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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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70 ババアは禁句/エピローグ1


           *      


 一番倒しやすいと思われたのか一番多くの男達に囲まれたレイチェルとアンジェ。

 二人とも背中合わせに、拳を構えている。

 「なんか、こうしていると昔を思い出しますね」

 「そうやって昔語りすると、歳とったって思われない?」

 「そうやって何でもかんでも突っ込む方が年寄りくさいですよ?」

 「……あ、改めるわ……」

 たわいもない会話をしながら、男達からの攻撃を往なしていく。


 殴りかかる男の拳を軽く横に躱し、ちょんといった感じで鼻先に拳を当て、お腹に蹴りを入れて吹き飛ばすレイチェルと、殴りかかってきた男の拳を手刀で弾き、一瞬の隙を付いて顎に蹴りを入れ、軽く気を失ったあたりでお腹に蹴りを入れて吹き飛ばすアンジェ。

 襲いかかってきた男達を無力化し、遠くに山積みする流れ作業とかした状態に男達はプライドを傷つけられたのか、プライドを捨てたのかは分からないが、一斉に襲いかかる様になった。


 混戦状態の中でも二人は態度を崩さない。

 「ねぇ、エイジングリコピン、私たちって何か正統派の戦い方してない?」

 「もうその名前で言うのやめましょうよ。効率悪いですよ? ……まぁ、そうですね。派手さはないですが、確実に敵を減らしてますね」

 「もっと派手な方がいいんじゃないかしら?」

 「他の三人がエグい戦い方してるので、こっちの方がいいと思いますよ。寧ろ、この格好で戦ってることで悪いイメージつきそうです」

 「ええっ! それは困るわぁ…」

 そんなのほほんとした様子に男達は尚もピリつく。


 「さっきから調子こいてんじゃねえぞ!」

 「何で数で押せねえんだ!」

 そんな事を言う奴から切った張ったする二人。

 「ねぇ、何か私たちの方が多くない?」

 「そうですね。明らかにこっち側なら勝てると思ってそうですね。こっちで勝っても最終程に肉塊になるのがオチだと分からないんですかね?」

 「何をごちゃごちゃと!」

 「勢いが落ちねえぞ!」

 次々と襲いかかる男達に食傷気味の二人。


 「ねぇアンジェ、こうして二人で戦うのも凄く様になってると思わない?」

 「まぁ…、はい。そうですね」

 何となく嫌な予感がしたのか曖昧な感じで答えるアンジェ。しかし、その予想は当たっていた様だ。

 「あのね、この前王妃様と二人でイベントをやったんだけど、やっぱり定期的にやるのは難しいと思うのよ。だから、今度一緒に二人でやらない?」

 「嫌です」

 「何で即答!」

 「正直、五人でやっているのさえやりたくないんですけど」

 その告白に驚いてピタッと動きを止め、アンジェに向き合い両手で肩を揺するレイチェル。


 「ちょっと、今更困るんだけど!」

 「ちょ、いきなり何をしているんです?」

 アンジェも動きを止め、戸惑う。それを好機と見たか、男達が伸し掛るのかと思わせるくらいの感じで襲いかかる。

 「今だ! 行け行け!」

 「おらぁあああああああ!」

 「体力切れかババアァ!」

 「くたばれやババァ!」

 「これで終いだぁ、ババァ!」

 度重なるババア発言に、流石に我慢の限界だったのか、一斉に二人後ろを向いて、先ほどよりも重い攻撃をしていく。

 その証拠に、たった一発で気を失い倒れていく男達。鼻血を噴水の様に散らしながら倒れていくが、何人かは白目で痙攣し泡を吹いている。


 気がつけば、もう残りも少なくなっており、もう勝てないと思ったのか両手を挙げ投降の意を示していた。

 「ふぅ。何とか終わったわね。後は、縛って転がしておけばいいかしらね」

 「憲兵隊も呼ばなければいけませんね」

 「あいつら全然痩せないんだけどどういうことなのかしら?」

 「私に言われれても…」

