第43話 異世界でテンカウント
第43話 異世界で経済活動を始めよう
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さて、4号の名前を何をにするか?
実は美里の中で既に頭に思いついている名前がある。
今回の迷宮探索に当たり、既に骸骨死霊達が中層を支配しているという話があった。
そして今回のトラブルでその気になれば下層までも独占が可能と言う、しかも都市軍の精鋭も太刀打ち出来なかったモンスターを、我がデスマーチ軍団は一蹴している。
そう迷宮の独占も可能と言う事なのだ。
『独占』だ!
「4号、君の名前は『モノポリー』でもいいか?」
「モノポリー、モノポリーで御座いますね、なんと素晴らしい名前を頂戴いただき心より感謝申し上げます!」
元4号であるモノポリーは無表情・・・というか骸骨なので表情が解らないのだが恭しく頭を下げる嬉しそうな声色を上げる。
モノポリー、なんとなく浮かんでしまってシックリ来たのだ、単純な理由過ぎて聞かれたら少し申し訳ないかもしれないが。
「dominater of labyrinth Monopoly うん面白い!」
「主様.....そ、その二つ名とモノポリーと言う名前にはどの様な意味があるのでしょうか!?」
余計な独り言を言った為かエーリカが変なところに食いついた!
後ろを見るとロリガが高速で震えている。
オリガまで目を見開き驚愕している。
対照的にモノポリーは物凄く誇らしげである。
あ!二つ名が悪かったのか・・・
「えっと、モノポリーっていうのは俺の故郷で流行っていたゲームの名前で、俺のいた世界では『独占』って言う意味なんだ。なんて言うか、支配者を育成するための高等なゲーム?みたいな物なんだが、モノポリーはほら、デルーカ迷宮を独占支配することも出来そうだなと思ったらね、ポンと閃いた?」
「デルーカ迷宮を.......支配!?」
部屋にいる全員の顔が驚愕に満ちていた。
エーリカ達アンデットは、美里の野望の第一歩が踏み出された事に。
ヘルガとヴィルヘルミーナは巨大利権を支配しようという大望に。
「いやいやいやいやいやいやいやいや、実際に支配するとかではんなく、出来るなっていう意味で、実際に国と揉める様な事はしないよ?」
何か勘違いされている気がするので訂正をする。
「ではdominater of labyrinth(ドミネイター オブ ラビリンス)と言うのは?!」
やはり二つ名に食いついて来た。
「それも故郷の言葉で迷宮を迷宮って呼んでたり、dominaterは覇者とか支配者って意味なんだ。」
本来は迷宮をラビリンスと訳すのが正しい、ダンジョンと言う英語を直訳すれば地下牢を示し、近代のゲームに於いては古城や神殿の地下にある財宝を怪物が護っていると言うギリシャ神話等から生まれた物語に即してファンタジー世界ではダンジョンと総称されている。
日本語で訳すにラビリンスは人工的に作られた構造物、ダンジョンは地下迷宮を指す場合が多いが、実際に分別している作品はあまりない。
美里的には1981年に作られた『Wizardry Proving Grounds of the Mad Overlord』の英語版をPC-98シリーズでプレーした記憶が鮮明に残っていた為か、ダンジョンに関してはそのイメージが強かった。
その為か、美里の中ではダンジョンの地下深くにはダンジョンの支配者がいて事務所を開いているイメージを持っている。
実は迷宮の奥地にボスらしき死霊が居ると聞いた時に、正直言えばワクワクしていた。
だからこそ柄にもなく勢いで中二病的な発言が出ていた、実際に悪さをするつもりもないので勢いだけではある。勿論後悔はしていない。
「ロリガも!ロリガもふたつなほしい!」
ロリガの発言にエーリカとオリガも目が輝く。
「.................」
めんどくさい
「ロリガも!あるじ後生でござる!ロリガもふたつなほしい!」
