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第64話 異世界の森の冒険②

第64話 異世界の森の冒険②

064 2 005 

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「エーリカ!エーリカ!クロがどっか行っちゃったよ、どうしよう!」

美里は突然のクロの行動に焦り軍団(レギオン)軍団長(レガトゥス・レギオニス)を任せているエーリカへ助けを求める様に声を掛けた。


「主様、クロのあの速さに追いつける眷属はおりません」

「この森にも怪物(モンスター)が出るんだよね?クロ1匹で大丈夫か?」

美里にとって未知の溢れる異世界は常に不安が伴う。

生前の世界でも森と言う場所は、そもそも危険であると認識している。


更に、この世界には怪物(モンスター)が実在しているのだから、美里としてはどうしても心配になってしまう。


「あぁ、そういったご心配で御座いますか。恐らくクロはデスマーチ軍団(レギオン)にて最強です、クロが敵わない様な怪物(モンスター)がいるとも思えません」

「クロ...つよいよねー」

「ぁあ、迷宮(ダンジョン)での戦いを見てる限り小さなドラゴンって言われても信じちゃうよな」

エーリカの評価にヘルガも呆れつつ同意し、ヴィルヘルミーナに至っては物凄い比較対象を持ち出してくる。


「え?クロってそんなに強いの?じゃあエーリカは2番目?」

骸骨王(モノポリー)となるでしょう、触媒の御力(みちから)を得ておりますので格が違います。しかし格としては骸骨王(モノポリー)の方が上ではありますが、骸骨王(モノポリー)もクロのブレスには耐えきれないでしょう。」

「まじで?」

「クロに関しては火力特化、相性の問題もございますので正面切っての1対1であればクロに軍配が上がります」

「まじかぁ~」

美里としてはペット枠のクロが最強と言う事に少なからず衝撃を受けてしまった。


確かに迷宮(ダンジョン)での怪物(モンスター)氾濫(スタンピード)では圧倒的な殲滅力を見せていたので規格外の強さではあると理解もしていたが、エーリカやオリガより強いと言うのは美里とってまったくの予想外である。それ以上に骸骨王(モノポリー)の評価も驚きである。


「旦那様、アタシが知る限りクロより強い生物とは会ったことはないね」

上級の冒険者ヴィルヘルミーナの評価だけに美里も状況を受け入れ少し気を楽にする。



「そうだ!クロは何しにいったの?」

「一直線に向かっていきましたので何か獲物でも見つけたかもしれません。念のため骸骨(スケルタル)死霊(レイス)を数体向かわせましょう」

エーリカは美里の心配を払拭する為なのかニコリと笑顔で答え、エーリカが言う事なのだからと美里もひとまず納得する。


エーリカの指示で20体の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)がクロが向かった方向へと飛んでいった。



「では我々は食事の準備を致しましょう」

オリガとロリガが焚き火の準備を終え、手頃な木の枝を加工した串に箆鹿エルクの肉を刺し焼き始めていた。


オリガの指示でロリガとJKヘルガがせっせと仕事をしている。


意外にもロリガは指示をすれば仕事はちゃんとやるし丁寧である。


「カオル、新しい子の名前はどうするの?」

「あ」

完全に忘れていた。そしてヘルガの質問でJKヘルガが心なしかソワソワし始める。


「どうしよう...ちょっと真剣に考えよう...とりあえず暫定で5号(仮)って呼ぼう。ロリガの時みたいに適当につけるわけにもいかないしな」

「ぶふぉ!」

美里の余計な一言にエーリカが噴き出し、ロリガが酷い衝撃を受けている。


「カオル!そんな言い方したらロリガが可哀そうでしょ!」

ヘルガが呆然とするロリガを後ろから抱きしめると抗議を始める。


「そーだそーだ!謝罪と賠償を要求する!」

此処はチャンスとロリガが気力をを取りし美里への猛抗議を始める。



物凄くウザイ・・・



「旦那様、エルクの骨はどうするんだい?」

「忘れていた、実験も兼ねてコイツもアンデット召喚しよう」

ヴィルヘルミーナの質問で思い出し、死体使役(コープスサーバント)を発動する。階位(ランク)値こそ少し低くしたが物質(マテリアル)値と霊体(アストラル)値はクロと同程度になるように意識する。


