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第79話 200年前③


ロリガが美里の横へ並びドヤ顔で口を開く。

「ロリガにはよいかんがえがある!!」


誰も口を開かずロリガの次の言葉を待つ。


「ウサぴょんどもは、見知らぬあるじや死霊(レイス)達が村にくるのがこわいんだろ?」

ロリガがポタに向かい確認をするとポタが躊躇いつつも首肯する。


「だがしかし!わがあるじもココでウサぴょんと醤油を逃がしたくはない!」

言い方も悪いが言葉遣いについては後で教えるとして、内容はその通りのため美里も頷きロリガに話の続きを促した。


「ウサぴょんども!我々はその気になればお前たちの住処を見付けなんぞは造作もない!」

兎頭人(シュメ-ルコボルト)達の表情は、明らかに恐怖の色に染まる。


「ちょ、ロリガ..........?」

危険な発言を止めようと美里が口を開くが、ロリガはどや顔でそれを手で制した。


「我があるじは十万の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)を従えているうううう!」

ロリガは少し腰を落とし、ドスの効いた口調を使い両手を前に突き出すと手のひらを広げ10本の指を開く。


「「「「「10万?!」」」」」

美里と兎頭人(シュメ-ルコボルト)達はその圧倒的な数字に思わず声をあげる。ヴィルヘルミーナも一瞬驚きの表情を見せたがすぐにロリガの誇張だと察し声止める。


しかし現実は既に美里の眷属はすでに万に越えた個体が存在している。


「そう、だから住処を隠してもいみがない!」

「ぐぅ」

ポタが苦しそうな表情を作ると、他の兎頭人(シュメ-ルコボルト)達もその表情は絶望を浮かべる。


「だが!とつぜん骸骨(スケルタル)死霊(レイス)が押し掛けるのも可愛そうなのでロリガがいい案を思いついた」

またロリガが何かとんでもない事を言い始めたかと美里は少しだけ胃に痛みを覚えた。


「まずはわれらの配下のウサぴょんを村に送ろう!」


「「「「「「え?」」」」」」

ロリガの訳の分からない発言にその場にいた全員が困惑した、そもそもロリガの言う『ウサぴょん』とは兎頭人(シュメ-ルコボルト)を指しているだろう、しかしつい先ほど美里達は兎頭人(シュメ-ルコボルト)言う種族を初めて知ったし、彼等にもそう伝えているのだ。そのうえで配下のウサぴょんとは話の筋が通らないにも限度がある。



ロリガが唖然としている美里の手を引き、廊下へと連れ出すと美里の耳を引っ張りその引き寄せた耳元でとんでもない事を囁く。


美里はそんな事が出来るのか思案する様子を見せたが、一度部屋の中を覗き改めて頷くとポタの元へと戻りポタへと手を伸ばす。


「ポタさん握手をお願いします!」

突然の事にポタは躊躇する。


「その…友好の証?に?」

何故疑問系なのだと考えたものの、自分達には拒否する理由も権利もないとポタは美里の手を恐る恐る取り、握手を交わすと、美里はヨシと頷き再び部屋の外へと出て行った。


部屋に残った者は何が起こっているのか理解は出来ていなかったのだが、この場の絶対者である美里の行動を見守る事しかできなかった。




「ではあるじ、コイツらを変身させてくだちい」

ロリガの横には彼女が準備させていたであろう骸骨(スケルタル)亡霊(レイス)が2人、気持ち嬉しそうな様子で待ち構えていた。


本人達は兎頭人(シュメ-ルコボルト)として受肉する事を了承しているのであろうとは思うが、美里がいちおう確認をすると嬉しそうな様子で承認された。どうやら、受肉もだが美里の為の任務を遂行する立場になれる事が嬉しいのだという。

しかし人間型とはいえ怪物(モンスター)で更にウサギ耳の兎頭人(シュメ-ルコボルト)で本当にいいのだろうかという疑問が残るのだが本人がいいのならと思いネクロノミコンを取り出し、新たな肉体を構成するための召還魔法を発動させる。


