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第39話 異世界で再びダンジョンへいこう④

第39話 異世界で再びダンジョンへいこう④

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ヴィルヘルミーナは驚愕する。


現在この迷宮(ダンジョン)怪物(モンスター)氾濫(スタンピード)と言う異常な状況なのである、中層への階段への到達処か、命さえ失う覚悟が必要なのだ。

ヴィルヘルミーナが最初に驚いたのは、開門一番にクロとクロアの娘クロエが単騎で突入してしまった事だ、普通に考えれば怪物(モンスター)の密集地帯にあの様な速さで突撃するなどは御伽話の英雄位である。


後を追って迷宮(ダンジョン)へ入れば自らの夫となった男が指一振りで迷宮の中を霊魂(ウィルオウィスプ)という知らない魔法で隅々まで明るく照らしてしまう。

ヴィルヘルミーナは何年も潜っていた迷宮(ダンジョン)の天井を始めてみた、その気持ちは言い表せない程に不思議な物だった。


死を覚悟して突入した迷宮(ダンジョン)は平和であった、上層の主道には虫型(インセクト)怪物(モンスター)たちの死体が大量に散乱している。

ある者は何かの魔法で焼かれ、あるものはクロエの短槍(ショートスピア)で貫かれていた。


ヴィルヘルミーナは、唯々驚愕する。


クロは周囲を確認しパーティーから離れ過ぎず、敵に囲まれぬように駆け回っているし、かなりの速さでジグザグに駆け抜ける犬に騎乗していても尚、怪物(モンスター)の急所を短槍(ショートスピア)で貫く幼女の姿が信じられない。


稀に後ろから回り込んできた虫型(インセクト)怪物(モンスター)も視線も動かさずヘリュやクロアが無表情で叩き落す。


もう意味が解らないし理解を超える。


ヴィルヘルミーナはヘルガと共に美里を守るように配置していたが、怪物(モンスター)が近くに接近する事が全くない。

単純に下層深部へも余裕で到達出来るのは明らかである、最盛期の彼女でもこのパーティーの勘定に入らない程に実力差があると理解してしまった。


彼女の中には驚愕以上の感情が生れた。



圧倒的な力の不足。



圧倒的な劣等感。



圧倒的な疎外感。



ヴィルヘルミーナはヘルガを冒険者として格下として認識していた、しかし彼女はこれ程に強力なパーティーの一員なのだ。



圧倒的な敗北感。



圧倒的な羞恥心。



圧倒的な後悔。



ヘルガも既にこれだけの実力を持っていた?見誤っていた事に強い後悔が襲う。


ヘルガは今、何を思っているのか?


ほぼ無意味となっている周囲の警戒を解きヴィルヘルミーナはヘルガの姿を目にする。

彼女がどれ程までに自分の想像を超えた女であるのか、ヴィルヘルミーナは己の無知を律する為にヘルガの雄姿を目に収めたくなってしまったのだ。



そこには自然体で歩くヘルガの姿があった!




死んだ目をしてた・・・・




既に武器すら構えていない、これはきっと自分と同じ感情を抱いてる顔だと確信する。


「ははは、ヘルガ姉嫁様(あねさま)とは上手くやっていけそうだ」

ヴィルヘルミーナは誰にも聞こえない様な小さな声で微笑み呟いていた。




ヴィルヘルミーナは己を恥じる、土下座で額を床に叩きつけ、女として身を捧げて迄に渇望した冒険者への復帰。

足りていない、捧げた物があまりにも足りない、砂粒を砂金と偽った様な思い。

ヴィルヘルミーナが自らの人生を捧げると決めた男は神にも近い存在なのだと理解してしまう。


これだけの修羅場、いや修羅場の筈の戦闘の最中に不謹慎であるのだが、自分は神の如き男の所有物となったと言う原始的な喜びが込み上げていた。





都市兵軍では魔石土竜(ませきもぐら)の一団が中層へ入る階段に到着するには早くて半日、長ければ1日以上かかるという予想の元で準備をしていた。

それどころか到達不能だと言う思いが、多くの兵士の表情からは伺える。


何故なら都市最精鋭300名が犠牲を出しつつ命かながら逃げてきたような場所なのである。

冒険者としては珍しく魔術師を大量に抱えるギルド魔石土竜(ませきもぐら)と言えども不可能と考えるのが自然な話である。


魔石土竜(ませきもぐら)の中層到達の知らせが入ったのは、そんな彼らが迷宮(ダンジョン)入り口の階段下で準備を初めて僅か1時間後であった。





中層へ降りる階段前にある安全地帯(セーフゾーン)に到着すっると「カオルお兄ちゃんおそーい!」とぷんすかしているクロエとクロが居た。


死霊秘法ネ(ネクロノミコン)のパーティーの迷宮(ダンジョン)内の移動速度は唯々異常だ。


正確な時間は時間確認をするのには日時計か高価な魔道具が必要なこの世界では感覚の話になる。


現役時代の全盛期であったヴィルヘルミーナが所属していたパーティーが当時、上層の主道を抜けて中層へ降りる階段まで到達する為におよそ3時間程度を見積もっていた。

下層を主戦場にしていた、ダンジョン都市デルーカでも一流と言われていた彼女のパーティーがそれ程の時間を必要としていた。


然し結成されて数日、迷宮(ダンジョン)探索(ダイブ)2回目と言うこのギルド死霊秘法(ネクロノミコン)のパーティーはチョットそこまで散歩に行ってきますと言う様な様子で世間話をしながら進んでいる。


恐らく今いる中層の階段に到着した時間が20分程度、

ヴィルヘルミーナの頭は混乱している。





美里が階段を降りる前に大量の霊魂(ウィルオウィスプ)を中層側の安全地帯(セーフゾーン)を照らす。


「いっぱいいるねぇ...」

「キモッ!」

と美里が呟くとヘルガが非常に嫌そうな声をあげた。


中層の安全地帯(セーフゾーン)を階段の上から見下ろすと明らかに怪物(モンスター)に埋め尽くされていたのだ。


上層の安全地帯(セーフゾーン)骸骨(スケルタル)死霊(レイス)たちにより護られ、下層から階段を上がってくる虫型(インセクト)怪物(モンスター)や空を飛ぶ虫型(インセクト)怪物(モンスター)霊体(アストラル)怪物(モンスター)も侵入は許さない。


少なくとも骸骨(スケルタル)死霊(レイス)は、デルーカの迷宮(ダンジョン)中層迄であれば1体でも無双状態である、それが300体以上となれば危険を感じる理由は無くなっていた。


「これはどうするんだい?」

上層を軽く制覇したとはいえ、ヴィルヘルミーナにしてみればその不安はもっともである。


「そっか、ヴィルヘルミーナには見せてなかったね、俺たちの本当の秘密」

「?」

首を傾げるケモミミ娘が可愛い


「あ!」

ヘルガが突然大きな声をあげる。


「どうしたん?」

「あれでしょ?天井いっぱいにカオルが作ったってやつ...」

「そうそうそれそれ」

美里は軽く答えるが、思い返せばヘルガもアレはまだ見せていない。

知ってても突然見せれば心臓麻痺を起こしかねない絵面であろう、そんな酷い事....面白すぎるではないか!


「カオル?」

美里の悪そうな顔を見て不安になるヘルガが美里の腕にしがみついてくる。


「じゃあ早速、戦力情報の確認をしようかね」









美里は悪い笑顔をしていた。

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