第34話 異世界で娼婦ハーレムを②
第34話 異世界で娼婦ハーレムを②
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美里は唯々(ただただ)困惑していた。
おかしい、今日はエーリカ、オリガ、ヘリュの楽しい歓迎会の筈であったのでは?
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インスラの1階、大家が営む麦藁細工の工房の大きな作業テーブル、日が落ち窓から差し込む明かりもない暗い部屋に、美里の召喚した強い灯りを放つ霊魂が4つ突如部屋の天井に現れる。
「カオル様は本当にすごい魔術師なんだね!」
ヒルマ飛び跳ねて喜ぶ。
「ふぉおおぉ...」
ヤーナも目と口を大きく上げ驚嘆する。
マイヤは呆然と煌々と輝く4体の霊魂の輝きを見回し、マイリは初めて見た魔法の力に目を輝かせた。
アルアとアルマの母娘は美里の魔法を見るのは2度目だったのだが、やはり魔法は珍しいのか「魔法ってのは本当に凄いねぇ」と感心しきりだ。
ヘルガはフンスと無い胸を張り、まるで自分の手柄かの様に、美里の賞讃を誇る。
テーブルに買ってきた食料を並べるが、オリガ達が買い出し中である。
とは言え『お腹いっぱい教』の美里としては子供たちに我慢させる訳にはいかないと先に食事を始める事にした。
最初は遠慮してモジモジしつつ手を伸ばせずにいたマイヤとマイリに「お祝いだから遠慮はいけませんよ」と2人にの前に食事とりわけクロアが優しく微笑むと、少しづつだが大事そうに供された食事を食み出す。
マイリは果実水を口にしたのが初めてなのだろうかひとくち口に含むと目を丸くしてゴクゴクと飲み込みだす。
始めは見た事がない様な豪華な食事を前にオドオドしていたマイリもクロアから直接腸詰を手渡されると流石に我慢が出来なくなったのか、ちらりと母の顔を見る。
優しく頷く母の顔を見て物凄い勢いで食べ始める。
マイリは小さな眼を大きく開き顔を紅潮させて初めて食べる肉汁たっぷりの腸詰を必死に頬ばっていると、蜂蜜パンに更に蜂蜜を吸わせた蜂蜜パンパンをマイリに食べさせる。
クロエは嬉しそうにマイリを見つめている。
マイヤにも腸詰を手渡し「召し上がっていただかなければカオル様に失礼ですよ」と優しく告げると、マイリが口いっぱいに腸詰を頬張っている姿を見て思わず涙が零れ出す。
彼女は少し震えた手で受け取った腸詰を口にした。
「美味しい...美味しいです、カオル様、クロアさん、あり...あ.......ご.....ます........」
マイヤはその涙が止まらなかった。
マイヤは咀嚼することも出来ず体を震わせた。
マイヤはただただ感謝を口にする。
それを見たマイリも突然大きな声で泣き始めてしまう。まともな食事が本当に久しぶりであったのは容易に想像できた。
『おなかが一杯は嬉しいのぅ』
美里はあの時の白靖様の言葉を思い出す。
「俺の前で飯の心配はしなくていいっすよ、俺の信仰する神様の教えは、皆が腹いっぱい食べて幸せになる事ですから」と言うとヘルガが笑い出し、そんなヘルガの目にも涙が滲んでいた。
美里は面白い事が言えたと心の中でガッツポーズをしたが、なぜか空気が重い。
「カオル.....様....には......どの様に感謝を.......申し上げれば良いのか...」
マイヤは泣き崩れマイリもそんな母に抱き着き大泣きしてしまう。
「私共母娘も同じ思いで御座います、カオル様への感謝はこの身が尽きるまでいかに忠義を捧げようとも返せるものではございません!」
「カオルお兄ちゃん、ありがとう...ぐすっ」
クロアとクロエまで泣き出してしまったのだ。
おぃ、アンデット!空気を重くするな、こっちは実験で勝手に使役したのに気まずいが過ぎるぞと心の中で叫ぶ。
クロアも生前は酷く辛い貧困を経験し母娘共々病でこの世を去っているのだ。
食事を取れず最後の7日間、手元の僅かな食事はクロエに与え、彼女自身は水しか口にしていなかった。
それでも体の弱かったクロエは病と栄養失調により先に息を引き取ってしまう。
母親としてクロエを看取らねばならなかった気持ちはどれ程の辛さだったのだろうか?
