第9話 異世界で召喚術を使おう
009-1-007 (編集版)
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ヘルガは声を押し殺し咽び泣きながら、美里の体にその長く細く、そして筋肉質ながらも柔らかさを残した白い腕を回し強く抱きしめる。
もうヘルガたん可愛いしかない…自分の体に縋りつく大きな女の子を美里は心の底から愛おしく思えた。
涙の威力半端ない。そして腕力も半端ない・・・
密着するヘルガの首筋から溢れる雌の香りは異世界転移裏特典が絶賛発動中の美里の鼻孔を猛烈に刺激する。
ちょっと汗臭い・・・だけど不思議とそのヘルガの放つ雌の臭いは美里の美里を真なる美里へと覚醒させていく。
そう、今の美里の美里は10代の健康な男子並みにバッキンバキンのバッキバキに猛り狂っているのだ。
これはもう押し倒してもよいのでは?
この流れであれば間違いなくヘルガに抵抗される事はない、美里はそう確信していた。そう思えば美里がヘルガを抱しめる腕にも力が籠ろうと言うものだ。
いざ鎌倉へ!今まさに美里の美里が雄たけびを上げヘルガの股座へ攻め込もうとした刹那の事であった。
『本当に良いのか!?』
美里の心の中に一つの疑問が浮かび上がる。
彼女は、ヘルガと言う女性は娼婦である、娼婦であるが故に彼女との行為は有料なのである、娼婦、娼婦、娼婦・・・・。
しちゃった場合は後でお金を払わなければいけないのだろうか?事後請求なのだろうか?それは取引として成立してしまうのだろうか?いやいやいやいや、この世界の常識も知識もない自分に判断できない事ばかりのいま答えなど出るはずがない。
冒険者として仲間とこの街へやって来たのだが、彼女は最悪な形で仲間を失い、そして生活に困窮し、失意の中で娼婦へ身を落とした。
それは生きる為に・・・ヘルガにとっては『行為』は商品なのだ、愛の為でも快楽の為でもなく、ただただ『商品』なのだ。ここで押し倒すという事はヘルガのとってどんな意味があるのだろうか?
迂闊に手を出せば、所詮は体目当ての浅ましい男と思われてしまうのではないだろうか?
客観的に考えれば彼女は美里へ愛情を抱いたのでは無く、困窮からの脱出のための道具として、それなりの資産を持つ美里に藁をも掴む気持ちで大好き演技をしている可能性は捨てきれない。
むしろその可能性が高い。
そうなると今後の立ち回りをしっかりと考えなければならないのではないだろうか?
欲望を丸出しにした場合、ヘルガの失望を買い損切前提のキープ君認定され、将来的には更なる好条件の男が現れた瞬間にポイっと捨てられる可能性もある。
娼婦にならざろう得なかった彼女自身の心境を思えば、そんな判断をされないとも言いきれない。
俺が求めればその体を差し出す位は許容しているだろう、だって娼婦なのだ。
不特定多数の乱暴な男共に体を売るよりは乱暴ではなく金を持っていそうな美里専属の情婦になったほうが遥かにマシなのだから。
だが彼女にとって『行為』は『許容』の範囲であったとしても最善の選択にはなりえない。ならば美里はヘルガとの今後の関係を築く為に安全策をとる必要があるのではないだろうか?
ここは紳士的に振る舞う、それが最善手だ!
「いま.........しちゃう?」
ヘルガんが潤んだ瞳で美里に問いかける。
会心の一撃!!!!!!!!!!!
頬を赤く染め、上目遣いのヘルガたんは、美里の理性を消し飛ばすのには十分に過ぎた。
「我慢できないでしょ?」
ヘルガは背中に回していた手を優しく美里の美里に手を伸ばすと、ソレを愛おしそうにそっと撫でる。美里の心臓が大きく跳ねた。
紳士?なにそれ美味しいの?
我慢?何それ学校の授業でやったっけ?
そうだ!ヤれる時にヤらねば結局ヤれずに終わり死ぬまで後悔するのだ、いつ死ぬかわからないのが人生である、その事を文字通り前世で死んで学だ美里に最早躊躇する理由はない!
「ヘルガたん!!!!」
「きゃ♡」
美里はヘルガをベッドへと押し倒していた。
コンコンコンコン!
