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第26話 悪魔の気配とニートの根性

ダンジョンの十五階層、野営場所にしている小部屋にて。


「この階層に来た時からずっと感じていたのですが……何か、禍々しい気配がします」

「何かって、なんだよ」

「この感じは……多分、悪魔ですね」

「悪魔って……職場がブラックだから、脱サラして魔王を名乗ったりするとか前に言ってたアレのことか?」

「ええ、その情けない奴らのことです」


 以前聞いた話を思い出しながら尋ねる俺に対し、ミルは何食わぬ顔で頷く。

 その横で、リナリアが驚きの表情を浮かべていた。


「そ、それってまさか……このダンジョンに、魔王がいるってこと!?」

「いえ。いくら根性なしで自分より弱い相手から搾取することだけが得意な悪魔とはいえ、親玉がこんな僻地まで出向いたりはしないでしょう。恐らく、現在この世界で魔王を名乗っている悪魔と一緒にこの世界に逃げ出してきた、ちょっと格下の悪魔って線だと思います」


 天使とは対立している存在だからか、さりげなく悪魔を貶しつつ、ミルはそう推察する。


「でも、魔王よりちょっと下ってことは、普通よりは強いんだよね?」

「まあ、そうですね。このダンジョンや周辺にモンスターが急増しているのも、悪魔の存在が影響しているのかもしれません。長いものには巻かれろ、的な話ですね」

「あー、そういうことだったのか」


 などと、俺が適当に相槌を打ちつつ、シチューに口を付けていると。


「ちょっとユッキー、どうして一件落着みたいな雰囲気出してるんですか」

「実際、一件落着だろ? ダンジョン周辺で起きている異変の原因が分かったんだから。ギルドからの調査依頼は無事達成だ」

「いや、原因が分かっただけで解決してないじゃないですか。ちゃんと悪魔を退治してくださいよ」

「別に解決しろとまでは頼まれてないしな。他の誰かがやるだろ」


 これ以上興味のない俺は、やる気なくそう言って、シチューを啜るが。


「他人任せでニート根性丸出しのユッキーはご飯抜きです」


 ミルはそう言うと、俺の皿を強引に奪い取ってきた。

 その拍子に、脚の上にシチューが少しこぼれる。


「熱っ!? おい何するんだお前!」

「働かざる者食うべからず、です。文句があるなら悪魔を倒してください」 


 ミルはすました顔で、元ニートの俺にクリティカルヒットする言葉を投げかけてくる。

 だが、一つ問題があった。


「倒せって言われてもな……そもそもどこにいるんだよ」


 そう、居場所が分からないことには、手の出しようがないのだ。


「あ、確かにそれは私も気になるかも」


 俺の疑問に、リナリアも同意する。


「……このダンジョンのどこかです」


 ミルから返ってきたのは、なんとも歯切れの悪い答えだった。


「曖昧過ぎるだろ。気配を感じるなら、居場所くらい掴めないのか?」

「うっ。それは、ですね……」


 俺の問いに対し、ミルは言葉を詰まらせる。

 どうやらそこまで細かく探知できるようなものではないらしい。

 まあ俺からすればラッキーな話だ。

 サボる大義名分を得たわけだし。


「というわけで、だ。俺としては働きたい気持ちはあるのに、誰かさんがその悪魔とやらを見つけられないせいで、働けないんだよ。あー残念だなー、居場所さえ分かれば本気出すのになー」

「む、むむむ……根性はひん曲がってる癖に、口だけは達者ですね……!」


 大袈げさに落胆したフリをする俺を、ミルが恨めしそうに見てくる。

 俺はそんな視線にも構わず、むしろ隙を突いてシチューの入った皿をミルから奪い返した。

 そのままスプーンを手に取り、口元へ運んだその時。

 ミルが慌てた様子で立ち上がった。


「って、そっちは私のじゃないですか!」

「ん? まあどっちでもいいだろ」

「い、いや……。性獣であるユッキーからしてみれば、美少女である私が口をつけたスプーンを舐め回したいと思うのは当然の欲求かもしれませんが……逆はありえませんから、ね?」


 いつも通り俺を性獣認定して罵ってくるミルだが、心なしか狼狽えているような……。


「……なんでもいいけど、食わないなら両方貰うぞ」


 俺は早々に一皿平らげると、ミルに向けて手を差し出し、もう一皿要求する。

 と、ミルは何やら目を丸くした。


「おかわりを要求するとは、よほど私の料理が気に入ったみたいですねユッキー」


 一転して、にやにやと面倒くさい笑みを浮かべ始めた。




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