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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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37 どうしても自分のことを優先してしまうらしい


           *      


 「ちょっと、何で螺旋階段の下の方に柵が二重で設置してあるのよ。これじゃあ下へ行けないわね」

 「鍵穴を解除すれば行けそうですが、三つも鍵をつけているのは異常ですね。とりあえず、解除はしてみます」

 「お願いね。私たちは上の方を調べるわ」

 「はい。お願いします」


 部下数名に下の方の捜索を一任し、私アンとロブと残った部下で上の方を調査する。

 ここまで厳重にしているってことは、東棟には何か隠しておきたいものがあるのかもしれない。

 もしかしたら獰猛な動物でも飼っているのかもしれない。あの教皇ならやりかねない。

 そんな教皇は西棟の最上階にいるらしい。私もそっちの方が楽だったかもしれない。


 そんな憂鬱な気持ちで来た道を戻っていると、螺旋階段の壁の一部が外れ、次いで壁がごっそりと内側に引っ込んだ。

 一体何なんだろうと身構えていると、会長のところの女装メイドさんが這い出してきた。相変わらずパンツが丸見えなんだけど、気にした様子ももない。


 そんな彼女? はこちら側を気にした様子もなく、奥にいる誰かに両手を差し出していた。もしかして会長が来たのかしら?

 確かに会長は可愛いし、頼りになるし、たまに何言ってるか全然わからないけど、ちょっと好みから外れているのよね。ちなみに庶務のクライブはダメね。ぜんっぜんダメ。真面目堅物筋肉童貞。同じ童貞でも可愛い会長の方がいいわ。あの人会話がつまらないのよね。話してもラリーが続かないし。もっと面白みがあればいいのに。

 私と居る時だけ、ムスッとしてるし、失礼しちゃうわよね。

 弟のエリオットくらいぶっ飛んでれば面白いのにね。まぁ、あれも私の好みからは程遠いわね。寧ろ生理的にム・リ。


 そんな私の一押しは、裏のマーケットで流通してる薄い本によく描かれてるクリスたん。そう会長の弟さんだ。あれはいい。常に本の中では可愛い顔で泣いている。読む度に私の加虐心が満たされていく。こんな本を教えてくれたキャロルには感謝しかないわ。


 そんな愛しのクリスたんが、なんと! 私の前にいるではないか。あの女装メイドに抱っこされて出てくるなんて、もしかして今日の私の運勢は飛び切りよかったんじゃないだろうか?

 あの腹黒クソ親父が教えてくれていたなら、昨日の晩、寮を抜け出してホテルの屋根裏に張り付いたのに……。本当にあのクソ親父はロクなことをしない。


 しかし、そんな私にご褒美なのか、今目の前にクリスたんがいる。

 さっきの広場では余裕ぶって大人の女を演じてたけど、出来ることなら今すぐ抱きついて、匂いを嗅いで、顔じゅう舐めまわしたい。そしてお持ち帰りしてイケナイ事を教えてあげたい。

 あぁ、ダメだわ。本物を前にすると興奮が抑えられない。下腹部がこんなに熱いなんて任務どころじゃないわ。それもこれもクリスたんが可愛いのがいけないのよ。こんなに可愛いのに、お◯ん◯んがついてるなんて最高かよ…。


 ………おっと、いけないいけない。あまりにも自分の欲望に忠実になりそうだったわ。

 ロブが裾を引っ張ってくれなかったら、本当に突進していたかもしれない。

 気をつけないと。今は任務中。今はつまんない任務中……。よし。


 「何でこんなところから出てきたのかしら?」

 「まぁ、ちょっとショートカット?」

 「何で疑問系なのよ」

 「一旦、ルイス様に許可を取った方がいいかなと。それで、もう一度屋根を行くよりは最短直線でここを通った方が早いかなと」

 「こんな隠し通路があるなんて聞いてないんだけど」

 「聞かれてませんから」


 こいつ……。ほとんど無表情だから全然、心が読めない。しかも言ってる事もちょっとよく分からないわ。

 「で、どうしてこっちに来たのかしら? もしかして…」

 そういって、クリスたんに視線を向ける。

 「違いますよ。クリス様は勝手に付いてきただけですが」

 「ちょっ…」

 ナイスよ。クリスたん。終わったら一緒にお風呂に入って寝ましょうね。


 「まぁ、人が多すぎて、昼間にここだけ確認が出来なかったので」

 「あ、そう? 別にこっちは私たちが見るからいいのに」

 「まぁ、そうですね。ただ、気になる事がありましてね」

 「ふーん?」

 このロザリーってのも中々の曲者よね。というか、あの家の人間全員が何か抱えてるのよね。クソ親父は知ってるようだけど…。


 「まぁ、この時間なら警備も手薄でしょうから、そんなに気にする必要もありませんよ」

 「あの螺旋階段途中の柵も?」

 「あぁ、あれですか。あれ、面倒くさそうに見えて鍵穴全部同じなんですよ。見た目だけですね。あれに引っかかっちゃうと時間を食っちゃいますよね」

 どうもすいませんね。それに引っかかった間抜け一号ですよ。


 とりあえず、ロザリーを先頭に螺旋階段を上っていく。ロザリーの後ろをクリスたんが付いて歩くが、あぁどうしよう。今すぐ後ろから抱きしめて耳をハムハムしたい。

 「……落ちつ…く…」

 ロブが首をフルフルしながら袖を引っ張る。どうやら私の心のストッパーはロブらしい。ロブもなぁ…。小柄だし髪の毛結構長いし。でも、素顔見た事ないんだよなぁ。前髪で顔隠れてるし、磨けば結構いけるかも?