それは唐突にやってきた。
何者かが美里の部屋の扉をノックしたかと思うと、部屋主である美里の返事を待たずに突然戸が開く。
「あっ最中だった?てか爺ちゃんに茣蓙と筵持ってない様だったら、ボッタく...安く売りつけてこいって言われて来たんだけどいくつ買う?」
空気を読まない訪問者の正体は大家の孫娘『アルマ』である。
未遂とは言え最中だったと理解しつつ、理解しつつ!理解しつつ!理解しつつ!理解しているのにも関わらず!何事もなかったかの様に謝罪もなくしれっと押し売りを始めよった!しかもボッタクリ価格で買う事を前提とか何様であろうか?!
このガキんちょが大家の孫でなければ窓から放り出したいところだ。
「いまボッタくるって言った?絶対に言ったよね?」
「いやいや気のせいだよ。ベッド固いから親切心で売りに来ただけだよ?」
そういいつつアルマはベッドを一瞥すると、敷物は持ってたのかぁと残念そうに嘆息する。
「荷物運び終わったから戻るね」
ヘルガは泣きはらした顔をアルマに見られないように隠しつつ彼女の横をすり抜け、自分の部屋へと退散してゆく。
美里は猛り狂う小振りな鬼棍棒を突き入れる先を見失い、言いようのない喪失感に飲み込まれる。
「なんか変わった敷物だね...うっわ!凄いさらさらだ。」
美里のそんな様子など気にもしないアルマが寝袋を興味をつと、美里の許可もなく勝手に部屋の中へ入りこむと容赦なく寝袋を触りだす。
結構いい値段だったからなと思いつつ、許可を得ず勝手に寝袋をぺたぺたと触る小娘に怒りを覚えるが、小心者である彼は怒声を上げる事も出来ずグヌヌと唸る。
「うわぁふっわふわだぁ」
「ちょ!おま、汚いサンダル履いたままベッド乗るなや」
アルマはサンダルを履いたまま当然の様にベッド上に乗ろうとしたため、美里も流石に文句の言葉を口にしたが、アルマは脱げばいいのかと素直にサンダルを脱ぐと軽やかに寝袋の上に飛び込む。
素直ではあるのは非常によろしいが、それ以前に勝手にベットの上に乗らないで欲しい、美里は女であろうと勝手にベットに乗られるのが嫌派なのである、もちろんヘルガは別だ。
「あれ?これ敷物の下にも何か敷いてる?下の敷物がなんかすごい、冬とかでも冷えなさそうだね!」アルマは寝袋の下に敷かれたエアマットの存在までも看破し、その有用性迄も見抜く。
なかなか賢いようだ、ぜひ今すぐ帰ってほしい。
「あ、これもしかして中に入って寝るの?」
「ちょ!おま!」
アルマは美里の出て行けオーラなど意にも返さず、美里が止める隙を与えずスルリと寝袋の中に潜り込んでしまう。
流石に数週間は洗っていなそうな服にちゃんと体も洗っていないような汚子様に新品の寝袋をこれ以上触れられたくはないので汚い服で入るなと注意する。
もちろん寝袋に入るなと言う意味だったのだがアルマは言葉を言葉通り受け取ったのか躊躇なく服を脱ぎ捨て、ぽいと服を放り出す。
「ふぉおおぉぉおおぉおおおおお..............ぎ、も、ぢ、ぃいいいい......」
アルマは裸になった事で、より深く感じる寝袋の肌触りと心地よさに悶え、挙句の果てには寝袋に顔を擦り付け始めた。
この世界の住人にはいたる場所へとマーキングをする習性でもあるのだろうか?マジ汚いのでやめて欲しい・・・しかし相手はスッポンポンの少女である、裸の少女へは小心者の美里ではとても手を出しにくいに過ぎたためグギギと苦虫をかみしめる。
もうこれは異世界人?田舎者?貧民街のガキ?の常識だと諦め、後で貴重な除菌消臭剤とウェットティッシュを使って入念に洗おうしかないと嘆息する。
「まったく、ウェットティッシュも残量に限界があるってのに...」
「うわぁああぁ...やわらかああああああああああああああああああい」
アルマは枕にも気づき、頭の下に置くと頭をグリグリと揺らすとその初めて体験する寝心地に興奮を始める。
ボッタクリ商品が売れないと判ったのだ、飽きれば直ぐに帰るだろうと諦めることを決めたのだが、それは悪手であった事を思い知る。
「ふおおおぉぉぉ...ぉ...ぉぉ........ぉ...ぉ..z......zz...Z......Z..........ZZZZZZ...」
美里は目を見開き驚愕する。寝やがった…、このガキ寝やがった!もう大家の孫やりたい放である。
アルマが寝息を立てていることを確認すると、起きるまでは部屋を開けるわけにもいかず、かと言ってすることがない状況に嘆息しキャンプチェアーに座り込む。
とはいえただ時間が過ぎるのを無為に待つ意味もなく、やるべき事を考えると今はやはり死霊秘法の力を早くわがものとする必要があるのだと思い出す。
アルマの様子を伺い、しっかり眠っている事を確認すると、死霊秘法をそっと開いた。