 戦闘が終了すると、張り詰めていた空気が霧散したのか、それまで観戦していた人たちが一様に歓声を上げる。


 その様子に、アピールすることを忘れないレイチェル。

 「ありがとー。みんなありがとー。これからもキュアエイジングをよろしくねー」

 「「「「「「「わぁああああああああああああああ」」」」」」」

 観客達も分からずに、盛り上がる。

 「ほら、リーダーも何か言いなさいな」

 「み、みみみ、みんな次のイベントも来てねー」

 「「「「「「「わぁああああああああああああああ」」」」」」」

 真っ赤な顔で恥ずかしさを堪えるアンジェ。

 両方の腰に手を当て満足そうに頷くレイチェル。


 そんなレイチェルにアンジェがかき消そうな声で呟く。

 「い、引退したい……」

 「駄目よ。アンジェの人気だって結構あるんだからね」

 「…ぅううぅ…。そ、そうだ、メタモやアリスはどうですか?」

 「あの子達は背が低いから駄目よ。……そうね。クリスと合わせて新ユニットを結成してもいいかもね」

 「駄目か……」

 その場にうな垂れ座り込んでしまうアンジェと、これからのことに思い馳せ笑顔になるレイチェル。


 しかし、その思考も汽車の警笛で一時中断される。

 到着した汽車の先頭の方の車両からは、我先にと降りようとした乗客が、ホームの惨状に驚き、客車から出るのを逡巡していた。なぜ、先頭の方からしかお客が出てこないのか軽く不思議に思うレイチェルだったが、後方から四つ目の客車から出てきた人物を見て得心する。

 「あら、また何かに巻き込まれちゃったのね? うふふ…」

 そして、その人物に向けて満面の笑顔でピースサインをしたのだった。


     *     *     *


 何とか無事に駅に到着したのだが、車窓の外では何かとんでもないことになっていた。まず初めに自分が下りないといけない様な気がしたので、一番最初に降りることにした。そしたら丁度お母様と目が合ってしまった。


 「あら、クリス。お母さんやったわよ!」

 なんて、両手でピースサインを しながらニッコリと笑っている。

 後ろでは、あの泥棒二人組の協力者であったであろう仲間達が倒され、既に紐で縛られ転がされている。一部ボコボコになって動けない人を憲兵隊と思しき人達が四苦八苦しながら縛っていた。太りすぎて腕が届いていない様に見える。

 キュアエイジングの面々もアンジェさんとミルキーさん以外は元気だ。いや、ミルキーさんに関しては、何か大事なものを亡くした人の様な悲壮感が漂っている。


 しかし、お母様…。秘密にしているはずなのに、こんなあっさりと正体を明かしていいんだろうか? 私の後ろから降りてきたレオナルドが衝撃のあまり、また軽くフリーズしている。九十年代のパソコン並みにフリーズするね。

 しかし、今回は何とか気力で持ったのか回復が早かった。

 「え? え? クリスのお母様がキュアアントシアニンなんですか…。と、ということはもしかしてウチのお母様も……」

 知りたくなかった事実に気づき、それ以上は考えたくなかったのか、サーっと顔を青くして俯いてしまった。


 「ちょっと出られないんだけどぉ…」

 「あ、すいません」

 さっと横によけるレオナルド。

 泥棒の二人組を拘束して連れてくるエリーとプロフィアさん。残りの男達は憲兵隊に任せればいいだろう。多分1ヶ月は動けないかもしれないから。

 その後に降りたエペティスさんが、お母様に何かを報告していた。


 お姉様とソフィアはまだ外に出てこないけれど、乗り物酔いでもしたのかしら?

 ま、何とか無事に終わって良かったわ。そういえば、アマベルさんとレオナルドの護衛の人達、向こうにいるのよね。どうしようかしら……………。

 汽車の客車はボロボロ。血まみれの男たちの搬送と立て込んでいて、暫くは出発できない様だ。

 まぁ、その辺も憲兵隊の人達がうまくやってくれるでしょう。もう私のやることは無いでしょうから、駅前のカフェでゆっくりしようかしら……。

 それにしても、私最近トラブルに巻き込まれるの多い気がするんだけど、気のせいよね?

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