第84話 買い食い①
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「カオル殿…その歯が…傷は…」
集落への帰還の準備を終えていた兎頭人達と今後の話の詰めと見送りにやってきた美里の姿を見たポタは一瞬驚いた様子をみせたのだが、すぐにその口を閉じた。
そういう交尾をする動物もいるのだ。
露骨に目をそらしたヘルガの様子にソレを察した彼は苦笑いをすると、察せられた美里も恥ずかしそうに頭を掻く。
ヴィルヘルミーナとしては地上のエーリカと地下に残ったオリガの間で行われた軍団通信で地上で起こっていた戦闘の話は伝わっていったのだが、流石にヘルガの『ガブガブプレー』については伝わっていなかった。
しかしそこは人生経験が豊富なヴィルヘルミーナである、美里の後ろで艶々としたヘルガを見てそれ以上は何も聞くことはなかった。
しかし知り合ってから1年以上になるのだが、彼女にそんな趣味趣向があるのは知らなかった思ったが、そもそも快楽を求めた性行為をするような娘ではなかったのだ、もしかすると旦那様の趣味なのだろうか?
何せヘルガがあれほどツヤッツヤなのである、昨晩のマイムマイムはどれ程のマイムだったのかそれほどに旦那様を興奮させたのだろうか?
もしそうであればヴィルヘルミーナも愛する旦那様の為、次の夜伽では昨晩のヘルガに負けないように\激しく噛みつこうと心に誓う。
旦那様の好きなプレーをサプライズすれば旦那様は目の前の雌にさらなる興奮を湧きあがらせるだろう。
そして今まで味わった事がない程に激しく、彼の授かり棒を愛の泉に溺れる目の前の雌の中へと捻じり込むだろう。
そしてただの雌へと堕ちたヴィルヘルミーナでは受け止めきれない程に彼の放つ白く蕩けた愛の種を注ぎ込まれるのではないかと考えてしまう。
ヴィルヘルミーナは一瞬身震いをすると鍛え上げられた両足の太腿をクネリと捩る。彼女の中から旦那様への情熱的な愛情と、彼を受け入れるための湧き水が溢れ出すのを感じ立っているのも苦しいほどに激しくそして熱く発情してしまう。
そんな興奮するヴィルヘルミーナの様子に目敏く気づいたヘルガは素知らぬ顔で美里の服の腰のあたりをつまむ。
「そ、そうだ旦那様、昨日ポタ達と色々話したんだけど、兎頭人の村に帰ったら少しだけでも味噌と醤油を準備してくれることになったよ!それに...」
ヴィルヘルミーナは一番嫁であるヘルガの機嫌を損ねたかと感じ我に返ると、愛する旦那様が喜んでくれそうな報告を始める。
昨晩、兎頭人達との今後の交協力関係について交渉にあたっていたヴィルヘルミーナとエーリカが今後の交流について美里の期待を超えて話をまとめてくれていたのだが、それ以上に驚いたのは骸骨死霊の一人が交渉事に長け問題の解決や妥協点を巧みに調整してくれていたというのだがコレにはかなり驚かされた。
巧みな話術でポタのみならず、ほかの兎頭人達の心をもつかんでしまっていたのだ。
生まれたばかりの骸骨死霊には個体差がある。
召還したその場から会話が可能な個体、魔法やスキルを持つ個体、妙な知識を持つ個体など様々である。その原因は『人間』の魂である。
都市部で召還をすると素材となる魂の残滓が多く漂っているため、生前の記憶やスキルを持っていることがあるのだ。
クロアたちの様に肉体を使った者であれば生前の魂が定着しやすいことが分かっている。
だが骸骨の死霊達が人間の魂の残滓をもった場合はガチャ要素が強い、個体によっては複数の人間の記憶を持っていたり、スキルや魔法を持っているにもかかわらず記憶が欠落していたりする。
そして不思議な事に記憶を持って召還されたとしても、感情が現れるのには多くの場合は時間がかかるようだ。
この情報は今後の血盟デスマーチ軍団の強化に大きく影響されるのだ、基本コマンド『いのちをだいじに』である美里としては非常に気になるところだ。
