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第56話 異世界で厄介事に巻き込まれます⑦

第56話 異世界で厄介事に巻き込まれます⑦

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「主様、この私の今の体では迷宮ダンジョンに戻ると騒ぎになるやもしれませぬ!」


美里が部屋を出ようとした時、ここに来て大きな問題が発覚した。『古戦場で死体漁りする骸骨の王』フィギアを媒体として強化されたモノポリーは、物質(マテリアル)体となり装備も具現化したため、物質(マテリアル)体が自力での不可視化が出来なくなり、なおかつ空が飛べなくなってしまったのだ。


このまま迷宮ダンジョンへ帰れば流石に大騒ぎである、歩いて1時間の道のり、日も落ちたこの時間に骸骨(スケルトン)が街中を歩いていたら怖いに決まっている。


否、この時間で無くても街中で無くても絶対に怖い!またしても美里の浅慮による大失敗である。


「人に見られず平和的に迷宮(ダンジョン)へ戻る方法を考えないといかんな、このままでと迷宮(ダンジョン)広場に戻るだけでも大騒ぎだ」

「それについては骸骨(スケルタル)死霊(レイス)達を使って空から移動可能で御座いますのでダンジョン入り口までは問題ございません」

美里の嘆きにあっさりと回答が出る。



「空飛べるんかーい!なら俺らも逃げる時はそれ使えるかな?」

「主様やクロアやロリガは問題ありませんが、ヘルガ奥様とヴィルヘルミーナ奥様は死霊(レイス)に触れるだけでお体に悪影響が考えられます」

「だめかぁ....」


「おくさま.....ヘルガおくさま....うん....おくさま.....」

深刻な話なのだが、毎度ヘルガは嫁ネタになると過敏に反応する。


「でも迷宮(ダンジョン)迄は良いとして、門も封鎖されてたりするし、中に入る時には騒ぎになるよね?」

美里の見た所、都市軍兵も多く結構厳重な封鎖でもあった。


「ふむ、そもそも入り口とは言え迷宮(ダンジョン)ですから、モンスターが現れても不思議ではありますまい。主様が滅多矢鱈(めったやたら)な殺生を好まれないのであれば私にも策は御座います。極力は殺さずに入りましょう」


「大丈夫?マジで?」

「お任せください我が主様」

骸骨の為、表情は解らないが恐らく声色から察するに笑顔なのだろう。そこは信じるしかない。


「では、私は迷宮(ダンジョン)へ侵入し中層迄を完全に制圧してまいりましょう、恙無(つつがな)く完遂した後は速やかにご報告申し上げます」

「ごめんね、なんか現場の面倒な仕事ばかり押し付けて。落ち着き先が決まったらすぐ連絡するね」

「恐れ多い事にございます。主様が満足できる結果を出せるように全身全霊を以て当たらせていただきます」

「頼むよ、骸骨の王様」

「賜りましてございます」

モノポリーは美里からの指令を受け、目立たぬようにと窓から飛び出すと複数の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)達に支えられ空を飛び迷宮(ダンジョン)へと向うと入れ違いにラヘイネンペラヘのアジトの偵察に行っていた骸骨(スケルタル)死霊(レイス)がインスラヘと戻って来た。


「主様大変お待たせいたしました」

一体の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)が外からやってくると恭しく礼を取る。


「どうしだった?」

「どうやらラヘイネンペラヘに来ている都市軍は主様を罪人として捕らえる腹づもりの様子でした、御許可いただければ殲滅いたしますがいかがいたしましょう?」

「罪人?!なんの?」

「そこまでは判り兼ねます」


「面倒臭いけど、都市外へ逃亡決定だな」

美里が最終決断を下す。


「ロリガは荷物を整理して忘れ物無い様に俺の荷物を纏めといてくれ」

「うぃ」

「ヘルガとヴィルヘルミーナも荷物を纏めて直ぐに都市外へ脱出してくれ、落ち合う場所は....どうしよう?」

「此処から東に真直ぐ行った場所、6リーグ(約12km)位先に森の中に小さな湖が幾つかあるの、森の奥で猛獣も多いし人が入るのに非常に困難な場所だけど、空を飛べるならすぐ見つかると思う」

