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第36話 異世界で再びダンジョンへいこう①

第36話 異世界で再びダンジョンへいこう①

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「いく!カオル様いく!アタシいくよ!」

ヴィルヘルミーナは大声をあげる。


「明日と言わず今からでもいい!直ぐに戦えるぞカオル様」

ヴィルヘルミーナへ彼女の力量の確認の為、ダンジョン探索を提案したところ、見事な食いつきを見せる。


「装備とかはあるのか?」

「ある!手入れを欠かした事はない!」

ヴィルヘルミーナは冒険者を引退をして4年間、何時かやってくるかもしれない復帰の日を夢見て体の鍛錬を欠かした事がないという、彼女の覚悟は本物だった。


確かに今からでもいいかとも思ったが、死霊(レイス)達を見せるとすれば、せめて中層の深部へ入りたい。あえて他の冒険者へその能力を晒す必要はないののだ、可能な限り秘匿しておきたい。



そこでふと血盟(クラン)デスマーチ軍団(レギオン)、ギルド死霊秘法(ネクロノミコン)の説明をして護るべき秘密をの内容を確認しなければいけない事に気づく。


「ヴィルヘルミーナ」

「カオル様、アタシの事は『ヴィー』でいい、そう呼んでくれ」

「わかった、ヴィー昨日も言ったが俺達には他の冒険者とは違う色々な秘密がある、それらの秘密は必ず守ってほしい」

「承知している、破られた時はこの命を取られても文句はない」

彼女の熱量は現代日本人だった美里にはかなり眩しい物である。


「もう一度言うけど、開示出来るようになるその日まで秘密厳守だ?」

「誓う!!」

ヴィルヘルミーナは真剣な面持ちで美里を見つめる、当の美里としては前を向きピンと立つ耳とピシりと叩かれる尻尾が可愛くて緩みそうになる顔を必死に堪える。


「ロリガ可視化しろ」

「うい~」

ロリガがだらしない返事をすると、扉の前にロリガが出現する。

アストラル系モンスターが突然出現した事にヴィルヘルミーナは驚愕の表情とともに耳周りの産毛が逆立つ。


「俺の魔法で召喚した死霊(レイス)のロリガだ」

「え!?魔法で!?」

そこには迷宮ダンジョンで幾度か遭遇し苦戦させられたアストラル系の上位種である死霊(レイス)と言う名前にも驚いていた


「わが名は、ロリガである!『上位(アーク)死霊(レイス)のロリガである!」

「え!?しゃべった!?」

先ほども返事はしていたのだが怪物(モンスター)が喋る事には思考が追い付いていない様子だ。


「クロエがよく乗って遊んでいるクロや群れの犬達もこいつと同じように召喚したリビングコープスだし、エーリカとオリガは亡霊(ワイト)だ」

角の形から一般的な双角族ではないエーリカ達やクロア親子とまでと言えば流石のヴィルヘルミーナも頭が大混乱の様子である。


この世界での霊体(アストラル)系怪物(モンスター)は話に耳にするが、対応が困難であるため冒険者であっても接する様な場所に近づく事は少ない。

そのうえでの上位(アーク)死霊(レイス)や更に強力な上位種である亡霊(ワイト)と言う名を聞けば(にわか)に信じる事が出来る筈はずもない。


「え!じゃあ、みんな怪物(モンスター)って事?」

「まぁ何をもってモンスターと言うのかは難しいけど怪物(モンスター)ではなくちゃんと人間として扱ってほしい」

流石の事にヴィルヘルミーナは頭を抱える。歴戦の冒険者から見ても流石に想像の斜め上過ぎる内容だったのだろう。


「カオルが召喚してカオルの命令をちゃんと聞くってすごいよね!そんな魔法があるってアタシ吃驚(びっくり)しちゃったもん」

ヘルガが目を輝かし美里の魔法をほめちぎるとその様子にヴィルヘルミーナも目を丸くする。


「そうか、そういう魔法があるのか!凄い、カオル様は凄い魔法使いなんだな!」

「そうだよ、カオルは凄いんだよ!魔石土竜(ませきもぐら)の連中だって一瞬にして倒しちゃってラヘイネンペラヘの連中だって美里に頭が上がらないんだ!」

「ちょ、ヘルガそれは言い過ぎ」

ヘルガの賛辞が止まらないが、小市民 美里薫としてはちょっと落ち着かない。


「やっぱりダンジョン前広場で魔石土竜(ませきもぐら)のエーカが見知らぬ黒髪の家族に平身低頭してたっていうのはカオル様が相手だったんだな...もしかしてと思っていたけど、実際に聞くと凄い事だね」

ヴィルヘルミーナから話を聞けば、あの時の出来事は冒険者間で話題になり、ラヘイネンペラヘにクロエが出入りしてファミリーの飼っている犬達とオスクやティモスに似た若い怪物の様な男達を従えて遊んでいるという2つの話が物凄い話題になっていたという。



「もしかしてクロア達母娘も?」

「え?」

あえて黙っていたクロア親子の話が出てきた事にドキリとする。


「クロエはこの辺じゃ有名だよ、ドワーフでも勝てないくらいの腕力があるとか、オスクとティモスに似たデカい男を従えているとか、あんなおっかない犬の群れを従えているとか、商業区では神の祝福を受けた『神子(みこ)様』が現れたとかって凄い噂になってんだ?」


