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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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14 これが王都の洗礼?


           *      


 あれからどれくらい経っただろうか……。

 前方にうっすらと横一文字に細長いものが見える。

 だんだんと近づいてくと、それが城壁だというのが分かった。左右の端が遥か彼方まで続いており、それが王都ディアマンテの大きさを物語っていた。


 城壁の間近まで到着すると、検問所があるらしく、大勢の人が列を成していた。

 一応、うちも貴族の端くれだし、家紋の入ったエンブレムもあるし、なんなら馬車の横にも付いているので、そのまま時間を待たずに入れるだろう。


 そんなことを思っていた時期がついさっきまでありました。

 ボロボロの馬車で検問所の近くまで行くと、検問所から大勢の衛兵がやってきて止められてしまった。

 まぁ、盗賊にあったのかってくらいボロボロだしね。よくここまで乗ってこれたわ。


 しかし、どうやらかなり厳戒態勢のようだ。馬車の周りを衛兵にグルッと囲まれてしまった。殆どが女子供なのに、全員が槍を向けるのはどうかと思う。

 下手に逆らって時間がかかっても嫌なので、手を上げて降伏の意を示すが、思いっきり乱暴に地面に組み伏せられてしまった。


 「ーーーーっつ!」

 「いたたたたた…。ちょっと、乱暴すぎない?」

 「もっと、もぉっと強く縛ってもいいのよぉ…。もっと、下。そう…。そうよ。そこそこ……。アッーーーーーーーーーー!!! いいわぁ! いいわよぉ! いっ―――――……………」

 ここはそういうプレイをする場所じゃないんだよなぁ。


 私の前にいる衛兵も、エリーの方を見て、再度私を見る。私はあんな縛り方は求めていないので、普通で結構です。

 全員がロープで上半身を腕ごとグルグル巻きにされ、詰所まで歩かされる。

 何て日だ! 今日は厄日だわ。

 一体この後どうなるんだろう。薄い本みたいな展開にならなければ何でもいいや。



 詰め所にて―――――

 大きめのレンガだか石を積んだ堅牢な息苦しい部屋。

 外側の窓は小さく、鉄格子が嵌められている。手首も出せそうにないくらいギッチギチにはまっている。

 扉は、錆びた鉄のドアだ。頑張れば蹴破れそうだが、扉の前には屈強な男が二人。外の通路に出ても見張りが大勢いることだろう。


 グルグルのロープは外されたが、後ろ手にロープは縛られたまま椅子に座らされている。簡素でささくれ立った木製の椅子だ。ドレスの生地に引っかからないかしら?

 私の前には同じような木製のテーブルがあり、対面に男が一人座っている。もう一人は扉の前で厳しい顔をしながら仁王立ちしている。

 少女一人になんて物々しい取り調べなんだろう。


 どう考えても、犯罪者相手の取り調べの仕方だと思うんだけど、これがこの世界では普通なのかな? その辺がちょっと分からないから押し黙ることにする。

 「驚いたな。普通は、こんなところに詰め込まれたら女子供は勿論、気の弱い奴だって泣き出してしまうのに、お前さん随分と度胸があるんだな」

 そんなこと言われても、中身四十手前のただの女装趣味のおっさんですよ? 買いかぶり過ぎでは?


 目の前の衛兵はテーブルの上に置かれたエンブレムや、私の持っていた懐中時計やハンカチを確認している。それら全てにオパールレイン家の紋章が入っている。

 「お前さん、こいつをどこで手に入れた? いや、聞き方を変えよう。奪った相手はどうした?」

 物凄く鋭い、人を射殺せそうな目で私を睨めつける。

 どうやら、彼の中で私は貴族から物を奪い、変装し王都に不法に侵入する賊として扱われているようだ。飛躍し過ぎでは?


 「はぁ…」

 呆れたような溜息を一つ吐く。

 その行為に、眦をピクッと動かす。どうやらお気に召さなかったようだ。

 「あのね、それは全部私のものよ?」

 「まぁ、奪ったんならそうだろうな…」

 「いや、そうじゃなくて、最初から私が持っていたものよ? 大体そんなもの奪ってどうするのよ? 私がそんなことするように見える?」

 「そんな事、俺に言われても分からんよ……」

 衛兵は背もたれに背中を深く押し付け、顎に手をやり考える。別にそこまで考えることでもないでしょうに…。


 「まぁ、お前さんはそう…、見える。だがしかし、他の奴らはそうは見えない。特にあのモリモリマッチョマンのフリフリ野郎。あれは別格だ。あれ一人で貴族の馬車なんて襲うのは容易いだろうな…。しかし、他に服はなかったのか……」

 あー……。この人ダメだわ。聞く耳持ってくれないわ。そして恐ろしいくらい節穴だわ。どうしましょう。どうやってこの場を切り抜けましょう。

 「他にも、男装した女に、女装したメイド。他の子供二人はまぁ、いいとして…。あんなんなるまで壊れた馬車でよく、ノコノコここまで来たよな。あれで入れると思ったか? ん?」

 馬車に関しては反論の余地はありません。私もあれは無いと思ってる側だし。


 しかし、こうして聞いてみると、怪しい集団に見えなくもない…か。

 「そもそも、このエンブレムに刻まれてる家紋の貴族は王都になんて滅多に来ないんだよ。仮に偽造するにしても別の家にするんだったな」

 こんどは偽造ですか。もう、小説家にでもなればいいのに。


 「ねぇ、もし、仮にだけど、本当に私が貴族だったらあなたどうするの?」

 「ふっ…。ありえないね。まぁ、仮にそうだとしたら、この城壁に上から飛んでジャンピング土下座してやるよ」

 この世界は普通に土下座が最上級の謝罪方法なのね。というか、飛び降りたら死んじゃうじゃない。ここの城壁かなり高さあるわよ?


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