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犬の散歩  作者: お茶っぱ
6/6

そしてまた春が来る

イヌくんはガッコウに戻ってきた。

一人だけになって。

自分のことは忘れらているかもしれないけど、あの時の質問のことなんてもうどうでもいいと思われているかもしれないけど、答えを聞いてほしくて彼は帰ってきた。


旅立った時と同じように、裏側の花壇のところからガッコウの敷地へと入っていくとネコちゃんが驚いた顔をしていた。

「イヌくん? イヌくんだよね? よかったぁ戻ってきてくれたんだ」

イヌくんは答える。

「ちょっと散歩に行ってたんだよ。知りたいことがいっぱいあってさ。見たいものがたくさんあってさ。僕は、僕がなにを求めていたのか探していたんだ。」

「みつかったの?」

見つけられたような気がする。とイヌくんは思った。

春の日に、役割を果たすというその誇りを教えてもらった。

夏の日に、思い出を共有するその尊さを教えてもらった。

秋の日に、誰かと出会う幸せを教えてもらった。

冬の日に、命とはまた他の命を生かすためにあるのだと、そうやって続いていくのだということを教えてもらった。


「見つかったと思う。だから僕は、答えようと思うんだ。ぼくはね、生まれ変わったらまた僕になりたい。そう思える体験をしたし、そう言える自分にこれからなるよ。そうやって生きていきたいって思うんだ。」

「それって、あの時の質問のこと? それを気にしていたの?」

「うん。僕にとってはすごく重要な出来事だったんだ。」

「そうだったんだ。でも、心配したんだよ? いきなりいなくなっちゃうから。」

「うん、ごめんね。」

「そっか、でも帰ってきてくれてよかった。おかえり。」

「ああ、そうか、そうだった。ただいま。」

「答えてくれてありがとう。また自分になりたいって言えるような自分になれたら、きっと素敵だね。」


暖かい風が吹いた。

また季節が移ろうとしている。

春、夏、秋、冬、季節は巡る何度でも、しかし、その季節は一度きりだ。

同じ春、同じ夏、同じ秋、同じ冬、そんなものはない。

「季節が変わったら、また散歩に行こうと思う。」

「また行くの? ちゃんと帰ってきてよ?」

「うん大丈夫、ここが帰ってくるところだってわかったから。」

「それならいいか、じゃ、行くときはちゃんと教えてね。」

「うん、必ず言う」

「その時は、ちゃんと『行ってらっしゃい』って言ってあげるから。」


そして、イヌくんとネコちゃんはガッコウの中へと歩き出す。

ふと、ネコちゃんが何かに気が付く。

「あれ?イヌくん、 頭の後ろのところ、何かついてるよ。」

「え、なんだろ、取ってもらっていい?」

「ちょっとじっとしててね、・・・これ桜の花びらじゃない?」

「桜の花びら・・・?」

「うん、間違いないほら、すごくきれいだねぇ」

「ほんとだ、ほんとに桜の花びらだ。うん、すごくきれいだったんだよ。」


この物語はここで終わりだ。

季節が変わったら、きっとイヌくん君はまたいろんな季節を旅するだろう。

そしてまた、新しい答え見つけてそこへ帰るといい。


それを、僕が一緒に行けないのは残念だが、僕も僕の行くべきところにそろそろ行くよ。

ここまでついてきたのは、そう、サービスってやつさ。

ありがとうイヌくん、またいつか会おう。なーに、きっと会えるさ、そうだろう?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

実は投稿するときにどのジャンルが正しいかわからなかったので、こっちのジャンルのほうがあってるんじゃないかと思い当たるものがあれば、ぜひコメントください。

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