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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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33 潜入開始


           *      


 さっきまでのお兄様はなんだったのかというくらい、テキパキと指示を出していた。ホント別人すぎない?

 「いつもこうだといいんですけどねぇ……」

 私の横で黒髪のメガネさんが溜息混じりに呟く。


 「ふふ…。妹さんにかっこいいところを見せようと張り切っているのかもしれませんね」

 こっちを見ながら妖艶に微笑む。とても艶っぽい。本当に学生さんなんだろうか?

 そんなちゃんとやればできる子が、粗方指示を出し終えると、私たちの元へ近づいてきた。また抱き上げられるんだろうか?


 「じゃあ、僕とサマンサとクリスは敵の本丸に向かうよ」

 「え? 私たちだけですか?」

 「大丈夫だよ、クリス。他にもちゃんと連れて行くから」

 そうだよね。三人だけで行くのかと勘違いしちゃったよ。


 「もう、殆ど準備は終わっているから、闇夜に乗じて悪者を連れてくるだけだから。お兄ちゃんのかっこいいところ見せちゃうぞ」

 小さくガッツポーズをしている。やっぱりちょっとあざとく見える。

 準備が終わっているなら、見せ場はないんじゃないだろうか。とりあえず、愛想笑いしておきましょうか。

 「わー。楽しみですぅ」

 「そうでしょ、そうでしょ」

 お姉様がありえない顔でこっちを見ている。毛でも吐き出しそうな感じだ。

 「面倒くさい事はさっさと終わらせましょうか」

 その言葉を最後に、全員がスッと仕事モードの顔になる。

 顔には一切の笑みや緩みはなく、完全に無表情になっていた。


           *      


 「アンとロブのチームは東から上へ。キャロルとクライブのチームはは裏手から侵入。僕たちは西側から入るよ」

 「「「「「了解」」」」」


 大聖堂の敷地はすでに灯りはなく真っ暗だ。

 広場を警備していた聖騎士は既に無力化されている。まぁ、もともと倒れそうなくらいヨロヨロしていたので、一分掛からずに気絶させられている。

 大聖堂で灯りがついているのは上のほうだけだった。


 お兄様の指示でさっと風のように皆消えていった。

 驚いたことに、エリーが一切ふざけずに黙っていたことだ。そんなエリーは同じ紫髪のクライブさんと一緒に走っていった。

 お姉様曰く兄弟らしい。なるほど。確かに同じ髪の色をしていたなと思う。


 そんなクライブさんと一緒に裏手へ回った気の強い人がキャロルさん。

 黒髪の大人な女性がアンさん。寡黙な黄緑の髪をした人はロブさんというらしい。見た目は華奢な女の子っぽいけど、男の人だったんだな。お兄様とはまた違った感じだ。なんていうか、天然物みたいな?


 お兄様とお姉様について、大聖堂の西側に到着する。後ろからはロザリーと、数名の人たちが付いてきていた。

 しかし、立派な建物だと思う。一階部分は大きな窓があるが、開きそうにない。どうやって侵入するんだろうか?


 「ここから、屋根まで登って、隣の塔に移るよ。そこの窓から入って教皇のところまで行くよ」

 「どうやって登るんですか?」

 「僕がクリスを抱っこしてもいいんだけどね。サマンサ、例のものは?」

 「ちゃんと渡したわ」

 「じゃあ、大丈夫だね」

 「僕たちは何もなくても大丈夫だけど、クリスは念のため、かぎ爪ロープで引っ掛けて登ろうか?」

 んー、結構凸凹してるからなくてもいけそうなんだよなぁ。


 「使わなくてもいけそうですよ?」

 「そう? じゃあ時間ももったいないし行くよ」

 言い終わると同時に、シュッシュッとこ気味いい音で上へ飛んでいく。大聖堂の柱に軽く足を当てて飛んでいる。あっという間に屋根まで登ってしまった。


 家ではたまにやっているけど、ちゃんとできるだろうか?

 「下で見てますので、落ちそうになったら抱えますよ」

 ロザリーが薄く微笑む。やだ、すっごい頼りになるわ。

 「そう。じゃあ、危なくなったらお願いね」

 「えぇ、最初からつまづいてはこの後上手くいきませんからね」

 「? そうね」

 何かニュアンスが違った気がした。


 とりあえず、助走をつけて飛ぶ。一階の半分くらいまで飛べたので、柱を利用し屋根まで四回で難なく飛べた。

 「流石僕のクリスだ」

 「まぁ何だかんだ教えていたものね。出来ないと困るし」


 私が着地してすぐ後に残りの人も屋根まで到着した。ただ、私と違っていたのは、着地した時に一切音がしなかったことだ。これは改善の余地があるわね。

 屋根伝いに塔まで素早く移動し、窓を開け中を確認する。

 螺旋階段になっているのか誰もいない。

 ここは居住区でも高位のものしか居ないのだろう。そもそも他の人はこの時間まで起きてる体力とか無いのかもしれない。


 「ロザリー達はここから一つ下を捜索。僕達は一つ上に行くよ」

 「あの、一つ気になることがあるので、私は別の場所を調べてもいいですか?」

 「珍しいね。ロザリーがそんな事言うなんて。何か気になる事があるんだね」

 「はい」

 こくりと頷くロザリー。

 「じゃあ、他のみんなは予定通り下を」

 皆、軽く頷き移動を開始する。 

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