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第46話 異世界でもハンバーガーは食べたい

第46話 異世界でもハンバーガーは食べたい

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「ハンバーガーが食べたい...」つい独り言ちる。


人生最期の晩餐んに食べたハンバーガー、バーガークイーンの『ディアブロ・テラハーブワッパーセット』の味を思い出しながら、最後の晩餐となったハンバーガーセットのオマケについてきたフィギアのお楽しみ袋の1つ目である。


ゆっくりと袋を破り中身を取り出す。



「えっと⑤番の古戦場でゴミ漁りする骸骨の王だ」



美里は袋に印刷された写真と番号を確認し、フィギアと同梱されていた説明書きを見つけた。


「⑤番『古戦場でゴミ漁りする骸骨の王/悪魔:ワイトキング』、シリーズ第1作『ディアブロスmythical of devil king』のエリアボスとして人気のアンデットの王。無限に生れるスケルトンの軍勢を召喚する原初の13柱の悪魔ディアブロの1柱って書いてある」


手に取った人形は腰にグラディウスを佩きボロボロの大様の赤いマントに歪な王冠を被り大きなラウンドシールドを両手で持ち上げた格好で、台座部分は大量の骸骨(スケルトン)を模した地面にグラディスやハルバード、ショートスピアや死体に刺さる矢と戦場を想起させるデザインである。


かなり中二病を(くすぐ)るデザインである。



「原初の13柱の悪魔!?つまり、その小さな人形を使う事で、我々は原初の悪魔.....それに成れるという事なのですね!!」

「なれるかどうかはわかんないよ?」

美里は情報が不明瞭の為、淡白な回答をしたが、エーリカの驚嘆に合わせてオリガとロリガも事態の大きさを感じていた様だ。


「あーなるほど、霊体(アストラル)のみんなのベースに成るって事か、でも完全な物理体(マテリアル)になると物理攻撃が効くようになってマイナスじゃない?」


美里の何気ない質問である。


「主様、霊体生命(マテリアルクリーチャー)である我々は、物理的に崩壊しても時間をかけて復活する事が可能です。ただ物理崩壊の状況により、物理(マテリアル)体の再構成にかなりの時間が必要な場合もあります」

エーリカがの言う通りならば、復活や再構成について実験もしてみたい。



じゃあ2つ目を開けるか。



「お、アタリっぽい?」

「「「「!」」」

美里の言葉に一同の目が再び輝く。



「①番!『煉獄れんごくの支配者 アィティ/旧世界の神』、神様だ」

「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」

袋から出した人形は男性とも女性ともつかぬ造形であるが、大きな羊の様な角が生え、黒いロングヘアーはコーンロウで美麗に纏められ、その肉体は煉獄の名に相応しい赤、原始的なデザインの大剣を携えている。


「えっと、新シリーズのボスキャラクター。ムフロン羊の様な角を持つ煉獄を支配する太古の魔神?魔神と神ってどうちがうんだ?炎の巨人を召喚するだって、なんか角とか肌の色とか特徴的にオリガっぽいね」


「「「おおおおおおおおおお!!」」」

興奮するアンデットトリオ。


「かみ....かみだと........まさにロリガのため、まさロリの依代(よりしろ)に違いない!」

「こんな危険そうな依代(よりしろ)はおまえには危険すぎるわ!」

「がびーん!」

こいつはほんと表現力豊かだな・・・・・。


「この髪型カッコイイね!」

ヘルガが意外な所に食いついた。

「見様見真似で良ければですが、後で試してみますか?」

オリガがヘルガの髪を優しく撫でるとヘルガが嬉しそうに「お願い」と返事をする。なんだかこの2人の距離が凄い近い気がしてきた。



「じゃぁ次な、えっと、またアタリじゃね?今度は③番の『暴食と悦楽 タルカイリャ/外なる世界の神』だって。別惑星から飛来した神。文明黎明期であった世界に農耕や建築の基礎知識を授け、自らも美食の探求と悦楽を求める悪戯(いたずら)な神.....宇宙人てことか?人形自体も宇宙服っぽいよね?」


「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」

「またしても神!流石はあるじ!あるじこそ神!!」

タルカイリャはアポロ11号の宇宙服の様な衣装を着ているがフェイスシールドを開いた中にある素顔は薄い青の肌にプラチナブロンドの美しくも悪い笑顔をした美女であった。

ヘルメットで分からないが角は見えない。そして武器なのだが左手に『バーガークイーン』の袋を持ち右手にはドラ●もんに出てきそうな光線銃を持ち決め顔で面白いのはその台座、台座の一面にはチーズの塊や骨付き漫画肉、人形の大きさから大きすぎだろうと言うハンバーガーを小さな薬のカプセルに手足が生えた様な形状のロボット?が躍るように掲げていた。ファンタジーMMOのボスとは思えない風変わりなキャラである。



