ、後者だろうね。メアリーの性格を見ると。

 或いはお母様がよっぽどスパルタだったかでしょうね。

 しかし、この家のメイド全員元騎士なのか。凄いな。

 じゃあ、男衆の方はどうなんだろう? 流石に一般人だけって訳でもないんだろうな。もしかしたら暗殺集団だったりしてって、そんな漫画みたいな展開ある訳ないか。みんなどっか抜けてるし。お父様は変態だし。

 「!」

 まさか、お父様の趣味仲間っていう事はないでしょうね。

 そしたら、私はいったいどんな目でみられているのかしら……。怖いわー。



 メアリーがあんまり当てにならないので、他の人に相談したいが、この家でまともな思考を持っている人なんて居たかな?

 家族以外で口が固くて、いいアイデア出してくれる人……。

 考えながら歩いていたら、ばったりとロザリーと出会った。

 私と同じ女装趣味のメイド、ロザリーがいるじゃない。

 「ねぇ、ロザリーちょっと相談があるんだけどいいかしら?」

 「なんでしょうか? サマンサ様の撃退法なら私も知りたいですが…」

 「そんな事聞いてなわいわよ。そうね、人に聞かれたくないから、私の部屋へ来てくれる?」

 「新しい衣装ですか?」

 「それもあったんだけど…。って違うわよ」

 やっぱり、相談した相手間違えたかな?


 「なるほどです。つまり、クリスお嬢様はレオナルド様に婚約破棄されたいという事ですね。ふっ…。簡単ですよ。嫌われればいいんです」

 「おぉ…。で、どうやればいいのかしら?」

 「サマンサ様みたいな事すればいいんじゃないですかね?」

 「それは、確かにそうなんだけど、私へのダメージも大きじゃない?」

 失礼な事言ってる自覚はあるんだけどね。待って、お姉様みたいな事ってどんな事かしら? 自由奔放にしてるって事くらいしか分からないわね。

 「ねぇ、疑問なんだけど、お姉様って何をしたの?」

 「申し訳ございません。クリスお嬢様。それは私の口からはとてもとても…」

 「私だけ知らないの怖いんだけど…」

 「知らない方が幸せな事ってあるんですよ?」

 口に出す事を憚られるって相当よ? って、今そんな事考えてる場合じゃなかった。

 「お姉様の事は一旦置いといて、他に何か方法は無いかしら?」

 「もう、下半身晒け出すしかないんじゃないですか?」

 「男ってバレないのが条件なのよ? 聞いてた?」

 敢えて短いスカート履いて、パンツ見せるのが趣味のロザリーに聞いたのが間違いだった。今だってガニ股で紫のレースと光沢の布地のもっこりしたパンツが丸見えだもの。あれ、お姉様の方のブランドの下着よね…。

 でも流石にこれは注意した方がいいんだろうなぁ。

 「あのね、ロザリー。そう堂々とパンツを見せるべきではないと思うの」

 身体中を雷に打たれたような顔で衝撃を受けている。

 「え、だ、だってサマンサ様のおと…、妹ですよね。サマンサ様は堂々とスカートを捲って私のパンツを鑑賞するので、てっきりクリス様も好きなものだとばかり……」

 何という事でしょう。お姉様は一体どういう生き方をしたらそんな下品なオヤジみたいな事をするようになったのでしょうか。

 というか、堂々と他人のパンツ見る趣味なんてないわよ。

 たまたま、ラッキースケベなシチェーションで見えるのがいい訳で、堂々と捲って繁々と眺めていたらただの頭のおかしい人よ。

 ちょっとここは私はそこまでおかしくない事を説明しないと!

 「いいロザリー? そんな他人の下着を堂々と見て喜ぶのはお姉様とメアリーくらいよ? いい? 私はね、パンチラというものはとても神秘的なものだと思うの。そう、例えば遺跡やダンジョンで見つけた宝箱を開けるか開けないか。それが当たりなのかミミックなのか空っぽなのかと想像するの。秘されたものを見つけ開ける時の高揚感や達成感のようなものだと思うのね。そして、それは思いがけない時や想像を超えた時に初めて感動するの。それをその辺の路地裏にあるいつでも覗けるようなゴミ箱じゃあ感慨なんてないと思うの。」

 「ダンジョン……? ミミック……?」

 「こほんっ……。まぁ、普段は見えないし、隠されているのに不意に見えてしまう不可抗力のようなラッキースケベな状況が好きなの。求めても普通は叶わないものなの。それに、どんな人だってたまたま見えてしまったら目で追ってしまうでしょう? でも堂々と見るのは憚られる。見たいのに目を逸らしてしまうジレンマ。でも、その時の恥じらった表情と併せて眺めるととても胸が熱くなるものなの。ただ、下着だけジーッと見るくらいなら下着だけを手にとって見てればいいの。そもそも見られる側が大っぴらに丸出ししてるのは論外よ? 逆に興ざめというか、汚物を見せられてる気がするもの」

 「目から鱗が落ちました。えぇえぇ。全くその通りだと思います。是非ともサマンサ様に聞かせたいですね。こんなに鱗が落ちたのは、メイド服に初めて袖を通した日とカレーを初めて食べた時以来です」

 「そ、そうなんだ。いっぱい鱗があるのね……」

 「でも、サマンサ様はパンツだけ眺めるのも好きですよ? よく、私のパンツを両手で持って広げて眺めてますし……」

 あの人一体なにやってんの? 本当に頭おかしいんじゃないの?

