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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第1章

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12 お父様に呼ばれたので

 翌日、昨日お父様に呼ばれたので、ノックをして書斎へ入った。

 「お父様入りますよー」

 すると、お父様が待ってたぞと言わんばかりに、両手を広げて立ち上がった。

 書斎横のソファーには何故かお姉様がいた。

 お姉様に気づくと、お父様が頬を掻きながら苦笑いする。

 「後で呼ぶつもりだったんだけどね」

 「後も今も変わりませんわよ」

 つーんとした態度で座っていたけれど、私の横にやってきて威風堂々とした態度で立っている。その謎の自信はどこから来るんだろう?

 それを気にした様子もなく椅子に座り直し、お父様が話し出す。

 「まぁ、話ってのはね、昨日クリスとやっていたおもちゃのことでね。他にもあるのかな?」

 「いえ、作ってあるのは二つだけです。本当はもっと作りたいものがいっぱいあるんですけど…」

 「なるほど。そうか……。因みにクリス、それを売って商売しようとは思わないのかい?」

 なるほど。昨日、お兄様も言っていたけれど、お父様も売れるって思ったんだね。でも、大きな問題が二つあるんだよね。

 「えぇ、私たちだけで遊ぶには勿体無いですものね。ただ、二つほど問題があります」

 「何かな?」

 両手を顎の前で組んで先を促してくる。

 「まず、一つ目として、私一人で作るのは限界がありますので、一緒に作ってくれる人がいると助かります」

 チラッと横を見ると、満面のドヤ顔で腕組みしている。

 「その件に関してはサマンサがちょっと前に言っていてね…」

 「安心しなさいクリス。メイド達にクリスがこういったのを作りたがってるって言ったら、皆んな協力するって言ってたわ。だから人手の問題は大丈夫よ」

 お姉様がひらひらと手を動かしてる中には昨日のトランプがあった。

 あったというより、出したり消したりしている。

 昨日の今日ですごいねお姉様。素直に感心する。…って違う違う。手先が器用なのも凄いけど、口先も器用なんだなって思った。

 「それはありがたいですお姉様。でも、どうしてそこまで…」

 みなまで言うなとばかりに片手で止められる。

 そして、ニカっと笑い。

 「私がクリスの作ったものを売ってみたいからよ」

 ……? 小首を傾げる。お父様が売りたいのではなくて?

 「私はね、前から商売をやってみたかったのよ。でもね、これっていうものが無くて半ば諦めてたのよね。そしたらクリスが面白そうなもの作るんだもの。ねぇ、私と組まない? クリスが作って私が売るの。交渉ごとは任せなさい。得意だから。この好機を逃すほか無いと思うの」

 おぉっ……。気圧されたけど、頼もしく見える。

 「あー…。えっと、お父様が売りたかったんじゃ…」

 「あー、ダメよ。お父様商才無いもの。あったら領地の経営ももっと上手よ」

 んー辛辣。いくらなんでも言い過ぎでは?

 「最初はそのつもりでクリスを呼んだんだよ………」

 「大丈夫よ。私ならこの国全土。いえ、海外にまで売ってみせるわ!」

 やだこのお姉様とても漢前。

 でも、そうね。お姉様となら上手くいきそうな気がするわ。

 すっと、お姉様に手を差し出す。

 ふふん。と、自信たっぷりの笑顔で握り返してきてくれた。

 「実はね、こうなると思っていたからお店の名前も考えてきたのよ。ラピスラズリ

・シスターズっていうの。どうかしら?」

 お姉様にしては素敵なネーミングセンス。もっと豪放磊落、自由奔放な脳筋な名前を言ってきそうなのに。私の店! みたいな直球な名前つけると思ったのよね。

 「何よクリス。私らしくないとでも言いたそうね」

 「そ、そそそそんなことないですよ。素敵です。お姉様にしてはこれ以上ないくらいセンスいいと思います!」

 「あら、そうー。私にしては、ね……」

 ギチギチと音が鳴るほど手を握られる。

 「っ! い、痛! いたたたたた! 痛いです! ちょ、おね、お姉様、やめっ!」

 どんだけ強く握るのよ。私の手変形してない? コブ○みたいになってない?

 ふーふーと手に息を掛けて冷ましていると、お姉様が腰に手を当て尋ねてくる。

 「ねぇ、あと一つの理由ってなんなのかしら?」

 「パパも気になるな」

 止めずに傍観していたダメパパも聞いてくる。

 手の痛みはまだ少し残っているけど、パタパタと振りながら応える。

 「今回作ったものや、これから作るものはみんな娯楽品ですよね」

 二人ともこくんと頷く。

 「貴族相手に売ってもいいんですが、世の中に広めるには大多数の人に安価で販売した方がいいですよね?」

 「確かに」と顎に手をやり考えるお父様とお姉様。

 「で、その大多数の人って平民じゃないですか」

 「そうね」と頷き返すお姉様。

 「でも、平民の人ってみんながみんな生活に余裕があるわけじゃないですよね。今日食べるのもやっとの人もいるわけです。特に遠方の土地なんかだと。そうですよね、お父様?」

 急に振られて一瞬固まるお父様。

 「そ、そうだね。うちの領は領都ならそこまでじゃないけれど、地方に行くほど生活レベルは下がっているね」

 ちょっと申し訳なさそうに話すお父様。

 「つまり、世の中に広めて、いっぱい買ってもらって儲けるには、平民の人達の生活レベル。つまり収入を上げて余分にお金を使える状況を作り出す必要がある訳です。衣・食・住に満足して、将来的に安定が約束されればプチ贅沢をしようと考えますよね。まぁ、全員が全員そうとは限りませんが」

 「そうね、どっかのバカ領主はちょっと景気が上向くと、税率を上げて景気を落ち込ませて税収下がったって騒いでるものね」

 へぇ、前世のどっかの国みたいな事やってる領主いるんだな。いや、そういう領主のが多いのかな?

 「まぁ、おもちゃ以外にも作って売りたいものいっぱいあるんですが、それをするには領の生活レベルを上げないといけないなって思うんです」

 お姉様が腕組みながらうんうん頷いている。今日のお姉様は物分りがいいぞぉ。

 「つまり……」

 「つまり、へたっぴ領地経営のお父様の代わりにクリスがやったらいいんじゃないかしら?」

 腰に手を当ててお父様に宣言するお姉様。

 それを言おうと思ったんだけど、そこまで酷い言い方しなくてもよくない?

 しばし瞑目し、思案に耽るお父様。

 「そこまでのビジョンがあるなら、クリスにやってもらってもいいかもしれないね。まぁ、私たち大人がフォローするから、あんまり気負わずにやってみなさい」

 「お父様のフォローがない方が上手くいくと思うわ」

 「ぐぅ……」

 本日のお父様のぐぅの音が出ましたね。

 「一応、聞きますけど、私こんなんでも子供ですよ。大丈夫ですか?」

 二人とも、何を今更みたいな目でみつめてくる。

 「大丈夫よ、クリス。今後の私たちの為にどーんとやりなさい!」

 「サマンサ、それ本来は私がいうやつだよ」

 こういうときのお姉様の後ろ盾はありがたいわね。

 では、好きにやらせてもらおうかしら。

 私の野望の為に出し惜しみはしないわ。ドヤ顔で顎を軽く上げる。

 「それでは、早速始めましょうか」

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