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第27話 ただならぬ気配……?

「ねえ二人とも、楽しそうに痴話喧嘩してるとこ悪いんだけど」


 俺とミルが言い合っていると、リナリアが心外なことを言ってきた。


「ちっとも楽しそうじゃないからな? それとな、俺とこの駄天使をやたらくっつけたがるのはやめてくれ」

「ユッキーの言う通りです。これは痴話喧嘩なんかじゃありません。甲斐性のない駄目ニートを説教しつつ、胃袋を掴んでなんでも言うことを聞く信者になるよう餌付けしてただけです」


 俺とミルがそれぞれに否定する中、リナリアは苦笑いを浮かべていた。


「うーん、やっぱり息ぴったり……じゃなくて! 二人ともいちゃつくのはそこら辺にしてよね!」


 何やら、首をぶんぶんと横に振りつつ、鬼気迫った様子で声を張り上げた。

 が、そんな言い方をされてしまったら、俺としては引き下がれない。


「だからなリナリア、俺はこいつといちゃついてないんだよ」

「もう! この際どっちでもいいから、私の話を……!」

「いやどっちでも良くない。男には、意地でも譲れないものがあるんだ」


 必死に耳をぴょこぴょこ動かすリナリアの言葉を途中で遮って、俺は堂々と宣言する。

 と、そこにミルが茶々を入れてきた。


「そんなこと言って、本当は嬉しいくせに。と言うかむしろ、ユッキーは光栄に思うべきです。素直に私への気持ちを認めて跪けば、ご褒美に踏んであげなくもないですよ?」 

「ったくお前は相変わらず意味の分からないことを……」


 腕を組んでふふんと偉そうに笑うミルに対し、肩を竦めながら、大袈裟にため息をつく俺。

 一方のリナリアは、俺たちのやり取りを呆れたような笑いを浮かべて見届けた直後。


「あの……! ミルっちが張ってた結界が壊れてるみたいなんだけど!」


 更に語気を強めながら、そんなことを告げてきた。

 その途端。

 ミルが急に冷静になり、表情を引き締めた。

 ……なんだこの変わり身は。

 モンスター避けの結界が壊れて、この態度。

 どうも、嫌な予感がする。


「なあミル。お前の張った結界って、そんなにショボいのか?」

「そんなわけないでしょう。レベル9999の天使である私特製の結界ですよ? その辺の雑魚モンスターに破れるような代物じゃありません」

「じゃあ、実際に結界が壊れてるのはどうしてなの?」


 ミルの主張に、リナリアが質問する。


「恐らく、結界破りに特化した能力の使い手か、あるいは……」

「……あるいは?」

「私と同じくらいの実力がある悪魔か、ってところでしょうね」


 ミルのその言葉を聞いた瞬間、俺は下層へ降りる階段に続く通路に向かって駆け出した。

 が、直後、襟首を掴まれて止められた。


「どうして逃げようとしてるんですか、ユッキー」


 背後から、ミルの冷ややかな声が発せられる。

 俺はミルに襟首を掴まれた状態で、なおも前進を続けようとしながら。


「だって、お前と同じくらい強いってことはレベル9999とかだろ? レベル300の俺が戦ったりしたら間違いなく死ぬじゃん」

「いやいや。ここはゲーマーなら、強敵を前にしてワクワクと攻略法を考えたりする場面なのでは?」

「こんなの、ゲームで例えるなら負けイベントだからな……逃げたところで恥ずかしいも糞も……ないだろ。むしろ……死んだら終わりの……世界で、見え透いた負けイベントに挑むのは……馬鹿だ……っ」


 ひたすら足を動かし続けて逃げようとする俺だが、ちっとも前に進めないばかりか、段々首が絞まってきた。

 しかし、俺はその程度で諦めるつもりはない。

 掴まれているシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になって再び走り出すが。


「ええい、人として恥ずかしくないんですかユッキー!」


 今度は脱いだシャツを首に引っ掛けられて止められた。


「うるさい、逃げるは恥だが役に立つんだ……!」

「どっかからパクってきたようなワードを決め台詞っぽく言っても、上半身裸で首絞められてたら説得力ゼロですよ!」

「首絞めてる本人が言うなよ……!」


 俺とミルはなおも口論を続ける。


「ねえ、そろそろ来るんじゃないかな!? 逃げるにせよ戦うにせよ、早く決めないと!」


 そんな中、慌てた様子のリナリアが、そんなことを言ってくるが。

 時すでに遅し。

 小部屋の外。

 暗闇が広がる通路の先から、ただならぬ気配が、徐々に近づいてきて。

 ついに、結界を壊した何者かが、正体を現した……!


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