休廷中
休廷時間のあとは、いよいよマーダラー執事との直接対決。
休憩室で一息入れていると、グーセイ殿下が執事官のギリー氏を護衛につれてやってきた。
「上首尾のようじゃな」
「はい、おかげさまで」
検察側の足下はボロボロで、こちらは手札に恵まれている。
無罪判決までは問題なく持って行けるだろう
ただ……。
「むつかしい顔じゃな?」
顔に出したつもりはないが、グーセイ殿下のカンには勝てないようだ。
「無罪までは持って行けると思うのですが、真犯人を追い詰めるには一手足りていません。この公判中に決着を付けるのは難しいかも知れません」
無罪判決が出れば再捜査が行われるはずだ。
そこで捜査情報を提供すればいい話ではあるが、折角目の前にいるのだから一息に仕留めてしまいたいところだ。
「どうすれば足りる?」
「ジトーク子爵邸、マーダラー執事の部屋の家宅捜索を。残っていれば、決定的な証拠になりうるものがあります」
あくまで残っていればだが、マーダラー執事が見落としている可能性は考えられる。
「家宅捜索か」
グーセイ皇子はふむと鼻を鳴らした。
「ハフリよ、なんとかしてやるがよい」
「仰せのままに」
鎧の頭をずらしたカーバンクル姿のハフリ法務騎士は、事もなげな調子でそう応じた。




