第33話 異世界で娼婦ハーレムを①
第33話 異世界で娼婦ハーレムを本文
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「ワシら、生きて帰れたんじゃな....」
「はい、まさか連中がここ迄恐ろしとは思っていませんでした」
「俺、胃が痛くて吐きそうです....」
「バカタレ、ワシなんかとうに漏らしとるワイ。と言うかあんな内容で手打ちになるなんて理解が出来ん、何を考えているんじゃあの男は...」
「何も考えていないか、もしくは...」
「なんじゃ?」
「俺たちなんて蟻んこ程度にしか思っていないんではないでしょうか?」
「ありんこ...なんにしろカオル殿が欲無い男で良かったわなぁ」
アジトを出た魔石土竜の代表達は生きて帰れた事に安心したのか皆一様に目に涙を浮かべていた。
ちなみに幹部達はミーカの場合は年のせいで股間が緩いんじゃないかと思っていたが口にはしない、もうそんな力の余裕は既に彼らの心には無かったのだ。
◆
今の魔石土竜に反論の余地等は一切無かった、最悪全ての資産を奪われ、否それ以上に搾取される可能性や、場合によっては全員が殺される可能性も考えていたのであろう。
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「で、旦那....その角付きの2人は、その....どうなんだ?」
わかる、エサイアスの言いたい事は解る、言っているのは鉄の棒を嬉々としてブンブン振り回している事である。武器に使いたいらしいと言えば、確かにそこらの武器より凶悪に見えるなと苦笑いをされた。
ヨシフの店でしっくりくる武器が無くて、たまたまあった棒を気に入った様だと説明すると、エサイアスから屑鉄を壁外の連中が固めただけの棒は脆くしっかり鍛え直さないと武器にならなず簡単に折れるとアドバイスをくれた。
確かに迷宮で連戦するのであれば、丈夫でなければならない、武器として作り直した方がいいだろう。
そこでエサイアスが腕のいい鍛冶屋を紹介してくれる事になり、エーリカとオリガが期待に満ちた目で美里を見ていた為早速鍛冶屋に向かう事にする。
◆
より良い武器の仕入れを考えエーリカとオリガだけではなくヘルガとクロア、ヘリュも一緒に向かう。インスラへ戻り皆で直ぐ鍛冶屋へ向かう事になったのだが、再びの留守番にロリガから向けられた恨めしそうな目線に胆力のない美里の心へ一抹の罪悪感を与える。
クロエは今だにクロ達と遊んでいるようで外出中である。
紹介された鍛冶屋は以前行った東壁街沿いの悪所の区壁を超え更にに奥の区壁を越え南区の商業区の中に工房を構えていた。
南壁街区の区壁を超えるとかなり衛生状況が良くなり工房の立ち並ぶ地区に入る、区壁を2つ超えるだけでちゃんとした街である。
エサイアスに紹介された鍛冶屋を見つけると中に入り『ヴィタリー』というドワーフを尋ねた。
エサイアスの紹介である事を伝えると弟子と思われるドワーフの小僧が裏手へ呼びに行く。
ここは鍛冶屋と言うだけあり純粋なに工房である。
壁には素材であろうか、エーリカ達が持っているような鉄の棒や板が長短入り乱れて大量に立てかけ並んでおり、奥には鍛冶道具屋な様々な作りかけの武器も色々とあった。
奥からのそりと出てきた男、彼が腕のいいドワーフの鍛冶屋の親方と紹介されたヴィタリーの様だ。
「ぬぉ、お主はあの怪力娘の親父じゃねえか?」
どうやら腕相撲大会の現場にいた処か参加者だったらしい。
「今日はどうした?嬢ちゃんはいねえな」
「エサイアスさんの紹介で双角族の2人の武器が欲しくてお願いしに来たんですよ、いっま負っている武器と言うか棒はエサイアスさんに直ぐ折れるって言われました」
