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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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35 雇用主と同僚は選べない


           *      


 教会の倉庫にて二人の従者がテキパキと資料を精査していた。

 粗方調べ終わったのか、プロフィアが、クオンと呼ばれる相方の女性に進捗状況の確認をする。


 「クオン、そっちはどうですか?」

 「よくもまぁこんなに証拠を残していたなと、呆れるしかないわ。プロフィアの方はどうなの?」

 「えぇ、こっちもです。多分ですが、教皇や幹部をこれで強請ろうと考えていたのではないかな、と。ものすごくマメですね。事細かに書かれています。これを見られるとは考えなかったんですかね?」

 「そこまで頭回ってないんじゃない? じゃなかったらあんなに資金集めに走らないでしょ。もっとうまくやれよって思うわ。マジでバカ」

 「同感です」


 プロフィアが軽く頷くと、クオンは持っていた資料を乱暴に投げ出した。

 「てかさー、もうよくない? こんだけあったら表で捕まえんのに十分じゃん。端から端まで探したって、同じようなのしかないじゃん」

 「私たちが本当に探しているのは、昔の資料ですよ」

 「昔のって?」

 「上からの指示だと十二、いえ十三年前かと」

 「上ってアレ」

 「そうです。アレです」

 プロフィアも手を止め、クオンの目をみつめる。


 「ないって。ないない。もうとっくに処分されたか、別のやつに回収されてるって。つーか、こんなとこにないでしょ」

 「まぁ、そうでしょうね。でも、まだ半分ありますから」

 「あんたそんな真面目ちゃんだったっけ?」

 「そうですよ。何か」

 「いや、プロフィアがそれでいいってんなら、あーしは別にいいけどさ」


 資料の乗った机の上に腰掛け、手をひらひらさせるクオン。

 「はぁーあ。それにしても、こんな遠いとこまで駆り出されるなんてたまったもんじゃないわ」

 机の上で足をぷらんぷらんと動かしている。立て付けの悪い机がキシキシ音を立てる。乱雑に乗っていた資料が落ちて散乱する。

 「ちょ、クオン…」

 「いないから大丈夫よ。心配性ね。別に無理に従う必要なんてないわけだし」

 そういう意味で言ったのではないとプロフィアは思ったが、無頓着なクオンに言っても無駄だと諦め、口には出さなかった。

 「……………」


 「あーあ。あーしもテレンス様付きなら領地で楽できたのになぁ。テレンス様可愛いし。ギガが羨ましいわ。あーしなんて無骨で無表情な何の面白みもない童貞よ? あ、でもプロフィアもクリスって男の娘と会ってんでしょ。ずるいわ」

 「いや、私は……」

 不満をこれでもかと口にするクオンに言い淀むプロフィア。


 「あそこまで、毎回走っていくのは頭おかしいと思うけど、前と違って最近楽しそうじゃない? 何かあるんでしょ。教えなさいよ」

 ずずい、とプロフィアの方に迫るクオン。机の上の資料がくしゃくしゃになるがクオンは構う気がない。


 「いえ、何もないです。ホントですよ」

 「プロフィアがそこまで否定するって事は何かあるわね。今度あーしも着いてくわ。別にいいでしょ?」

 「クライブ様はいいんですか?」

 「大丈夫よ。アレはアレで一人で出来るし、他に二人頭の固い男が二人ついてるから、居ても居なくても大丈夫よ」

 「君に抜けられると困るんだが」

 そんな時、倉庫にクライブが呆れた顔で入ってくる。


 「ゲッ…。もしかして、プロフィア気づいてた? 気づいてたんなら言いなさいよ。で、クライブ様はいつからです?」

 プロフィアは静かに頷き、クライブはクオンの言葉にのって話し出す。

 「テレンス可愛いの辺りだな」

 「ちょっ! ウチらの会話盗み聞きするとかマジありえないんだけど。プライバシーの侵害よ。断固抗議するわ」

 「プライバシーも何も、潜入先で無駄話に花を咲かせている方が異常だろう」

 正論に何も言えず苦い顔をするクオンと、うんうんと頷くプロフィア。


 「まぁ、テレンスが可愛いというのは全面的に同意だが……」

 「ですよねー。ここまでブラコン極めると気持ち悪いを通り越して怖いよね」

 「ははは、こいつめ。減給」

 「なぁっ!」

 「弟を可愛がるのは当然だろう? 家族なんだから」

 「じゃあ、エリオット様も可愛がったらどうですか?」

 「前向きに検討する」

 「それ、ウチらの間ではやらないってのと同じ意味ですよ」

 「じゃあ、俺の分もクオンが構ってやるといい」

 「あー………、それは………、プロフィアに譲るわ。最近二人で楽しい事してるらしいし」

 突然振られたプロフィアは動揺してしまう。


 「ふむ。確かに最近のプロフィアは変わったな。前はとてもつまらなそうだったのにな」

 「でしょでしょ。ほら、ゲロッちゃいなさいよ」

 「ゲロ……。何もないです。それに今は潜入中です」

 「真面目ちゃんめ」

 「真面目だな」

 二人して、心底ツマラナイといった表情で溜息を大げさに吐いた。


 「これが終わったら尋問が必要だと思うのですが、雇用主としてはどうお考えで?」

 「そうだな。今後一緒に仕事をしていく上で信頼がないと困るからな。一度話し合いの席を設けよう」


 こういう時だけ一致団結してくだらない事をする雇用主と同僚。

 今の仕事を全て投げ出して、一回長期休暇を取ろうかと真剣に考慮すべきだとプロフィアは思ったのだった。

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