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第13話 異世界での問題を解決しよう

013-1-011 (編集版)

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「カオル~カオル起きろ~」


その日はヘルガに揺らされて目が覚めたのだが妙に体が重く、瞼も非常に重い。


昨晩深夜まで起きていたからだろうか?


怖い思いをいっぱい経験したからなのか?


慣れない魔力をいっぱい使ったからか?


眠い理由しかない。



「おはよ~ヘルガ~」

「はい、おはようカオル」

ヘルガは寝惚けている美里の頬へ軽くキスをする。


突然の事に美里は覚醒する。生前からもう長らく味わっていなかった、護りたい幸せなココにあったのだ!!


美里がヘルガを抱き寄せ、彼女の頬にキスを返すと昨晩の出来事を思い返す。


ここでは前世とは常識も秩序も違うことは理解した、美里はこの世界のルールで困難に立ち向かうことを決める。


美里は左腕のスマートウォッチを確認すると今はAM6:30を過ぎ、結局2時間も寝ていなかったようだ。


ヘルガたん朝はやくね?


否、現代社会であれば早いかもしれないが、地球でも近代と呼ばれる時代に入るまでは朝日と供に起き、日没とともに眠るが基本である、ヘルガは昨晩21:00過ぎに就寝しているのだ。睡眠時間が短いのは単純に美里薫の自己都合である。


生前はAM7:00に起床しAM7:30には家を出る、アパート前の自販機でMaxCoffeeを買うと、甘い香りのそれの香りを堪能し一気に飲み込み自転車で会社へ向けて出発、AM8:00頃に会社へ到着しお仕事を開始、そんな生活だった。


異世界では時間に縛られず、ゆったりと過ごしたい…と思っていたが、今朝は昨晩遭遇したギャング組織『ラヘイネンペラヘ』と話し合いが待っている。


しかし、あの強面の連中ともう一度会わなければいけないとか過酷に過ぎる。しかもギャング組織とか恐怖しかない。


美里の心は逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、右も左もわからない世界で何処に逃げればいいのかもわからない。


怖い人に関わっただけでも胃が痛いのに、生き死に直結な状況なんて胃に穴が開きそうである。


ひとまずは残り少ないインスタントコーヒーを飲んで落ち着こう。


お湯を沸かしコーヒーを淹れているとニコニコ顔のヘルガも飲みたいとおねだりをする。

しかしコップはひつしかないぞと言えば、ひとつでいいじゃないかとほほを紅潮させムッとした顔をする。


ヘルガたんが可愛すぎる。


昨晩の出来事を振り返りこの可愛い娘の身をも危険に晒している事を思い出す。


異世界だから死体が落ちていても『あるある』だよね、なんて普通に考えて異世界だってそんな訳はないし、死体術のテストだと深く考えずに安易な死体の使役をするのは本当に迂闊であった。


死体があるなら近所に知り合いがいても当然だし、死因すら考えていなかった、しかもその相手は3人を殺した犯人で裏社会の人間だったのは本当に笑えない。


そもそもが死体を使役しても、その後にどう扱うのかという話も全く考えていなかった。


クロの様に犬の姿ならば話はむずかしくもないが、人間型ならば住む場所だって切るものだって必用だし、場合によっては人物像(アンダーカバー)も必要である。


途中になんかチュートリアルっぽいとか甘く考えてしまった自分を全力でブン殴りたいが痛いことは嫌いなので思うだけであるのが美里流である。


昼にはもう一度、ラヘイネンペラヘのアジトへ赴かなければならない、それまでに今後の事をよく考えなければ、取り返しがつかなくなる。


最も重要なことは自分とヘルガの安全だろう、もしかするとヘルガはラヘイネンペラヘの人間とも面識があるかも知れないし、ヘルガが昨日は俺と居た所を組織の関係者に見られているかもしれない。