初めて目の当たりにするアンデット召喚、構成されていく箆鹿エルクの肉体は冒険者のヴィルヘルミーナやヘルガを以てしても、グロテスクに感じている様子で、直視はしていたが嫌そうな表情を作っていた。


黒い(もや)に包まれた箆鹿エルクの骨は徐々に肉を付け、徐々に肉体を完成させていったのだが、その毛皮は生前の様な鹿毛ではなく漆黒、長さもやや長めだった物が更に伸びていた。


「凄い!」

「ふぁぁ~」

ヴィルヘルミーナは思わず叫び、ヘルガは開いた口が塞がらない。


「黒くなったか....」

美里は今回の召喚では箆鹿エルクのアンデットは銀毛になる様にイメージしていた、しかしソレは叶わなかった。


5号(仮)を含めて今回も魔法発動時にイメージは要求されなかった、自分で強くイメージしても反映がなされなかった。


そもそも要求される感覚が無かったのは何でだろうか?


しかし階位(ランク)値も物質(マテリアル)値も霊体(アストラル)値は思い通りであったと感じる。


思い返してみれば骸骨(スケルタル)死霊(レイス)を量産した時も、イメージを要求される感覚が無かった?

当たり前のように召喚していたが、骨と言う媒体の有無に関わらず要求の条件が判らないと思った時に、ひとつ原因に思い当たった。


しかし、ソレを試す前に体が大きく揺らされ、ヘルガが話しかけていた事に気づく。


「ねぇ!カオル!」

「ん、あごめん。どうしたのヘルガたん」

「この子に触っても大丈夫なのって聞いてるでしょ!」

プンスカしているヘルガも極めて可愛い。


「大丈夫じゃない?」

「え...でもちょっと怖いよ?」

「旦那様、箆鹿エルクは割と獰猛なんだよ?」

美里は驚いた、考えて見れば自分で使役しているのだから問題は無いと思い込んでいた。

実際に問題は無いのだが、元々この世界に住む人間にとっては箆鹿エルクが獰猛な動物であり物凄く大きい、当然のように野生動物なのだ。


怖くて当然である。


「そっか、すまん。黒箆鹿エルク、ヘルガとヴィルヘルミーナの言う事をよく聞いて何かあれば護ってやってくれ」

美里が黒箆鹿エルクに命じるとブルンと(いなな)き頭を縦に振る。


「カオル、触っても大丈夫?」

「大丈夫だよ」

ヘルガの恐る恐るの問いに美里が優しく答えると再び黒箆鹿エルク(いなな)き、ゆっくりとヘルガに頬を寄せる。


「ふっわふわ!」

ヘルガは黒箆鹿エルクに触れるとその柔らかさに驚き、思わず抱き着く。


「うわ!ふっわふわだ!」

ヴィルヘルミーナもヘルガのはしゃぎ様に釣られ思わず抱き着いている。


「やふうううううう!」

「あららあああああい!」

何時の間にかロリガとクロエが黒箆鹿エルクの上に跨っていた。


「うわ!うわ!いいないいな!私も乗りたい!」

「あ、アタシも!アタシも!」

ヘルガとヴィルヘルミーナも黒箆鹿エルクが無害と理解し、チビッ子2人の楽しそうな姿にテンションを加速させると2人の意を汲んだかのように黒箆鹿エルクがゆっくりとしゃがむ。


