表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/543

19 徒歩で歩く距離じゃない


 これから事後処理等含めやることがあるからと、パジェロ将軍とはここで別れ、宿に向かうことにした。()()()

 長時間座らされていたので、歩けると思うでしょう? でも、延々と待たされたので、精神的にもう辛いわ。


 空はもう真っ暗。気分的にも真っ暗だわ。

 御者のおっちゃんはこれから一人であの馬車で帰るのか。大変だなぁ。

 荷物検査で散々荒らされて、いい加減な詰め方された荷物が重い。されたことないけど、職務質問された後ってこんな感じなのかな?

 漢気のあるエリーがお姉様とソフィアの荷物も抱えているけど、抱え辛いのか、私のは持ってくれない。ロザリーも自分の荷物で精一杯のようだ。しかし、私の荷物より多くない?



 何とか、今日泊まる予定という宿にやってきた。

 お姉様を先頭にここまでやってきたが、本当に宿の場所を知っているのか半信半疑だった。まぁ、着いたけど、本当にここであってる? なんかちょっとどころかかなり高そうなんだけど、予約なしで泊まれるのここ?


 「……何とか…ついたわね。……ここが、今日…泊まる…ホテルよ………」

 流石のお姉様も言葉が途切れ途切れだ。

 「ねぇ、お姉様? 高そうなんですが、…ホントにここであってます?」

 「……あってるわよ。……私たち…みたいのが…泊まるとこなんて……、そんなに無いわよ……」

 どうやら合っているらしい。王都の真ん中でこんなに庭まで広いホテル。建物こそ低いけど、敷地面積どのくらいなんだろう……。庭とかライトアップされれるけど、夜だからどこまであるのか分からない。


 そんなホテルにみんな圧倒されているのか、疲れているのか分からないが、みんな黙っている。

 実際ここに来るまで、誰も一言も喋らなかった。疲れがピークに達すると無言になるよね。


 足が重い。とにかく重い。目的地も分からず延々と歩き続けた。朦朧とした意識の中、三十分から一時間くらいかな。こんな時間だからか、中心街へ向かう馬車は終わっていた。

 街中を歩いている時、王都の人たちの視線がずっと気になっていた。

 貴族っぽい人が荷物を抱えて歩いてるなんてそりゃあ目立つでしょうよ。突っかかってくる人は無かったけど、みんな哀れみの表情で道を開けてくれた。なんか恥ずかしかったわ。

 募金箱を持ったシスターみたいな子供達もいっぱい居たけど、流石に寄ってこなかったわね。そんなにみすぼらしかったのかしら…。


 通気性の悪い格好で、荷物を持ちながら歩き続けたことで、汗で顔も髪もベタベタ。前髪は汗で張り付くし、首筋にも髪の毛が張り付く。変に動かすと髪の毛が引っ張られるので痛い。背中や脇はぐっしょり。足裏は靴づれで痛いし、ふくらはぎはパンパン。頭が重いし、首も痛い。ドレスは汗で色が濃くなっているし、汗を含んでいるからか重い。布が足に張り付いて動きづらい。

 重い荷物のせいで腕が痺れて感覚もない。喉もカラカラだけど、水の一滴も飲めそうにないくらい疲れている。


 ホテルの入り口までの歩幅がすごく狭くなっている。もうこれ以上足が上がりそうにない。できることなら、ここにこのまま寝そべってしまいたい。

 高級ホテルらしいけど、門の前に誰か立っていてもいいんじゃないの? 何でいないの? おかしくない?

 門から入り口まで何キロくらいあるんだろうか。そもそも徒歩で歩く場所じゃないのかもしれない。


 やっとの事で、入り口まで辿り着くと、全員その場に座り込んでしまった。あの体力オバケのエリーでさえ、大きく足を突き出して座っている。まぁ、あれだけ暴れたら疲れるか。でも、記憶違いでないなら、ずっと走り続けられるって言ってたんだけどなぁ…。


 お姉様が這いずりながら入り口の扉をノックした。まだこんな時間なら扉を開けっ放しにしていてもいいんじゃないだろうか。

 しかし、誰も出てこない。再度お姉様がドアに凭れかかるように立ち、思いっきりドアを叩いた。もう限界だったのか、そのままズルズルとうつ伏せで倒れる。

 今この瞬間だけ見たら貴族だって言われても誰も信じないだろう。難民って言われた方が信じるだろう。そのくらいみんな疲れ切っていた。


 暫くすると、中から初老の男性が恐る恐るといった程で扉を開けるが、この惨状を見て直ぐに閉めてしまった。

 「ちょっ!」

 すると、再び扉が開けられ中から大勢の従業員さんが出てきた。

 よかった〜。このまま入店拒否になるのかと思ったよ。


 「サマンサ様、いったいどうなされたのです?」

 あれ、お姉様と知り合い? マジかー。お姉様疑っちゃったじゃん。今回はごめんねー。

 「ちょっと、トラブルに…巻き込まれてね…。それより、部屋を…用意してもらえるかしら…」

 「かしこまりました。直ぐにご用意いたします」

 私達今、めちゃくちゃ汚いんだけど、嫌な顔一つせずに部屋まで案内してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