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第41話 異世界で再びダンジョンへいこう⑥

第41話 異世界で再びダンジョンへいこう⑥

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「では魔石土竜(ませきもぐら)の皆さん、俺たちはこれで撤収します、中層迄は制圧したと軍の人には伝えますから軍の人が到着する迄ここを護っててください」

「承った、では気負付けてのぅ」

「ミーカさんもお帰りは気を付けてください」


この時点で死霊秘法(ネクロノミコン)は帰還する事にしたのだが、魔石土竜(ませきもぐらの中層の安全地帯(セーフゾーン)に残り、都市軍を待つ事になる。

美里達が迷宮(ダンジョン)からの脱出する時に都市軍へ中層の中層の安全地帯(セーフゾーン)の奪還を伝える予定である。






「頭目!凄いもの見つけました!」

「頭目!やべーっすよ!」

「頭目!魔石(マナタイト)がすげえ!」

中層安全地帯(セーフゾーン)に戻り回収品を確認していたメンバーが次々に歓喜の声をあげる。


「モンスターはおったかの?」


「小さいのはチョロチョロ居ましたが厳しい戦闘の報告は有りやせんでした」

「多分カオル様のギルドが中央通路を強襲した時に粗方通路に出て応戦したんでしょうね」


「やれやれ、本当におっかない連中じゃ、カオル殿その物も尋常ではない強さに見えるが、他の連中も化け物ぞろいじゃ、素直に(こうべ)を垂れて正解じゃったわい」

「甘い汁も吸えますしね!」

「まったくじゃ」


収穫物を敷かれた布の上に種類、大きさ、品質別に集められていくが、その量はギルド魔石土竜(ませきもぐら)を以て初めて見るほどの量らしく、途中からは価値のより高い魔石を中心に採取したし、薬草類はよほど高価な物だけに切り替えたという。

そして、通常の戦闘をしながらの採取と違い、落ち着いた採取が可能になった為、今まで気づかなかった採取方法なども見つかったという。




撤収に当たり、美里はダンジョン内の骸骨(スケルタル)死霊(レイス)を全て回収する事にした。

理由の一つは、今回のダンジョンの異常化がもしかすると骸骨(スケルタル)死霊(レイス)に原因の可能性があった事である。

もう一つの理由は骸骨(スケルタル)死霊(レイス)が想像を超えて強くなっていた事である。

これは由々しき事態である。


1週間足らずで目に見えて強くなったのだ、放置しておくと大変な事態になる可能性があった。


そして一体だけでは在るが極端な成長を成し、現在のロリガと同じ程度まで成長している個体も現れていた。念のためオリガにデスマーチ軍団(レギオン)全体へ強力に権能(ユニークスキル)軍団(レギオン)祈祷(プレイア)を隠蔽魔法をかけ急成長した個体には仮に4号の名前をつけ帰路につく。







迷宮(ダンジョン)の言入場階段付近まで戻ると、入り口を護る都市軍が待機していた。


「カオルだったな、中はどういった状況だ?」

確か都市長の娘のエルフ、ティオドゥラから声を掛けられる。

名前は完全に覚えられてしまったらしい。ちょっと高圧的なのは貴族だから仕方あるまい。


「ミーカ殿から伝言を頂いてます、中層の安全地帯(セーフゾーン)の制圧が完了しましたとの事です」

「なっ、まことか?!まだ半日も経っていないんだぞ!?」


制圧自体は1時間で終わったとは内緒である。


流石にティオドゥラ達、都市軍の精鋭が敗走した様な相手にゴロツキ冒険者集団の魔石土竜(ませきもぐら)ギルド単体で制圧する事等出来る筈もないと考えていたのであろう。


念のため大量の収穫物を担いだメンバーをこっそりと先に広場出口付近に向かわせる美里が現状をティオドゥラへ説明を行う。

美里と体の大きいエーリカとオルガが前に出てフォローする事で上手く彼女の目を誤魔化せた様であった。


ティオドゥラは興奮状態で色々聞いてくるのだが、戦闘は魔石土竜(ませきもぐら)の精鋭が行った為、良く解らない、中層の安全地帯(セーフゾーン)は制圧済みと言う事を伝える様にとしか言われていないと説明し強引に乗り切る。