その彼女も同じ日の夜に息を引き取り、その惨めで辛い人生をどう思い眠りについたのか。
幸いと言うのも難しいが、直ぐに埋葬されたからこそ美里の実験により不死怪物とは言えこの世に戻ることが出来た。
人生の最後の記憶があの辛い最後で締め括られずに済み、クロエの元気な笑顔が見れたのだ。
クロエを見ても今でこそ元気なガキ大将になったが、年齢と体の成長具合を見れば、美里と出会うまでどの様な状況だったのかを想像できる。
むしろ元気すぎと言う噂も聞こえてくるのだが・・・
その話を聞いていた美里は、この状況にボケる事も突っ込むことも出来ず、ただ遠慮なく食べる様に進める他なかった。
アルアを見れば彼女も目に涙を溜めていた。
彼女もマイヤの実情を理解している、たまに差し入れはしている物の過度な干渉も出来ない、悪所には同じように貧困に身をやつす人間は多いのだ。
同じ母親として娘に満足な食事を取らせる事が出来ない心情がいかに辛い事かと気持ちを慮れば、その心は苦しく押し潰される様であった。
アルマはその横で容赦なく食事に手を伸ばし貪り食っていた、まさに餓鬼、こいつは放っておいても勝手に元気に生きていくだろう。
ヘルガ自身も貧しい農村育ちで自らもその家族も常に飢えていた、病気になった家族親類の何人もが十分な栄養を取れずに命を落としていた。
この都市に来てからもパーティーを失い冒険者として生きられなくなり、決して向いていない娼婦へ身を窶した。
冒険者が多い街とは言え、他所者の女が出来る仕事は無くこのままどん底へ落ちていくだけと覚悟をし生きる事に絶望をしていた。
ヘルガも途中から俯き頬を濡らしていた、美里には彼女の心情が理解できていなかったが、美里に出会えなければもしかすると彼女の中には、いつか飢え死にするかもしれないと言う恐怖が常にあったのだ。
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おかしい、今日はエーリカ、オリガ、ヘリュの楽しい歓迎会の筈であったのでは?
美里心の中で助けを求めていた。
それが例え『お呼ばれ』されずに階段の上から恨めしそうな顔をこっそりのぞかせたロリガであっても。
しかし、流石のロリガもこの空気の中でボケる事は憚られたのか、美里と目が合うや否やそっと顔をひっこめる。
肝心な時に使えぬ!
「ただいまあ~売れ残りをいっぱい安くかいたたいてきたぜい!」
ヒルマが帰宅するや否や素っ頓狂なで帰宅を知らせた。
「主、ただいま戻りました」
オリガが買い足した食べ物と酒をテーブルに置き、別に分けた籠に入れた保存のきく食べ物をそっと美里へ渡す。
「おなかすいたあー」ヒルマが空気を察してか、大きな声を出して空気感を変える。
「お腹空いた」ヤーナもヒルマに歩調を合わせる。
この2人は若いが気が利くようである。
美里が改めて乾杯の音頭を取ると、本当の歓迎会が始まった。
マイリは食が細いのかすぐにお腹がいっぱいになってしまうと、ウトウトとし始める。子供にはもう遅い時間なのだ。
マイヤもだいぶ食が細いようで食も止まっていた、クロアがマイヤの怪我の事もあり先に休むよう提案しマイヤ自身も体が辛かったが先に席を立つ事が戸惑われていた様で美里から遠慮なく休むよう言葉をかけると何度も何度も感謝し部屋で休むため部屋へと帰っていく。
美里はマイヤ母娘が部屋へ戻ると直ぐにクロアへ保存食を母娘の部屋へ持って行くようにお願いをする。
戻ってきたクロエは少し嬉しそうな顔でマイヤが繰り返し感謝していたと美里へ伝える、クロアは彼女たちが救われた事を我が身の様に感じていた様だ。
暗い空気が晴れた所でそれまで空気に徹していたヴィルヘルミーナが口を開く。
どうやら彼女も元冒険者であったようで、ヘルガが冒険者へ戻った事や新しい入居者もそのパーティーメンバーと言う事に強い興味を持っていたらしい。
獣耳族は狩猟系民族らしく、この体になっても冒険者に戻りたいという希望は持っていたという。しかしこの体ではパーティーの足を引っ張ってしまうと理解していた為に諦めていたのだが、美里の魔法や小さなクロエが参加している事に燻る気持ちが再び燃え出したというのだ。
彼女が冒険者を引退したのは迷宮の下層探索時にモンスターとの戦闘で右目と左手の指の3本を失ったためと言う。
当時組んでいたパーティーもメンバーの半分を失い、結果的に冒険者を引退せざるを得ない状況になったという。
回復魔法と言う物は存在したが欠損を直す事は出来ないらしく、彼女もヘルガ同様に生活基盤を失い行く当てもなく娼婦へ身を窶したのだ。
しかし9人の単独パーティーで下層を探索していたというのはかなりの実力であったのではなかろうか?