「いいの?のっていいの?」

質問しつつも、興味が勝りヘルガが背にまたがると黒箆鹿エルクの巨体にはまだ余裕があるのか、黒箆鹿エルクがヴィルヘルミーナに目線を送り乗るように促す。

勿論ヴィルヘルミーナも嬉々として飛び乗り、騎乗者を振り落とさぬよう確認するかのように黒箆鹿エルクはゆっくり立ち上がる。


「うわーおっきいいいい!」

ヘルガが歓喜する。


「うわぁ、こりゃあ凄いね!」

ヴィルヘルミーナも満面の笑顔を見せてくれる。



「旦那様、コイツの名前は決めたのかい?」

「ん~、ノワールでもいいか?」

ヴィルヘルミーナに問われ、黒いからと言う理由でノワールと呼べば、黒箆鹿エルクも問題は無いと答える様に縦に大きく首を振り(いなな)く、美里にはノワールが快く了承してくれた事が伝わった。


「ノワールで決まったよ」

「そっか、ノワールよろしくな!」

「よろしくね!」

2人がノワールへ語り掛ければノワールも返事を(いなな)きで返す。


「やふうううううう!」

「あららあああああい!」

チビ2人も楽しそうで何よりである。



「よし!のわーる、走れ!」

「あららあああああい!」

「ぶるるん!」

ロリガの命令に、ひと(いなな)きするとノワールがゆっくりと歩きだす。


ヘルガとヴィルヘルミーナが走り出すのかと一瞬身構えるが、どうやらノワールは背中の騎乗者達を気遣い早足で程度の速度に抑えてくれているようである。


賢い!




どうやらクロに続き動物シリーズは大成功である。




ヘルガ達がノワール騎乗を楽しんでいる間にオリガとクロアと5号(仮)がノワールの肉を頃合いに焼き上げ、食事だと呼び戻す。


ノワール本人の前で彼の肉を食べるのもシュールと言うか、とても気まずい。

どうやらヴィルヘルミーナも同じ考えの様で目線が合うと美里と2人で苦笑いをするが、他のメンバーは気にもせず、予想外に美味しい箆鹿エルク肉を堪能していた。


美里が一口目の肉を咀嚼し終わろうとした時、ノワールが森の方向に居直り、じっとその奥を見つめる。


美里もその様子に気づくと、すこし緊張しつつその方向をみる。



「クロが戻って来たようですね」

エーリカは向き直らずに肉を食みながら美里へ問題がない旨を伝えた。

暫くすると既に日が落ち掛け、暗く陰った森の奥から、自分の体よりも大きな何かを咥え、引きずり走ってくるクロが姿を現す。


クロが皆の元に戻って来たかと思うと、ヴィルヘルミーナの前に加えて来た獲物を放った。

ドサリと落ちたその塊は狼、黒より2周りは大きい灰色の毛を持った立派な狼の死体であった。



灰色狼(グレイウルフ)?!もしかして、コイツを見つけて取って来てくれたの?」

ヴィルヘルミーナが目を大きくして驚く。


「わん!」

クロはその通りとヴィルヘルミーナへ向かい可愛く吠えると、美里へ顔を向けもうひと吠えする。


「フェンリルが欲しいってヴィーが言っていたのを聞いて、森の中に探しに行ってくれたのか!?」

「わん!」

クロは自慢げに答える。


「うわぁぁクロ、お前は本当に賢いね。強いだけじゃなくて優しいくって賢いんだね!」

「わん!」

ヴィルヘルミーナもこれには大喜びでクロを撫でまわすと、クロも嬉しそうに尻尾を振る。


「旦那様!こいつでフェンリルを作ってくれ!」

ヴィルヘルミーナは興奮してクロに負けず劣らず尻尾をブンブン振り回す。






「その前に一つ試したい事があるんだ」






美里は死霊秘法(ネクロノミコン)を開きページをフリックし始めた。

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いつも拙作『異世界のんびりネクロ生活』をお読みいただきありがとうございます。

イイネやお気に入り登録を頂けている皆様のお陰で更新が頑張れています、本当に皆さんありがとうございます。

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