表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/90

第72話 異世界の秘境!うんちダンジョン⑤

☆第72話 異世界の秘境!うんちダンジョン⑤

072 2 013 

--------------------------------------------


「あれが村?!でかくない?村なの?」

美里の驚きは尤もである、視界に飛び込んできた『村』と呼ばれた場所は、都市デルーカにも見劣りしない程に堅牢な城壁を構えていたのだ。


「あははは」

「ぷぅ~くすくす」

驚く美里をよそに、笑い出したヘルガとヴィルヘルミーナにギルドメンバーはきょとんとした表情で視線を向けた。


「いやぁ、そういえばそうだったなぁと思ってね。旦那様は遠くから来たから知らなかったね、あの城壁はガワだけでね、門をくぐったらもっと驚くものが見れるよ」

美里は何か笑われる事を言ってしまったのかと異世界0歳児として少しだけ恥ずかしさを覚えているとヴィルヘルミーナが何やら村にはサプライズ的な演出がある事を匂わせた。



村に向かい暫くすると森が開け城壁が近づく。近くに寄ればやはりデルーカにも見劣りのしない、大きな壁がはるか向こうまで続いている。


「見た感じデルーカより古くない?」

「あぁ、ここは昔に皇帝陛下の大魔法で滅んだナンチャラ国の大きな街の跡なんだってさ」

「ナンチャラ?」

「あぁ、ミーカから聞いております、確かケイオシアム連合王国でしたね。200年ほど前に神聖イース帝国との戦争で滅んだ北部の都市国家群です」

ヴィルヘルミーナの情報にエーリカが補足してくれる。しかし何やら不穏なパワーワードが入っていた気がすると美里は嫌なフラグの出現を感じる。


「皇帝陛下?大魔法ってなに?」

美里が強キャラの出現フラグを流石に聞き流す訳にも行かず、ヴィルヘルミーナへ皇帝陛下という超絶危険キャラについて質問した、とは言え200年前の人物である、皇帝陛下御本人との戦闘は無い事に安堵している。


「旦那様は皇帝陛下を知らないのかい?!この帝国の生ける伝説だよ?大英雄だよ?!」

ヴィルヘルミーナは意外な程に驚きを見せるが、異世界0歳の美里としてはソレはもう予想の範疇である、気になるのは『生ける伝説』である。


「皇帝陛下って他の国だとそんなに知られてないの?」

ヘルガも意外そうな顔で美里を見ている。この国ではよほどの存在なのだろう。


「俺はほら、この国そのものを知らないような遠くから来たから、当然皇帝陛下も知らないよ」と返す。


そこからヴィルヘルミーナがメインにヘルガとクロアが補足する形で皇帝陛下についていろいろと教えてくれた。


まずは恐ろしい事に現皇帝は200年前の大魔法を放った張本人である事を知った美里は、ボスキャラ出現の予感に大きく気持ちを落ち込ませる。

そして皇帝陛下は(よわい)1000歳を超すと言われるこの世界で唯一人(ただひとり)のハイエルフと呼ばれた神代の種族らしい。そしてこの世のありとあらゆる魔法を操る大魔導士でもあると言う。


