第45話 異世界で生前の財産と遺品の整理
第45話 異世界で現世の財産と遺品の整理
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「お早うカオル」
「おはようヘルガ」
昨晩はヘルガの部屋で激しい一晩を過ごした。
ヘルガの部屋のベッドは藁莚が引かれただけの体に当たる板の上、ふかふかな布団に慣れ親しんだ体には流石に痛い。
とは言え転生時に一緒に転移して来た生前の遺品。キャンプ道具に封筒型寝袋とエアマットがある。
寝袋の下に敷いているエアマットを渡そうかと言うと、「カオルの部屋で寝るからいらない」と恥ずかしそうに言う。
ヘルガたん可愛い。
暗に彼女は美里を独占する気でいるという事を主張している気がするのだが、美里としても悪い気はしていないので「そうか」と答えて微笑む。
「いっその事、ヘルガの部屋には何もないので、そちらを荷物置き場にするか?」
と提案すると彼女は満面の笑みで了承をしてくれる。
美里も覚悟を決めた・・・と言うよりは覚悟を決める為に一歩踏み出したのだ。
「おはようございます、ゆうべはおたのしみでしたね」
美里の部屋に戻った時のロリガの第一声である。
「おはようロリガ、お前の二つ名は『宿屋のおやじ』がいいのかな?」
と意地悪を言うと、両手で美里の服を握りしめ、涙目で首を振る。なんだかロリガの性格が解ってくると可愛く見えてくる。
「おはようロリガ」
ヘルガも部屋に入り、ロリガに微笑みつつ頭をなでる。
「おはよヘルガお姉ちゃん....ゆうべはおたのしみでしたね」
ロリガの悪戯振りは留まる事をした無いらしい。
ヘルガもヘルガで改めて自分に言われると恥ずかしかったのか昨晩も巨大な嬌声をあげておきながら顔を真っ赤にする。
美里はそんなやり取りを見ているとなにか微笑ましくて嬉しく思えてしまう、なにせ転生してこのかた波乱万丈である。
「うん、ロリガは楽しい奴だな」
「うん妹みたいで可愛い」
「お!お!では二つ名はきまったか!」
じつはこの時点で二つ名を決めていた、しかしこのまま与えるのも面白みがない。
「『宿屋のおやじ』でいいの?」
「ぎゃあああああああああああ!そういうのじゃないから!そういうのじゃないから!」
そんなやり取りに美里は笑いヘルガも笑う、そんな時間がたまらなく楽しく感じてた。
そしてとうとう最後になるコーヒーを入れると、ひとつのコップで2人で啜る。
そしてロリガがコーヒーをみて良い香りだと言うのでヘルガが飲ませる。
「これはイイ」
久々のサムズアップだ。
聞けば霊体の時には臭いは解らないらしく、肉体を持った今日初めてコーヒーの香りを感じたという。
「そうなると食事も用意しないといけないな」
「今から食べに行く?」
「おおおおおおおおおおおお!」
ロリガが歓喜する。
「いゃ、エーリカが半霊体は食事は取らなくてもいいって言ってたよ」
「のおおおおおおおおおおおおお!」
美里の無慈悲な発言にエーリカを呪いつつ抗議の声をあげる。
「うわーんヘルえもーん、あるじがいじめるよ~」
「もう!カオルはこんな小さい子虐めないの!ってヘルえもんってなに?!」
「ぷははははは、じゃあみんな誘って食べに行くか」
「うん」
「よっしゃあ」
「ロリガ、血盟のみんなに声を掛けて来てくれ」
改めて思うと36歳のおっさん、この世界では高齢の部類の男が20歳の美人と懇ろになる事自体が奇跡なである、この異世界特典の副賞をありのまま大事にしていこうと思う。
ヘルガを見詰めていると、頬を染めヘルガが照れる。
いつまでも初々しいヘルガがとても眩しく見えた。
ロリガが戻るまでの間、普段使用しない全ての荷物と装備品や収穫品をヘルガの部屋に置く為、移動する荷物の確認を始めた。
インスラの確保が終わり次第引っ越しを予定しているのだが、確保出来た時は少し大きな部屋に住みたいものである。
結果的ではあるが前世の最終日にキャンプ用品店で衝動買いをしたのはラッキーだったと言えるだろう等と考えつつ白靖様へ感謝を新たにする。