言うや否やエーリカとオリガが手に持つ金棒に目を向ける。
「お前さんの女はみんな怪力なのか?ってか確かにこの屑鉄じゃあ直ぐ折れちまいそうだな...」
ヴィタリーは大きくため息をつく。
「ロングパイクかメイスみてぇのが良いのか?重さとか長さに希望はあるのか?」
ヴィタリーの質問に誰も回答は無かった、エーリカ達はただ美里の顔を見る。
「エーリカとオリガはなにか希望はあるか?」
「重さはもう少し重くていいかと思います、長さは同じくらいでお願いします」
「切るより叩く感じで良いのかな?」
「はい」
「オリガは何か希望がある?」
「私も刃は不要です、重さはエーリカと同じく今より重い物を希望しますが、長さはもう少し短めを希望します、拳2つ分くらいでしょうか」
オリガは手で拳を交互に重ね積める長さのおよそ20cm程を示す。
当然エーリカとオリガの戦闘スタイルや筋力を知りたいと言うので壁に置いている金棒で一番重いものを持たせてみたが、エーリカとオリガ両名とも軽々と振り抜く。
流石に持ち込んだ金棒の3倍程度の重量が有る為、若干振りかぶり速度が緩くかったがヴィタリーを始め工房の人間は全員が口をアングリと開けたまま暫くの間硬直していた。
調子に乗り始めた2人は互いに打ち込みあい始めると、豪快な試しあいが始まると、金棒同士が激しく打ち合う音に驚いた近隣の工房の人間が集まりちょっとした見世物の様になっていた。
「お嬢ちゃんもあの2人と同じような武器で良いのか?」
ヴィタリーがヘルガへ確認するがヘルガは全力で首を振る。
「なんだ姉ちゃんは妹なんだろ?怪力はねぇのか?」
「え?」
「違うのか?いゃ顔が凄い似てるからてっきり」
「皆に言われるけど血は繋がってないよ、うちの旦那が好きな顔が集まってるだけで...あの2人は姉妹みたいなもんだけどね」
「武器はどうするんだ?」
「ショートソードで二刀流」
「そか、良いの選ぼう」
ヴィタリーがそう呟くとエーリカとオリガに声を掛け武器造りに必要な意見を聞く。
彼女達は叩ければいい程度の認識で重さと長さを大体確認した後、詳細は美里へ確認するように希望した。
「鬼に金棒...」
美里は呟くと、デザインのアイディアをヴィタリーに伝える。
折角なのでデザインに関しては2人のイメージに合わせた物を考えて、これは可能か?こんなものは使えるかとヴィタリーと相談し始める。
「なんじゃそれは!面白いな!」
イメージを伝えるとヴィタリーは美里の初めて見聞きする様なデザインに強い興味を示し嬉しそうに承諾する。
初めての試みもあり工房総出で10日程の作成時間がかかると言う。
明日にでもダンジョンに潜る予定の為、壁に置いてある金棒の中から、素体用の精錬された頑強な金棒を借りる事にした。
長さは足りないがエーリカとオリガは各々気に行った物を機嫌よさげに選ぶその姿は修学旅行先で木刀を選ぶ少年の様であった。
ヴィタリーも嬉々としてやる気をみなぎらせた。
ヘルガはショートソードを2本、細目で長さ違いの物を希望し、クロアはレイピアとバックラー、ヘリュは眺めと短めのスティレットを希望し在庫の中から気に入った物をその場で購入したが、なんと金貨8枚と銀貨6枚もし取られる、ちゃんとした武器って高いらしい。
確か日本刀も真面な物であれば江戸初期の文献では現代でいう50万円~100万円だと聞いた事があるのを考えれば相応の物なのだろう。
特注の武器はいったいいくらするのだろうか、少し心配になってしまう。
◆
美里達は鍛冶屋を後にすると南区の市場を回り酒や食品を色々と買い込んで帰える事にした。
ふとアンデット達が食事を取れることは知っているが食欲があるのか聞いて見ると味覚を刺激する為、空腹感はないが食欲は有るらしい。
