第68話 異世界の秘境!うんちダンジョン①
本当にすいません、今回はちょっと品が無いお話になります。
第68話 異世界の秘境!うんちダンジョン①
068 2 009
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「じゃあとりあえず街道へ向けて移動しますか」
追手がかかっていない事を確認しつつも、不安が残っていた事もあり様子見をしていた小心者の美里も丸一日追手がかかる様子が無い事を確認した事に加え、骸骨王による迷宮封鎖が都市軍の足止めとなった事で街道を使った移動の安全性が跳ね上がり、ヘルガやヴィルヘルミーナ、何よりも美里自身の体力を考えると楽に移動できる間は、平坦な街道を使い楽をしようと言う事になった。
とはいえ全員が街道を行くわけではなく肉体を持つギルドメンバーと黒とフェンリル狼(仮)、黒箆鹿のノワールにネーロである。
しかし街道で人とすれ違えば、クロ達はギリギリセーフだが黒箆鹿2頭は大騒ぎになりそうである。しかし、その時はその時である、聞く所では大きく開けた街道では稀に箆鹿を見かける事はあると言うのでなるようになるだろう。
骸骨死霊や塊魂達は不可視化して森の中や空を飛び。広範囲にわたって周囲を警戒し進む事になる。
そして驚いたことにエーリカにも権能が発生していたのだ。聞かなければ教えてくれなかったのは何か寂しいのだがどうやら美里の『直接』の眷属を指揮する事が出来る軍団長と言うスキルである。
何がすごいかと言えば、ある程度の距離に居れば一斉に命令を下したり任意で報告を受け取ったり視界や聴音を共有することが出来るのだ。
骸骨死霊達はエーリカが細かい指示を出さなくてもちゃんと仕事をこなしている事に不思議に思い聞いた所で発覚したのだ。
そして短期間ではあるが、角が生えた時に発言したこのスキルは少しづつ影響範囲が広がっていると言う。
ロリガを筆頭に何故か美里の眷属は報告漏れが多い、怖いから事前に報告してほしい所であるのだが、そこで一言命令することが出来ないのが美里なのだ。
「おぉ.....デルーカが帝国の北端とか聞いてたから北の街道はボロボロの田舎道だと思ってたのに.....」
街道に出た美里は目を見張る、そこには石畳の引かれたローマ式街道にも見劣りしない舗装路であった。
道路幅もローマ式街道と同じ程度、およそ4m程であろうか、此方の世界の単位では2t。小型の馬車であれば無理なく通れる程の幅である。
実際に足を踏み入れると、驚く事程に歩きやすい。もしかすると魔法による舗装技術が有るのかもしれない。都市の下水事業にでも魔法で土を固める話も出ていたので、そういった技術は発達しているかも知れない。
「さてこの街道沿いには関所を超えた先に村が2つ、そこから徒歩で2日の場所に目的地の死者の都市か」
「左様でございます、関所は昼前に通過をして夕方には最初の村へ到着予定です。距離にしておよそ48km....24kt程になります」
歩きながらエーリカが旅程の説明を始める。
「結構歩くね...」
「あはは、疲れたらノワール達に乗せてもらえるんだから大丈夫だよ!」
美里が今日の移動距離を耳にして非常に嫌そうな顔をするがヘルガは新たなる冒険を楽しんでいるのか非常に明るい表情で答えるとノワールとネーロが肯定するように嘶く。
「ミーカから聞いた話では、最初の村はそこそこ大きく、中央部は東外壁区よりも綺麗らしいですね。加えて7年程前に村の近くで小さな迷宮も見つかり冒険者も少なからずいる様です」
「まじか、どんな迷宮なんだ?」
エーリカのプチ情報に興味がわいたのか美里が驚いた声をあげる。
「少し不思議な迷宮だったよ、でも狭いし長いし中に居る怪物も面倒過ぎるし冒険者同士のトラブルも多くて女だけの冒険者は入れなかったよ」
意外にも語り始めたのはヘルガである。
「ヘルガ姉嫁様はあそこに入ったのか、凄い度胸あるね」
「アタシたちは物を知らなかったんだよね、あそこに入ってから情報って大事なんだなって覚えたよ」
「あはははは、大きいダンジョンと違ってアレだからねぇ」
「あそこじゃ怪物よりも冒険者の方が遥かに面倒だよね」
ヘルガとヴィルヘルミーナには好まれなかった迷宮の様だが、未だ迷宮知識の乏しい美里にはイメージが付かない。
「ヘルガお姉様、そこはどの様な迷宮なのですか?」