ぎゅうぎゅうに詰めたバックパックを開けると、結構色々と買い込んでいた事を思い出す。キャンプ場に長期滞在する話をしていた為、親切な店員の営業トークに負けてしまった結果でもある。
既に使っているのは『エアーマット』と『エアー枕』に『封筒型寝袋』。
『アウトドアチェア』と『アウトドアテーブル』に『USB充電のLDEランタン』と『太陽光充電バッテリー』。
アウトドアグッズ以外の『iPad』『iPhone』『applewatch』実はすべて非実態物で皆からは見えてないし触れない。
バックパックは見た感じが恰好よかった大型の60ℓ『防水アサルト タクティカルバックパック』背面全体にウェイビングがついていて、両サイドとアンダーに大き目の予備バックがついている、小物や直ぐ使う物をそこに入れられる優れものだ。小物でも重量物は上の方に入れると移動中にバランスを崩すので危険なのだ。
そしてキャンプと言えば『ペグ』、『ハンマー』、『エアーテント』。
実はこの『エアーテント』が優れものなので付属の手動エアーポンプで空気を入れてば空気圧で膨らむフレームが骨組みになって棒を必要としない。
パーツが少なく軽い事で素人にも使いやすいという優れ物、見た目も宇宙基地みたいで一目惚れ。
『タープ』も同じメーカーの物を購入した。
次はキャンプの醍醐味 焚火だが。
キャンプ場は地面に直の焚火が禁止されている場所も多くらしく、調理にも使いやすい『焚火台』と『防風板』と言うのを勧められるまま購入していた。
焚火台に合わせて調理も可能な『焼き台メッシュテーブル』と調理に必要な『クッカー(ダッチオーブン、やかん、コッヘル)』『食器(大小皿、お椀、茶碗、コップ)2人分』『カトラリーセット』、『調理セット』の包丁、まな板、おたま、トング、ボウル、『チャッカマン』に『固形燃料』。
次いで電気用の『太陽充電池』『USBケーブル』
衣料品は『ブランケット』『大小タオル』各一枚、『新品の着替の下着5枚セット』これはブランド物である。
『断熱シート』『スノーカモの目出帽』『スノーカモの冒険帽子』あとセールだったので買ってしまった『スノーカモのレインポンチョ』に『スノーカモの防寒ジャンパー』。
前世の最後は夏が終わりの時期だったのだがキャンプ場では必須らしかった。
後はサニタリー用品の『歯ブラシ』『全身用ボディーソープ』『ハンドクリーム』『愛用の香水』だ。
一緒に買った食品類はさっき買ったコーヒーで完売である。
それにしても人生最期の大きい買い物とは言え33万円もしてしまったのは今思えば笑える話である。
後は小物が諸々・・・キーホルダーとかもう使わないよなと思いつつ財布とおそろいなので取ってある・・・・・が使わないのでサイドバックに仕舞おうと開けた所身に覚えがない物が入っていた
『バーガークイーンの人形』
そういえばこんな物もあったと思っていると、何かが頭に引っかかった。
なんだったろう・・・・・。
『召喚術で使用する場合に非常に強力な媒体』
白靖様のメールにあった奴だ。
「あるじ!ロリガに!ごしょうだからロリガに使用しろください!」
美里がそれを認識した途端、ロリガが反応した。
先ず言葉遣いを直して欲しい。
「ロリガはこれが何かわかるの?」
恐らく美里自身が認識するとそれがどういう物か理解できるのだろうとは思うが、それが同じ程度の認識なのか、何か不可情報がついたり、種族特性的な理由で付加情報を理解するのか知りたい。
「えっと...ロリガ専用の強化アイテム?」
「なんで疑問形?」
ロリガの目が泳いでいる・・・・
「ロリガ、嘘ついたら使ってあげないよ?」
「ぎゃひ!」
こいつなんか嘘ついてたな・・・・
「あすとらる ろりが うぇーぶ?」
「?」
「カオルの使徒、きゅあろりが?」
「??」
「われは ろりきゅあ?」
「???」
「ロリガに意地悪するごしゅじんさまよ!」
「?!?!?!?!」
「とっとと、ロリガに使いなさい!」
「あ.......あれか、日朝アニメの魔法少女的な『魚屋はブリキュア』だっけ?」
同僚が偶に言ってた変身の台詞だ・・・・しかしこのチビ、何故遠回しな言い方を?