昨晩は無事に切り抜けられたが、ラヘイネンペラヘにもアンドッドと渡り合える強力な存在が居るかもしれないし、想像を超えた何かがあるかもしれない。


ここは異世界なのを忘れていた、美里の想像を超える事は無限にある事を想定しなければならない。


何事も先手を取らねばどの様な失敗に繋がるのか想像もできないのだ。


一番の安全は策は、このままアジトへ行かずに土地勘があるヘルガと一緒に愛の逃避行だ。


だが部屋を借りたばかりで急に遠くへ逃げるって言うのも悔しい。


ラヘイネンペラヘのアジトに残してきたアンデッドは放置も出来ないし、特に1号を放置させるのは危険を感じる。


それに逃げれば安全と言うのは、あくまでこの都市の裏社会からの安全確保だけの意味であり、何も知らない異世界で都市外に逃げて生活が成り立つ気がしない。


何をするにも情報が不足している。


現状はアンデッド達を従えているこちらが有利だと思いたいが、この異世界の全体像が不明な以上、眷属のアンデッド達がどれほど戦えるかも未知数。


やはり不安にすぎる。


なぜ実験前に、元冒険者であるヘルガにアンデッドやこの世界についてしっかりと聞かなかったのだろうか?


答えは簡単だ、ヘルガが可愛くてえちえちな状況に舞い上がっていたのである仕方がない!


砂糖と粉ミルクをたっぷり入れたインスタントコーヒーを少し口に含むと、それをヘルガに渡す。


ヘルガはコーヒーを見た事が無いらしく、昨日初めて飲み、香りをとても気に入ったという。


ヘルガはコーヒーを受け取ると嬉しそうに香りを堪能するとフーフーしながらコーヒーを一口、また一口とをちびちび小動物の様にすする。



ヘルガたん可愛い。


なんとしてもこの可愛い娘を護らねばならない。


今出来る事は、強力なアンデッドを召喚して戦力を固めてから話し合いを行う事だ。


もし争いになれば、更に人を殺すかもしれないし今度こそ自分が殺されるかもしれないのだ。


この際、詳細は誤魔化して、ヘルガから可能な限りの情報を得ておきたい。


「ヘルガ、ちょっと聞いてい....」


チュ♡


ヘルガに声を掛けると質問をする間も無くヘルガに唇を奪われる。


「うふふ♡」不意打ち成功に微笑むヘルガ。


うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!


もう!ヘルガたん可愛い!!!!!!!!!!


可愛い!


可愛いいに過ぎる!


美里薫 享年36歳、心の中で絶叫しヘルガの湿りけを帯びた黄泉平坂への突撃を敢行しそうになるが卑猥な気持ちを堪え、心の中で血の涙を流し耐えきる。


「えっと............し....しないの?」

ヘルガは土俵際で耐え抜く美里を覗き込み、頬を赤く染めつつ美耳元で誘惑の呪文を唱える。


ヘルガは会心一撃を放つ。


「よ....夜、夜だ!覚悟しておけよ!今夜は謝っても許さないらな!覚悟をしておけ!」

ヘルガを強く抱きしめ、怒り狂う美里の美里を抑え込む。


「う...うん」

ヘルガは一昨日の夜を思い出したのか、身を(よじ)り耳を真っ赤に染めると顔を隠しつつ頷く。


可愛らしさの飽和状態である。


決めた!絶対生きて帰ってくる!生きて帰ってヘルガたんと一晩中マイムマイムでアハンウフンで後悔させてやるんだ!


「ヘルガ、急いで知りたいことがある、教えてくれ!」

美里は力強くヘルガの両肩を掴み、彼女の赤いかをと潤んだ瞳を見つめると真剣な顔を作る。


ヘルガは突然の大きな声に目を丸くして美里の瞳を見つめ返す。


あぁ!ヘルガたん可愛い!


美里はは我慢できずにヘルガにのしかかり強引に唇を奪うと舌を無理やりと滑り込ませる。


「ちがあああああああう!」

欲望に荒ぶった内なる自分との主導権争いに辛くも打ち勝ち、欲望の暴走を退る。


ヘルガの柔らかい舌と唇の柔らかい感触を振り払う。


「どうしたのカオル?しても......いいんだよ?」

既に蕩けた表情のヘルガは完全におねだりモードである。


んもう!んもう!ヘルガたん可愛い!


