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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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16 二人ともやりすぎよ


 「そうだわ。パジェロ将軍。パジェロ・クロムウェル卿なら、王都にいるでしょ? ちょっと呼んでもらえないかしら? クリスといえば分かるはずよ」

 「将軍だぁ? 寝言言ってんじゃねーよ!」

 失礼野郎がどこかで聞いたことのあるセリフを口にするが、仁王立ちさんが、慌てて立ち上がり、扉の方に向かう。


 「分かった。将軍だな? ちょっと呼んでくる!」

 「お、おい、待て! 勝手なことするな!」

 失礼野郎は仁王立ちさんを無理矢理に引き止める。掴んだり離したり忙しない。

 仁王立ちさんは、一刻一秒を争うかの如く失礼野郎に焦慮していた。


 そんな時、私から見て右側の方から鈍く地響きするような、ドスンドスンという音が聞こえてくる。その音は次第に大きなっていく。

 あんなに厚く大きい煉瓦だか石を隙間なく積んでいるのに、こんなにくっきりと聞こえるということは、向こう側では相当暴れているんだろう。

 そして、その音の主はエリーなんだと思う。微かに、『あらぁ』とか『いやん』とか『もっとぉ』みたいな行動と一致してない声が聞こえるからだ。


 さらに、通路の方から応援と思われる衛兵がバタバタと走って駆けつけている。

 「おい、やべぇぞ! 止まんねぇぞ。もっと応援よこせ!」

 「何なんだこいつは! 見た目だけじゃなくパワーもバケモンじゃねぇか!」

 「仲間がスターゲイジーパイみたいになってやがる……。なんて(むご)いことを……」

 「おい、こいつホンマに人間か? あぁっ? やめ…、ああああああ」

 「もっと、数で抑え込め! 押しつけろ! あ、ああああああっ!」

 等々、散々な言われようだ。まぁ、ブルドーザーとかロードローラーを生身で止めようとするものよね。


 抑え込むのが功を奏したのか、「イケるぞ! イケるぞイケる!」なんて声がしてきた。室内を人でギュウギュウにしたんだろう。

 しかし、エリーにそれは通用しなかったようで、更なる被害を生み出し、大きくさせたようだ。


 右側の石がボコッとこちら側に押し出される。一つ二つと次々と石が押し出されている。また、押し出されていない周りの幾つかの石には幾つものヒビが入っている。ヒビは次第に石全体にまで走っていく。そして所々ヒビは亀裂となり小石がポロポロと地面に落ちていく。

 二人の男たちも、その様子を見て青ざめている。


 通路の方では、また衛兵が吹き飛ばされたのか、肉を叩きつけるような音が幾つも響き渡る。合間合間に聞こえる衛兵のくぐもった呻き声が痛々しい。

 「ねぇ、早く将軍を呼んだ方がいいんじゃないかしら? 被害がもっと大きくなるわよ」

 ニッコリと微笑みながら言ってあげると、仁王立ちさんの方がこくりと頷き返す。


 「そ、そうだな」

 「おい、何従ってんだよ?」

 「うるせぇ! どっちにしろ呼んだ方がいいだろ!」

 「お、おう…」

 流石に壁が壊れたのと、同僚の気迫に押されたのか失礼野郎が遂に折れる。

 たじろぎながらも竦む足を何とか奮い立たせて歩き出そうとするが、今度は左側の方から、叫ぶような声が聞こえた。


 「今度はこっちかよ。一体何なんだよ」

 失礼野郎が吐き捨てるように叫ぶ。

 左側の方はきっとお姉様ね。そちら側の方にも衛兵が駆けつけている。なんか○サビッチでこういう似た感じの見た事あるな。

 ただ、お姉様に関しては、エリーと違って破壊するというより、純粋に殴り合いをしているだけな気もする。一体お姉様の何の逆鱗に触れたんだろう。カツ丼を出してもらえなかったとかかな?

 「やべぇ、やべぇよ。出れないんだけど」

 もっと早くに動くべきだったよね。早くしないと城壁に大きな穴が空くかもしれないわよ?


 「大丈夫。大丈夫。俺は行ける。行けるぞ。おい、俺が戻ってこなかったらお前頼むな?」

 そんな微妙に死亡フラグに引っかかりそうなセリフ吐かない方がいいんじゃないかな?

 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」と叫びながら仁王立ちさんは走って行ったのだが、両サイドから聞こえる破砕音と打撃音が勢いを増していく。

 天井からは埃のようなものが降り注いでくる。


 あの失礼な発言ばっかりしていた男は「うわあぁぁぁっ」と狼狽えながら、頭を抱えしゃがみ込んでいる。

 さっきまでの虚勢はどこにいったのだろう。

 「どうしてこうなった…」

 どうしてですかねー。他の部屋でもちゃんと話を聞かなかったからじゃないですかねー?

 しかし、頭がおかしくなったのか、それとも元からなのか、男は急に笑い出し、気持ちの悪いことを言い出す。


 「男と女。狭い密室。何も起きない訳がなく……」

 何言ってんだこいつ?

 失礼野郎はニタニタと下卑た笑みを浮かべ、スカートに手をつけようとする。

 またこの展開かよ。ワンパターンは飽きられるわよ?

 でも、最初からずっと失礼な発言にイライラしていたから、ちょっと痛い目見てもらおうかしら。


 手を出そうとした瞬間、紐で縛られていたはずの両手を男の目の前に持ってくる。

 「は?」

 間抜けな顔を晒している間に、顎に向けて蹴りを入れてやる。

 思いっきりノックバックして、グリンと白目をむいて倒れ伏す。

 「ばたんきゅ〜……」

 初めて聞いたわ、そんなセリフ。今時そんな事言う奴いないわよ? でも、逆に新鮮なのかしら?


 引きちぎったロープを男の頭に乗せる。

 「このくらいのロープ如き、簡単に引きちぎれるのよ。次は鋼鉄のワイヤーでも持ってくるのね?」

 尻を突き出した形で気絶する男。

 このささくれだった椅子は座り心地が悪いので、誰か来るまでこいつに乗って休んでいようかしらね。

 相も変わらず、両サイドでは鈍い音と悲鳴が響き渡っていた。

 「二人ともやりすぎよ」


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