「主様お待たせしました」
折よく美里の部屋にエーリカとオリガ、クロアにヴィルヘルミーナがやってくる。
クロエは元気にクロ達と遊びに行っているらしいが、屋台に付いたら勝手に沸いてくるだろう。
「おお!ご主人様、もしやこれは召喚媒体、しかもかなり強力な!?」
「主よ、これはかなり強力な物の様でございますね!!」
エーリカとオリガの反応が凄い。
「強力ってわかるの?」
「ご主人様、私にもなぜ今まで感じる事が出来なかったのかが判らぬほどに圧倒的な力が籠った触媒で御座います」
「内包された魔力が溢れこの部屋を満たしております」
2人の反応が凄い、美里が認識した事により召喚媒体としての存在が確定した?それで魔力が溢れた?
ふとロリガを見ると、目が合ったとたん目を逸らされた。
「そうなのか、俺には見ただけでは解らなかったんだが、白靖様がこっちに送ってくれた贈物だと思う。
2人を呼ぶ前にロリガが自分に使えって騒いだしてね、怖いから悩んでいたんだが....」
「ぐわはぁあああ、あるじ、ないしょ!ないしょ!」
ロリガが独り占めしようとしたのか、出し抜こうとしたのか2人には知られたくなかったようだが、変身魔法的な話をしていたのだ、おそらく女子中学生が変身して巨大な敵と戦えるくらいの進化が出来るのかもしれない。
「ふぎゃわわあわわ」
エーリカとオリガが無言でロリガの頬を捻じり切らんばかりの力で締め上げ持ち上げる。
「と言う事は、上手く使えばアンデットをさらに強化できるって事かな?」
「「然り!」」
「コレは何も考えずにロリガに使っていたらとんでもない事になってたな」
「然り!それ以上に、主様の魔力をどれ程消費するか想像もつきません、迂闊に使用されるのは避けた方がよろしいかと存じます」
「ちょ、このガキそんなことさせようとしたのか!」
「ふぉんがががごがひほひははしははい!」
ロリガはこれはいけないと手を何度も交差して否定する。
「良く解らないけど一先ずお仕置きはあとだな」
「我が主よ、主ご自身とその触媒から漏れる力が強すぎてどれ程の物かの判別もつかないのです、一概にロリガの悪意とは言えません」
「はん!はんあ!」
頬を捻じられ言葉になってないが腕で輪を作り肯定していた。
なるほど、だがこれを使うとどんな効力があるのかは知りたい。
「とりあえず4つとも開けてみるか」
「「「!!!」」」
3人の目が輝く、それほどの物なのであろうが同じ不死怪物のクロアはあまり興味を示していない様に見える。
袋の説明書きを見ると6種類のフィギアがあり、中身はランダムの様だ。
内容はハンバーガーのコラボゲームである『Diablos』の新シリーズのボスキャラっぽい悪魔3種類とシリーズ通しての人気のモンスター3種類のどれかが入っているらしいが、やったことがないゲームなので良くわからない。
3種類がボスキャラの悪魔....よく見ると旧世界の神とか、外なる世界の神?なんか凄い事が書いてあるが他の3種類はシリーズ通して人気のキャラらしい。
「えっと①煉獄(煉獄)の支配者 アィティ/旧世界の神」
なんか神様らしい。
「②腐敗と再生の王 ヘデルマリシュデンユマラ/太古の神ってこれあの超パクチーのハンバーガーの箱の奴だ、思い出したら食べたくなってきた!」(※第一話参照)
「③暴食と悦楽 タルカイリャ/外なる世界の神、ファンタジー系MMOで宇宙人出てくるんだ、なんか笑え.......あぁ亜系のクトゥルフ神話か、そういえば死霊秘法ってクトゥルフ神話が原典だったな」
「④ポータルゲートキーパー/NPC、なんか可愛い兎の人形だな。Diablosの世界の存在する人間をサポートするコボルトの亜種って設定の様だ」
「⑤古戦場でゴミ漁りする骸骨の王/モンスター、骸骨やん、なんで人気キャラなんだろうか?ゲームの中の設定とか能力なのかな?」
作者の趣味とメタな理由である。
「⑥混沌の魂の軍勢/モンスター、なんかメッチャ禍々しいな.....コレが出たら触媒に使うのは躊躇するな。.....」
「主よ、どれも興味深いですな」
オリガは興味津々だ、と言うよりそれ程の強化が期待できるのだろうな。
「ご主人様、実験であれば我が身にいかようにもお使いください」
エーリカも興奮が抑えられない様である。
「ふぎふゅがほほいほ!」
「2人とも、そろそろロリガをおろしてあげてくれ、行ってる事が解らん」
「ロリガは神が出たらつかってほしい!」
「2人とももう一回捻じっといてくれ」
「え!?」
「承知しました」
「ふぎゃああああああああああああああああああああ」
触媒人形、その力は知っておきたい。