排泄もあるというのだから、それは本当にアンデットなのだろうかと美里は概念的な部分に疑問を感じてしまう。
そもそもアンデットって何なんだろう?その概念そのものが前世とも異世界とも、もしかしたら死霊秘法とも違うのかもしれない。
その違和感の理由は死霊秘法には記載されていない、もし書かれていたとしても文字化けをしていたり美里の知らないような専門用語の部分かもしれない。
南区の市場や売店を色々見て歩いた為、インスラヘの帰宅は既に日が落ち始めていた。
通常であれば悪所では寝る時間でもあるのだが、現代人の美里としてはまだ寝るには早くアンデットは言わずもがなだ。
ヘルガは意外と体力がある為、余裕と言うか買い物中もチョクチョク美里に無い胸を押し付けたり、腕を組んだり、今夜はどっちの部屋でといった話をそれとなくして来た、場合によっては朝まで起きている気であろう。
色々若返っている美里としてはウェルカムであるのは間違いない。
「マイヤー」
悪所に入ったあたりで昨晩出会った3階の親子の母親が前を歩く背中を見つけヘルガが声を掛ける、本日の仕事帰りなのであろう。
振り返った彼女は貧相でやせ細り、聞いた話では21歳と言うが年齢よりも老けた印象で、つまりは魅力的な女性ではないのだ、まぁ若くて見た目が良ければ売春宿ポピーナで酒場娘件売春婦として働けたのであろうが、結果彼女は路上娼婦をしているようだった。
ヘルガが彼女に駆け寄っていくが何か様子がおかしい。マイヤが少しふら付いているのだ。
「どうしたのその顔!誰にやられたの!?」
ヘルガの声に美里も駆け寄り顔を見ると右目が大きく腫れ、両頬は赤く唇がザックリ切れていた。ヘルガとの会話でどうやら乱暴な客に当たったらしいのだ。路上で商売する娼婦には地回りの用心棒が目を離すと偶にある事らしい。
マイヤは決して女性として魅力的な風貌ではなく、客を選ぶ事も出来ず、多少危なそうな相手にも声を掛け無ければいけない為、安い金で乱暴に扱われる。
彼女には日常茶飯事ではある様だが、今日の客は特に酷かった様だ。
そんな中でも娘の為、僅かな金の為に売春婦として働かなければならなない。
ヘルガから聞いていたが身元の保証がない女にはソレ以外の道を見つけるのはかなり難しいという。
彼女の手には娘に与えるのであろう大きなパンが抱えられていた。
ヘルガの好きな蜂蜜パンではない、ボソボソでべっとりとしたシカ麦と呼ばれる安価な黒いパン、現代人の美里から見ると悲しいやら腹立たしいやら複雑な気持ちになってしまう。
「ヘルガ!マイヤ!」
インスラの前まで来ると後ろから声がする、女性2人組でどうやら彼女達も同じインスラ3階に住む娼婦らしかった。
とは言えマイヤと違い器量も良く肌艶もいい為、食堂付宿で給仕をしつつ、気に入ってくれた男が居れば交渉して客を取る形式の娼婦である。
「もしかしてこの男の人がカオル様?うはぁ、初めまして3階に住んでるヒルマだよ」
「ヤーナ」
十代後半程の可愛い2人組であった、3階の住人は全員娼婦と言うのだ、美里的にはついついサービス料金について確認したい気持ちが溢れそうになるが、2人の胸元に目が行くと殺人鬼の様な眼差しをヘルガから感じ取り、直ぐに目を背ける。
ヒルマは活発な印象の童顔栗毛のウェーブヘアで、身長が美里と同じ程度の胸が大きい女の子。
ヤーナは小柄で黒髪でツインのおさげ、物静かそうな大人びた少女だった。
「カオルお兄ちゃんとお母さん、ヘルガお姉ちゃんお帰りなさい」
インスラの前での会話が聞こえたのかクロエが外まで出迎えると美里のお腹に抱きつく。
1人暮らしが長いとこういった出来事はムズ痒くも嬉しいのだがどうやら殺人鬼快く思っていない様子あった。
美里は視界の横ギリギリの位置から覗き込んでいるヘルガに小さな子はノーカンでお願いしたいと願う。