異世界転移者の美里にはやらなければいけない事、知らなければいけない事が山積してる。そして今一番大切な事は彼自身が生きる上で何が出来て何が出来ないのかを正しく理解することなのである。
喫緊の課題で、この部屋のセキュリティー強化する必要があのだ。具体的に言えば今横で鼾をかくアルマの様に、鍵が無いこの部屋は何時でも誰でも出入りし放題なのだ、出かけた時にはこの部屋は完全に無防備なのだ。
美里はゆっくりじっくりセキュリティーに使えそうな項目に目を通すと、早速実験である。
美里は、『召喚術』の項目から『幽霊召喚』ページを開く。
死霊秘法の『召喚術』の項目には大雑把に分け『呼出』と『創造』の2種類があり、それぞれに細かな説明がある。
『呼出』は死霊秘法を読む限りリスクが大きいらしく不確定要素も多いため、今回は必要とする魔力は多いがリスクの少ない『創造』を試みる事に決めた。
『創造』は更に2分類されていて空気中に存在する魂の残滓を媒体に『幽霊』や『死霊』等の肉体を持たない不死怪物を生み出す『霊体系』と死体を媒体として『(腐死体』『骸骨』等の生物を生み出す『物理系』である。
当然今ここに触媒となる死体はない、死体にしてやりたいガキンチョがいるが流石に入居初日で幼女猟奇殺人事件を起こすのはよろしくないし美里にそんな勇気もない。
必然的に今回実行されるのは『霊体系』だ。
『霊体系』は幽世と呼ばれる次元に実態が存在し幽世に存在する『霊体』は通常は物理的な接触も視認も出来ない。それらを現世へと召喚ための魔法であるらしい。
この幽世について説明もあるのだが素人にはそのイメージがハッキリしない内容だった。
『物理系』は『霊体系』とは逆に現世と呼ばれる自分達から見えている世界の存在する触媒となる死体・・・物質に霊体を定着させてアンデットを召喚をする術らしい。
こちらは術の発動の安定感と成功率が高いらしく利点も色々とある為、早めに実験したいものである。
何れにしろ『魔法』なのだ、今はそう言う物なのだと納得しておく。
まずは美里の身辺警護や自宅警備をしてくれる霊体不死怪物が必要なのであるが霊体系・・・つまり幽霊である。
美里はいざ幽霊の召喚を思い描くと少し気遅れを覚える、なんたって幽霊なのだ。よく考えてみれば幽霊がフヨフヨと部屋の中にいたら、いくら自分の呼び出した相手でもぶっちゃけ怖い。
だが安全には変えられられない。
そして『創造』を選び実際に召喚を行う。
召喚する為には設計図となるイメージと構成する材料の値・・・『魔力値』『霊体値』『物質値』『次元値』『階位値』を呪文に埋め込む必要がある。
この呪文なのだがチートアイテム死霊秘法が自動的に構成してくれるようで、美里は深呼吸をしつつ呼び出す姿を思い描く。
霊体である幽霊には利点が幾つかあり、消費魔力が少量からも行えて、召喚後に更なる強化や再構成が可能なのだ。
そして今回召喚する幽霊の召還が成功した場合、更なる強化を行い夜間や外出中にドアを守り侵入者の侵入を阻止してもらったり、場合によっては戦闘もお願いする予定である。
霊魂では加減が解らず一度失敗している。
ちょっと魔力量を籠めただけで大きな音が鳴てしまう様な状況を避けたいので、最新の注意を払いつつゴーストの召喚を試みる。
もういちどアルマが寝ているのを確認すると美里は少し緊張しつつも『幽霊召喚』の呪文をタップした。
「ポチっとな!」
すると必要な霊体値、物質値精神値、次元値、階位値、造形の設定が必要だという『感覚』が浮かび、先ずは値はすべて最小でイメージする。
すると直ぐにジワリと部屋の扉の前にうっすらとした黒い靄が浮かび上がると少しして靄は明るく光りだし、ゆっくりと人影を形成してゆく。
召喚は成功した。
呼び出された幽霊は暗い部屋であるからこそ確認できる程度のホログラフのような発光体で人間の形であるのが辛うじて解る程度の光量、明るい場所では恐らく視認は厳しい程に希薄な存在だった。
存在感は非常に薄い、自我は無い様子でただボーっと佇んでいたが試しに命令をすれば指示には迅速かつ素直に従い、言ったと通りに動いてくれている。
次に拍手をさせるが音はしない、変な格好をさせてみたが嫌がる素振りは無く動いてくれる。複雑な命令には対応できず最後に出した指示を優先する様だ。
冗談半分で指示してみた所、コサックダンスまで踊る事が出来た。正直、美里本人が踊るよりも完璧に踊れてる。
自分で命令しておいてなんだが、何故コサックダンスと言う命令でコサックダンスが躍れたのであろうか?この世界にもコサックダンスがあるのだろうか?そもそも生まれたばかりの幽霊が何故言葉を理解しているのだろうか?
