第69話 異世界の秘境!うんちダンジョン②
m( _ _;)m タイトルからお察しいただけるとは思いますが、しばらくは汚い言葉が連呼されます。
何卒ご容赦をお願いします。作者も黒糖かりんとうを食べながら頑張っております。
第69話 異世界の秘境!うんちダンジョン②
069 2 010
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美里達が街道を歩き始めて凡そ2時間ほどの事であった、驚くほど真直ぐな街道であったため、森の中の移動とは比べるべくもなく順調な移動へと変わり体力的な心配が解消された事は美里の気持ちを明るくさせる。流石は街道、過疎街道をは言えやはり街道、ビバ街道である。
2時間ほど進んだ時に、予想されていた最初の問題が発生する。
初めて人間の集団との遭遇である。
「主様、前方から冒険者らしき集団がやってくるようです」
「うん?」
街道なのだし、この先には村もある、砦もある、迷宮もある、まぁ迷宮は『うんち迷宮』ではあるが、人とすれ違う事に美里達は想定はしていた。
「旦那様、旦那様、何ぼーっとしてるんだい?エーリカは警戒してくれって言ってるんだよ?」
「カオルは凄い魔術師だから盗賊だろうと冒険者だろうと問題ないもんね。あはは」
ヴィルヘルミーナの言葉にはピンと来なかったが、ヘルガの放った言葉でやっと意図を理解し自らの警戒心の薄さに少し恥ずかしさを覚える。
とはいえ異世界に来て1ヶ月も経っていないし、死霊秘法なんてチートを持っていると警戒心が育つどころか緩んでしまうと言うものである。
更に後ろから来るのであれば、追手を用心する事もある、しかし前方であれば追手ではない、問題となるのは野党物取りの類であるが、ギルド死霊秘法の戦力であれば問題はないと美里は考えていた。
事実アニマルズだけで大概の集団は蹴散らせてしまう未来しか見えない。
「どの位先にいるの?」
美里がから見える範囲にはその姿は見えていない、真っすぐに伸びる道の為、その視程はかなり先になる。
「あぁ、どうやら商隊の護衛をしている冒険者の様です。警戒は必要ですが何かあっても問題にはならない程度の戦力です。先行している冒険者は約1kt弱、本体がその後ろ100tでのようです」
前方を警戒している骸骨死霊からの情報の様であろうが、結構な距離でもしっかり連絡が取れている様である。
「5号、6号、黒箆鹿に乗って居なさい」
「「はい」」
エーリカが指示を出すと2人は可愛く返事をし、素早く飛び乗る。大きな黒箆鹿では、小柄な2人では黒箆鹿達の首から上の大きさよりも小さく、正面から見れば隠れて見えなくなってしまうのだが、ふと見れば2人は黒箆鹿の背中に乗ったと思うと背中に跨るのではなく背中の上に立ち上がり角をハンドルや手綱かの様に握る。
しかし大きいとはいえ背中で立ち上がるのは中々にバランス感覚が必用ではなかろうかと思い美里は一瞬心配をしたが、5号(仮)も6号(仮)もエーリカ達と同じ高位亡霊であり運動神経もズバ抜けていたため直ぐに問題が杞憂だと言う事を悟る。
そうこうしているうちに美里の視界にも、件の護衛冒険者らしき人影が見えはじめた。何れもが背の低くも筋肉の塊と言った体格に皮鎧を着こみ槍を手にしたドワーフが2人である。
先方も美里達に気づいた様子が見て取れた。美里達からはまだ視認で出来ない後ろの本隊であろう、何やら合図をしたかと思うとその場で立ち止まった。おそらくは美里達の様子を伺っているのだろう。
暫くすると本隊から数人がドワーフ達と合流し、美里達を暫く観察、明らかに警戒しているようである。
当然である、美里達が見えると言う事は当然巨大なノワールとネーロ、黒箆鹿2頭が見えるのだ、警戒してしかるべきである。
「エーリカ、私が挨拶してくるよ、こういうのは慣れてる人間がいいだろ?」
「おまかせします」
「話がつくまで皆ここで待ってておくれ、連中はノワール達が怖いんだろうさ、フェン、クロ一緒に来てくれるかい?」
「ワン」
「わん」
ヴィルヘルミーナがエーリカに了承を得ると、ヴィルヘルミーナは先行し、2頭もヴィルヘルミーナに歩調に合わせ軽快な足取りで追従する。