そしてクロエの後ろから、アルマとマイヤの娘も顔を出してきた、どうやら先ほどまで3人で遊んでいたのであろう。
「カオルがみんなと一緒って、もしかして皆にも手出したの?」
爆弾発言である。そんな事がないと判っていても美里の横にいる殺人鬼予備軍のSAN値はギリギリなのだ、ロリガ並みにコノ餓鬼は危険の塊である。
美里は頭を巡らし、殺人鬼予備軍の腰を強く引き付けると「おいおい、俺の女はヘルダだぜ?」といいヘルガの頬にキスをする。
・・・・・・決して『ダケ』とは言わなかったが
途端に殺人鬼予備軍はサキュバス予備軍に変貌し、皆に見せつけるためか強引に美里の唇を奪い舌を絡ませてくる。
ひとまず喫緊の危機は乗り切れたが、これは朝までコースを覚悟しなければなるまい。
「「「チッ」」」という複数の舌打ちが聞こえたがハーレム予備軍より今は本命のフォローが最優先である。
「こっちの大きい女の人達が4階の入居のひとかな?」
「カオル様のギルド死霊秘法のメンバーのエーリカだ、こっちがオリガ、小さい方はヘリュだ」
ヒルマにの質問にエーリカが代表し答える、どうやら名実共にエーリカがアンデット達の代表に落ち着いているようである。
「なんてハーレム野郎だ...」
ヤーナさん?呟き聞こえてますよ?
「なんだか賑やかだな、何かいい事でもあったのかい?」
タイミングと言う物は重なるもので、3階の最後の住人が帰宅した様であった。
「あぁ初めましてだね、あんたが噂のカオルかい、ヴィルヘルミーナだ3階のアンタの部屋の真下に住んでるよ」
美里は改めて挨拶するとヴィルヘルミーナが挨拶を返してくれる。
挨拶にフードを外したその顔は右目に眼帯をしており眼帯の下からも伸びた傷跡が見える。
背も美里と同じほど有るが女性的な雰囲気を残しつつも、どこか戦士然とした雰囲気を持っている。
一瞬冒険者かとも考えたが3階の住人は皆娼婦と聞いていたので彼女もまた娼婦なのであろう。
彼女もヘルガ程鮮やかではないがプラチナブロンドでショートヘア何より興味を惹かれたのは頭についた獣耳だ、しかしあまりに彼女を見ていると殺人鬼が出現する可能性が有るのであまり見ない様に必死に努力をする。
「なにしてんだ、中に入るぞ。ん?マイヤ、また変な客にやられたのか?客は選べ」
ヴィルヘルミーナの言葉に今更ながら外に居た事に気づき、皆はインスラの中へ入るとヤーナがポツリと「いい匂い」と呟くとヒルマも続いて「お腹すいたー」と美里の目を見つめ擦り寄ってくる。
若干の殺気も感じたが、視界にマイヤの娘が辛そうなな顔でエーリカとオリガが持っていた食料を見ていた。
完全に欠食児童である。
こんな視線に美里が絶えれるはずもない、今夜の食事はあのパンを2人で分けるのであろう、もしかすると数日ぶりの食事かもしれないし、普段からかなり偏った食事なのは間違いない。
「今日はエーリカ達の入居祝いでな、大量に食い物を買って来たんだが、みんな一緒に祝ってくれないか?」
美里がマイヤ母娘の為に提案する。4階で集まろうかと言う話をすれば奥から出てきた大家の娘アルアが1階の作業場の大きいテーブルを使えと提案してくれた。当然、大家一家も参加すると言う意味である。
流石に買ってきた食料では足りなくなる可能性があり、まだどこかの店で食料が帰るか来てみると東壁街区の売春宿付近の商店であればまだ色々開いているという事なのでオリガに金を渡し、ヒルマとヤーナの案内で買い増しに行ってもらう。
大家は既に酒をたらふく飲んでいた為、眠いと不参加となった。
美里はオリガが買い出しに行く時、コッソリ日持ちする食べ物も多めに買ってくるように指示をした。
あれ?これはエッチなお姉さんがいっぱいいるハーレム飲み会なのでは?と美里の心の中で邪な心が湧き上がっていた。




