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第81話 汚いおっさん②

081 2 022

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「あいつらどこまで行ったの?」

「この先に小さな泉がある様です、どうやらそこで身を清めに行ったのでしょう」

「なるほど」

クロたちが追いかけていったので問題はないだろう、いやあってもエーリカに通信が入るから大丈夫である。


美里の命令に迷いなく走り出すおっさんの集団もなかなかシュールである。


「さて何があったか教えてもらえるかな?」

大まかに状況は理解しているが想像よりもグロテスクな死体が転がっていた状況に渋面を作りながら居残り組の代表を任せていたクロアに事の次第を確認する。

「うふふ、連中の頭目らしき男が地上に戻って来て目をつけられたようですね。連中の仲間内には女性もいないようですので我慢ならずにと言ったところでしょうか?私達は身も心もカオル様の女だと教えて差し上げたのに理解する頭がなかった様でしたのでこの様な結果になってしまいましたの」


街からも離れて生活しているのだ、女だらけのパーティが目の前に現れたら魔が指すことも想定しておかねばならなかったと反省しつつ、ノワールとシュバルツと言う超凶悪個体がいるのに襲ってくるとは、よほど理性を下半身に持って行かれたのか、単純に頭が悪いのか理解に苦しむ部分である。


しかしクロアは今述べている以上に煽ったに違いないと美里は直感で理解する。


「何人か魔術師もいたので普通の大きいだけの動物と可愛らしい女子供であれば簡単に組み伏せられるとも思ったんでしょうか、鹿肉はひさしぶりだとか起こり得ない未来を想像してご満悦の表情でしたしーーーーーーーー」


こんな森の中で探索する冒険者である、そりゃあスライムしかいないダンジョンの探索専門で活動していると言っても砂金というわかりやすい利権を争っている集団であれば荒事にも十分な自信があったであろうし、20人はいたのを考えればしっかりと連携が取れれば箆鹿(エルク)2頭は十分安全に倒せる相手と判断されたのかもしれないし、そこに居残りの女性と子供は戦力にも見えなかっただろう。

あれ?今可愛いに自分を含めたかと疑問を持ったが、女性相手にソレをツッコむのは藪蛇である、ツッコむならば茂みに棒である。


美里が阿呆な事を考えているとクロアが話を続ける


「まぁ、連中には鹿肉よりも私の肉よりも、クロエと5号と6号が美味しそうだと口にしていましたけどね」

クロアは汚い物を見るかのような眼差しで『新しい仲間』達が消えた森の方角を睥睨していた。


「え?あいつら人間食べるの?!」

美里の突拍子もない言葉に一瞬キョトンとしたクロアだったが、すぐに「ぷっ」と吹き出し口を開く。


「ふふ、犯すという意味ですよ」

首を傾けつつ優しい笑顔で応えるクロアは非常に魅力的な女性である、大原さやか風の声質が聞く者に包み込む様な安心感を与えてくれる。


内容が自分や娘達を犯すという超ハードモードシュチュを語るのでなければであるが・・・


「まぁ、そんな言葉を口にしたのが命取りでした。男の一人がクロエに手を出そうとした時にノワールに任せようとくつろいでいたクロさんの怒りを買ってあっという間に目の前に立っていた男達を全部倒してしまいました。6人程いましたが本当に一瞬でしたわ」

面白い物を見たかのようにくつくつと笑っていたが、恐らく先ほどの手足が捥げていたりお腹に穴が空いていたりした死体がそれだろう。しかしあの光景が笑い話にしちゃうとか怖いにすぎる。


美里はふと疑問を抱く、野球のボールが入る程度の穴が空いた死体は、今思えば内側から爆ぜたような様子であった、キャンプ側に足を向けて仰向けで倒れた死体だから後ろからワンコブレスを打ったとも思えない。

そんな事をすれば角度的にフレンドリーファイアを起こしかねない位置と距離だ、となると正面からの攻撃かと思うのだが?