「じゃぁ最後だね、おお。マジか!これもアタリだ、しかも全部違うキャラって凄くない?。②番の『ヘデルマリシュデンユマラ/太古の豊穣の神』ってか名前ながっ!」


その形状は美しく薄緑の肌、濃い緑のロングのウェーブヘア。


特徴的な物は全裸で両足に樹の弦つるが絡み、背中からも枝葉(えだは)の様な物が生え羽根の様な形を形成している。

台座はトレントと言う奴だろうか?2体が守り地面部分が花畑である。



「神の媒体が3体!?」

「ねえねえ!それって何か凄そうね!」

ヘルガも周囲の反応と神と言う単語に興奮気味である。

「えぇ、えぇ凄いですよヘルガ、我らの主カオル様は想像もつかぬ程の高みにおわす方ですとも。」

オリガが主人を賛美するヘルガの頭を優しく撫でると美里を賛美する。

仲良きことは美しき哉だが、賛美が過ぎる。


「じゃあ、早速誰かに使うの?」

ヘルガの言葉にエーリカ、オリガ、ロリガの目が獲物を狙う目へと変貌した。


「いや、実験はしたいけど、いきなりは怖いからね。特に神様の肩書の3つはやばそうだから、一番弱そうなこの『古戦場でゴミ漁りする骸骨の王』で試してみたい。暴走とかしたら怖いし、持ってかれる魔力とか怖いんだよね」


周囲深い美里の考えに、エーリカ、オリガ、ロリガはあからさまに落胆する。


「オリガ達が守ってくれれば大丈夫でしょ?えっとモノポリー?にこの弱いのを試してみるのはどうかな?あ、ロリガがやりたがってたっけ?」

「いあいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあ、骸骨は骸骨にするといい!ロリガは神!神になる!」

「ん~、じゃあ今度モノポリーが了承したらやってみようか?」

ヘルガの意見に一理ある。暫くは毎日召喚をして負担が減った頃を見計らってモノポリーに試す事にした。


「そういえばモノポリーから今日の報告はきた?」

「主様がお休みの時間であった為、(わたくし)が報告を受け既に帰しております」


エーリカが対応してくれてたみたいだ、時間を決めていなかった為、朝=夜明けに来たのかな?





話の後は直ぐに食事の為、血盟(クラン)メンバーで悪所の屋台外へと向かう。

高価な収穫物がある為、ヘルガと美里の各部屋はインスラ周辺で浮遊していた骸骨(スケルタル)死霊(レイス)へと任せる。


屋台街へ到着すると井戸端付近の段差を陣取り思い思いに買ってきた食事を分け合い遅い朝食をと理始様とすれば、予想通りにクロエ率いる死犬(コープスワンコ)の群れが現れ美里の前に集合する。

当然抜かりは無く1頭あたま2個づつのモツパンを準備していた。

クロエには改めてクロアと共に屋台で好きな物を買いに行く。


「そのうちヘルガ達も俺の子供を産むんだなぁ」

「「え!」」

ヘルガとヴィルヘルミーナが少し赤い顔をしてモジモジし始めるのは見ていて嬉しいものがある。



結構な量を食べた気もしたが、ヘルガがもう一つ蜂蜜パンを食べたいと言うので、オリガがと2人で買い足して食べていた。



その後は皆予定がないと言うので、ロリガとクロエはクロ達にまたがり遊ぶに行き、その他のメンバーで東区の中央区寄りにある市場へ散歩に行く事になった。


その間、触媒の話や死霊術(ネクロマンシー)の話、他の都市の迷宮(ダンジョン)の話や都市の北にある『死者の都』等の話をする。


死者の都は帝国の侵略時に一夜にして滅亡をしたらしく、その時の住人達が禁術によって死者(アンデット)として蘇り、その後その年を200年に渡り支配しているらしい。


考えてれば死体があれば大量のアンデットを召喚可能な美里としては、ソレで良いならば同じ様な物が作れる。

作りたいと思っているわけではないが、選択肢としてあるならばいつか必要になる可能性を考慮して調べて置く必要はあるだろう。

そこで考えたのはクロア母娘を召喚した墓地である、凡そ500体ほどの遺体が埋まっており、1年経つと掘り起こして骨を洗い、遺骸布(いがいふ)と言う物に纏めて地下墓地(カタコンペ)に移送すると言う話の筈であった。

ならば即戦力製造工場(そくせんりょくせいぞうプラント)となる墓場と地下墓地(カタコンペ)の位置は理解しておいた方がいい。


「デルーカにはいくつの墓場と地下墓所(カタコンペ)が有るの?」

「え?墓場?全部の場所は解らないけど埋葬墓地は3か所で地下墓所カタコンペは2か所ある筈だね、調べれば場所は解るよ」

美里は魔法使用に慣れるため、死霊秘法(ネクロノミコン)に書かれている様々な魔法を試す必要も有り即戦力製造工場(そくせんりょくせいぞうプラント)位置をヘルガに聞いたのだ。