死霊秘法(ネクロノミコン)を手にした状態で行う事で幾つかの条件をクリアしている召喚体の構成を自由に選べるのだ。


いつものように黒い(もや)が二人の骸骨(スケルタル)亡霊(レイス)を包みこむと激しく渦を巻く。今回の召喚では今までよりも鮮明で詳細なイメージが召還に反映されていく感覚が美里の中に感じられた。単純に魔法を発動するのも慣れや経験でより高いレベルの発動が出来るのであろう。


自分の成長とも呼べる感覚を美里は驚きつつも充足感を覚えた。これがゲームならば『てれれれっててってって~』と何処からともなくファンファーレが流れたであろう。


美里が感慨に浸っているうちに(もや)の動きが緩やかに変わり、意識中に各構部分の成値を求める感覚が発生する。


まずはデスマーチ軍団(レギオン)から離れて活動をしてもらう訳だから確実に自己防衛が可能な強さにしたい。骸骨(スケルタル)死霊(レイス)をこっそりと同行させるが、個体としての強さは持っていた方が安心できる。物理構成(マテリアルコンポジション)はロリガ級。

次に兎頭人(シュメ-ルコボルト)の文化を学んでもらう為にそこそこの知性も必要である。精神構成(スピリットコンポジション)も少し上げておきたい。

今後兎頭人(シュメ-ルコボルト)達との交流を重ねる場合、この2人が代表になってもらわなければいけない。階位値構成(ランクコンポジション)も少し多めに調整。


そしてその容姿、どこまで構成に影響を出せるかは判らないが彼らはデスマーチ軍団(レギオン)の一員である。仲間だと解りやすいようにしておきたい。


イメージの多くを落とし込めた頃には次第に(もや)は小さくなり、兎頭人(シュメ-ルコボルト)へと受肉した骸骨(スケルタル)亡霊(レイス)だった者が姿が現わす。


「あれ?」

「なんか違う?」

美里が違和感を感じた様にロリガも疑問を口にする。美里達の前に表した姿は、想像以上にポタの姿とはだいぶかけ離れた姿であった。


見た目は兎頭人(シュメ-ルコボルト)ではある様だが、ポタ達が全体的に丸を持ったずんぐりとした体型なのと比べて召喚した2人の姿は、ポタ達よりも背が高く、全体的にスマートなのである。


何より純白でビロードのような美しい毛並みは高貴さすら感じさせていた。よく見れば個体差がわかり難い兎頭人(シュメ-ルコボルト)の容姿が美里にも判別しやすく一人は耳が垂れている。


「「我らが尊き主人様、そして機会をお与えいただいたロリガ様、心よりお礼を申し上げます。今後とも一層の忠誠を誓います」」

受肉した2人は素早い動作で膝をつくと、声をそろえて感謝の言葉を口にする。


『機会を与えた?』ロリガが何か企んでいたのだろうか?あとでシバいてから問い沙汰す事にしよう、しかし今は先にすることがある。


今は兎頭人(シュメ-ルコボルト)達を待たせている部屋へ戻ると兎頭人(シュメ-ルコボルト)達が一斉に騒ぎ始める。



「待て待て待て!なぜ彼女達は半裸なのだ!」

ポタが片手で自分の顔を覆い叫び声をあげると、後ろにいた兎頭人(シュメ-ルコボルト)の何人かが咄嗟に後ろを向く。

オニギリをくれた兎頭人(シュメ-ルコボルト)は咄嗟に自分の鞄から外套の様な物を布を巻いただけの死霊(レイス産の兎頭人(シュメ-ルコボルト)へかぶせる。


「え?彼女?!」

咄嗟に美里が口走る。


「「「え?」」」

兎頭人(シュメ-ルコボルト)達が一斉に声をあげる。美里には召還した2人は勝手に雄だと思い込んでいた、ポタをベースにしている訳で自然とそうであろうと考えていたのだがどうやら違うようである。


