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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第3章

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13 やっぱりこうなったよ


 「ぷ、ぷぷぷ……。あははははっ! やったわ。勝ったわ。久しぶりに勝ったわ」

 本当に嬉しそうに舞い上がっている。

 ソフィアはすっごく悔しそうだ。ここまで一回も勝てていないのだから。


 「さぁ、私の勝ちよ!」

 そして、意気揚々と残った一枚を場に出した瞬間―――――


 バキャッ―――――、ボスッ―――――、ギギギギギ………ギー―――――

 バキバキバキッ………、ドスンッ―――――


 天井から何かが突き破って落ちてきたらしい。モクモクと軽く埃が舞う。

 まぁ、天井にいたのはエリーなので、エリーのスクワットに耐えられず、天井を破壊して落ちてきたのだろう。


 丁度、お姉様が最後の一枚を出した瞬間だったが、落ちたのも同時だったため、何のカードを出したのかお姉様意外には誰も分からなかった。


 「これは、無効…ですかね?」

 「ちゃんと出したんだから、私の勝ちででしょっ!」

 「でも、何のカードを出したか分からないので…」

 「一番上に乗っているのが私のよ……って…」

 そのカードの山の上には瓦礫とエリーが乗っている。勿論、カードも散乱しているので、どれが一番上にあったのかなんて分からない。


 「もぉ、なんて弱いのかしらっ! これしきのことで突き破るなんてぇ」

 「エリー! あんたのせいで、私の勝ちが無くなっちゃったじゃない! どうしてくれんのよっ!」

 「えぇ? 何の話ぃ? そんなこと言われてもぉ、屋根が弱いのが悪いのよぉ。もっと固い…。そうねぇ、私の胸板くらいの鉄板じゃないとダメじゃないかしらぁ?」

 それはもう戦車じゃないだろうか?


 しかし、お姉様の怒りは収まらないようだ。エリーの肩や胸をポカポカと叩いている。

 「もう! もう! もう! どうしてくれんのよ! もうっ!」

 「ちょっ…、痛い、痛いわぁ…。………………………。おい、てめぇ、いい加減しろや! こらぁ!」

 「私がそんな恫喝に怯むと思ってんの! このっ! このっ!」

 「それもそうねぇ…。あん! あんっ!」

 一瞬(殺意)が出たけど、すぐに元に戻るエリー。


 二人のやりとりは殺伐というより、戯れ合う猫のようにしか見えないが、結構馬車を揺らしていたらしい。急に馬車が停車すると、御者席から底冷えのする声で怒りの声が飛んできた。

 「おい、てめぇら! いい加減にしねぇと、ここで降ろすぞ!」

 「ちょっとやりすぎたわね…」

 「あ~ら、ごめんなさいねぇ~」

 お姉様がバツが悪そうにそっぽを向くが、エリーは頬に手を当て腰をクネクネさせる。どうやら、気まずい時はいつもああするらしい。


 というか、馬車が揺れたのはもうボロボロだからじゃないだろうか? 天井は突き抜けているし、窓もひび割れてる。所々隙間は空いてるし、先ほどのやりとりで扉は遥か後方に落ちている。盗賊の襲撃にであったと言われた方が納得できるくらいボロボロだ。



 無駄に風通しがよくなった馬車は、速度が遅いため風はほどんど入ってこない。空から降り注ぐ陽光によって軽く汗ばむくらい暑い。馬車の中央に残った瓦礫と破片が振動で軽く舞うため、喉がちょっとイガイガする。

 何でこんな事になっているんだろうと自問自答する。

 いったい後どれくらいで王都に着くのだろうか。


 ソフィアは座席の上で体育座りをしている。視線は朧げで何かブツブツ言っているが聞き取れない。怖い。

 ロザリーに至っては暑いのか股を大っぴらに広げて脱力している。

 そんなロザリーのパンツを見たいのか、正面に座り直したお姉様はスカートの中を凝視しながら貧乏ゆすりをしている。

 プロフィアさんはスカートの中が見えてしまうのか、チラチラと見ては赤面している。かわいい。


 私はというと、首筋や背中が軽く汗ばんで暑いので、少しでも風を感じようと、無くなった扉から上半身を出している。それなりに風を感じれるので涼しくはあるが、いつまでこうしていればいいんだろうか?


 さて、こんなオンボロ馬車にした、件のエリーはというと、御者席で残ったスパイシーカレーパンを頬張っている。

 「あはっ! おいしい! ん~、かんらぁいっ! あぁっん! あん! からぁいわぁっ! でも、おいしいぃ~」

 流石に辛いのか、一口食べるごとに身悶えするが、体が大きいため、都度都度御者席が傾く。


 御者のおっちゃんが傾く度に飛ばされそうになり、慌てふためく。

 「お前、いい加減にしろよ?」

 相手が貴族でも強く出れるおっちゃんかっこいいな。


 でも、エリーのが少し上手(うわて)だったようだ。

 「あらぁん。いつでも受けて立つわよぉ。(タチ)でもぉ、(ネコ)でもぉ、どっち(リバ)でもいいわよん」

 「すまなかった。なかった事にしてくれ。せめて…、せめて動かないでくれ、頼む…」

 それ以降、おっちゃんはどんなに、御者台が揺れても文句は言わなかった。



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