「調べておいてもらえるか?」

「はーい」

「エーリカは骸骨(スケルタル)死霊(レイス)を使って街に落ちている死体とかを見つけて欲しいんだが、見つけたら運んだりは出来るかな?」

「使役したリビングコープス達を使えば問題ありません。犬共に荷車を引かせても宜しいでしょうか?」

「基本的にはエーリカに全部任せるよ、仕事がないアンデットは好きに使ってくれ」

「承知いたしました。」

「運ぶ先の場所とかはどうしようかね?」

さすがの美里も無計画に話を進められない。人目のない場所が望ましのである。


「夜中なら墓場でもいいんじゃない?墓守以外は近づかないし、いっそ墓守を買収すれば色々便利だろ?」

ヴィルヘルミーナからの提案に乗っかる事にした。


「知り合いとかいる?」

「直接じゃないけど知り合いの知り合いに居るから、今夜にでも会えりように交渉してみる?」

「今から頼める?」

「了解した、直ぐに行ってくるよ。話付けたらアタシは直接インスラに戻るね」

「悪いね、じゃあこれは知り合いと墓守に何か買って言って、おつりは要らないからね」

「あいよ」

美里はヴィルヘルミーナに大銀貨を5枚ほど渡して後を頼む。



「で次の迷宮ダンジョン探索はどうなるんだい?」

ヴィルヘルミーナはやはり冒険がしたい様だ。


「俺はやらなきゃいけない事が有るから暫く遠慮するけど、希望があればどんどん入ってくれて構わない。そっちの調整はエーリカに任せてもいいかい?

「承知いたしました」

「だけど無理はしないで欲しい。」

「え?カオルは入らないのかい?」

ヴィルヘルミーナが寂しそうにしてくれているのが少しうれしい。


「正直俺は強くないからね、ヘルガにも一撃でやられちゃうくらいだよ?」

冗談のつもりだが横で聞いていたヘルガは物凄く凹んでしまったため、オリガが肩を貸しあたまを撫でていた


「ごめん....冗談だよ、まぁ、魔法の研究とか土木事業もあるから落ち着くまでは行けないな。」


美里はこの時点で他にも幾つもの構想がある。しかし、その幾つかはこの都市に大混乱を起こす切欠にも為りかねない為、いろいろと調べ、綿密な計画を立てる必要もあるのだ。


「じゃあアタシは知り合いの所に行ってくるよ」

「よろしくね、一応ヘリュもつれて行って」

「あいよ!」

軽快な足取りでヘリュと共にヴィルヘルミーナが南区商業区へと向かって消えていく。





今後の事を考えると墓場だけではなく壁外のスラム街や森林の探索もしてみたい。

美里の中ではこの世界で生きるために必要な情報が不足し、未だに燻る幾つかの不安がある。この世界で得た知識や経験は一部のまだまだ偏った事柄だけなのだと強く自覚している。


これが異世界転生と異世界転位の大きな差になるのであろう。

異世界転生であれば、赤ん坊から知識を溜め込み、この世界の知識や常識の感覚を馴染ませる事も出来る。


しかし転移者は違う、直近の記憶がある分転位前の感覚がしっかり残ったままであるのだ。


異世界の常識や感覚を理解するのはかなり難しい、いざ自分の身に降りかかってみて痛感したが言葉が通じるだけで常識はまるで違う。


先ず衛生面が理解の埒外、臭い!トイレがない!便壺はあるが人の目から見える場所である。そこらに死体が転がってっている、そして風呂が存在しない!井戸で水浴びがせいぜい………いいものが見れた事もあるけれど。


食べる者もそれが何なのかが解らない、形が解らなければ何の肉かもわからない、食べて大丈夫な物かはわからない、寄生虫がいたり美里に免疫がな菌の存在も疑われる。

食べ慣れない者は腸内で消化できず腹を壊すかもわからない。




ウォシュレットが使いたい、スーパー銭湯へ行きたい、冷たいビールが飲みたい、廃人量産チューハイが飲みたい、ふかふかなベッドで寝たい、美味しいハンバーガーがまた食べたい!焼き肉が食べたい!中華が食べたい!三郎系ラーメンが食べたいのだ!


いきなり南米のジャングルの奥地の集落に飛ばされた程の不安と衝撃がある。

もしそこに日本人が1人でもいれば救いもあるだろうが、そんなご都合主義はそうそうない。


美里としてはヘルガとの出会いは異世界特典と行って良いほどの価値があった。



そんな事を考えていてふと思いつく、



『他にこの世界に転生者や転移者はいないのであろうか?』



また一つ、考える事が増えた。



それから午後は東区の街を散策し、1日を過ごした。


血盟(クラン)デスマーチ軍団(レギオン)を作り、ギルド死霊秘法(ネクロノミコン)を作りハーレムを作り、大量の迷宮(ダンジョン)での収穫を得て大金持ちにもなった。


美里はもうこのままでもいいかなぁとも思ってしまう。


然し、色々な人と関わってしまった、色々な事を知ってしまった、異世界特典死霊秘法(ネクロノミコン)なんて物凄い物まで頂いてしまった。



これから自分がどのように生き、何をすべきで、何をするべきではないのかを改めて見定めなければならない。
















美里 薫 享年36歳 彼の戦いはまだまだ続く!! 

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[一言] 45話と全く同じ
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