第70話 異世界の秘境!うんちダンジョン③
第70話 異世界の秘境!うんちダンジョン③
070 2 011
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「ヘルガ....も、もしかして赤ちゃん出来た?」
美里はヘルガのある変化に気づき、口を突いて出てしまった言葉に一瞬ハッとする。
ヘルガとの自由気ままな行為を始めて、まだ1ヶ月も経たないのだ、妊娠したとしてもまだ体に変化が起こるにはあまりに早すぎる。
とすれば他の男、商売客の種かとも頭に過ってしまうが、避妊草を小まめに摂取していたヘルガが他の男の種で子を宿しているとも考えにくい。
美里が口にした言葉はヘルガの何か心の奥深い場所へ突き刺さったのだろう、彼女の笑顔が見る見る消え失せその目から生気が失われていく。
「ぷっ」
ヴィルヘルミーナが思わず吹き出し、ヘルガの目から完全にハイライトが消え失せる。
ではなぜこんな話になったかと言えば、ヘルガが楽しそうに「うんち」と叫んだ時である。体型が判別し難い貫頭衣を着ているにも拘らず両腕を高く上げた瞬間に、ヘルガの腹回りがやけにポッコリして見えたのだ。そしてその平らな胸がよりお腹を際立たせてしまったのである。
それを見た美里は、何とも無しに思い付きで口にしてしまったのである。
「ぶひっ」
それはロリガが発した無慈悲なる声。
「え?ぶひ?」
ヴィルヘルミーナがロリガが口にした声に疑問を投げかける。
「ぶひっ」
ふたたびロリガが声を上げる。
「えっと.....もしかして、ぶ...豚さんの鳴き真似かしら?」
クロアが意味に気づきロリガへ恐る恐る問いかければ、ロリガが満面の笑顔でサムズアップをする。
「え?あぁ、見た事無いけど豚ってそんな鳴き声をするのかい?豚ってあれだろ?ヘルガ姉嫁様が住んでた地方で食べる家畜だよね?」
このような流通や情報が乏しく教育体制が整っていない世界では、聞いたことはあっても実物を見る機会がなく、生活圏外の知識は乏しいのだろう。
そんなヴィルヘルミーナの悪意のない問い掛けに、当のヘルガは無言のまま歩き続ける、その様子に美里は地雷を踏んだ事実を理解し戦慄する。
これはエッチや褒め殺しじゃとても誤魔化せないタイプの地雷だと。
「えっと.......カオルは遠回しに私が太ったと?」
やがて意を決したヘルガの冷たい声が周囲に響く。
とは言え、出会った当初のヘルガはあばらも浮き出て、良い言い方でパリコレモデル、悪い言い方でトリガラ体系だったのだ。
中途半端に筋肉量もあったため貧相な印象は薄かったが、間違いなくガリガリであった。
それが僅か1ヶ月足らずで顔は丸みを帯び、浮き出たあばらと凛々しかった腹筋は影を潜め、『中肉』に近づき始めてはいた。
それでもまだまだ痩せているように見えたのだが、明らかにお腹が、お腹だけが不自然にポッコリと出ていたのだ、美里の判断も致し方なしとは言えた、日数的な計算さえ合っていればだが。
「えっと.......ご飯おいしかったもんね?」
美里は恐る恐るとヘルガに声をかけるとヘルガは無言で頷く。
「いいんですよヘルガ、あなたはもっと食べるべきなのです。今まで我慢していたのですから。それ以上に主様の妻なのですから貧相なままではなりません」
犯人はオリガである。
気にはなっていた、なぜかオリガはヘルガを甘やかす。食べたいと言えばいくらでも蜂蜜パン蜂蜜増し増しを与えていたのを美里は知っている。
それ以外にもヘルガが望むままに食べ物を与えていた様子もある。まるで食べさせるのが生きがいのオカンである。そのうえで身の回りの世話も一通りしているのだ、ヘルガが幼児化している理由の一端であろう。
過酷な生活を耐えて来た反動でもあるのだろうが・・・・
短期間で身に付く贅肉等は高が知れているのだが、暇さえあれば甘い物を食べ続け、昨晩も人の頭ほどの大きさの焼いたノワールの肉をペロリと食べ尽くしていた、明らかな暴食ぶりである、内容物があれば当然腹は膨らむし、暴食を繰り返せば胃も大きくなる。その結果がこのポッコリお腹なのであった。
しかしヘルガも女性、最近は身だしなみにも気を使い始めているヘルガの表情は暗い。
「あ、いや...ヘルガは今まで極端に痩せていたから肉付きはもっとあったほうが俺はうれしいよ?」
美里のフォローにヘルガの顔が少し和らぐ。
「でもおっぱいは大きくなってない、おっぱいが足りないままでもうれしい?」
「ちょおま!」
安定のロリガ爆弾である。
「おっぱい.....」
ロリガの無慈悲な爆弾にヘルガは腹をさする手を移動させ、胸をさすると遠い目を始める。
「おっぱい...」
「うぅ....おっぱい」
「お前たちはこれからだから」
なぜか5号(仮)と6号(仮)も胸を押さえるが、10歳過ぎの女の子とすれば、まだ育たなくていいと美里は思う。
むしろ君たち最近まで骸骨死霊だったよね?