「貴様!上級貴族へ嘘や隠し立てを申すと縛り首だぞ!」

馬鹿弟(ティツィアーノ)だ。


「嘘だと思うならご自分で確認に行けば宜しいでしょう、それとも伝言係の下っ端の言うことが信じられないと思ったら縛り首っていうのが『帝国』の法律なんでしたけ?」


「主様、皆必死に戦い今も安全地帯(セーフゾーン)を奪い返したと言うのに何たる暴言。この様な愚者が再び戦地に入れば大きなトラブルが起きかねません」

ちょっとイラっとした為、攻撃的な物言いをしてしまったが、オリガが追随して明かに喧嘩売りに行きおった!


「きっききき貴様!」

勢いよくて剣が抜かれた。


ティツィアーノ君は本当に直ぐ剣を抜くなぁ・・・



「ダンジョンを混乱に陥れたティツィアーノ卿が行政管理区セーフゾーンを取り返した冒険者から手柄を奪おうと口封じしようとしてるぞ!!!」

その時、階段の上で突然大きな声が聞こえる、その声はエーリカさん!?



「魔石土竜ませきもぐらは行政管理区セーフゾーンを奪回したのに、軍の功績にするために口封じをする気だ!」

え?今度は誰?ヘルガに似てるけど違う?

「自分の不始末を隠し手柄を自分のモノにする為にまた冒険者を始末するつもりだ!!」

また?今度は知らない男の声?


「悪辣なティツィアーノめ!」

「またティツィアーノが暴れ出したぞ!」

今朝の事もあるが、冒険者達が次々とティツィアーノの悪い噂を流し始め、人数が多い分その勢いは今朝の比ではない。



ここまで来ると悪夢再びである、周りの入場出来ず足止めされた冒険者達は暴動寸前である。


よく聞けば骸骨(スケルタル)死霊(レイス)の声が混ざっている・・・・これだけ人がいればバレる事はないと思うが拡声魔法の様な物を使っているのだろうか?広場どころか周囲の地域にも響いていそうだ・・・


「ティツィアーノ、お前はもう城へ戻れ、私が戻る迄部屋で謹慎し大人しくしていろ!!!」

ティオドゥラお姉ちゃんは激怒である。


というかこの国の貴族は絶対的な支配者ではないのだろうか、コレが日本の中世ならば無礼打待ったなしなのだが?


「姉上、今回の総指揮官も次期当主も私なのだ!差し出口が過ぎるのではないですか!?」


「貴様......!!」

弟の暴言にもう一人の姉であるティツィアナが見かね、ティツィアーノの胸ぐらを掴む。


「2人とも、市民の衆目を集めているのだぞ。ティツィアーノも先ずは最低限貴族としての在り方を学び直せ。次期当主と言う前に今はまだただの弟である、指揮官と言うなら既に敗走している時点でその資格などはない、それ処か敵を増やし問題を広げ全てどういうつもりだ!今回ばかりは父上に報告する、そのつもりでいるがいい!」


「.........!」

ティツィアーノは返す言葉が見つからず、ティツィアナの手を振り払うのが精いっぱいであった。


これがゲームやラノベであれば新しいイベントフラグであろう。

一般的なラノベ主人公であれば巻き込まれる処だが面倒事は回避するマンの美里は、騒ぎのドサクサに紛れコッソリと逃げる事に決めた。


「ダンジョンが解放されたぞ」


「魔石土竜ませきもぐらが中層までの怪物(モンスター)を殲滅したぞ!!」


「今なら、上層はモンスターが少ないはずだぉ~!」


当然捕まり巻き込まれる可能性もある為、骸骨(スケルタル)死霊(レイス)放送局を使い、ダンジョン入り口に冒険者が殺到するよう一斉に拡散させた。


流石に暴動になりつつある現状にはエルフ姉弟(きょうだい)も都市軍も押し寄せた冒険者に注意を引かれ、美里達が消えた事に気づかれる事無くまんまと逃げおおせることが出来た。