5号(仮)が可愛らしく首を傾げて尋ねる。
「うふふ、通称うんち迷宮って呼ばれてるんだよ」
「「「うんち!?」」」
美里を始めヴィルヘルミーナ以外のギルドメンバーが思わず声をあげてしまう。
それどころかあまりの名前に近くで不可視化していた骸骨死霊達も思わずヘルガに注目してしまう。
当のヘルガには見えないが、朧気ながらも姿が見えているヴィルヘルミーナはその気配に思わずビクリと体を跳ねさせる。
仲間とは判っていても、骸骨姿の骸骨死霊の集団はなかなか慣れる物でもないのだろう。
ヴィルヘルミーナの中では、この死霊達を美里に頼んで早めに可愛い姿に変えさせようと思案し始める程である。
「ヘルガお姉様、なんでうんちなのです?」
今度は6号(仮)が耳をピンとたててヘルガへ問いかける。気づけば6号(仮)も5号(仮)もヘルガの服をチョンと掴んでいて妙に保護欲を掻き立てる。
そんな可愛らしい姿に、ヘルガもヴィルヘルミーナも思わずにやけている。
しかし美里としては昨日まで骸骨死霊だった事が頭を離れず、少し微妙な気持ちである。
「うんち迷宮、本当にうんちだらけなんだよ~」
「「?!」」
ヘルガの答えに5号(仮)も6号(仮)も表情を失う。
「どうゆう事なの?」
流石に気になったのか美里が口を挟むと、非常にわかり易くヴィルヘルミーナが説明を始める。
内容は単純で迷宮の造りに理由があった。
うんち迷宮の形状は直径6t、約12mの縦穴に1tに満たない幅の螺旋状の階段がただ延々と続いているという。
それは迷宮なのかと言う当然の疑問にヴィルヘルミーナが偶に横穴があると言うのだがその横穴も様々で、大きくても人が2~3人はいるのが精々の窪みが殆どだと言う。
「階段って人工的なやつ?」
そこまで聞いて美里には階段と言う事に疑問を持つ。
「石で出来た棒?」
「棒だね」
ヘルガとヴィルヘルミーナが顔を見合させる。
どうやら四角柱が壁に刺ささり、等間隔にステップを作り螺旋階段を形成しているらしく、下を見るとステップとステップの隙間からも下が見えると言う、高所恐怖症であれば秒で気絶出来る恐ろしい造りらしい。
更に驚かされた情報は、基本的に壁も石垣の様な壁らしく、石と石の隙間からスライム状の怪物が湧き出すらしいのだ。
そして、『うんち迷宮』異名の原因だが・・・
「狭いダンジョンで一本道の螺旋階段だから、もうその場で皆致すんだよ」
ヘルガが渋い顔で言い放つ。
それは確かに女性冒険者は入りにくい迷宮である。更に言えば隙間だらけの螺旋階段、下に人が居れば確実に垂れていく、オシッコならば尚更である。
万が一上から垂れてきたらと思えば気の荒い冒険者である、殺し合い待ったなしなのだ。
「凶悪な迷宮だな....寧ろなんでそんな迷宮に潜るんだ?」
「金だね」
「金だなぁ....」
ヘルガもヴィルヘルミーナも苦笑いで答えた。
話を聞けば、壁から現れるスライム状の生き物の体に砂金が混ざっていると言うのだ、中には一日で金貨5枚分の砂金を採取したと言う話もあり、何かを捨てれば割のいい迷宮ではあるらしい。
生息しているスライムも慣れてしまえば子供でも倒せる様な強さらしく、『うんち迷宮』で怖いのは冒険者なのだと言う。
確かに狭い場所かつ足場も悪い、転べば底なしの穴に真っ逆さま、リスクも計り知れない。
ついでに言えば、『うんち迷宮』のゴール地点ともいえる場所へたどり着いた冒険者はいないと言われ、過去に10日掛けて下へ潜った冒険者も居たが物資の限界で引き返し帰りの昇り階段が地獄の様な辛さであると周囲に話した、そして毎日絶え間なく降り注ぐ『うんちと小便』は深く潜れば潜るほどその量が増すと言う言葉に深部へ潜る冒険者はいなくなったのだ。
現代地球人の美里には、そこまでして何故潜るのか、本気で悩んでしまう。
しかし18世紀のロンドンには下水ハンターなる仕事もあったのだ、金になるならとライバルが少ない『うんし迷宮』に魅力を感じる人間も居るのだろう。
「でもそれってもう冒険者じゃないな....」
「そりゃ、デルーカでも浅瀬の薬草採取人なんかは冒険者と呼ばれず採取人って言われるしね」
ヴィルヘルミーナは呆れたように笑う。
「あるじなら『うんち迷宮』でも楽勝、大儲けの予感まったなし!」
ロリガが余計な事を口走った。
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