ヴィルヘルミーナの知る狩人達が遠征の際に使うキャンプ地を提案して来た。


「そんな場所でヴィー達は合流できる?」

「場所は判るし問題ないよ、ロリガと骸骨(スケルタル)死霊(レイス)が居れば安全にも問題ないだろ?明日中に合流できると思うよ」

「わかった。ラヘイネンペラヘで状況を確認したら俺は真っすぐそこに向かう、俺の荷物は先に骸骨(スケルタル)死霊(レイス)に持ってこさせてくれ」


骸骨(スケルタル)死霊(レイス)達は俺を運ぶのに何体位必要だ?」

「御身に触れてもよろしいでしょうか?」

「おう」

天井の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)達の中から1体が降り立ち美里を抱き上げる。


お姫様抱っこである。


「この位の重みであれば我一体でも十分にございますな」

顔が骸骨では有るが声がヘルガと言う違和感があるが、どうやらかなりの力持ちの様である。


「じゃあ護衛を含めて100体位は俺についてきてくれ、あと1体は今決まった内容を鍛冶屋にいるエーリカへ伝達、後の子達は荷物をもって目的地に移動、」

「「「「承知いたしました」」」」



美里が腕時計(applewatch)を見ると結構な時間が経っていた、早く都市軍の待つラヘイネンペラヘへ行かねばエサイアス達に負担がかかってしまう。



だが向かう前に、美里は階下に住むこのインスラの大家へと声を掛ける。


「大家さん、突然で悪いけど もしかしたらもう帰ってこないかもしれない」

「あぁ?なんかやらかしたのか?」

大家は仕事を終えて肴片手に酒を飲んでいた。


「わかんないけど都市軍に目を付けられたみたいでさ。、もし都市軍兵が来たら何時の間にか消えてたって言っといて」

「なんでぇ、唐突だな」

「部屋は荷物はもう無いけど何かあればヘリュ達に伝えてくれ」

「ヘリュはいかねえのか?」

「彼女はキヴァ・エラマの商会長だよ、俺たちとは他人って事になってる、暫くはラヘイネンペラヘ戻ってもらうよ」

4階の部屋全部と3階のヴィルヘルミーナの部屋が空くため詫びを含めて金貨4枚を渡す。


「貰っとくが気を使わなくっていいぞ、部屋が空いてもおかげさまで今は直ぐ埋まるからな」

大家は寂しそうに金貨を受け取ると懐の財布にしまい込む。


短い間世話になった例を済ませると軽くて手をふりインスラを後にする。


「近くに来たらチョイチョイ遊びに来い、気をつけてな」とだけ言われたのが寂しくもあり嬉しくもある。


「気が向いたらね」と返すと、突然アルアとマイリが美里にに抱き着き泣き出した。

短い間だったが泣いてくれるほど別れを惜しんでくれた事に美里も目頭も一瞬熱くなるが―――


抱き着いた2人へ殺意剥き出しのヘルガによって感傷が霧散する。



「そのうちまた遊びに来るよ、お母さん達によろしくな」

と伝えインスラを後にした。


インスラを出るとヘルガとヴィルヘルミーナとロリガの3人は、不可視化した少数の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)の護衛を付け、ラヘイネンペラヘのアジトを迂回し、鍛冶屋で待っている死霊秘法(ネクロノミコン)のメンバーと合流後、都市の東門から脱出し、その後はヴィルヘルミーナ指定した湖迄徒歩で移動する予定である。





美里は単身ラヘイネンペラヘのアジトへ向かう。


と言ってもその周囲は無数の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)が護衛してはいるのだが美里の蚤の心臓は張り裂けんばかりに強く鼓動していた。


やがてラヘイネンペラヘの近くまで来ると、かなりの人だかりが出来ていた。

誰かが美里の姿を見つけ到着を知らせると一瞬静寂が広がる。


都市軍兵が美里の到着を知ると、群衆のかき分け道を作り数人のエルフが向かってくる。


美里の心臓は破裂しそうなほどに鼓動を強くする。


「貴様がカオルであるか!」

1人のエルフが大きな声を発した。


見覚えがある顔、馬鹿弟ティツィアーノ・・・本人の登場に美里も思わず嫌な顔をしてしまった。


「はい俺がカオルですが、何か御用があるとか伺いました、どういう事でしょう?」


「貴様!許可なく迷宮ダンジョンから、俺の魔水晶(マナクリスタル)を大量に持ち出したのであろう!」


「はっ?」

早速訳の分からないことを言い出した。


「どういう意味でしょうか?」

美里はイラっとしてはいたが相手は偉いのだ、貴族なのだ、日本のサラリーマン代表としては条件反射で30度に腰を曲げもみ手の下出で聞き返す。


「本当に頭の悪い奴だ!俺の弱らせた獲物を狩り魔水晶(マナクリスタル)を大量に盗んでいったであろう!」


「だからそりゃカオルの旦那が倒した怪物(モンスター)から出たもんだろ!あんたは逃げて怪物(モンスター)行進(パレード)引きつれて、大勢の冒険者を巻き込んで殺しただけって話じゃねえか!」