このままでは理性が飛ぶ!必ず飛ぶ!美里の美里は既に限界を迎え白き美里軍団(レギオン)は暴動直前である!。


「とりあえず、服を着て!」

美里は僅かに残る理性を総動員し、土俵際ギリギリで体を残した。


二人は着替え、美里の美里もその猛り狂った美里の美里を物理の皮の鞘へ納め終えると改めてヘルガへラヘイネンペラヘについて知る限りの情報を乞う。


ヘルガはラヘイネンペラヘの名前に一瞬だけ嫌な顔をしたが、質問には素直に答えてくれた。


ラヘイネンペラヘは東外壁区全体の裏社会を支配する武闘派の集団である事、そのボスの名ははオスクと言う凶悪な大男で迷宮都市デルーカでも有名な男である事、元冒険者や都市軍の元兵士崩れも多いという。


しかし魔術師がいるという話は聞かないと言うのは非常に嬉しい話である。


頭目であるオスクの評判は非常に悪く幹部のティモスとエサイアスもかなりの大男でこの3人が歩いていれば都市軍兵ですら道を開けると言。


しかし危険人物であるオスクは既に一昨日に死んでいる。


問題はラヘイネンペラヘが都市軍とも癒着があり、よほどの事件が無ければ組織が取り締まられることが無いというのが悩みの種だそうだ。


ついでに聞くと魔術師と言うのは存在その物が希少らしく、魔術師になるには魔術の素養と大金が必用で平民がなるには難易度が高いという。


更に魔術師になるためには人間と言うのは貴族か大金持ちと相場が決まっているらしい。


ただ平民の冒険者にも魔術師紛いは何人もいるが、強力な魔法を使える人間は少なく、独学だったり身を崩した魔術師から僅かな報酬を支払って中途半端な魔法を教えられた程度が大半らしい。


対魔術師戦の可能性が薄くなった事には安堵する。


アンデッドに関して聞くと『怖い』『汚い』程度の認識で、一般的にはそれ以上の意識は特になく、神殿等から敵視されていたり不浄であると忌避されているという事もないという。


しかしアンデッドの中には幽霊(ゴースト)を始めとした霊体(アストラル)系と呼ばれる肉体を持たないアンデッドモンスターも存在し、それらは魔法や魔法の武器でしか倒せず底辺冒険者が遭遇した場合は一目散に逃げろと言うのが一般認識だった。


霊体(アストラル)系は厄介と言う認識は美里にとっては好材料である。


最後にエサイアス について聞くと、なんとヘルガと彼は面識があり恩人でもあると言う。


美里は心臓が跳ねる。


娼婦に成り立ての頃に街で立っていた時、オスクと出会い暴行を受けた上で犯されそうになったのだ。


オスクの顔を知らず、奉仕を強要されそうになったヘルガは抵抗したため死ぬほど殴られ、道の真ん中で裸に剥かれた時に助けてくれた上に治療まで手配してくれた『大恩人』がエサイアスだという。


そしてエサイアスが居なければ悪所は今よりも悲惨な場所になっていたよとも付け加えられる。


悪所の住人の多くはエサイアス が居てくれるからこそ、オスクの支配下でも真面(まとも)な生活が出来ていると感謝す人間が多いのだと言う。



背筋が凍り付く、そんな話を聞いてしまった美里はもはや冷や汗が止まらない。



昨晩の出来事を客観的に見ていた人々はどう考えるだろうか?


エサイアスを見間違う人間はいないであろうし、若返り髪の毛が生えていたとしてもあの暗がりの中ではオスク達を本人と認識させるには十分である。


ヘルガの耳に入ろうものなら・・・本当にヤバイ!