疑問は尽きない。
肉体的な疲労は無いらしく、停止命令が無ければ延々と踊っていそうであるが、逆に言えば何も命令しなければピクリとも動かない。
色々な命令をしてみる、どうやら物質には触れられずに通りしてしまう。また、美里が触れようとするが触れることが出来ない。
しかし触りたいと意識したら触れることが出来た。しかし物理透過するのになぜ床の上に立っているのだろうか?
知らずに夜中トイレに行く途中に唐突に出会ったら間違いなく漏らすが、見えるだけの幽霊では現状使いどころが見つからない。ひとまずこの最弱のゴーストは1号と言う名前を付けてみた。
次は強化実験だ。
ネクロノミコンによれば幽霊の強化が可能な項目は主に霊体値、精神値、階位値だ。値と翻訳されているが、実際には数字ではなく意識中で強化に使う魔力量思い描く、言い換えれば目分量だ。
どれくらい強化するかで消費される魔力量が決まる様なのだが、召喚した時に感覚的に理解できたのは、消費魔力量は事前にわからない事である。
下手をすると強化した後に物凄く魔力を持っていかれて大変な事になる可能性もある。
霊体、精神、階位それぞれの項目を読み直す。
まず霊体は幽世の存在で、現世で見ることも出来るし影響もするが、直接触れる事は出来ないらしい。空を飛んだりできるし覗きもし放題だ。
では戦闘はどうなるかと言えば、例えば人間と戦うなら人間の霊体に直接ダメージを与えるらしい。
次に精神、これを強化すると自我が芽生えるらしいく、霊体と精神が交わると魂魄、つまり一般的に日本人が思い描く魂になるらしく、精神値が加わる事で個性が生まれ、自立や成長をする事が出来るらしい。
最期に階位値であるが、この項目は少し曲者であった。
なにせ第5次元やら第6次元やら良く解らない言葉や専門用語、さらには文字化けしている箇所も多く、結論から言えば半分も把握出来ていないというのが結論だ。
ただ判っている事と言えば。ここを強化すると、幽霊が上位の種族の死霊に進化するらしく、チンパンジーがオランウータン、ゴリラと強力な存在に成る様な状況なので取り扱いには細心の注意が必要である。
まず最初は安全そうな霊体値を強化することにする。
霊体値を強化する為、空中に拡散した漂うだけの魂の欠片と言うものを集める『霊体構成』の呪文をタップし、発動座標をパペットゴーストの中へと指定する。
集まる欠片の中に人の意識の残滓を持っているのを不思議な感覚で理解が出来た、祖の残滓にどの様な記憶や個性が有るかまでの詳細は解らず、召喚時や強化時に多くの個性が混ざると召還体の形成に影響すると死霊秘法に記載されている。
美里は少しづつ1号の強化を行う。
細かな変化をつけながら強化を繰り返すうちに朧気ながらも理解できた事がある、この霊体値強化は、幽霊の見た目をある程度自由に『構成』することが出来、つまり容姿、衣服等の術者の希望したイメージが反映できるのだ。
今はまだ朧気ながら人の姿に見える光の靄なのだが折角なので見た目こだわってみたい。ではどのように構成するか?