「.................じゃぁ、自動ドア」
「ガーン!!!!」
さすがのロリガも膝から崩れ落ちる。
「私は主様!私にはいただけませんか!」
「主、私にも私にも是非!」
エーリカもオリガも面倒臭くなってきた・・・
「ちょ.....ちょっと待ってね..............。」
これはもう適当でもいいから何かつけねばなるまい…
「納得いかない!ロリガ納得いかない!ダメ!あるじ良くない!」
ガチで怒っている、まぁ確かに適当過ぎた。
「解った、皆に相応しい二つ名をつける、暫く待っててくれ...」
「「「はい!」」」
何にか物凄く面倒な事をしょい込んでしまった気がするが、よし時間稼ぎは出来た、実に面倒だが後で頑張って考えよう。
次は皆の給料について確認だ。
と言ってもアンデットは基本無給で働くロボットのような物だ、寧ろお金より今は二つ名が欲しかろう。
「さて、ではお楽しみの今日の収入の分配だが、この世界でのパーティーの給料はどう分配するのが普通なんだ?」
「この世界?」
「いやいや、この国、そうこの国ではね、ほら俺って今までソロだったからどうしていいのか判んなくて」
ヴィルヘルミーナの突っ込みに慌てて否定する。
「私達ってほら、みんなカオルの『お嫁さん』とか眷属でしょ?分配とかっていうよりご飯食べたり装備揃えるくらいでいいよ」
ヘルガが『お嫁さん』を強調している、こういう時はあれだ、喜ぶ事を言わないと病みパラメーターに影響する。
「そうだね、ヘルガ達は大事な俺の『お嫁さん』だもんな。だからこそしっかり分けないとね。ヴィルヘルミーナは何か案は有るか?」
「分配も何も、アタシは荷物持ちしかしてないからねぇ」
ヴィルヘルミーナは今日の収穫が入った幾つもの大きな袋を見ると続けて「それにこんな純度高くて大きい魔石なんて見たこと無いし、魔水晶や魔鉱石迄あるんだ正直この袋一つでもアタシが居たパーティーが数年単位で必死に戦ってやっと稼げる位の金額だよ、分配って言われても想像もつかないよ」
ヴィルヘルミーナも完全に呆れている。
とは言え渡さない訳にもいかないと思案するも答えは出ない。
「じゃあお小遣い制にして、魔石土竜から換金してもらったお金を受け取ってから考えよう......」
「どうしたの?」
そこで美里が少し悩む素振りを見せるとヘルガが心配そうに問いかけた。
美里は聞くは一時、聞かぬは一生と腹をくくる。
「恥ずかしながらあんまりよく分かって無いんだけど魔石と魔水晶と魔鉱石ってどう違うのかな?」
ヴィルヘルミーナからの情報に思わず聞き返す。
「え?魔水晶、魔鉱石しらないの?」
へルガもヴィルヘルミーナも意外そうに美里に聞き返す。
「ごめん、教えて」
「えっと魔石は魔力の結晶化したもので使うと消えちゃう。魔水晶は良く解らないけど魔力が水晶みたいになってて魔道具が作れる。魔鉱石は良く解らないけど魔力を吸い込んだ鉄で強い武器防具とかの材料になる」
ヘルガがザックリと説明してくれるが、かなり大雑把ではあったが何となくわかった気がする。
「魔石は魔道具の燃料だったり魔術師の魔力補充や錬金術の材料になったりするし魔晶石には魔術刻印や錬金術を使って魔道具に加工出来る。魔鉱石は魔力が凝縮した金属の一種で魔法武器や防具を作るのに必要なんだ」
オリガが補足と言うよりは説明をし直してくれた。
「魔法....武器........だと!?」美里はごくりと唾をのむ。
そうだ、ここは異世界だったんだ、魔法だけではなく魔法武器って言う物もあって然りなのだ。
「なあカオル、アタシは今日の収穫が見たいんだけどね」
「私も見たい!」
ヴィルヘルミーナやヘルガが期待に胸を膨らませて、本日の戦利品に意識を移す。
しかし部屋も狭く中身を広げる場所など無い為、袋の口だけを開き覗き込む。
「これが魔水晶でこっちが魔鉱石だよ、下層で何度か見た事はあったけど、中層で取れるってのは聞いた事もがいね、大発見だよ」