「えっと...ねぇカオル、迷宮(ダンジョン)なんだけどいつから探索(ダイブ)する?」


暗くなった美里の様子に空気を変えようとしてくれているのか、ヘルガが話題を変えてくれる。


旅の疲れもある事を理由に数日は休みたいと説明すると、ヘルガは笑顔で了承し迷宮(ダンジョン)に潜るにしろ森の中に行くにしろ準備のため、ヘルガも装備を揃えなければならないと言う。


以前の装備の多くは冒険者を引退した時に売ってしまったというのだ。


美里は茶巾袋から金貨(ラハ)5枚を取り出すとヘルガの掌へ握らせるが思いがけない大金を渡されたヘルガは目を丸くする。


良い装備を揃えるように伝えると最初は遠慮していたが大事な女には最高の装備を整えてやりたいと言えば顔を紅潮させ嬉しそうに金貨(ラハ)を受け取った。


「こんな大金、持ち逃げされたらどうするの?」

「そうだなぁ、ヘルガを抱いたってんだからそれ位の価値があるわけだし納得しちゃうな」

悪戯な顔で美里を揶揄おうとしたヘルガだが思わぬ解答に顔を真っ赤にする。


実に可愛らしい。


悪所に住み貧困に苦しんでいたヘルガには、冗談でも金貨(ラハ)5枚と言う値段が着いたことは最上級の褒め言葉になった。


もちろん小市民である美里は金貨(ラハ)5枚の持ち逃げが発生すれば泣くし喚くし転げ回るのは必至である。


ヘルガは金貨(ラハ)を見るのも久しぶりらしく、その興奮を法要という形で美里に伝える。


美里が買い物には行かないと伝えるとヘルガは一緒に行きたいとゴネるが、今日に限ってはそうはいかないのだ。





「2号」

ヘルガが部屋を出て階段を降りていく音を確認すると、美里は扉の前を護る眷属2号へ語りかける。


2号は美里の方へ振り返り、可愛らしい幼い声で返事をする。



「なに?あるじ」

ん?あれ?なんかタメ口なんだが?



「2号?」

「なに?」

なんか物凄くタメ口なんだが?



「えっと2号は.......会話は問題ないよね?」

「うん」

やっぱりタメ口なんだが?



「2号は、口調がなんだかフランクだね?」

「うん、可愛じゃろ?」

確かに可愛いが…(あるじ)とは2号にとってはいったいどういう存在なんだ?


言いたい事は幾つかあるが、ひとまず今はそういうものだと飲み込む、小市民美里薫は女の子にはあまり強く出れない男なのだ。


「えっと、昨晩の強化は問題なく成功しているみたいだな、何か体に問題はないか?」

見た感じはちゃんと人間の様な雰囲気を出してはいるのだどうも表情が薄い。どのみち肉体がない半透明の幽霊(ゴースト)ではあるのだが。


「あるじ、問題...ある、ものすごい問題がある....ないぞ」

「なにを言っているのかな??」

眠い中で朧げに階位値(ランク)強化をしたせいで、何か失敗したのだろうか?



しかし1号と違いちびっ子の姿ではあまり経過心も湧かない。


「ちちがない」

「?」

え?なにいってんのこの子


「ちちがない」

ロリガが無表情に薄い胸板を(さす)るが、美里は面倒な事は無視することにきめる。


「い...いや、まぁそれはどうでもいいから、なにか動いたりするのには問題ないかな?」


「チッ.....問題ない」

え?この子いま舌打ちした?


物凄く気になるが、女性慣れしていない美里は突っ込む事を躊躇してしまう。



「2号はその魔法とかは使えるかな?」

「バッチリ!」

右ってでサムズアップしよった!


「な...なんか2号は物凄くキャラ立ちしてるね」

「カンペキ!」

今度は両手でサムズアップ!!?


昨晩の1号の強化にも色々思うところがあったが、2号の強化では疲れからか成長方向を突き詰める事もなくおこなってしまった。

これは階位(ランク)値を強化した時の副次効果として生まれた状況!?