「体に穴が開いていた死体ってワンコブレス?」

「あ、いいえ、そのよくわからないのですがクロさんが吠えると……ぽん!て」

クロアがまん丸に口を開き両掌をパッと開くとクロアのハンドくん達も顔の横で一緒にパッと掌を開く。


こんな状況なのにも関わらずクロアの口元を見て一瞬ドキリとする、もちろんシモの意味であるが、すぐに気を取り直し『ポン』の意味を考える。


最初に思い描いたのは某エイリアン映画に出てきた腹の中を食い破って生まれてくるエイリアンの幼体だが、周囲を見渡してもクロの幼体?が生まれた様子もない。


『ぽん』と言うならば爆発物?

美里がが頭を捻ると右手の人差し指を口角に当てたクロアも美里と鏡になるかのように首を傾け、ハンドくんも人差し指を立てて軽く体を傾ける。


そうこうしていると突然クロアが一瞬動きを停止しする。ふと後ろを振り返れば周囲の探索者達のキャンプを漁りに行っていたエーリカ達が戻ってくる様子が見える。


「か…カオル様、ヘルガさんはご機嫌が斜めのようですがご理解いただいていますでしょうか?」

「え?」

美里は当然何も気付いていない。そんな事を言われても思う節もなければ何を言われているのかがわからない。そんな様子にクロアは嘆息する。

「一番嫁を一番に構ってあげてください、ヘルガさんは嫁の中では一番若くて、カオル様は初めての男性なんですよ!」

クロアが顔の前で両の拳をキュっと握るとハンドくん達も両肩でキュっと拳を握る。


いやヘルガは初めてどころか・・・と思ったがそう意味ではないだろう。


「主人様、連中のねぐらを見回りましたが隠れているものもなければ目ぼしいものもありませんでした」

報告するエーリカの後ろに隠れたヘルガを見ると、明らかに暗い顔のヘルガがいた。


クロアの助言を聞いた今の美里に死角はない。


今のヘルガはかなりの病みにのまれている・・・思い返せば今日になってヘルガと言葉を交わしていなかった、さらに思い返せばいつもは美里の袖口や背中の布をちょこんと摘める0距離を極力維持していたヘルガが今日・・・。


そこで美里は答えに辿り着いた、だが美里は今日ヴィルヘルミーナとベッタリだったのだ。性格には昨晩からなのであるがココに来て美里は現状の問題の深刻さに気づいてしまった。


目の前にいるヘルガの目は完全に狂気に飲まれた『ソレ』の目である。


少年漫画なら闇にのまれてボスクラスの敵になってしまうパターンであるが、現実世界でこの状況は魂が凍るような恐怖を感じてしまい何か言おうにも声がでない。


そんな美里を他所に爆発寸前の核弾頭状態なヘルガに対してロリガが何かを囁いているのが見えた、見えてしまった。


何が起こるかわからない、パルプンテが放たれたのである。


吉と出るか凶と出るか、間違いなくロリガが放った言葉は碌でも無い事は確定している、だが稀にミラクルを運ぶ可能性もある。


そんな思いに震えつつも期待していた美里の目に飛び込んできたのは感情を失い目を見開いて美里を凝視するヘルガであった。


マジ何を言ったガキンチョ!?