どうやらフェンリル狼の名前は『フェン』に決まった様だが先に報告してくれてたら嬉しかったと思う美里である。
「まてまてまて!獣耳族族の嬢ちゃん、そこで止まってくれ!その狼と向こうの黒い箆鹿は嬢ちゃん達が従えてるのか!?」
「そうだよ、みんな利口な子達だ、妹たちが頭に乗ってるの見えるだろ?命令しなきゃ暴れない賢い子達だよ。そう怯えないでおくれよ」
ヴィルヘルミーナは武器を構え怯えるドワーフ達に、武器すら抜かず余裕の笑みでにこやかに返すと、クロとフェンがヴィルヘルミーナの左右に尻尾を大きく振り擦り寄ってくる。
そんな二頭の頭をヴィルヘルミーナが優しく撫でると、害はないだろうと言わんがばかりに微笑む。しかしクロの体高1m強、フェンはさらに大きい1.3m程あり首を上げれば平均的に小柄なドワーフ達よりも大きいのだ、目の当たりにしたドワーフ達から見れば恐怖でしかない。
その後も慎重なドワーフは本隊を控えさせたまま近寄ってくる美里達をその場で待つ事になった。
「ワシ等はデルーカのアホ紹介の者でワシは専属の護衛隊の頭やっちょるヴィクトルっちゅーもんだ」
「アタシたちもデルーカから来たギルド死霊秘法で今、ウロステの迷宮を目指してる」
「ウロステ?!うんこ迷宮か?!そんだけの獣つれといてか?」
「あぁ、実際潜る訳じゃないんだ、北に行くついででね、見学する予定だよ」
「そうか、身形もいいしそういう事か....うむ、その身なりで物取りの類ではないのは間違いなさそうじゃろし、警戒させてすまんの」
普通に考えれば、この世界で日銭稼ぎの冒険者が金にならない見学なんて事をする訳もない、ヴィクトルはギルド死霊秘法が貴族の道楽や護衛のギルドと判断をしたのだろう。
「警戒するのは仕方ないさ、とりあえず先に進ませてもらっていいかい?」
「うむ、獣だけ気を付けてくれりゃいい、旅の無事を祈ってるぞい」
「ありがとうよ、あんたたちの旅にも無事を祈らせてもらうよ」
「おう、ありがとうよ嬢ちゃん」
ヴィルヘルミーナは笑顔で答えると、両手を振り無事に話がついた事を美里達へと伝え、それを確認し美里達もゆっくりと歩みを進めた。
ドワーフの一人が本隊へ伝言に走り状況の説明をしていた時である、どんどん近づいてくる一向にヴィクトルたち護衛が目を見張る。
「うおぉおおあおぉおぉおおお.....デカイのぅ、しかも黒い箆鹿なんて初めて見たわぃ」
「見たところ筋肉の付き方もやばいのぅ」
「あんなのが向かってきたらひとたまりもないの」
判っていたとはいえ、ヴィクトル達も大型の黒箆鹿が向かってくる姿にはかなりの緊張を覚えたようで身を竦めていた。
「みなさん、驚かせてすいません。ウチの動物達は勝手に暴れたりしないので、どうぞ安心してください」
顔を青くしたヴィクトル達とすれ違うと、美里が頭を下げて声を掛ける、本来は代表者として軽く見られてしまいそうな行為として避けたい行為である。
しかし黒箆鹿達を始めとしたギルド死霊秘法の迫力は絶大な様子で軽視される処か不気味さが増していた。その為かエーリカ達も既に美里の低姿勢を咎める事は無い。
とは言え、温和そうなカオルを見ると少々気が緩んだのかヴィクトルも一息つくことが出来た。
「兄さん、女だらけのパーティーで男一人かいの?」
「アタシの旦那様で、うちのギルドのお頭で、ここにいる女全部旦那様の女だよ」
「はぁあ!?」
ヴィクトルは警戒を弱めたのか軽い挨拶代わりの軽口のつもりであったが、ヴィルヘルミーナの発した言葉に驚愕する。
勿論、荒事に縁遠そうなカオルがギルド頭と言う事も驚いた、ギルドの戦力にも驚いた、しかしソレ以上にこれだけの数の女を相手にするのかと言うカオルの精力にも言葉を失う。
「ヒュム族に双角族に獣耳族族か...世の中にゃぁ凄い男がいるもんじゃなぁ」
「まったくうらやましいの」
「この数を相手してたら干乾びちまうぞ.....」
「子供も多いな」
「娘じゃろ?流石に」
護衛達の横を通り抜ける時に聞こえた内容に、美里もちょっと恥ずかしくなる。
美里が商隊の本隊の横に差し掛かる時であった、馬車の御者台から一人の男が降りると笑顔で近寄って来る姿が見えた。
身形もよく危険な気配はなかったが、美里の前にエーリカが立ち塞がり男を牽制する。