ヴィルヘルミーナが興奮を隠せずヘルガやクロアも頷いていた。
「虫型の一種に金属を喰らう者がおります、それらが排泄した物が魔鉱石ですね」
「「「えっ!?」」」
モノポリーが語った事実に美里のみならず、ヘルガとヴィルヘルミーナ迄もが驚いている。
「いったいどの虫型だい!?」
一流の冒険者であるヴィルヘルミーナが初めて聞いた真実に食いつく。
「冒険者が大御器噛と呼んでいましたね」
「「「うぐっ」」」
美里のみならずヴィルヘルミーナとヘルガの顔が歪む。
「ゴキブリか.......ジャイアントっていう事はやっぱり1~2mあったりするの?」
「いいえ、虫型ですが怪物ではなく本当に唯の虫です、ただ大きさが20~50cm位ありますし襲っても来ません」
「うわ........下層にはいっぱいいるの?」
「いっぱいいます、中層では虫型怪物の捕食対象になってしまうので見かけませんが天井の割れ目などには恐らく数千の単位で隠れております」
「「「うあぁ...........」」」
3人は想像してしまったのか一斉に悲鳴を上げた。
「聞かなきゃよかった...でも知られていない情報って事は商機かもしれないな」
「商機?」
「大御器噛を養殖して魔石を作る商売の機会、ほら他の人が知らないなら独占できるじゃん?」
「アタシはそんな商売嫌だよ?」
ヴィルヘルミーナの質問に美里は苦笑いしつつ答えた。
「独占....」
誰にも聞こえない音量モノポリーが呟く。
「魔鉱石ってもしかしてお高い?」
「ははははは、これだけあれば中央の豪華なドムスが何軒も余裕で買えるよ」
ヴィルヘルミーナは大笑いである。
中央区で豪邸が数件分・・・日本の感覚であれば世田谷の豪邸と考えれば億単位やないかい!!
「これが都市軍に見られてたら大変だったね」
「ティツィアーノの野郎なら難癖付けて没収もあったかもな」
ヘルガとヴィルヘルミーナが恐ろしい事を言いう、どうもティツィアーノと言う男は絵に描いた様な屑のようだ。
美里はしばらく考え込んでしまう。
「なぁ、ヘルガ、ヴィルヘルミーナもし.......そうしたければだけど一袋もってギルドを抜けてもいいんだぞ?」
美里の中では燻っていた思いがある、彼女たちは望まぬ娼婦へ落ち、人生のどん底で助けを求めて美里の所に来たのだ、金さえあれば自分が必用ではないのではないかと。
正直、2人を試してしまった。
「そうだねぇ、普通ならそれも良いのかもしれないけど残念な事にアタシはカオルの子種も欲しくなっちゃったんだよね。カオルがアタシが邪魔ってんならこいつはいらないけどカオル子種だけはくれないか?」
ヴィルヘルミーナは老獪である、愛や恋異常に大切な物もある、こんなくだらない質問には乗るはずもない
「ヴィーは.....」
バチン!
美里がヴィルヘルミーナへ話しかけようとした途端であるヘルガが美里の顔を全力でひっぱたいたのだ。
「ばがあぁああああああ!やだああああ!カオルの傍にいどぅううううう!げっらっでえええええええ!」
ヘルガは鼻水も流し本気泣きをしていた。先ほどの質問が彼女にっては侮辱であり死刑宣告に等しい言葉だった。
「うわああああああなにをするくぁwせdrftgyふじこlp」
すでにヘルガは言語を発する程のことが出来ない程泣いていた。
「わーん」
「「「「?」」」」
ロリガが何かいい始める
「つー」
「「「「?」」」」
叫び泣いていたヘルガも突然の事に泣き止みロリガを見つめる
「すりー」
「「「「?」」」」
「ふぉー」
「「「「?」」」」
「ふぁいぶ」
「どうしましたロリガ?」
何事かと困ったオリガがロリガへ問いかけるも反応はない。
「しーっくす」
「「「「?」」」」
「せーぶん」
「「「「?」」」」
「えいと」
何かに気づいたクロアが立ち上がり美里へ近づく。
「なーいん」
「「「「?」」」」
「てーん!かんかんかんかんかーん!!」
「主様が気絶しています.....」クロアがそっとみんなへ伝えた。