美里達ギルド死霊秘法(ネクロノミコン)はスタコラサッサと迷宮(ダンジョン)広場を抜け市外へと抜けだした。


「まだ明るいし、たまには豪華に美味しい食堂タベルナで食事をする事にしない?」

ヘルガの言葉にappleWatchを見ると16:00過ぎ、空もまだまだ明るい。


「なら、お勧めの店があるんだ、久しぶりに行きたい。ちょっと高めだけどどうだ?」

美里のすぐ後ろを歩いていたヴィルヘルミーナが明るい声で提案する。


振り返ると基本的には表情の薄い傾向のヴィルヘルミーナが、期待目を輝かせている。そういえばヴィルヘルミーナとは今日の探索中から妙に目が合う気がしてるし、何なら視線が捕食者のソレになっている気もする。


発情している時のヘルガの様に・・・




折角だからとヴィルヘルミーナのおすすめの店へと向かう。


「ここ!」

お勧めの食堂(タベルナ)へ到着すると耳をピンと立てたヴィルヘルミーナが今に垂れそうな涎を飲み込み、お勧めの店を指さす。


折よくテーブルが空き皆が固まった場所で席にく。


値札を見ると結構高めの店ではあったが、ここで断ればヴィルヘルミーナを悲しませかねないと思うと財布の中身が心配ではあるが思い切って入る事にした。



ヴィルヘルミーナお勧めの店は所謂 小皿料理(タパス)が中心で、多くの料理は作り置きの大皿に積まれた総菜を選んで注文する、現代ではスペインの居酒屋(バル)等でよく見るスタイルである。


その他にも、外側に面したカウンター部分が窯になっていて煮物や焼物を作っている、そこで作っている物を選びながら食べる事も出来る。


とは言え最初は酒である。


ヴィルヘルミーナのおすすめの店の為、ひとまず最初の注文はすべて任せてみた所、大人には蜂蜜酒(アクアムルサ)、クロエには果実水(テーフルトゥム)が運ばれた。


乾杯を待たずに店の給仕が次々に料理を持ってくる。


なんとインド料理でよく見るナンの様なパンが大量に積まれた大皿が真ん中にドンと置かれ、続いて流石にカレーではないが野菜や肉を煮込んだ料理とアヒージョの様な料理が並べられ、強烈な香草やニンニクの香りが鼻腔を突き抜け空腹の腹を攻撃する。