 そんな事を考えていたら、少し広い空間に出た。ここから先は細い階段しかないので、ここが東棟の重要な場所なんだろう。

 案の定、扉の前で教会の幹部らしき男が二人こちらに気づき近づいてくる。


 「何だお前らは? 誰の許可を取って入ってきた」

 「ここには何もないぞ。ほら帰った帰った」

 まるで何か重要なものが隠してあると言わんばかりだ。

 ニタニタと下品な笑みを浮かべているが、そんなの関係ないとばかりに、ロザリーが一人近づいていく。

 「おっ、何だ? 何かしてくれんのか? へへっ…」

 「まぁ、そういう事なら少しくらいは……」


 ロザリーが男の一人の顔を回し蹴りで吹っ飛ばし、すぐさまもう一人の顎に蹴りを入れていた。なんとまぁ鮮やかな動きだこと。ものの数秒で片付いてしまったわ。

 そんな伸びている男の腰から鍵を奪い取り、何の感慨もなくさっきまで男達がいた扉の前に近づいていく。

 そのまま、無言で鍵を開け扉を開け放った。


 中を見て絶句し固まってしまった。

 中には今までブリリアント教を取り仕切ってきた幹部やその関係者が拘束されていた。

 ロザリーがそのまま中に入る。続いてクリスたんも入っていく。

 その光景に呆然としていたところ、ロブに袖を引っ張られ我に帰り、中に入る事にした。


 「あ、あぁごめん。い、いきましょうか…」

 「……ん……」

 中に入るとムワッとした熱気が立ち込めている。どうやらまともに換気もされていないようだ。

 中にいた人物はみな衰弱しきっている。もう少し遅かったら死人も出ていたんじゃないだろうか。一体いつからここに入れられていたのだろうか?


 あの教皇が実権を握ったのが去年。街で募金活動をしだしたのが、それから半月後くらいだったかしら。途端に評判が悪くなったのもそくらいの時期よね。とんでもない奴だわ。しかし、今はこの人たちの拘束を解くのが先決ね。

 近いところにいる人のロープを解きながら、見失ったロザリーとクリスたんを探す。そんなに広くない部屋だ。すぐに見つかった。


 ロザリーは奥の方で傅いている。あれは!

 「カーネリアンダウン教皇……、遅くなりまして」

 「ロジエ……。ロジエなのか……。すまない……。こんな私を……」

 「今はロザリーです、教皇。それより立てそうですか?」

 「あ、あぁ…。何とかな…。……………そうか……。今はロザリーと名乗っているのか……」

 「えぇ」

 「はは……。そうか……。私も…元教皇だ。呼び捨てでいい…」

 「そういうわけには…」

 あの二人には何か深い関係があるのかしら。昨日今日の仲じゃないわね。どう見ても主従関係にあったように思うけど、謎だわ。


 そういえば、クリスたんは……。あら、赤髪の少年を介抱しているわね。

 「大丈夫ですか?」

 「あ、あなたが…、我々を救い出してくれたのですか?」

 「いや、そうとも言えるし、違うとも言えるし……」

 「謙遜なさらないでください。こんな僕を救い出してくれたあなたは女神だ…」

 「いや、ちが……」

 「いいえ、女神です。こんな場所で汚れを気にせずに抱き起こしてくれたあなたこそ女神様です」

 「えぇ……」


 何やら勘違いしているっぽいけど、凄く尊いわ。何ていうか、あそこだけ光り輝いてるようにも見えるわ。なんかどっかで見た宗教画みたいに凄く絵になってるわ。脳内に保存しておかないと…………。

 保存完了……。可愛い男の子だけど、できれば男の娘のが良かったわね。『そんなにお腹が空いているなら私の◯◯◯食べるかい?』なーんちゃって。ぐふふふふ……。


 「いたっ!」

 その時どこからか、私の頭に何かが当たった気がした。

 飛んできた方向を見ると、ロブがこっちを見て睨んでいた。いや、前髪で隠れて分からないけど、きっと睨んでるのよね? 口が『へ』の字になってるもの。

 危ない危ない。抑えきれなかったヨダレを裾で拭い、気持ちを切り替えて拘束されている人を解いていく。

 しかし、よくもまぁこんなに前体制派の人物を監禁していたわね。どうりで探しても見つからないわけよ。死んでいると噂されてるのも納得ね。


 ふぅ…。全員の拘束を解いたけれでも、結構な人数がいるわね。よくこの部屋に全員押し込んでいたわね。とんでもないわ。

 でも、これだけ衰弱している人達を私たちだけで連れて行くのは大変ね。どうしましょう。

 そう考えていたら、いつの間にか前に立っていたロザリーが鍵を渡してきた。


 「さっきの間抜けから拝借しました。これを使えば下の柵の鍵は開けられるでしょう」

 「分かったわ。でも、ロザリーが開ければいいんじゃないのかしら?」

 「私は、この人たちの無事を確認できればそれでいいのです。あとは、ルイス様の元へ戻らなければなりませんので」

 「そうなんだ」

 そこで、一つ疑問ができてしまった。


 「ねぇ、何で前教皇を救おうとしたのかしら?」

 「言わなきゃだめですか?」

 一層警戒の篭った目で私の目を見つめてくる。

 「言いたくないならいいわ」

 「助かります」


 これは無理矢理聞いてもはぐらかされてしまうでしょうね。あの家の人間ってみんなこんな感じなんだもの。何か腹に一物ある人ばっかり。闇が深いわね………。

 あ、だから会長もあんな闇がどうのこうの言ってたのかしら。納得したわ。


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