この時点で美里は皇帝はボスキャラだと確信し、近づかないようにしようと心に誓う。


普通に考えれば皇帝陛下がその辺をトコトコうろついている訳もなく、こちらから会いに行かねば遭遇する事がある訳もない。

それでもフラグを成立させない為、美里は帝国外へ脱出する事も視野に入れた。





美里達が門に近づくにつれ、門周辺に慌ただしく武器を持った男たちが集まりだしている。

原因は当然ノワールとネーロだろう、見たことのない巨体の黒箆鹿エルク2頭が村に向かっているのである、警戒しないほうがおかしい。


集団も黒エルク以外に美里達人間が同行していることで、武器の準備をしているがすぐに戦闘と言う様子ではなかった。

大きな声であれば声の届くような距離まで来ると、6人の冒険者風の男がゆっくりと美里達まで近づいてきた。

男達はヒュム族4人とドワーフ2人の構成で、統一感のない装備から見ると冒険者であろう。


「あんたら、そのデカイ黒い箆鹿エルクはあんたらの家畜か?」

リーダー格と思しき背も高く屈強そうなヒュム族の男が、先頭を歩いていたエーリカへ声をかけた。


「我々はギルド死霊秘法(ネクロノミコン)だ、ご理解いただいている様に後ろの箆鹿エルクは我らの連れ合いである」

「そうか、その黒箆鹿エルクは人里に入れ暴れたりしないのか?」

「勿論、賢いですからね。ちょっかいをかけなければ問題ないですよ、我が主様の言う事をよく聞きます。御覧の通り人を乗せて旅をするに重宝していますよ」

箆鹿エルクが人を乗せるなど見たことがない、黒いってのも珍しいし家畜に向いた種類なのかもしれないな。どう見ても悪党集団でもなさそうだし、村に用か?」

「その先です、死者の(ネクロポリス)へ向かう旅をしています」

「え?あぁそういう事か?帝都から来たのか?」

「まぁそんなところです」

「そうか、まぁついてきてくれ、駐屯兵へ取り次いでやる」

男は振り向くと門の方向へ美里達一団を案内してくれた。


案内される途中、城壁に沿って冒険者らしき集団がテントを張っているのが見えた、おそらく『うんち迷宮(ダンジョン)』の探索や周辺での狩りを生業とするものであろうか。


門に到着する頃には、デルーカ同様に結構な悪臭を感じる。森や街道では感じることのないスラムの臭いである。


「お前ら、本当にこの家畜共は大丈夫なんだろうな!その狼も箆鹿エルクも何かしでかせば貴様らの命もないぞ!」

村の門の兵士の語気は荒い。もちろん村の治安を守る立場として舐められる訳にもいかないのであろう、必要な行為だと美里も一定の理解を持っているがあまり気分のいいものでもない。しかし門の兵士は治安面での説明を終えると、語気は荒くも新設に村唯一の宿の場所や村にある幾つかの店の位置を紹介してくれた。兵士曰くこの村の人口は少なく、冒険者がその半数を占める様で、店舗を構える数よりも露店売りが基本だと教えてくれた。


一人銀貨(ホペア)1枚の入門税を支払うと村のへ入ると左右を大きな壁が塞ぎ、正面に長く続く大きな道が続く。壁沿いには屋台やテントが並び、その様子はスラムや難民キャンプにも見えた。


300m程先の区門を潜って左に壁沿いを行けば、ちゃんとした宿があると言うのでひとまず向かう事にしたのだが、そこで美里はヘルガ達が言っていた驚くの意味を知る。


門を潜ると正面には大きな湖が広がっていたのだ。見回せば村は壁沿い左右に広がり、正面は道が途中で崩れているように見え、湖に近いて見渡すと、その湖の形はほぼ正円に広がっていた。


「対岸はは300tトゥリス位あるのかな?」

「大体それくらいじゃないかな、昔の街道はちょうどこの向こう側にあるよ」

美里の質問にヘルガが答えてくれる。


聞けばヘルガもヴィルヘルミーナもここから北にはいったことが無いらしく話でしかその様子は知らないらしい。


この湖が皇帝の大魔法でできた大穴の跡に出来た事をヴィルヘルミーナが教えてくれると美里としてもその強力な魔法に興味を持つ。

広島に落ちた原爆でもそんな大穴が開くことはなかったのだ、土を抉るとなると皇帝の魔法の威力は途方もない力だと言う事になる。

実際は広島に落とされた原爆は威力を最大化するために、地上には落下せず、空中約600mの高さで爆発したため、に地面を大きく抉る事が無かったのだが、美里はそこまでの知識はない。

また長崎型原爆(ファットマン)と同じ型の地上実験では深さ約3m幅約300m程のクレーターである。深さに関してはコンクリートに覆われた堅牢な地下室の起爆であり、頑強な地面を抉ることは殆ど無く、威力は逃げ易い地表へ逃げた事が解る。つまりこの湖が皇帝の魔法によるものであれば単純な爆発とは次元が違う事が解った。


紹介された宿は簡素でベッドがない木賃宿ではあったが湖が望める眺望の良さから宿泊を決める。

すでに日が落ちかけていた為みんなで空いていた屋台をめぐりその日の夕食を買い集めると宿の美里の部屋でミーティングを行う事になる。




「ではロリガ、聞きましょう。主様が『うんち迷宮(ダンジョン)』で大儲けするという話を」

暗くなった部屋を美里の霊魂(ウィル・オ・ウィスプ)が照らし、食事を始めるとエーリカがロリガへと発言の内容を話すよう促した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