変わった所では千本切(せんぼんぎり)の野菜の漬物のやオリーブの塩漬け、チーズが並べられる。


興味を持ったのはやはりナンである、異世界に来てから食べていたパンは黒い酸っぱい麦の者ばかりであったのが、初めて見る白い麦のパンである。


地球ではギーや溶かしバターと呼ばれる動物性の油分を塗るのが基本だが、この都市ではオリーブオイルの様な物を塗っていて上には細かいハーブが散らされている。


クロは店内には入れない為、クロアが近くの露店で骨付き肉を買い与え外に待たせている。




「おおおおおおおおお、白いパンだ!」

ヘルガの食いつき方が半端ない。


「悪所に居ると鹿麦(しかむぎ)で作ったボソボソのパンしかないからな、白小麦なんて私も久しぶりだ」

ヴィルヘルミーナも嬉しそうにしている。


よく見ると皆が料理に手を出さずに美里を見ていた、唯一クロエだけが眼の前の料理を見て涎をたらしつつそわそわする。


ヘルガが顔を除きこんできた。


「カオルぅ早く食べたい...」

どうやら美里の許可街だったらしい、いまや美里がこの集団の絶対的な長なのだと理解した。


「さあ皆たべよう!!」

合図すると皆が一斉に思い思いの料理をほおばり始め、オリガやエーリカも美味そうに食べている。


霊体(アストラル)体たった彼女達も仮の肉体を持った状態では食事を楽しむことが出来るらしい。


しかし、クロア母娘やヘリュも含め召喚したアンデット達も個性が生れ、個々の特色が見て取れるようになり生れてから時間が経つほどに個性が豊かになっていく。


これも後でしっかりと調べてみたい所だが、今は食事を楽しむことにする。


色々料理があるが、先ずはナンの様なパンから食べてみる、見た目通りの触感、オリーブオイルは未精製の者だろうか、雑味を持つ独特の風味がナンに合う。

ナンの上にかかっているハーブは微かにクミンのような風味がする。


「旦那様!こいつ、コイツが旨いんだ!」

ヴィルヘルミーナから串焼きが突き出される。


差し出された串肉を見ると5cm程度の大きさの球状の腸詰らしき物が2つ団子の様に刺され、腸詰は全体的に桜色でハーブなのか細かい粒が見える。


臭いは香ばしい獣脂の上手そうな匂いにカレーに似た香りだ。


串を受け取らずそのままヴィルヘルミーナの手ずから持ったままかぶりつく。


美味い、甘みがある!?甘みは旨味ともういが蜂蜜だろうか?そして香り通りにスパイシーで複雑な味が昔食べた台湾の腸詰と似ている。


「美味い!ヴィーこれなんていうんだ?」


「チュチュっていうんだ、癖があるしガツンと来る味だけど癖になるんだ。これはこの店でしか食べれない」優しく微笑むヴィルヘルミーナは中々に可愛い。


そして次に食べたのは豆の煮込み、大豆だ!大豆っぽい豆を見つけた上手く行けば味噌や醤油に納豆が作れる。


こっちのスープは海産物的な風味がする、魚醤(ガルム)かもしれない。


古代ローマ時代には既に魚醤(ガルム)があったはず、この世界にもあってしかるべきだ。

そうなると昆布が欲し所であるがデルーカは内陸部、乾燥昆布を見つけるのは厳しいか!?


これは旅に出たい!


色々食材について質問するとヴィルヘルミーナは中心街の市場や売店(タベルナ)にも詳しいらしく、今度連れて行ってくれる事になった。


クロアも農業関係には詳しいので市場や売店以外にも野菜探しに力になってくれるという。

いっそ家庭菜園でも作ってみようかと、異世界ライフの展望が広がり美里の顔はほっくほくである。



この時の美里には自分の右手には左側のヴィルヘルミーナとの話に夢中で暗黒面へ落ちようとしているヘルガが居る事に気づかず並べられた食事や食材の話題に盛り上がってしまう。


異世界と言えど、大きく変わった食材は見当たらないのだが白い小麦が手に入りにくそうな話が気になり質問をする。



「それなら私が詳しいよ!」ヘルガの圧が強い!かなりグイグイと来た。皮鎧を付けたままの薄い胸が無理やり押し付けられるが、そういえば遠方の農村地帯からこの都市に来たと言っていた気もする。

聞く所に由ると、デルーカ周辺地域は高低差が激しく平地が無い。

穀物の育てにくい地形での上、魔物や獣の多いディーンの大森林の影響で作付け面積を広げる事が難しいという理由で穀物類の耕作には向かないという。


必然的に放っておいても簡単に育つ鹿麦と呼ばれた酸味の強い麦や葉物野菜と僅かな牧畜や森林の中の天然の茸や木の実、野生の果物が中心になるという。

代わりに野生の獣が豊富な為、狩猟によって得られる獣肉が主な食事となるらしい。


都市南部では牧畜も盛んらしい。


ヘルガが初めてこの都市に来た時は肉と穀物のバランスが真逆でかなり驚いたという。

しかしなぜかこの都市では海が遠いのに塩は安いらしく美里は塩湖か岩塩の様な地層があるのかと考えた。



ヴィルヘルミーナの紹介した店の料理はどれも美味しい、値段は結構したが、どれも値段に見合った内容だった。

美里は特にチュチュと千本切(せんぼんきり)の野菜で作られた浅漬ピクルスが事の他気に入ってしまい何度も追加注文をした。白・赤・緑の野菜が同じ長さ太さに切り揃えられていて、野菜は人参と胡瓜(きゅうり)(カブ)の様であった。

日本人としては是非大根と白菜も欲しい所であるが、これから食材探しも楽しそうだとワクワクする。


食事の話題に区切りがつくと、領主の子供、ティオドゥラ、ティツィアナ、ティツィアーノの話題に移る。


「なんだか領主の子供達って仲悪いのか?」

「仲が悪いっていうより弟の評判がわるいんだよ」

美里の問いにヴィルヘルミーナが答えてくれる。



おっと、やはりこれはイベントのフラグだったか…美里は噂について注意深く確認する事にした。

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