「帰って来た様ですね」

エーリカが森の方に顔を向ける、200mほど向こうの森の木々の間の闇のなかから飛び出すクロに騎乗したクロエの姿があった。


美里がエーリカに併せて森を見ると、ものすごい速度で戻るクロに騎乗したクロエの後ろを牧羊犬に追われた羊のように眷属化したばかりの探索者達がついてきていた。


フェンやノワール達に追い立てられている。


「アレらは色々と使い道もありましょう、ひとまずーーー」

戻ってきた眷属の扱いを口にしたエーリカに顔を戻した時である、ふと彼女の真後ろに立っていたヘルガの姿が消えていた。

美里は急激な恐怖を感じ身構えたその刹那。


「わあ!」

美里は突然体に受けた衝撃に思わず悲鳴をあげて倒れ込む。


「カオルお兄ちゃんただいま!」

200mはあった距離を顔を逸らした一瞬で詰めてきたクロエが飛んで抱きつき、さらにクロエの上からクロも飛び込んできたのだ。


「ぶももももうももも!!ちょっまっ!!!」

美里はクロに顔を鬼舐めされたかと思うとそこに何故かクロエとフェンまでが参戦する。


やれやれとエーリカがクロとフェンの首を掴みむんずと持ち上げると、馬乗りにポツンと残されたクロエが正面からクロアに両脇を刺され持ち上げられてしまう。

自ずとクロアは美里の頭をまたぐ形になり中身が丸見え・・・にはならず暗視スキルのない美里にはクロアの衣服の下は表示可能範囲外となっていた。


・・・がなんとなくウキウキシュチュエーションを堪能出来たことは間違いない。


そんな楽しいイベントを堪能していたが、ふと視線を感じ美里は仰向けのまま横を見る、視線の先には何故かうつ伏せに丸まり(うずくま)ったヘルガが顔を覆い、覆った手の指の間から直死の魔眼のような視線で美里を凝視していた。


さっきよりなにか目つきがヤバい!まじ怖いんですが?!


自分の格好を他所になぜヘルガがあんな格好をしていたのであろうかと頭の中に疑問符を立てるが今はヘルガの心のケアが優先事項である事を思い出す。


あ、今クロエが馬乗りで自分をペロペロしてた事がヘルガの呪いの触媒になって・・・いや、この流れでクロアのスカートの中をガン見していたのに気づかれていた!?


なるほど今理解できた、いままではアニメやラノベの鈍感系主人公を馬鹿にしていたが、鉄の意志で鈍感を貫かねばメインヒロインの逆鱗に触れてしまうからだったのではないのだろうか?そうしなければ死という制裁でお話が終わってしまうのではなかろうか?出された据え膳を端から喰らえば何処かでハーレムの誰かが狂気に飲まれ関係が破綻するのは当然だ。


それも命が軽いこの世界ならデットエンドは待ったなしである。


ひとまず美里はヘルガに愛想笑いをしてみる。


ヘルガは再び両手で顔を覆い悶え始める。


何が起きて居る?!美里は混乱した。


何か恐ろしい事が起きて居る!?ヘルガの後ろに立つロリガが両手をワキワキさせたかと思うと両手をゆっくりと回し二つの円を空に描くき描いた円から仄かに薄桃色の霞がかかる。


なんだかMPを持っていかれそうな不思議な踊りに見える。


次第にその霞が緩やかに交わり一塊になる、そしてロリガが両手を天に掲げると美里へ向けニヤリと微笑む。


するとその両手で靄掴み、目の前に(うずくま)るヘルガの尻へと振り下ろし叩きつけた。


バチン!


「ひゃん!」

ガキンチョとはいえ高位ワイトのケツビンタは相当の痛みがあったのだろう、だが当のヘルガは痛がる様子はなく、蹲ったまま震え出す、いや悶え出す?!


「はぁ…はぁ…ここで?カオル…はぁうぅあぁ…………はずかしぃ…で……カオ…ルが

…なら……」

ヘルガたんが完全に発情しています、ロリガの奴が何か吹き込んだ上で権能(スキル)ぶっ放しやがった!


あれは色欲(ラスト)か・・・しかしヘルガが殺人鬼に進化する事なく内容はともかく平和な方向へ流れが向いたのはギリギリグッジョブと言えよう。


桃色吐息で地面で悶えるヘルガの後ろでは、ドヤ顔ロリガが親指を立てていた

あのドヤ顔サムズアップさえなければ褒めてもよかったのだが・・・



「いっつあしょうたあああああああああいむ!」

この暗いうんちダンジョン広場にロリガの愉悦の声が木霊した。





いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。もしチョットだけでも面白いかも?と思われたらイイネやお気に入り登録をいただけると作者の生き甲斐になったり更新頻度が増えたりしますのでよろしくお願いいたします。

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