「ヘルガお姉ちゃんもロリガを見習って、おおきくきくそだつようにがんばるだ!」
「いや、お前も小さいよ?世間一般では完全に貧乳だからね?それにお前努力した訳じゃないからね?」
どこ目線で言ってるんだこのガキはと美里は憤りロリガに口撃を加えたがそれは更なる波乱を生む事となる。
「ひん.........」
美里からロリガへ向けた言葉はヘルガへと突き刺さっていた、そしてそのダメージは貧乳と言われたロリガ本人よりも大きなダメージを受けていた。
「え?あ。違うよ?ヘルガはほら、そういうのじゃないよ?」
前世でコミュニケーション能力を退化させてしまったため、咄嗟の切り返しがきかない。
「おねーちゃんは貧乳じゃない!」
「お?」
「え?」
たまに出るロリガのスーパープレーに期待をする。
「無乳!」
「無.....」
「え?」
ロリガは痛恨の一撃を放ち、美里達はあまりに無慈悲な言葉に閉口する。当のヘルガの目は既に死人のソレと化している。
「しかたない、ロリガ達はおねーちゃんと違って主におっぱいを貰った!」
エーリカとオリガを指さしどや顔をする。
「あれがロリガの最終形態!いあ、もっと大きくなる!」
エーリカとオリガの胸は確かに平均的なおっぱいから見ても大きい、しかしそれはイコールでロリガに適用されるわけではないし、そもそも今後ロリガの身長が伸びるのだろうか?
そもそも不死怪物が加齢により成長するのであろうかなど、ヘルガとロリガ以外の全員の頭の中に疑問として浮かぶ。
しかし、このチビには一回ガツンとお灸をすえねばなるまい。
「そうだね、もっと大きくなる.....そうか、ばれちゃったか.....」
唐突に足を止めた美里が口を開いた。しかしその口調は普段の彼らしからぬ重い口調であった。その様子に一同が足を止める。
「ロリガこそあるじの理想のたいげん!幼いからだから熟れたからだまで変化する成長をもたのしんでいただくさいこうのにくたい!」
ここぞとばかりにロリガが美里のもとに近づき、胸を張りつつ周囲を見渡す。ヘルガは胸を押さえてさらに表情を暗くする。
「そう.......理想、俺の理想.....わが神の教え.....」
美里から発せられた唐突な言葉に皆が困惑するが、そのまま語りを続けた。
「ロリガのおっぱいはどんどん大きくなるんだ、ヴィルヘルミーナよりも、クロアよりも、エーリカよりも、そしてオリガよりも...」
言わずもがなな見た目の大きさ順である。
「どんどんどんどん...」
「え?ちょっと、旦那様?」
美里の様子にヴィルヘルミーナが僅かながら恐れを感じ始める。
「あるじ?」
状況の不穏さに気づき、当事者であるロリガも明らかにその顔を曇らせる。
美里はそんなロリガを冷たい目で見つめる。
美里はにやりと口の橋を緩める。
「そして....ロリガの体、本体よりも大きくなっていく」
「「「「「え!?」」」」」
その場にいた者達、骸骨死霊までもが驚き声を上げる。
しかしこの場で最も困惑しているのはロリガ本人である。
「それでもおっぱいは大きくなる、頭より、胴体より、そして本体よりも大きくなると、やがて本体から栄養を奪い始める」
「え!?」
さらに続く意味不明な言葉は、ロリガに大きな動揺を与える。
「栄養を吸い取られたロリガはどんどん小さくなって最後は左右に大きく垂れたおっぱいの中心...いやおっぱい核となり、2つのおっぱいの真ん中で生ける肉塊になっちゃうんだ」
「えっ.....?ろりがどうなる?核ってなに?」
「安心しろ、口はきけなくなるが考える心と目玉が一つだけは残る」
「えっ.....?ろりがどうなる?目玉ってなに?」
創造主と言える美里の言葉を、荒唐無稽なものだとは考えることが出来ないロリガは、顔を青くし俄かに震えだすと、周囲は沈黙し息をのむ。
美里はロリガの問いには答えす、ただ無表情にロリガを見つめていた。
「あぁ、白靖様の御言葉ですね」
沈黙を破ったのはエーリカであった。
「なるほど、おなかいっぱい....ですか?」
続いたのはオリガである。そして2人の言葉が正鵠を得たと言わんがばかりに美里は口元を不気味に歪め、彼の視線が向けられているロリガは全身の身の毛がよだつのを感じていた。
「みんな、お肉........お腹いっぱい食べたいよね?」
「どゆこと?あるじ。どゆこと?」
ロリガの中の不安が限界を迎えよとしていた。
「簡単な話ですよロリガ、昨晩ヘルガが言っていたでしょう?」
エーリカが優しい声でロリガへ説明し始めると、意味を理解してしまった者が息をのむ。
「回復させれば永遠にお肉が食べれるようになるだけです。ですよね、主様」
エーリカの言葉に美里は悪い笑顔を作る。
「うわーん!うわーん!たべないでえええええ!!!」
エーリカの言葉の意味を理解したロリガは大声で泣き始め美里へ縋り付いた。




