第90話 死霊狩り④
※ m( _ _ )m ご報告、分かりにくかったのでep77からここまでのサブタイトルをへんこういたしますた。
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「おいおい、流石に強がりがすぎるってもんだろ・・・」
男はヘルガ達から返ってきた回答に呆れたかのように返す。
「まぁそうか、そう思うのも当然だよね。あたしもちょっと感覚が麻痺してたかな」
「そ・・・そうだろ?普通に考えてこの人数に勝てるわけないだろう?」
ヘルガが男の言葉を受けて独り言を口にしただけなのだが、男は世間知らずの女共がやっと理解をしたのかと安心したような顔をする。
だがヘルガは驚いた顔で2回3回と首を傾げる。
その様子に男は訝し気な表情を作りつつ話を続ける。
「俺達は北の死者都市攻略の同盟死霊狩だ、んで俺はメンノってもんでギルド赤竜の爪の代表をしてる。姉ちゃんも腕っぷしに自信があるのかもしれねえが、俺たちは戦闘主体の冒険者なんだぜ。まぁそこで伸びてる奴は別として喧嘩しても良いことないのはわかるだろ?いまなら金で解決してやってもいいんだ、それで見逃して・・・」
「メンノさんさ、勘違いしているみたいだね」
「?」
「でもカオルを知らないとそんな風に考えるのが普通だよねぇ」
「な、なにいってんだ?」
「あたし達のギルドがあんたたちよりもず~っと強いと思うよ?」
ヘルガとしては深く考えずに自慢の旦那様である美里の名前を出しただけの話なのだが、この場にいた冒険者達にとってはヘルガ達がどこかの『ギルド』所属だと言うことが重大な問題であった。
現状を考えればヘルガ達がギルドやその他の団体に属しているとは予想はしていた。だが明確にギルド所属と名乗ればそれはもう同盟対ギルドとの戦いになる。彼の同盟は600人を超える同盟であるのを知らないのだろうとメンノはヘルガに憐憫の情を抱いてしまう。
メンノはそこそこの常識人なのだ。
同盟は結束が固い訳ではないが、相互扶助の約束を交わした仲間なのである。いざ戦いとなれば徒党を組んで戦うのだ、600人という規模に匹敵するギルド等そうそうあるはずはない。
「なんて名前のギルドだい?」
「ギルド死霊秘法さ。出来立てのギルドだよ」
ふふんとヘルガが無い胸を張り言い放ち、メンノは思わずハァと変な声を出してしまった。名前を聞いたこともない出来立てのギルドとなれば、その戦力は高が知れている。何故この女はそんな自信満々なのかと呆れていた。
今日は北部侵攻関連の輜重隊が帝国中から集まった商人たちを引き連れてこの村へとやって来ているのだ。もしかすると軍属と共にやってきた帝国貴族の線も頭をよぎり戦闘を避けようかとも考えての交渉であったが、ヘルガの口からは軍属でも貴族でもない、ただの新設ギルドという答えが帰って来たのだ。
メンノを含めた同盟の冒険者たちは同じ考えに至る。
舐められている・・・と。
男達はただの買い出し部隊であるが、危険な死者都市周辺のディーン大森林で日々命がけで戦う戦闘集団の一員でもある。彼らの小さな自尊心に火をつけてしまった。
「やれ!」
メンノではない、ジノが大声を張り上げると、その声に合わせ一人の弓師が短弓を構える、そして弓を持たない者は掴んだ石の投擲姿勢へ入った・・・その瞬間である。
グオンン!!!!
火山の噴火のようなナニカがその場にいた全員を襲った。現代人であれば音響弾と表現するかもしれないそのナニカに、その場にいたヘルガ達三人以外の人間は身体を硬直させ行動能力を奪われた。
ヘルガや骸骨死霊達も驚いていたのだが、大きい音に驚いた程度で、周囲との反応差は歴然で有る。なにせ冒険者たちの多くは地面に膝をつき体を硬直させたまま立てずにいるし、娼婦をはじめとしたその他の村人たちは一人を除いて失神したり失禁したりと大参事なのである。
「援軍の到着ですね」
オリガが冒険者の野営地の後ろの森に視線を向ける。
「あらららららららああああああああああい!」
「やふううううううううううううう!」
ダンジョン方面からの雄叫び、道沿いではなく森を突っ切りショートカットをしてきた2つの影、クロに騎乗したクロエと5号と6号を背に乗せたフェンが森の木々の間から飛び出した。
「クロだ!」
ヘルガが手をおおきく振ると、それに気づいたクロが冒険者達の間を軽快に掻い潜り、ヘルガ達の元までやってくる。
「ヘルガお姉ちゃんだいじょうぶ?!」
「わん!」
「わん!」
「全然余裕だよ」
可愛い援軍は満面の笑みである。ヘルガも笑顔で力こぶを作り答えるとクロエは周辺を見回し、クロの放った『咆哮』がすでに勝敗を決していたことに不満な顔を見せる。
クロエを背中から降ろすとクロがヘルガの足元へとすり寄り、無事な様子を喜ぶかのようにその大きな体をヘルガの足に擦りつけ、鼻を可愛く鳴らす。
「この人たちはどうしますか?殺しますか?」
クロエの放った言葉に、未だ動けない冒険者たちが背筋を凍らせる。
「ちょいちょいちょい」
流石のヘルガもクロエの恐ろしい提案には突っ込まずにいられなかった。なにせ30人の冒険者と、もしかすると娼婦を含めた一般人まで含んだ台詞なのだ。
「でもカオルお兄ちゃんはカンカンです!カオルお兄ちゃんのヘルガお姉ちゃんに悪さする奴は皆殺しです!っていうと思います」
「え?そっか、カオルが言うなら仕方ないか。えへ、えへへへ」
荒事を好まない美里がヘルガのために皆殺しというほど思ってくれているのかと思うとヘルガも嬉しさを隠せず、クロエの言葉の最後は完全に耳に入っていない。
「主様に関しては本当にアホの子になってしまいますね」とオリガが嘆息するが、何をどう解釈したのかヘルガは照れている。
「この女がヘルガ姉さんに絡んだのですか?」
5号が冷ややかな視線を向けた先には、怯えた様子で先ほどの娼婦一味のキトラが立っている。
「クロの咆哮に耐えたのですか・・・」
「むむむ」
オリガが驚きとともに呟くと、クロエがキトラを警戒する。もちろんキトラは命の危険を前に大きく首を振り無罪を訴える。
「クロエ、その人は悪い人じゃないよ。ごめんしなさい」
「ごめんなさい」
ヘルガに誤解をいさめられるとクロエも素直に謝罪するが、キトラはただ首を縦に振る以外できず怯えを隠せない。
「その辺は主様が到着してから話しましょう」
オリガが地面に置いていた荷物をひろい美里たちがやってくる方向に目を向けた時だった。
「その犬から離れて!そいつは魔物だ!」
村の中心方向から女性の叫ぶ声がこだまする。
「わふ?」
クロがえ?俺?といった表情で声の方向に体を向け、首をコテリと傾けた。
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