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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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56 マーガレット回想③


 教会にも政争争いというものがあるらしい。


 アーサーのお父さんはどうやら、ここの宗教の教皇だったらしいが、対立する派閥の人達がどんな手を使ったのか、教皇とその派閥の人達を一斉に隔離しだしたのだ。

 どうやら、教皇の教会運営の手腕がよほど評判が良いらしく、それに嫉妬した対立派閥の人達が有る事無い事流布して、問題をでっち上げたそうだ。

 当然、今の教皇を知っている人は事実無根だと思っているが、大多数の人は興味が無いから知らないらしい。だからか、嘘を真実と思い込んだ人達に徹底的に糾弾された。


 アーサーがある時、悲しそうな顔で旅に出ると言ったことがあった。

 「すまない、マーガレット。私は暫く旅に出なくてはならなくなった。守ってあげられなくて申し訳ない…」

 「そうなの? でも、友達とかいるから大丈夫よ」

 「そうか…。それは良かった…」

 てっきり、虐められる事を危惧していたのかと思ってた。

 アーサーは子供のくせに大人みたいな不器用な笑い方をしていた。

 それにすぐに帰ってくるものだと思ったから、深く追求しなかったけれど、それがアーサーを見た最後の日だった。


 その翌日、あの豚のように肥え太った男が、大勢の人を連れてやってきた。

 「前任者の不祥事により、私が今日からこのアイデアル教の教祖に就任した、チェーン・シルバーアクセだ。覚えておくように」


 その男は、自らを新しく就任した教皇だと言った。とてもそうは見えなかった。

 暗黒街のボスと言われた方が納得できる容姿をしていた。

 それと一緒に来た高位の神官らしい男たちも厭らしい顔つきで、どう見ても敬虔な教会の人間には見えなかった。どちらかというと、詐欺師に近い顔つきをしていた。


 それからというもの、今までの生活は一変し、この世界に来た時以上に生活レベルは下がった。

 まず、食事は朝と夜の二回だけど、どっちも硬すぎる石のようなパンが一つか二つ。水につけてもなかなかふやけないくらい位固い。それと、限りなく水に近いスープ。具なんてほとんど入ってないし、味も全くと言っていいほどしない。

 食事の時間が拷問のように辛くなった。何でこんなものを食べなくてはいけないのかいつも自問自答していた。


 そんな食事で力が出るわけもなく、みんな真っ白な顔で掃除をしていた。

 今まで勉強の時間だったものと、自由に遊ぶ時間は廃止された。やることもないので、ただこの日常が変わるよう祈ることしかできなかった。

 いや、祈ることで時間潰しをしていたのかもしれない。


 あの教皇が来てから、毎晩派手に飲み食いをしているらしい。何人かの子供達が給仕代わりに手伝わされたそうだ。無論、手伝わされた子供達はその残りすら食べることを許されなかったそうだ。


 私たちが普段食べているものはあんなに質素なのに、なんて贅沢をしているんだと憤ったが、子供と大人敵うわけがなかった。

 そんな金があるのなら、私たちの食事を改善しろと、神官の一人に食ってかかったが、それが耳に入ったのだろう。

 三日ほど、ご飯抜きで暗い独居房に入れられた。


 出された時は、それまでの空腹に加え限界だった。立っているのもやっとだった。

 その三日の間に結構いろんな出来事があったらしい。

 子供達の中でも綺麗な子やかわいい子が、夜、教皇や神官に呼び出されて何かをされたらしい。

 その子たちは、何をされたのか口にしたくもないようで、ずっとベッドの中でうずくまっていた。

 しかし、痩せ細った体にそそられなかったのか、それ以降は、街の娼婦を取っ替え引っ替え教会に呼ぶようになった。


 そんな事を連日連夜やっているものだから、それまで教会に対して施されていた寄付や援助の全てがなくなったらしい。

 教皇や神官が怒り狂い、子供達やシスター達に手を挙げるのはそう時間はかからなかった。


 その翌日から、子供達に街で寄付を募るよう指示があった。無論誰も逆らうことは出来なかった。

 募金額にはノルマが課され、朝早くから夜遅くまで。目標額に達しないと、ご飯抜きにされ、暴力を振るわれた。

 集めたお金は、当然神官達の飲食に使われた。


 それに、ろくに食べることができないため、子供達は街中で残飯を漁るようになった。

 最初の頃は、心配したお店の人が食べ物を与えようとしていたが、監視していた神官に止められたのと、食べ物よりお金を寄越せと神官が強請ったため、結構トラブルになっていた。


 毎日毎日そんな事をやっているものだから、街の人たちも気味悪がったり、訝しんだり、無視したりするようになり、いつしか誰も手を差し伸べることはなくなってしまった。

 かくいう私も、何度帰れずに街中で野宿したかわからないくらいだ。


 暫く帰らなかった子供達は、神官達に見つかると、強制的に教会へ連れて行かれる。

 なんでも、集めたお金を自分の私利私欲に使っているんじゃないかと疑うそうだ。そう言った目的に使っているのは自分たちなのに、あまりにも身勝手だ。


 実際、ほとんどの子供達が目標額に達せていない。それで帰っても暴力を振るわれるのなら帰らない方がいいと判断するのは自然の流れだと思う。

 でもあいつらにはそんな思考は無いらしい。


 どこで見つけたのか、よくわからない内職を一昼夜させられたり、ご飯抜きで教会の掃除や修復をさせられたり。そんな地獄のような日々が一年近く続いた。


 もう限界…。前世で何か悪いことしただろうか? ………あぁ、結構やったわ。

 恨まれることいっぱいやったわ…。でも、今回はちゃんと改心したわよ。なのに、どうして………。

 そう思っていたら、あいつらが来たのだった。


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