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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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41 教皇を運び出そう


           *      


 「えぇ…、私これ触りたくないんだけどぉ…」

 下の倉庫や書庫で仕事をしていたエリーと、兄クライブさん。他数名、手の空いた方に来てもらったのだが。


 「ねぇん、お兄様が運んでよぉ。力持ちだし、長男じゃない?」

 「長男は関係ないだろう。というか、力ならとっくにエリオットの方が上だろう」

 「もぉん、エリーって言って。もしくはエ・リ・ザ・ベ・ス!」

 「運んだら考えてやろう」

 「まったく、もぉ。お兄様ったらそんなに恥ずかしがってぇ」

 「……………」


 もう話さないぞ、と。腕組み、そっぽを向いてしまうクライブさん。そんなクライブさんを激しく揺さぶるエリー。そんな事したら尚の事運べなくなるんじゃないだろうか。

 そしたら案の定、顔を真っ青にしたクライブさんが口を押さえ、掴んでるエリーを乱暴に振りほどき窓へ駆け寄る。

 その後は、お察しの通り窓から下へぶちまけたのだった。もともと臭い部屋だから変な匂いが一つ増えたところでもう気にならないんだけどね。


 「おい、エリオット! 次やったら絶対に呼ばないからな」

 「じゃーあ、呼ぶまで揺するわね」

 「分かった。エリー…。だから目を輝かせて俺を掴むのは止めろ」

 「んふ。最初からそうしてればよかったのにぃ」


 エリーの拘束を解かれたクライブさんは力なくその場に座り込んでしまった。

 「うちにあんなのがいなくてよかったわねお兄様」

 「サマンサはもう少し、自分を客観的に見た方がいいよ」

 「……………」


 無言でお兄様の服を鷲掴みするお姉様。

 「分かった。僕の負けだ。だから離してくれ」

 ニッコリ笑顔になるお姉様。

 「ちょっ」

 「お姉様、そんな事したら()()になりますよ」

 パッと服を離し、頬に手を当て笑い出すお姉様。


 「おほほほほ。嫌ね、冗談に決まってるじゃない。そんな事もわからないなんてやーねぇ。おほほほほ」

 目がマジでしたよ、お姉様。

 そっとお兄様が耳打ちする。

 「助かったよ。後でなんでも好きなもの買ってあげるね」

 そもそもお兄様がお姉様に変な事言わなければこうならなかったのでは?

 しかし、何でもかぁ…。別に欲しいものないんだよなぁ。大体手に入るし。


 潜入中とは思えないほど、だらだらと喋っていると、しびれを切らしたのか教皇がまたぞろ騒ぎ出す。

 「おいっ! いい加減私を解放しないかっ! そこの大男っ! 私ならお前の望むものを用意できるぞ!」

 背丈だけで言ったらクライブさんだろうけど横幅とか筋肉とか入れたらエリーかな。どっちを指しているのかわからないな。


 「何だ。生憎俺はお前と取引する気はないぞ」

 「違う。お前みたいな地味なやつじゃない!」

 「じ、地味……」

 ショックを受けて俯いてしまうクライブさん。


 「えぇ、私ぃ?」

 「そうだ。お前なら私の言ってる意味が分かるだろう?」

 「見下してんじゃねぇぞ? あ?」

 「⁉️」

 「あら、やだ。もう。汚い言葉が出ちゃったじゃないのぉ」

 「??????」

 「生憎と私、自分の欲しいものは自分で手に入れる性分なのぉ。だからぁ、あなたみたいなのに頼るほど落ちぶれてないわぁ」

 「ぐぅっ! 何故だ何故だ! 何故私に従わんのだ!」


 そりゃあ、縛られて液体まみれになってるお先真っ暗な人の話なんて信じないわよね。

 「ねぇ、うるさいからぁ、そこから落とせば運ぶの楽じゃない?」

 エリーがとんでもない提案をする。


 「⁉️」

 「なるほど。気づかなかった。確かにそれなら楽だ」

 「な、ちょっ、待て待て……」

 「そうね。そもそもあそこの階段狭いから引っかかるものね」

 「幸い、厚い防護壁に包まれてるから大丈夫だね」

 「ま、待って……。待つのだ。それだと死……」

 「じゃあ、みんなそこの窓まで運ぶの手伝って」

 「そ、そこは、さっき吐いたところじゃないか。や、やめ……やめ……」


 みんな盲点だったとばかりに運ぶ準備をしている。

 しかし、教皇を前にみんな動きを止めてしまう。

 「やっぱり触りたくないわねぇ」

 「だよねぇ…」

 「ところで、一体誰がこんな液体まみれにしたんだ?」


 異臭を放つヌメヌメの教皇は触りたくないらしい。せめて濡れてなければと悔やまれます。こういうとき、ゴム手袋とかあればいいのにね。

 「そういえば、このロープまだ繋がってるんだよな」

 クライブさんがロープの先を見て、疑問を口にする。

 「でも足らなわよ」

 「ほら、そこにまだいっぱいあるから足せばいけるだろ」

 「あぁ…。そうね。でも途中で切れないかしら?」

 「そしたらそん時だな。仕方ない」

 「お前ら、私のことを何だと思ってるんだ…」


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