 まぁ、でもそんな人の従者やってたら恥じらいも何も無くなってしまうわね。

 ここは、ロザリーに少しでも女性らしさを教えましょうかね。

 そして、ガニ股をやめて淑女らしい座り方などを教えたのだが、一教えたら十出来るようで、さっきまで男の視線のない女子高みないな雰囲気から、常に視線を意識した可憐な乙女の雰囲気に変わってしまった。

 こうも簡単に変わるとはびっくりだわ。頬を朱に染めて目を潤ましてキョロキョロしている。右手は軽く握って顎の辺りに。左手は短すぎるスカートを下の方へ引っ張るようにしている。その様は庇護欲を掻き立てられる。

 「どうですかね?」

 「いいと思うわ。今までは、ただ単に女性の服を着ているだけだったのに、今は内面も女性らしいわ」

 うーん、お姉様に面白がってひどい事されないといいけど。


 さて、閑話休題。

 視界からロザリーのパンツが消えた事で、少し建設的な話し合いができる事だろう。改めて婚約破棄について話し合う。

 「常にサマンサ様と居たらどうでしょう?」

 「いい案だと思うわ。でもね、私への被害が大きそうなのよね」

 それに、直接的な解決にはならないだろうな。

 救出を名目にされそうな気もするし……。

 そういえば、最初に嫌われるって言ってたわね…。

 「ねぇ、私が悪役令嬢になればいいんじゃないかしら。当て馬のヒロインに王子様持ってってもらうっていうの。どうかしら?」

 「いいと思いますけど、そういうのって学園に入学してからの話ですよね? 入学まであと四年くらいありますよ?」

 「なっがっ!」

 「まぁ、でも四年もあれば、レオナルド様も気が変わるかもしれませんしね」

 「そう願いたいわ…。はぁ、何で私なのかしら…」

 「砂漠の中のオアシスに見えたんじゃないですかね?」

 掃き溜めに鶴、吊り橋効果ってところかしら。幻想もじき消えるのかしらね?

 「結構ロザリーって毒吐くわよね…」

 「そんな褒めないでください。それと、もし悪役令嬢になるなら、その平べったい胸じゃダメですね。物語の中の悪役令嬢はスタイル抜群ですから。朝の訓練で結構絞れてるんでお腹とかは大丈夫ですが、胸は……」

 そう言われて自分の胸を見る。そりゃぁ男だものぺったんこよ。女装男子と貧乳で希少価値が倍になるわね。ってやかましいわ。

 「話は聞かせてもらいました」

 「げぇっ! メアリー」

 バンッとクローゼットから出てくるメアリー。何でそんなところに、というか全部聞かれてたのか…。

 「げえっって何ですかげえって。私がいちゃまずいですか? ロザリーあなたクリス様にタメ口言い過ぎ。失礼じゃない?」

 「いや、そもそも何でクローゼットの中に居るのよ? 仕事は?」

 「クリス様いるところに私ありです。仕事なんてどうとでもなります」

 いや、仕事しろよ。そういえばメアリーの仕事って何だ?

 メアリーがまともに仕事しているところ見た事ないや。

 ジト目で抗議するロザリー。

 意に介さないメアリー。

 「で、何でメアリーは出てきたの?」

 「クリス様がお胸に悩んでると聞きまして…。ですので、私が今日から毎晩揉めば立派なお胸になると思うんです。大丈夫です。日々のマッサージが効果大ですよ」

 自信満々にぷるんと大きく胸を揺らすメアリー。

 二人して自分の胸を見る。いや、今後の成長率はゼロだよ。

 「というか、大きくしたいなんて話してないんだけど。メアリーはただセクハラしたいだけなんじゃないの?」

 「やだなぁ、クリス様。合法的に揉める機会なんてそうそう無いで……。すいません。はっちゃけすぎました」

 「正直でよろしいわ」

 まぁ、メアリーはこうだよね。

 この二年ほどずっとこんな感じだもん。今更って感じです。

 「ロザリーも相談されたんですね。やっぱりキュッとやっちゃうって話になりましたか?」

 「何で君はそう物騒なんだ。最初から聞いていたんだろう?そんな話してない事くらい……」

 「本当はクローゼットの中で寝てたんで、最初の方は聞いてないです」

 こいつサボってたんじゃないか。

 とりあえずメアリーの両ほほをむにーっと伸ばしてやる……。嬉しそうな顔するんじゃないよ。これじゃ罰にならないじゃないか。

 「まぁでも、婚約したって言ってもそんなに頻繁に来ないでしょう? ここ王都からちょっと遠いし」

 「ダメよロザリー。そういう事言うとフラグになるわよ」

 しまったという顔をしながら両手で口を押さえるロザリー。

 口じゃなくてスカート抑えなさいよ。また見えちゃってるわよ。今回は偶然だけれど、ワカ○ちゃん並みに短いわよ?

 もう、折角乙女らしくなってきたのに元に戻ってるじゃない。

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