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女装趣味の私が王子様の婚約者なんて無理です  作者: 玉名 くじら
第2章

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68 時間は少し遡り


     *     *     *


 時間を遡ること一時間程前―――――

 「あ、あのレイチェル様、どうしてこんな格好をしないといけないのでしょか?」

 「なぜって、今日はアンバーレイク領でイベントがあるからよ」

 「あ、あのレイチェル様、どうしてアンバーレイク領で興行をする必要が…」

 「私たちの活動を広めるためよ」

 「あの、向こうで着替えればよくないですか?」

 「私たちの認知度を上げるためよ。それに私たちの素性がバレたらマズイでしょう?」

 軽くウインクを飛ばすレイチェル。

 「それはそうですが……」

 「それと、ここではちゃんと役名で言いなさい、エイジングリコピン?」

 「……はい。エイジングアントシアニン…」

 「もう、そんな暗くてどうするの? あなたがリーダーなのよ?」

 「赤いからってだけでリーダーはどうかと思います。正直、発起人のレイチ…」

 「エイジングアントシアニンよ」

 アンジェことエイジングリコピンの唇にそっと人差し指を当て訂正するエイジングアントシアニン。

 これ以上は言っても無駄だと諦め肩を落とすアンジェ。


 「それに、今日は遠征ということで、ファンの方もいるのよ。ちゃんと役に徹しないとダメよ? って、そんな顔しないの。見なさいなエイジングフラボノイドの役の徹しかたを」

 ロザリーことエイジングフラボノイドはイメージカラーが黄色ということで、カレーを食べている。よくこんな所で食べられるなと思うが、朝が早いのでお腹が空いているだけだろうと、アンジェは結論づける。その証拠に、メアリーことエイジングカテキンも同じくカレーを食べている。

 駅に設けられた軽食のお店がいくつかあるが、もっと手軽に食べられるものがある中でカレーを選ぶセンスがアンジェには理解できなかった。


 カレーを食べ終わったメアリーがミルキーの所持品が気になったのか声をかける。

 「ミル…、エイジングクロロフィル、その抱えているものは何ですか?」

 「あ、これですかー。これは、クリス様に作ってもらったルイスたん人形ですー。どうですかー、可愛くないですかー?」

 ミルキーの胸くらいの大きさの人形を抱えている。とてもお気に入りなのか軽く潰れるくらいの強さで抱いている。

 「確かにこれは可愛いですね。流石クリス様ですね」

 「ですねー。ルイス様の可愛さが滲み出てますよねー。こうして持っていればルイス様の可愛さも周知されていくのかなと思いますねー」

 「いつも思うのですが、ミル…、エイジングクロロフィルのルイス様への愛情は度を超えている気がするのですが?」

 「えー? そうですかー? 普通だと思いますけどねー」


 そんな感じで盛り上がっていると、後ろから歩いてきた柄の悪い男がミルキーさんの肩にぶつかる。

 「ッチ…。クソブスが! …んなとこで騒いでんじゃねーよ。ボケが!」

 「おう、どけどけ、邪魔だ! 道開けろや!」

 「ったく、変な格好でつったんてんなよな。あっちにはけてろや!」

 「んだぁ? よく見たらババアじゃねーか」

 「本当だ。こんな派手なかっこしやがって盛ってんじゃねーぞ?」

 「おい、カレーくっついたぞお前!」

 そんな男に続いて続々と柄の悪い男達が集まって、前の方に割り込んでいく。


 (あらー。あっちに着く前にイベントになりそうね)

 (えぇ。お陰で向こうで恥ずかしい思いをしなくて済みそうです)

 (アンジェ…、そんなこと思っていたの?)

 (唐突に本名呼びするのやめてもらってもいいですか?)