「ポタさん、突然の話で色々申し訳ありませんが今後ともよろしくお願いいたします。あとティグリスとユーフラテスがしばらくご厄介になります」
「まかしてくれ。カオル殿も道中気を付けてくれよ、あの都市周辺の森にも厄介な魔物がうろついているからのぅ」
美里と握手を交わすとポタ達一行は纏めていた荷物を背にしょい込み迷宮の下層へと降りてゆく。聞いたところでは彼らの集落は複数の地下道や別の迷宮等を経由して帰還するという。
美里のレイスをみて隠し事は無理と考えたポタ達は、かなり多くの情報をくれた。恐らくは無駄な警戒をするよりも、少しでも友好的な関係を築くほうが集落の未来には良いと判断したのであろう。
万を超える死霊を従えると言うのは流石に信じていない、それほどの厄介な魔物である死霊の更に上位であると思しき個体を万単位で従えているなら最早それは国家を簒奪可能な戦力なのだ。
だが実際に目の前で数百のレイスにうろつかれれば数千程度の強力な死霊を従えているのは本当なのだろうと理解している。
ポタからはこの先、死者都市までの道のりでのアドバイスを貰うのだが湖の村から北に広がる樹海が美里の理解を大きく超える危険地帯だという事を知らされ物見遊山気分が霧散させられていた。
事前にヘルガやヴィルヘルミーナに聞いていたが実際に住んでいる者からすればなるほど、大国である神聖イース帝国が領土拡張に手をこまねるほどに危険なのだ。
端的に言えば死者都市だけが脅威ならば、大森林の開拓はもっと進んでいるだろう。しかし大森林の中には巨大な箆鹿や巨大熊、大型の狼といった馴染みの生物だけではなく樹巨人やトロル、ゴブリンその他の魔物が跳梁跋扈しているのだ。
兎頭人達は地下道や迷宮を使い安全を確保しているため、このうんち迷宮へ比較的安全に来られてはいるが、地上からの道は危険に溢れているため、容易に来られる場所ではないのだ。ポタ達は美里の力を過大評価しているためか心配の必要はないと考えている様子だったが美里の心中は不安に満ちていた。
「問題はございません、屠った魔物の死体を不死怪物化して更なる戦力が増やせます。肉体を持つアンデッドには肉体があるゆえの利点もございますので」
エーリカは簡単に言うが初めて行く土地で知らない魔物と戦う可能性があるのに楽観的すぎやしないだろうか?
「主様の御身は私どもがお守りいたします」
にこりと微笑むオリガの自身ははどこからきているのだろうか?
「あるじ心配しすぎ、ろりがにまかせろ!」
ロリガは存在から嘘くさいので聞き流す。
「旦那様は戦闘には不慣れなんだろうけど、慎重に対処していけば旦那様の軍団はなにも問題ないかと思うよ」
ヴィルヘルミーナは人差し指で美里の胸をポンとつつきながら笑う。この世界の先頭経験が豊富な彼女が言うのなら少しだけ安心できそうである。ありがとうと微笑みながら彼女の左ほほを撫でるとヴィルヘルミーナとの間にヘルガが割って入る。
「か...カオルは私が守るよ!カオルのお嫁さんだからね!」
嫁が夫を守るというスタイルは斬新だが、確かに最初はそういう話だったし、間違いなくヘルガは自分よりも強いので素直に感謝を告げると、自分より背の高い彼女の頭を優しくなでる。
「あれ?ヘルガたん背が伸びた?」
「え?どうだろう?」
美里はふいに感じた違和感うを口にしてしまうが、本人に自覚はないらしい。鏡もない世界から多少の変化には気づきにくいのもあるだろう。
「とりあえず俺らも移動しよう」
「本日は湖の村へ戻り一泊でしょうか」
「オリガに任せるよ」
美里はこの先に待ち受ける危険な旅程を思い軽く嘆息すると不安いっぱいの湖の村へと移動を開始した。
拙作「のんねく」をお読みいただきありがとうございます。
稚拙な作品ですが皆さんが楽しんでくれていると嬉しいです。続きを読みたいな~とかとかチョッピリでも思っていただけたら是非イイネやお気に入り登録、乾燥、コメント等々をいただけると嬉しいです。それでは次回もよろしくお願いいたします。