どうも(ちまた)ではラヘイネンペラヘのエサイアスが神子(みこ)を囲ってると言う話になっていた様だ。

美里が考えている以上に噂が広がっていた事に猛省しつつ、ヴィルヘルミーナ答えにたどり着いている事に驚きを隠せない。


実際に美里がこのインスラに来てからの数日で想像し得ないトラブルが多発している、原因が何処に帰結するかは必然ではある。


「凄いな、そりゃあ男嫌いで有名だったヘルガだって惚れるのも当然だ。私だって今は混乱しているがこんな男に愛を囁かれたら有無を言ず腹を見せて濡らした股を開くわ」

ヴィルヘルミーナの言葉にヘルガは赤面して両手で顔を覆う。


「しかも、交尾迄凄いんだもんなぁ...」

小さな声でつぶやく。


「なぁカオル様、ヘルガ、アタシは多くは望まない、もちろんヘルガが一番で異論はない、でも産めるうちにカオル様の子種が欲しい」

2人は一瞬ギョっとしたが、優れた男の子種が欲しいという女の気持ちは世界共通なのだろう。


「私が生んでから、2番目、2番なら....許す....」

しばらく沈黙が流れたがとヘルガが了承を示すが、その顔は苦悶に満ちていた。


すると突然、ヴィルヘルミーナの顔に涙がつたう。


何事かと美里は混乱していたのだが、ヘルガは事情を察した様である。


彼女は30歳と言う、この世界では女として穴以上の価値がない、片目が見えず顔には大きな傷、左手の中指・薬指・小指の三本がモンスターに食われて欠損。


娼婦となって5年、既に女としての人生は諦めがついていたかもしれないが、それは仕方なく現実を受け入れていたからなのだ。


少しでも機会があるのなら、僅かでも幸せを求める事を責められようか?


「でもカオル!1番嫁は私だからね!」

ヘルガが薄い胸をはって美里に強く主張をすると、勢いに負けてつい了承をしてしまう。


「ありがとう、カオル様、ヘルガ姉嫁様(あねさま)

涙を流しながら床膝を付き美里とヘルガの足に口づけをする。この世界の何かの儀式なのだろうか、それとも感謝の表現?


どうやら先に嫁いだ嫁は姉嫁様(あねさま)と呼ばれるようである。


「クロアは?クロエはカオル様のお嬢様ではないのか?」

「クロアは私の下、一番の姉嫁様(あねさま)はこのロリガである」

またこのチビッコが面倒臭い事を言い始める、こいつの個性はしっかりと強制したい所である。


「「え!?」」

ヘルガとヴィルヘルミーナが驚愕の声をハモる。


「違うからね、こいつ虚言癖あるだけだからね」

と美里はきっぱりと否定する。


「え!?」

今度はロリガが驚愕の声をあげた。


「なんでお前が驚くんだよ、おまえはヴィーに説明が終わるまではお話禁止、お口にチャック!必要な時は挙手して許可が出た時だけ!言うこと聞かなかったら一生自動ドアだぞ」

美里から2度目の会話禁止令を出され死んだ目で静かに扉の横に佇む。


クロアとクロエは母娘だが美里との家族関係では無い事を説明し、現段階ではヘルガとヴィルヘルミーナだけが嫁『候補』である事を確認した。

直ぐに候補ではなく婚約である事をヘルガに訂正させられ、勢いに負けた美里は了承する。


こういう時のヘルガには逆らってはいけないのだ。言葉選びは重要である。

ヴィルヘルミーナには完全にカカア天下だなと笑われてしまう。


話に一区切りついたところで改めて血盟(クラン)デスマーチ軍団(レギオン)の存在を説明を行い、戦闘の大半は既に迷宮(ダンジョン)に潜ませている骸骨(スケルタル)死霊(レイス)達が中心になる事を説明するとヴィルヘルミーナはロリガみたいのがまだ何人もいるのかと驚愕する。


何かを訂正したいのかロリガが必死に手を上げて発言を求めるが美里はガン無視する。

どうせ骸骨(スケルタル)死霊(レイス)同格視された事に抗議したいのだろう。


どうやらロリガとのコミカルな一連のやり取りでヴィルヘルミーナは美里の死霊(レイス)に対しての警戒はだいぶ取り除かれたようであった。


ロリガはこういう所で役に立つ事があるので、怒った物か褒めた物かと悩ましいのだ。



続いて今後のキヴァ・エラマによる土木事業についても説明しすると、初めて聞く内容に理解が追い付かずキョトンとしていた。

しかし悪所の環境が改善する事を理解すると少しうれしそうにしつつ提案をされる。


「娼婦から抜け出したい女もいっぱいいる、そういった女を守ってあげられないか?」

「これから多くの人間を雇用する予定はあるよ」

マイヤ母娘の様な人たちの話であろう、美里は可能な限りの援助をしようと誓う。





「では明日からいけるかな?」

「任せてくれカオル様」

「様はもういらないよ」

「じゃ...じゃあ、旦那様?」

ヴィルヘルミーナは年甲斐もなく顔を赤らめ尻尾をものすごい勢いで振っていた、獣人族わかり易い。


「普通にカオルでいいんじゃないかな?」と冷たい目でヘルガが答えると美里もヴィルヘルミーナもただ頷く。

やはりヘルガの独占欲は強いのか、他の女とイチャ付くのは歓迎されないらしい。


ヴィルヘルミーナは部屋から自らの装備を持て来ると、自分の戦闘スタイルを説明し始める、先ずは骸骨(スケルタル)死霊(レイス)の護衛付きで中層深部を目指し冒険者復帰に体を慣らしていく事をきめる。


自らの戦い方や冒険の話をするヴィルヘルミーナは少女の様に輝いていた。


その後、死霊秘法(ネクロノミコン)のメンバーを集めヴィルヘルミーナが正式なメンバーとなる旨の説明が行われた。






















こうして、ヴィルヘルミーナはギルド死霊秘法(ネクロノミコン)のメンバーとして5年ぶりに冒険者へ返り咲く事に決まった。


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