「えっと、2号は俺の言う事はちゃんと聞いてくれるんだよね?」

「バッチリ」

ダブルサムズアップのまま両手を高く上げる。


なんなのこの()...でも慣れてきたらちょっとだけ可愛く思えてきた、見た目はヘルガのロリータバージョンなのだ。


「...ロリガ」

「?」

2号はキョトンとする。

「2号、お前の名前は今からロリガだ!」


「おおおおおおおおおおおおお!」

2号は目をぱちくりすると歓喜の雄たけびを上げた。


「我が名はロリガ!なまえをもらった!数字じゃない!南極人形的な使い捨て愛玩自慰道具ではなくなった!」

喜んでいる様で何よりだが意味は教えないでおこう、っていうか南極●号とか何で知ってるの?!



「1号は?」

「?」

何言ってんだこの子


「1号、なまえ」

「あぁ、まだ考えてなかったな、後で付けないとな」

意図した意味を納得すると、確かに個性を持ったなら名付けは必要だろう。


「にしししし」

やだこの子、悪い笑いしてる。



ロリガの保有能力の有無を確認した所、やはり魔法ではなく『権能(ユニークスキル)』と言う言葉が返ってきた。


昨晩も1号から権能(ユニークスキル)なる言葉が出てきてはいたのだが疲れていたため掘り下げる事がなかったが、重要な情報なであるはずだ。



「よし、ロリガ。権能(ユニークスキル)って言うのが俺には良く解らないのだが、どういった物か教えてくれ」

「うにゅにゅにゅにゅ」

ロリガは両手の人差し指をコメカミに立ると悩みだす。


なんで悩みだすのであろうか?


「ロリガが?うまれたとき?ロリガは可愛い子供?」

「なんでピンからキリまで疑問形?」


良く解らないが、ロリガは見た目通り精神年齢も子供として埋められてきたのかもしれない。

階位(ランク)値強化時に精神(スピリット)値も連鎖上昇している筈なんだが、精神って精神年齢や知性とは無関係なのだろうか?


「どういう特別なことが出来るか教えてくれるかな?」

「特別...はっ!あるじはロリガの体が目当て?!」

「目当てじゃないし、阿保な事を言ってると成仏させるぞロリ幽霊」

「ひいいいいいいいいいいいい」

異世界も幽霊(ゴースト)も成仏って概念は有るのだろうか?


「とりあえずスキル、必殺技みたいな奴がないの?」

「ひっさつ...」

「そう、必殺技!権能(ユニークスキル)傲慢(プライド)

「どろん」

突然、ロリガ美里の前から消える。




「どろん?何処でそんな言葉を.....いや不可視化しただけだろ?」

「あるじ、うしろ」

唐突に背後からロリガの声が聞こえ、振り返る。

つまりあれだ、不可視化して急いで後ろに回り込んで…って完全にちびっこレベルの悪戯である。


「どわあああああああああああ!」

美里が振り返ったそこには、大量のロリガが存在した。

幽霊(ゴースト)らしく空に浮く個体、壁に張り付個体、ベッドに寛ぐ固体や踊る個体、合わせて7体のロリガが居たのだ。


「分身の術?!分裂?!」

「ホログラム」

再び後ろをからロリガからの声がし振り返れば、元の場所にロリガが立っていた。


「ホログラム?!」

「ホログラム....幻覚か!」

「ざっつらいと!」

ロリガは右手でサムズアップをして、これ以上はないと言うほどのドヤ顔を見せる。


「分身以外に何かできる?」

「どろん!」

再びロリガは呪文のようにドロンと唱えると、部屋いっぱいに骸骨(スケルトン)姿の幽霊(ゴースト)が現れる。


パチン!


