第23話 異世界でダンジョンへ行こう④
第23話 異世界でダンジョンへ行こう④
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「4人だな、大銅貨20枚か銀貨2枚だな」
銀貨2枚を迷宮の入場税として支払うといよいよ迷宮へ突入開始となる。
都市軍の入場完了後、迷宮の入場にはしばらく制限がかけられた。
オリガの集めた話では都市軍が上層の通過確認の知らせが来てから冒険者の入場許可となる。
都市軍が入場し、隊列全体が階下へ姿が消した頃には既に手慣れた冒険者達は入場列を作り行列が出来ていた。
都市軍が中層攻略の直後に張り付き、普段は安全には採取困難な鉱物や植物を採取する腹なのだ。なるほど効率がいい。
今回の初迷宮探索の目的は、あくまで美里がダンジョンの経験を積む事である。
その為、ゆっくりと入場しようと言う事になった、なにより都市軍とは十分に距離を置きたいと言う理由もあった。
2重になっている入場門を潜ると、既にかなり暗い、都市の管理側で灯かりなんてものは用意は無いらしい、冒険者たちは各々入り口に入ると最初の広い空間で準備を始める。
中には松明に火をつける商売をしている魔術師もいる、なるほど環境で色々な商売が出来るものだ。
値段を聞いてみると大銅貨1枚と言うが、外で点けた火を持ち込めない為結構いい商売になるらしい。
マジックランタンの様なアイテムを持つパーティーもポツポツいる様だが美里の出す霊魂よりもかなり暗い。
美里たちも目立たぬように松明を準備していた、こっそりとオリガの魔法で火をつけると装備の再確認後にゆっくりと迷宮への本当の入り口である大階段を下りていく。
ダンジョン上層は6層からなり、入り組ん立体迷路の様な造りになっているのだが、中層迄向かう最短の通路は迷宮発見後から多くの冒険者が往来していた事もあり、少しづつ整備され、地面には石畳迄敷かれている。
また上層と中層には近年、行政府の整備により至る所に看板や地図が配置されており、上層には行政府が管理する複数の管理小屋があり、上層で緊急時には避難できる複数の安全地帯となっている。
これもデルーカの迷宮で採取物が都市の主要産業として重要視され、採取者である冒険者を保護する為の処置らしい。
上層の浅部、当然メイン通路周辺から分岐した直ぐの縦横の穴の浅瀬には、先に入った探索者が採取を始めているのであろう灯りが見える。
浅瀬で採取をする人間は戦闘力の弱いパーティーやソロの冒険者が多い。
暗黙の了解で、探索をする地域は自分達の実力に沿った場所となる。浅層半ばを超えると冒険者も減り始め、本来なら稀にモンスターに出会う事が有るのだが、今日に限っては中層へ向かう通路には都市軍侵攻が殲滅している為、全く出会う事が無い。
上層最奥に到着すると本来であれば他パーティーとの遭遇率は極端に減る、その分危険が増える場所でもあるのだが、やはりと言うか本日は複数のパーティーが列をなしていた。
中層へ侵入する場所と言うのは直径20m程の縦穴に過去の冒険者たちや都市政府らが整備したであろう木造の階段が設置されていおりこの階段で中層へと潜るのだ。
そして階段の上下には怪物の強襲の危険が無い様、都市行政府が管理区と称し安全地帯を設けてくれている。
木製の正方形型螺旋階段であるが幅が2m程度の為、かなり詰まってしまうようである。
結局、美里たちが階段に到着するまでに1時間近くの時間を要した。
しかしこの階段も物凄く高く、最初は暗くて判断に困ったが体感では40~50mはあったのではないだろうか?
この高さの階段を作った先人達には本当に頭が下がる。
中層へ降り立った場所はちょっとしたホールで中層の迷宮域との間には人工的に作られた高い壁と門が設置されている、まさに安全地帯である。
セーフゾーンの中はかなり整備をされていて都市軍や行政府の兵が管理しているであろう建物が複数建てられ、てしっかりとした管理がされている。
セーフゾーン内には冒険者が休憩できるゾーンや竈なども設置されていてここを拠点に長期間の探索も可能である。
そして驚いたのは石造りの階段が壁面に沿って浅層へ向けた建設途中のであり、既に縦穴の2/3ほどの高さまで完成していた。
流石は帝国の薬の原料の7割を生み出されている迷宮と言うだけあり、都市行政府もこのダンジョン管理には力を注いでいるのだろう。
クロアやヘルガの話では、中層に入る女性と言うのは殆どいないらしい、理由も単純で冒険者と言うものは粗野で乱暴、時に倫理から外れ、突発的な欲望を満たそうとするものも多いのだ。
中層も半ばになれば、通常時には別パーティ―とすれ違う事は少ない、そんな場所で奇襲など受ければ対処は困難であるし、もしモンスターとの戦闘中であれば絶望的である。
しかしこの日は聞いていた話と遥か乖離した状況である。
とにかく、中層へ入るパーティーで溢れているし、女性を含むパーティーも多く散見できた。
都市軍の進攻により中層のモンスター数は極端に減らされている事と、パーティー数が多くなった事で人の目も増え、女性やソロ探索者の安全性も高まっている事が理由である。
とは言え子連れの女3人男1人犬1匹のパーティーはかなり目だつようで奇異な目で見られているのをヒシヒシと感じる。
しかし、その中でも気なっる露骨な魔術師の視線を感じる、もしかすると地上で声を掛けてきたエルフと同じように隠蔽で隠しきれていない魔力量が原因であろうか?
中層の安全地帯に到着し、一旦壁際にな書を確保する。
想像よりもはるかに多い冒険者の数に作戦の確認と変更を話し合う事にしたのだ。
最終的に変更された作戦は、まず中層のまっすぐ伸びる中央道の最奥まで入り、そこから折り返し安全地帯へ戻る。
その間に採取や出現怪物の勉強をしようと言う事に決まり、ある程度のパーティーが中に入り終わってからゆっくりと進む事にした。
それまでの間は、死霊秘法を読み込み理解を深めようと考えた。文字化けや知らない単語とばかりでも、繰り返し読み込み、実験を繰り返す事で本質に近づけるよう努力しているのだ。
美里にとっては死霊秘法はこの異世界生活の命綱なのだ。異世界と言うまだ理解が追いつかない未知と恐怖で溢れている。
その間に他のメンバーも各々休息をとる。
全体の8割が中層へ入場が終わった頃である、移動の様子を見せていなかった幾つかのパーティーからそれぞれ数名づつ美里のパーティへ近づく様子が見える。
いずれも見るからに熟練の冒険者、恐らくは都市軍が殲滅を行っていない最奥迄探索する予定の実力のあるパーティーの代表だろう。
オリガの指示に従い、不可視化しているレイス達は高い高度からいつでも戦闘が出来る様に移動、オリガも不可視化のまま美里の正面に立ち、クロエとクロア、そしてクロも立ち上がり美里とヘルガを守るように立ち塞がる。
近寄ってきた冒険者の数はは全部で6名、彼らのパーティーを合わせれば40人近くになる。
その他にも安全地帯内には行政府の役人や駐屯兵も併せて10人程度いる、まさかここで戦闘を考えているわけではないとは思うがオリガ達は強く警戒心を見せている。
遅れてヘルガも立ち上がり剣に手をかけるが、美里がそれを制し近づく冒険者へと語り掛ける。
「えっと、何か御用でございますしょうか?」
しかし小市民美里薫の足は残像が見える程に震えていた。
嫌な予感しかしないのだ