そして同族?には2人がしっかりと雌に見えてるようだと理解したのと同時に2人に服を着せていなかったことに今更ながら思い至る。


美里達にとっては初見の種族である兎頭人(シュメ-ルコボルト)は正直二本足で立っている兎程度の感覚であったので仕方はない。


「まさか。奴隷にしとるのか?」

ポタが嫌悪感と警戒心をあらわにしながら美里を睨みつける。


「えっと、彼女?達が?うちの...仲間の...兎頭人(シュメ-ルコボルト)さんです....奴隷とかではない...ですよ?」

思い付きの行動を反省するが時すでに遅い。色々と行き当たりばったり過ぎて話を繕う方法が見当たらず美里は明らかな挙動不審に陥る。


「旦那様、この子たちの名前は?」

名づけだ。ヴィルヘルミーナから声がかからないければ完全に忘れていた。ポタ達に同行させるのなら名前は必須である。


美里の中では名前を付けると言うのは責任が伴う行為だと考えている、適当に付ける訳にも行かないと考えているのだが、今回は即決だった。


「ティグリス」「ユーフラティス」それぞれを指さし名前を与えると眷属の兎頭人(シュメ-ルコボルト)2人は素早く膝をつき感謝を表す。


次いで美里が言い訳を口にしようとした時突然のインターセプトが入る。


「ポタ様、奴隷以前に彼らは先程兎頭人(シュメ-ルコボルト)を初めて見たと言っていませんでしたか?」

一人の兎頭人(シュメ-ルコボルト)が疑問を口にする事でその場にいる全員が閉口し室内は完全なる静寂に支配される。



「まさか.......カオル殿は魔王なのか?」

沈黙を破ったのはポタである。彼は恐る恐るな美里へと問いかける。


美里の中では何がどうして眷属の兎頭人(シュメ-ルコボルト)の話から魔王と言う話に至ったのか理解が出来ないのだが、ポタには何か確信めいた表情をしていた。


「え?魔王?俺がですか?魔王?なんで?」

「もちろん、こんなおっかない死霊(レイス)が10万なんて数従えてんなら魔王なんて呼ばれ方も生温いと思うんだろうが.........それにどんな魔法かはわからんがその2人だって....」

ポタは最後の部分を濁したが、何かを察したのだろう。ポタは後ろにいる仲間に何やら話すと、予備と思われる外套の様な布を眷属に羽織らせてくれた。


「魔王っていっぱいいるんですか?」

「そりゃあ居るだろう?お前達の来た帝国だって皇帝は魔王.....そうか、それはワシらから見ればで、当然そっちじゃぁ英雄だの賢者だのと呼ばれとるだろうしな、ぃやそのまま皇帝なのか?そういえば南の大陸の『水呼びの大賢者』様は、この北の大陸では『砂海の魔王』と呼ばれているんだったな」

ヴィルヘルミーナが頷くが、砂海の魔王様が地元では賢者と呼ばれて居る事は知らなかったようである。情報伝達網の弱い世界で遠い地の話を正確に知る事は難しいのだから。


美里は魔王とはどういう存在なのかをポタへ問いかける。ヘルガやヴィルヘルミーナから聞いた魔王はただただ凄く強い怪物(モンスター)程度の情報でしかなかったのだ。


魔王とは?


魔王・賢者・勇者・英雄・王・皇帝等等呼び方はそれぞれだが、概ね敵対する超克者や超越者を魔王と呼ぶという。それは(かつ)て『人』であった者もいれば迷宮(ダンジョン)から生まれた人ならざる者も存在し、概ね国や部族を束ねる組織の頂点を示しているようで帝国の皇帝も南大陸では魔王と呼ばれているらしい。


200年前の戦争に介入して来た『羊角の魔王』も自国では国首だったらしい。



「アンタらはもしかして、繭の魔王へ戦争を仕掛けるのか?」


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いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。もしチョットだけでも面白いかも?と思われたらイイネやお気に入り登録をいただけると作者の生き甲斐になったり更新頻度が増えたりしますのでよろしくお願いいたします。

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