見た目は女性である、女性は確定だ、ここは譲れない、異論は認めない。
部屋を一日中管理させるのだ、男なんかまっぴら御免である。
次に纏う衣装であるが、衣装ははやはりメイド服…と考えたが、何か変態っぽいと思いなおし、結果行きついたのはルネサンス風のフード付き修道服とフード付きのコートを構成する。あくまで見た目だけのものである。
術の発動が完了する前に明確なイメージを固めておかなければ霊身体は勝手に構成されてしまうようで、衣装を考えているうちに何故かヘルガに似た雰囲気の女性になってしまった。
なにせ今の美里にとって女生とは何ぞやと言われれば一番に思い描くほど強く印象に残っていたためであろう。
他に変化と言えば印象が強くなった、幽霊自体が放つ光が単純に強くなった。光も白っぽい靄だった曖昧な状態が明確な白色に変わり透過度が低くなったのである。
護衛用と考えていた為なのか、実際のヘルガたんよりも顔付が鋭く険しい気がする、いや間違いなく険しい。
身長も推定190cm弱はあろう背の高いヘルガよりもさらに高く、全体的にパンプアップしている…特に胸が…うんこれは本人よりかなり大きい、いや、御本人は小さいと言うよりも絶ぺ…まぁそれは置いておいてこれはこれで有りだ。
「ん?なんだか抵抗感が...」
さらに容姿の再構成を加えていく、既に構成済みの個体の形状を変化させるが何というか魔力の入りに重みの様な抵抗感を感じる。そして術者が消費する魔力量が通常構成するよりも激しいようだ。
0から構成するよりも構成済みの霊体を変化させるのはコストがかかるようである。これは次回以降の召喚のために参考になる。
現状の容姿に満足をしているので髪型や細部だけ補正を行った。
ここまでの強化で、美里の保有している魔力をあまり持ってかれた感覚が無い、この程度の構成ならば危険はさそうなので次の強化を試みる。
死霊秘法の霊体召喚の項目を開きなおすと次元値と階位値の項目を読み返す。
次元値を上げる事で、物質を持たない幽霊も現世へ干渉する事が出来る様で、強化すればドアの管理が可能と思われた。
現世、幽世とはなんぞとなるが、結局いまの美里に理解出来たのは現世はそのまま現世、見えている世界で幽世は同じ世界にあるが見えない触り難い世界程度である。
次の強化はこの次元値強化に決める。
事故が起こらないようにと恐る恐る少しずつ魔力をつぎ込み、次元値を強化していくが見た目には差が生まれる様子がない。
段階的に強化を行い幽霊が物に触れることができるようになる。これでドアの開閉や糞餓鬼が勝手にドアを開けるのを防ぐ事が可能になったのだ。
「このくらいの感覚か、覚えておこう」
この次元値の項目に恐ろしい文章が書かれていた。霊体値が最弱の状態では物理に干渉はできないが生物が持つ霊体部分には干渉可能の為、低い次元値でも触れれば生き物には悪寒や恐怖心を与える、霊体値を上げた場合は生物体に触れるだけで対象の霊体の破壊や吸収をする事が可能…高位の霊体は低位の霊体に大きな影響を及ぼす事が可能…高次に至る事は神への進化条件…ナニソレコワイ。
あれ?さっき結構強化してしまったぞ?…これはやらかしたかもしれない。
最後に階位値だが、死霊秘法に記載された内容は文字化けだらけであったり、頻繁に『神』『支配』『不特定』『危険』といった危険単語が並んでるのだから不安しかない。
MAHAMANやパルプンテ級の内容と疑われるこの階位値強化は部屋の中で行わず人目がない安全な所で試そうと決める。今は隣で大家の孫が寝ているのだあまり派手にはやらかせない。
それにしてもこのガキは邪魔くさい。
しかしこの死霊秘法と言う物は、想像以上のチート能力だ。凄い力を下賜頂き白靖様には心から感謝したいと心の中の境内で二拝二拍手一拝をする。
しかし、この時に美里には、これから起きる恐ろしい事件を知る由もなかった。
拙作「のんねく」をお読みいただきありがとうございます。
今回もお楽しみいただけましたでしょうか?割と面白い思っていただけたら是非イイネやお気に入り登録やら応援の感想をいただけると凄く嬉しいです。
それでそれでは次回も異世界転移後最大の事件回をよろしくお願いいたします。