ロリガが指を鳴らすと、一瞬にして幽霊(ゴースト)が消える。


「こいつは凄い...」

「ロリガすごくてかわいい!あるじは頭をなでて褒めるべき」

なんだか鬱陶しい気もするが、この能力は物凄く使える。


「ロリガ、今出した骸骨(スケルトン)とかが攻撃とかは出来る?」

「みえるだけ」

「見えるだけ?触れない?」

「さわれない」

ふむ、完全にホログラムの様であるが、それだけでもかなり使えるはずだ。


「ロリガは凄いな」

美里はロリガを褒めつつ小さな頭を撫で繰り回すと、されるがままに頭をぐりぐりと揺らされるが、そんなロリガの顔は十分に嬉しそうである。


恐らく権能(ユニークスキル)と言うのは魔法や魔術と別体系のスキルの様な物だと考えられる。


「ロリガ、見せられる幻影(ホログラム)ってどんなものでもいいのか?」

「みたものだけ」

「ロリガが見た物だけ?」

「うむ」

「大きさとか数はきまってる?」

「はんい」

「範囲?」

「はんえふぇくつ」

「ああ、数とか大きさではなくて一定範囲の空間に掛けるスキルって事かな?どれくらいの範囲のかな?」

「うい、いっぱい」

距離とか数字での概念が上手くロリガの脳に落とし込めていないのかもしれない。


しかしこのロリガが持つ幻影(ホログラム)という権能(ユニークスキル)は使い処が多そうである。


ロリガのお陰で僅かに心が落ち着く、悩んでいても状況は変わらない。


早めにラヘイネンペラヘとの話し合いをかたずけたいと思い、まだ昼にもなっていないがラヘイネンペラヘのアジトへ向かう事に決める。


ラヘイネンペラヘとは謝罪して友好的な関係を構築する方向で話を進める予定ではあるが、被害を出している以上、今後も暴力的な状況に発展する可能性は十分にある。


今回の勝利条件は「生きて帰ってくる」「ヘルガにトラブルが及ばない」もの2つが絶対だ。


万が一戦闘になった時のため、美里の『護衛』用に幽霊召喚(サモンゴースト)骸骨(スケルトン)型の幽霊(ゴースト)を5体召喚してみる。


美里は一呼吸置き、やはり5体程度では魔力量に問題がないことを確認する。



続けて霊体構成(アストラルコンポジション)精神構成(スピリットコンポジション)を行い霊体(アストラル)値と精神値(スピリット)値を強化。


この時点で会話は可能になったが自立思考は生まれなかった。


そして最後に階位値だ、階位値構成(ランクコンポジション)を使用し1段階だけ階位(ランク)値を上げる。


ここで会話が可能となった、やはり階位値が自立意志を持つ条件の様だ。


死霊秘法(ネクロノミコン)を見ると幽霊(ゴースト)階位(ランク)値をあげると死霊(レイス)と言う種類のアンデッド怪物(モンスター)と呼ばれる上位種になるらしい。


あと気になるのは、もし生前の記憶と精神の残滓を持つ魂を使い霊体(アストラル)強化や召喚(サモン)した場合にどうなるかだが、今は実験するタイミングではなく保留だ。



昨日の死体術で生み出した新鮮な死体もちゃんと調べたい。



「お前たち5人は俺の安全を最優先に確保してくれ」

「我が主の命じるままに!」

美里の命令に対して新たな5体のレイス達はそろった声で答えるが1号もロリガも含めて声が皆ヘルガに似ている気がする。


もう美里が生んだアンデッドの基本形はヘルガになってしまうのかもしれないと思う。


しかし新人の子達は、なんか超ちゃんとしてない?

1号や2号との差は一体どういうことなのかと考えていると



「ロリガの方が強い、こいつら不要」

ロリガがとんでもないことを言い出す。


「いや、ロリガはこのお部屋を守ってもらわないと」

「やだ、ロリガがあるじ護る」

何だか面倒な流れになってきた。


「この5匹よりロリガは強い」というと右腕でチカラコブを作る仕草をするのだが物凄く面倒くさいガキンチョである。


しかし階位でいえば僅か1段階の差である。それほど実力差があるのだろうか?