 (ごめん…)

 (いえ…。後は、向こうから嗾けてもらえばいいんですけどね…)

 (そうね。襲ってきたら、此処ぞとばかりに戦ってプロモーション出来るわね!」

 (マイナスイメージになりそうな気がするんですが、まぁはい。分かりました…)

 レイチェルの斜め上のポジティブ精神に諦めモードのアンジェ。


 そんなキュアエイジングやファン、そして一般のお客さんを押しのけホームの前方に陣取る男達。線路に向かって唾を吐いたり、煙草を吸ってたりしている。非常にマナーがなってないが、ここは堪えるべきと判断をするレイチェルとアンジェ。

 「あいつらが来たら奪えばいいんだよな」

 「こんな楽な仕事にこんな人数いるんすかね?」

 「金もらえりゃ気にしねーよ」

 「まさか、騙されてるとも気付かねーとは憐れだよなぁ?」

 何やらこの後の事を話し合っているようだ。


 「あ? まだ居たのか? 邪魔っけにこんなもん持ちやがって」

 男の一人が、まだ前方の方にいたミルキーの手に持っていたルイスたん人形を無理やりに叩き落とす。

 「へへっ。ババアが、んなもん持ち歩いてんじゃねーよ。ガキかお前? くっそ不細工な人形だな」

 ニタニタと厭らしい笑みを浮かべ、ルイスたん人形を足蹴にする。

 「お、どした? なんか文句でもあんのか?」

 それがミルキーの逆鱗に触れたようだ。


 スッと冷めた笑顔で男の前に立つと、男の顔にアイアンクローをかけ、持ち上げる。

 「いだっ…、いだだだだだだだだだだ……あああああああああああああああっ」

 男はミルキーの腕に両手で掴み離そうと試みるが、腕の力を弱めることすらできない。寧ろ、より握力が強くなり、男の顔からメキャメキャという骨の砕ける音がするだけだった。

 暫くすると、ぷらーんと力なく浮いているだけの男を悪漢の前に放り、サムズダウンする。


 「なっ、お前!」

 「よくも…。よくもっ…」

 ミルキーの目がうっすらと開き、男達を睨めつける。

 「お前達は私を怒らせた。クリス様が作ってくれたルイスたん人形に対するこの仕打ち、万死に値する。お前達も人形のように動かなくしてやろうか? あぁ?」

 普段温厚な人が怒るとめちゃくちゃ怖いを体現したような怒り方をするミルキー。


 目の前で倒れ血を流し、泡を吹き、目が少し飛び出ている仲間の姿を見て恐れ慄くどころか怒りで頭に血が上った男達。

 「よくもやりやがったな!」

 「てめぇ、このヤロウ!」

 「もういっぺん言ってみろ!」

 「女だからって手加減してもらえると思うなよ!」

 「ふざけんじゃねぇよ!」

 銘々に口汚く罵る男達。自分の拳を打ち合ったり、肩をボキボキ鳴らしたり、ガンをつけたりしている。


 「ふざけてなんかねぇよ、この野郎!」

 ロザリーとメアリーのいる方からも二人の男が吹き飛ばされてきた。どうやら、向こうでも喧嘩を吹っかけられたらしい。二人とも腕が明後日の方向に曲がっている。

 「なんか、ロザリーの男っぽい口調久しぶりに聞いたわね」

 「まぁ、男ですからね…」

 そんな風にしみじみと話していると、何人かの男がレイチェルとアンジェの方に吹き飛ばされてきた。


 そこまでダメージを負っていない男達は二人を見るなり悪態をつく。

 「んだよ。こっちはババアかよ」

 「ババアまでこんな格好してんのかよ。きっめえな」

 「あっちのババアと同じ格好ってこたぁ、仲間か…。ボコしても文句言うなよなぁ」

 「よくもババアって言ったわね。許さないわ」

 「あぁ? ババアに何ができっ―――――」

 レイチェルが顔面目掛けて思いっきり拳を打ち込む。

 顔面に思いっきりパンチを食らった男は、鯉のような顔で、そのまま口から泡を吹き出し倒れこむ。

 それを見てもう一人の男は、臆する事なくアンジェの方に向かって殴りかかる。


 「せめてお姉さんって言いなさい」

 アンジェも癇に障ったのか、鳩尾に一発入れ、前かがみになったところで、男の頭を抱え、鼻の辺りに膝蹴りを食らわせた。男は鼻血を吹き出しながら、何故か恍惚とした表情で倒れ伏した。


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