エサイアスが擁護の声をあげると、周囲の冒険者や町民からも様々に肯定の声が発せられた。


「黙れこの下衆共!俺を誰だと思っている!この都市デルーカの次期当主ティツィアーノ様であるぞ!次に口を挟めば、この悪所の下衆共全員の首を刎ねてやるぞ!」

流石にこの一声には皆口を紡ぐしかないが横暴に過ぎるのではないだろうか?

というか次期当主は本当に決定しているのかな?バットフラグかな?

しかし魔水晶(マナクリスタル)の存在が知られていたが、魔鉱石(マナオーレ)には気付いてはいない様で何よりである。




魔水晶(マナクリスタル)を今直ぐ余す事無く差し出せ、さすれば今回は許そう!そして俺の下に置いてやろう!」


「「「「はっ!?」」」」

これには勿論、周囲にいた全員馬鹿貴族の戯言と気づいている、護衛の都市軍兵すらも唖然としていた。


「えっと、本気で言っておられますか?」

流石の美里も何一つ譲歩できない内容ではある。逃げる準備も済んでいるのである、美里の中では喧の購入の手続きを始める事にした。


「なんだと?何が言いたい!」

この馬鹿貴族は本気で言っているのだろうか?真正の馬鹿なのか?それとも上位貴族としての権威を振り(かざ)し、現実を理解した上での強請ゆすり)(たか)りなのだろうか?それともその両方なのか?いや普通に考えて唯の馬鹿だ!


「いやぁ、この都市の貴族って言うのは迷宮(ダンジョン)で倒せもしない怪物(モンスター)を刺激して起き(なが)ら尻尾をまいて逃げ出して、そのうえ怪物(モンスター)を大量に引き連れて来ては大量の冒険者の命を奪っておいて、命を懸けて迷宮(ダンジョン)を取り戻した冒険者の利益を奪おうと言う話をしているんですよね?」

美里は喧嘩の購入手続きを終えて支払い方法の選択を迫る。


この一言にはデルーカの次期当主ティツィアーノ様の逆鱗に触れたようで、馬鹿貴族ティツィアーノは剣を抜いてしまう。





「あの馬鹿貴族が?」

エーリカはヴィタリーの鍛冶工房へ待機していたのだが、骸骨(スケルタル)死霊(レイス)から美里と都市軍が接触した報を受けていた。


ヘルガとオリガは、ヴィタリーの鍛冶工房で美里から連絡を受け、ロリガ達の到着を待っていた。


「エーリカ。我が主は本当に運が良いようですよ」

「そうですね、後の事は頼みますよミーカ?」

骸骨(スケルタル)死霊(レイス)による第一報を聞いた時、ギルド魔石土竜(ませきもぐら)の頭目ミーカもまたその場にいたのだ。


エーリカの持った戦杖(ウォーロッド)に興味を持った彼は、新たに作られるオリガの武器にも興味を示し、魔鉱石(マナオーレ)を譲渡したその足でついついヴィタリーの鍛冶工房へ同行していたのだ。


其処ではヴィタリーを交え魔法の武器談議に花が咲き美里の連絡が来た時にこの場にいたのだ。


馬鹿貴族が言いがかりをつけて美里から財産をまきあげたうえで、有能な魔術師である彼を、権力に物を言わせ支配しようとしたと言う話だ。聞いているミーカが漏らしそうなほど怖いもの知らずな馬鹿者が居た物である。


程無くしてロリガ達が到着すると今回の状況の相互確認が行われた。








「無知とは本当に恐ろしく罪深い、あの馬鹿息子はおわりじゃのぅ」

ミーカから都市の現状が語られる。


魔石土竜(ませきもぐら)の調査では、今回の大々的な都市軍の下層訓練が実質下層の踏破戦であったと告げられる、そしてその目的はデルーカ領主の跡目争いが発端であった。


「まぁ、始まりはこの国の皇帝陛下からの.......」


















ミーカがこの都市で起こって居る現状を語り始める。

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