見たところ50代半ばと言う所であろうか、身形がよく体格もしっかりしている。ガッツリとした髭を蓄えていた。
「やあやあ、ギルドの皆さん初めまして。私はこの商隊の商隊主オーケ=アホと申します。ぜひ皆様の取り纏めの方へ挨拶をさせて頂きたいのだがよろしいだろうか?」
巨大な狼と巨大な黒箆鹿を目の前に動じることなく、護衛一人のみを伴ってオーケが美里達へ近づいてくる。
クロとフェンがオーケに近づきクンクンと匂いを嗅ぐと流石にオーケの笑顔も引き攣ていたが、クロが人吠えすると警護の男とともにビクリと肩を跳ねさせる。
どうやらクロたちはオーケに敵意がない事を匂いで嗅ぎ分けていたようで吠えたのは彼に敵意が無い事を認めたた合図のようだ。犬には緊張や敵意等の感情、はたまた健康状態や個体識別まで嗅ぎ分ける事が出来ると言うのは本当なのだろう。
「此方が我々ギルド死霊秘法の代表であらせられるカオル様で御座います」
エーリカの目配せを受け、クロアが一歩前に歩み出ると美里の代わりにオーケ達へ挨拶を行う。彼女はギルド死霊秘法の中では、この世界の知識を一番持っていると言う理由で何となく秘書ポジションに収まりつつあるのだ。
そこからは美里とオーケの間で簡単な世間話が行われた。
オーケは箆鹿を従えた上にデルーカでは珍しい双角族、なにより子連れでハーレム状態のパーティーに興味津々の様で色々と話し込んでしまう事となった。
オーケ達はデルーカや周辺地域で手広く運搬や仲買を商っている商会で、規模としてもデルーカでは知らぬ者はいない商会らしく、今回もデルーカ以北にある2つの村で大商いを行った帰りだったと笑顔で話してくれた。
ついでにこの先の砦や村についても色々情報をくれた。その中でもありがたい情報なのは、北へ向かう街道は山賊、盗賊のような輩はあまりいない事や最北の村の周辺で最近たてつづけに迷宮が見つかった事など興味深いものであった。
新しい迷宮に向かうのではなかったのかと驚かれたが、物見遊山で北の地の遺跡を見に行くだけだと告げると暫く思案し、何度か頷いて「ナルホドナルホド」と一人納得し、デルーカの本店やデルーカ以北の村々にある支店をどうぞ御贔屓にと書付をくれた。
どうやら書付を見せれば色々と便宜を図ってくれるらしい。
去り際に見た事もない程の神々しくも美しい毛並みを持ち、狼としても大型であるフェンを是非とも触りたいと言うので「干し肉をあげると触らせてくれると思いますよ」と冗談を言えば、護衛も交えておさわり大会が始まってしまった。
途中でクロが微妙な目線を送っていたのだが、大丈夫、お前は血盟デスマーチ軍団最強だと言う事はみんな知っているからと美里が心の中で慰める。
だいぶ時間を取られてしまったが、オーケやヴィクトル達から色々な情報を仕入れることが出来た。
商隊から得た情報にエーリカ達と今後の旅程を立て直すこととなったが、何もない徒歩の旅では気を紛らわすに良い話題である。
「うんち迷宮征服!」
「うんちー」
「うんちー」
「うんちー」
ギルド大人メンバーと予定を組み立てていると、ロリガが元気に余計な話を蒸し返す。
それに続いてクロエ、5号(仮)、6号(仮)が続く。クロエはなんとなく解るが、5号(仮)、6号(仮)はついこの前までは威圧感たっぷりの骸骨死霊だったのにも関わらず、受肉したとたんにドンドンと幼児化している気がするのは気のせいだろうか?
「うんちー!!」
「ヘルガ姉嫁様....」
意外にもヘルガまでが楽しそうに幼児化している。
20歳とは言え、世の荒波に揉まれた高身長で宝塚に入っても通じてしまいそうなヘルガ迄が幼児化しているのは少し気になるが・・・
チビッ子みたいなヘルガたんも可愛いに過ぎる。
などとヘルガを微笑ましく愛でていた時に美里はヘルガへの違和感に気づいてしまった、そして美里がついその事実を口にする。
「ヘルガ....」
その事実は口にしてはならなかった・・・
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わーい、ブクマが増えてる~。
いいねやブクマ本当にありがとうございます。
寿命がのびる~。




