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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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55 マーガレット回想②


 あれから数日経ったが、何も変わらない。

 いや、寧ろ変わったと言ってもいいのかもしれない。日々の生活が。


 朝に神に祈り、質素な食事を取って、昼は座学に掃除。夜も質素な食事をして、早い時間に寝る。退屈な日常。

 何か私罪でも犯しましたかね? しかも小さいこの体じゃ満足に出来ないし。


 そんな時、ふと上層部のお偉いさんが視察に来ると連絡があり、子供達全員でお出迎えすることになった。

 正直、めんどくさいなぁとしか思っていなかった。適当に笑って手振っとけばいいと思ったの。でも、その時初めてこの世界が何なのか気づいたのだった。


 建物の前にある広場でみんな揃って出迎えをする。

 今更ながらに、この大きい建物が教会なのだと知った。あれだけ掃除とか祈りとかしていたんだから気づきそうなものだが、意外とどうでもよかったのとそこまで気が回らなかったというのがある。

 それに普段はこの教会を外から見ることは殆どないからだ。


 この教会の上の方にも住むところがあるらしいのだが、今は使われていないそうだ。何でも、基本は篭って修行する場所らしい。

 じゃあ、どこに住んでるのかといったら、王城の近くに住んでいるらしいとの事。

 どうりで、普段から私たち以外見かけないわけだと思った。

 改めてこの教会を眺めると既視感を覚えた。それが何だったのか、喉のあたりまで出ているが出てこない。


 そうこうしていたら、門の方から数台の高級そうな馬車が入ってきた。

 私たちの前で停車した馬車からは、高そうな法衣を着た人たちが出てきた。

 その中で一人、赤髪の少年がいるのに気がついた。将来ああいうのが世襲するんだろうなと漠然と考えていた。

 でも、その少年がこちらを向いた時、その少年が誰か分かったのだ。


 いや、この世界が《ジュエル・ラディアント~宝石の国の王子様》の世界だと気付いたのだった。

 そして私は、主人公の《マーガレット》だと気付いたのだった。


 つまり、私は何の因果か、この世界に転生したということなんだろうか。確かに、直前までやっていた気がするし、シナリオも大体は覚えている。やろうと思えば逆ハーエンドだって出来るだろう。

 でもなぁ…、ボタンをポチポチ押して、選択肢選んで、スチル集めて、二週目、三週目とやったけれど、これ一応現実なのよね。

 リアルで人間関係構築したり、好感度高めるために色々イベントこなしたりとかやろうとすると非常にめんどくさい。


 まぁ、ゲームの世界だから勝手にシナリオが進行するだろうし、ヒロインだから誰かしらと結ばれて楽な人生歩めるかもしれないと考えたら、それでいいかなぁと。だって、私結構ものぐさだし? 変に色々開発したり注目集めたりするのはガラじゃないんで。そういうのは別の人にお願いしたい。


 現状が分かれば、不安も一気に解消するもので、肩の荷が下りたとばかりに背伸びをしてしまった。

 横にいた少女が、ギョッとして私の腕のあたりを持って下ろそうとしていた。

 しかし、一回背伸びすると、途中で止めると気持ち悪いから、ある程度満足するまでやっちゃうのよね。

 長いことやっていたら、赤髪の少年 《アーサー・カーネリアンダウン》と目があった。

 小さい時のスチルってなかったけど、小さくても美少年だ。笑った顔がとても素敵だ。この時私は、()()()()()()()でもいいかなぁと漠然と考えていた。



 それから、暫く経って、一部の上層部の人たちがうちの教会の上の方に住むことになった。

 何でも、『こんな立派な大聖堂に高位の神官がいないのは問題だ』と、体裁を機にする人が言ったらしい。そんなことを私にだけ、アーサーが教えてくれた。


 なんでも、アーサーのお父さんと対立する派閥が、ここに住むよう手を回したそうだ。体良く追い出したかったのだろう。本来の住居は王城に近いから、何かと都合が良いのかもしれない。だからだろうか、その問題を提起した人はここには住む気は無いらしい。

 それで、アーサーも一緒にここに住むことになったらしい。


 それで、何で私にだけそんなことを話したのか不思議だったが、どうやら私のことが気になったらしい。なんでも、この前の視察で一人浮いた行動を取っていた私に、他とは違う魅力を感じたそうだ。

 しょっぱなからフラグ立っちゃたのかーヤレヤレ…と考えながら、心の中でガッツポーズをとった。これで将来安泰だなと。


 それからも、時折アーサーと話したり、食堂で食事をしたり、本を読んだりと充実した日常を送っていた。

 そんなことをして虐められないのかって思うでしょ? これが意外や意外、無かったのよ。

 アーサーたちが来たことによって、生活環境のレベルが上がったし、他の子達とも分け隔てなく接したからだと思う。何かあれば、親身になって話を聞いてくれるしね。


 あとは、仲の良い友達が何人か出来たのも大きい。アーサーがいない時は。その子たちと一緒にいることも多いし、一人でいることもほとんど無かった。

 それに、私がアーサーと仲が良いことから、下手に虐めると、追い出されるかもしれないと噂が立ったのも大きい。

 この世界で子供一人で生きていくのは想像を絶するくらい大変だからだ。


 まぁ、そういうことを考える子はすぐに分かるから、後でシスターに呼ばれて説教されて、泣きながら改心するから特に問題は無かったわね。

 そんな順風満帆の生活もある日を境に終わりを告げた。


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