「ロリガはこの死霊(レイス)よりどれくらい強いの?」と迂闊なことを聞いてしまった。


権能(ユニークスキル)暴食(グラトニー)

次の瞬間、ロリガが両手を前に突き出し両手の10本の指から放電の様な光を放つと、5体のレイス達が大きな叫びをあげて消え去ってしまった。


「ごち」

美里が呆然としていると不思議なことを言う。


「ごち?」

「ごち」

「もしかしたら食べちゃった?」と美里が問うと

「やみー! あいむ ざ うぃなぁー あいむ ぱわーあーっぷ!」


ロリガは無表情のまま少し腰を落とし、両手を前に突き出すと両手でサムズアップする。


なにをしてくれてんだクソガキ・・・・


折角作ったばかりの護衛死霊(レイス)達を一瞬にして全て食べて尽くしてしまったのだ。


しかし両者の力量差は階位(ランク)値の1段階みだったはず、階位値が違うとここ迄の力の差があったのかと驚嘆する。


「あれ?お前いま権能(ユニークスキル)っつったっか!?」

「おっふ」

こいつあえて隠していたのか?


「今の権能(ユニークスキル)...隠してた?!」

「どきっ!」

「他に隠してることは無い?」

「な...ない?」

「後でわかったら成仏させるよ?」

「ら...憤怒(ラース)

憤怒(ラース)?!」

やっぱり隠していやがった、と言うか暴食(グラトニー)憤怒(ラース)って七大罪か?


憤怒(ラース)ってどんな能力なんだ?」

「おこらせる」

「うん、もう少しで俺も怒るところだった、というかどうやって使うんだ?」


「どろん!」

ロリガがまた発動呪文らしき物を唱えると。横に分身を出すが、それ以外には特に何か感じる事はない。


権能(ユニークスキル)憤怒(ラース)!」

ロリガが権能(ユニークスキル)を発動した時、美里の心の中にロリガの分身への原因不明の怒りが湧き上がり攻撃衝動が生れる。


「かいじょ~」

ロリガが権能(ユニークスキル)を解除すると、嘘のように怒りが消し飛ぶ。


「ヘイトコントロールか...これはまた...凄く使えるな」

「むふ~」

ロチガのドヤ顔に僅かな反感(ヘイト)が湧き上がる。


そしてある事に気づく。


「ロリガ、もしかして他に4つくらい権能(ユニークスキル)がありそうだね?」

「ぎくり!」

こいつ、隠すつもりだったか・・・そして案の定ロリガのスキルは七大罪が原型になっている様であり、最初に見せた権能(ユニークスキル)傲慢(プライド)、八つの想念にある虚栄心、虚飾の罪を意味する罪であった。


なるほど虚飾は幻影(ホログラム)と言えなくもない。


憤怒(ラース)は対象に反感(ヘイト)を付与する権能(ユニークスキル)らしく、選択した対象に反感(ヘイト)を付与する対象を選んで行使する事が可能らしく、今回は傲慢(プライド)で作り出した幻影(ホログラム)に付与したのは幻影(ホログラム)消す事で憤怒(ラース)の影響を完全に消せるためである様だ。


ロリガ本人にも美里にも憤怒(ラース)ろ付与できるらしいのだが、憤怒(ラース)権能(ユニークスキル)を解除しても一度反感(ヘイト)を抱くと影響が残り対象に対しての反感(はんかん)を残す可能性があるらしい。


ロリガがちゃんと考えている事に違和感を覚える。


その後も残る権能(ユニークスキル)強欲(グリード)』『嫉妬(エンヴィ)』『色欲(ラスト)』『怠惰(スロウス)』の能力がある事を確認し、その能力をさらけださせた。


想像以上に(いや)らしい能力であったが、その内容は非常に個性的且つ応用幅の大きい能力であった。


となれば1号が持つ権能(ユニークスキル)も同じものなのだろうか?


「よし、ロリガお前を連れて行こう」

「わーい!」

見た目は幼いヘルガで可愛いが、その能力はかなり有用である。











しかしロリガには一抹の不安が残る。

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