「荷物持ちでもいい、最悪パーティーの危機には犠牲になる事も厭わない、カオル様が望むならこの身を好きなようにしてもらって構わない、もう一度私に冒険者となる機会が欲しい!」
意を決した彼女はと突然土下座で美里に願い出る。
ヘルガの表情が一瞬硬直したが、彼女の気持ちも理解できたのだろう、あえて目をそらし全てを美里に委ねる事にした様である。
「ケモミミ....」つい美里は呟いてしまう。
ケモミミと言う言葉が聞きなれていなかったのかイメージがリンクされるアンデット以外の皆が首を傾げる。
土下座をしたまま美里の審判を待つヴィルヘルミーナは少し震えているようにも見えた。
しばらくの沈黙が流れる、美里は決心する。
「ヘルガどうする?」
そう、ここに来て判断をヘルガへ丸投げにしたのだ。
もちろんヘルガが美里に判断を委ねていた事は十分に理解しているが、美里はヘタレなのだ。
美里的にはヴィルヘルミーナの加入と奉仕は大賛成である、しかしヘルガの心理状態が最優先なのだ。
そして当のヘルガは物凄い苦悶の表情をしていた眉間には物凄いしわを寄せ首をあっちこっちに捻る。
「わ....私達は下層へ行くんだよ?」ヘルガは暗にその体では厳しいと伝えるが。
「足手まといと思えば迷宮で捨ててくれても恨まない、最後に一度だけでもいい、私に機会をくれないか!?」ヴィルヘルミーナはゴツンと音を立てる程に頭を地面に叩きつけた。
再びヘルガは物凄い苦悶の表情をし悶える。
なにせ、娼婦落ちをした時に面倒を見てくれたのも、路上生活のヘリがにインスラを紹介してくれたのもヴィルヘルミーナだったのだから。
「私達には、守らなきゃいけないカオルの凄い秘密がある、絶対守れる?」
「無論だ!」
「カオルの一番は私だよ?!」
「承知している!」
「子供を産むのも私が一番だからね!」
「賜った!私はお情けがいただければそれでいい!」
「え?」
話の方向性が美里の考えていたものと少し違う気がする。
「みんなもいい?」
「主がお前に託したのだ異論はない」
オリガには異論はない。
「カオル様がお認めであれば問題ありません」クロアも異論はない。
「いいよ?カオル様はその女には興味あるみたいだし」
ヘリュ!余計な事は言うな!
「「え?」」
ヘリュの言葉にへルガの判断が少し揺らいだ。
そしてヘリュのまさかの回答にヴィルヘルミーナも驚いていた、何しろ体が欠損している傷物でしかも若く見えるが30歳と言うこの世界では既に女性としての時期が終わっているのだ。
「じゃあ決まりだね、荷物持ちは多くほしかったし下層の情報があるならありがたい」
ヘルガが少しオロオロしていたが美里の一言で話が纏まる。
こうしたまた一人、ギルド死霊秘法のハーレムメンバーが加わった。
そこからは楽しい宴が進みアルマとクロエは子供と言う事で部屋に返されると、そこからは大人の時間のはじまりだ。
参加メンバーが娼婦と元人妻に未亡人のアンデット、お酒も入ったとなれば、会話の内容はおのずと卑猥な話にもなる。
話題の中心は『男嫌いのヘルガが溺れたカオルの夜のテクニック』である。
と言うか男が嫌いだったの?!
先ほどのお通夜の余韻は既に消し飛んでいた。
最初は恥ずかしがったヘルガであったが、酒が進むと途中からはノリノリで話し出し、しまいにはどの様な営みがあったのかを実演しようと・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・翌朝、美里の部屋にはクロエとアルアにヒルマにヤーナとヴィルヘルミーナそして当然ヘルガが裸で酒と大人の臭いをさせ、倒れていた。




