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人狼メイドはブラック法廷に異議を申し立てる  作者:
法廷編(後編)人狼メイドは真相を明かす

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証人尋問:被告人ノット・ギルティ

「氏名と職業を仰いなさい」


「ノット・ギルティ、ジトーク子爵家の酪農デイリーメイドとして働いていました」


 被告人席から証言台に移動し、姉レンガの人定質問に応じる。


「出身は?」


「ブタイノ帝国の帝都、ギルティ子爵家の娘として生まれました」


 実の姉に話すことではないが、裁判長であるクラレント卿に聞かせないといけない話なので、素直に返事をした。


「6才で法廷に立ち、12歳までギルティ子爵家の法務助手のひとりとして働いていた」


「はい」


「調べによりますと15歳から18歳まで、ギメイと言う名でジトーク子爵家で働いていたようですが、12歳から15歳の間に空白期間がありますわね。その間は一体何を?」


「家出をし、カイセン地方のノースフロント男爵家で住み込みのメイドとして働いていました」


「何故退職を?」


「私が家出をしたギルティ子爵家は私の身柄と情報に懸賞金をかけ、冒険者ギルドなどに手配書を回していました。カイセン地方の冒険者に私の身元を気取られ、拘束されそうになったためです」


「何故帝都に舞い戻ったのですか?」


「職を得やすく出稼ぎの労働者が多いためです。身元を隠して生きるには帝都のほうが好都合でした」


「そもそものところで、

何故家を出たのです?」


 ハフリ先生が鎧の指を動かして「異議を?」と確認してきた。


「お願いします」とサインを返す。


「異議を申し立てます。レンガ検事の個人的質問と思われます」


「異議を認めます。レンガ検事は質問を変えてください」


 ストップをかけられた我が姉レンガだが、特に表情に変化はなかった。


「では、事件当日のことを確認させていただきます。事件のあった12月25日の午後、被告人は何をしていたのか答えなさい」


「25日の午後は乳製品工房近くの薪小屋で薪割りをしていました。事件のあった15時頃は当番の浴場の清掃と湯浴みをしておりました」


「浴場の清掃について詳しく説明を」


「ジトーク子爵家は敷地内に温泉を持っていて下級の使用人がその清掃を当番制で行っています。湯に浸かることができるのはジトーク子爵夫妻だけですが衛生管理のため、清掃当番の後で湯を使い、湯浴みをすることが許されています」


「浴場から戻ったのは何時頃です?」


「15時45分頃と記憶しています」


「その時、なにか気付いたことは?」


「特別違和感を覚えるようなことはありませんでした。今思うと血の臭いは感じたのですが、事件性があるものだとは思いませんでした」


「血の臭いを感じたのに?」


 我が姉レンガは手にした扇をぴっと動かした。


「人狼の鼻は少し利きすぎるもので、牛や豚を潰した匂いや鼻血や月のものの匂いまで嗅ぎ取ってしまいます。日常生活に支障を来すため、血の臭いを嗅ぐたびに反応しないよう生家で躾けられました」


 生家というのはギルティ家のことである。


「乳製品工房に戻ってからはなにを?」


「厨房に頼まれたバターを作っていました。16時15分頃にマーダラー執事がやってきてジトーク子爵を見かけなかったかと聞かれました。17時頃に保管庫に入り、そこでジトーク子爵の遺体に気付きました。本館にいたマーダラー執事に報告し、そのあとはマーダラー執事の指示に従って乳製品工房で待機を。第一発見者として中央警視庁セントラルヤードの刑事に事情聴取を受け、その翌日、凶器の【鉈】と血のついた【エプロン】が見つかったということで逮捕されました」


「15時から15時45分の間には、現場の乳製品工房の近辺にはいなかったと?」


「はい」


「その主張を証明できる人間は?」


「いません」


 本館のメイドであれば複数人で清掃をしていたのでアリバイが成立したのだろうが、乳製品工房で一人仕事の私は浴場をひとりで清掃し、ひとりで湯浴みをしていた。


 仮に浴場にいたことが証明できたとしても、15時45分から遺体発見までのアリバイもないので、その間に犯行に及んだと言われたらそれまでだ。


 このあたりで争っても仕方がないだろう。


「事件当日、ジトーク子爵には会っていない?」


「事件当日に目にしたのはジトーク子爵の遺体だけです」


 聞きたいことは聞けたようだ、レンガ検事は「結構ですわ」と告げた。


「検察側の質問を終了いたします」


「弁護側、反対尋問を行いますか?」


 さすがに自分で自分に反対尋問をするわけにも行かない。


 やるならハフリ先生にやってもらうことになるが、ここは見送ることにした。


「反対尋問はありません」


「わかりました。では、次の証人尋問に移りましょう」


「裁判長」


 レンガ検事が声をあげた。


「検察側の次の証人が、先の被告人の証言を否定する供述をしております。審理の流れを整える為、続けて検察側の証人の入廷を希望いたします」


「弁護側、いかがでしょうか?」


「異議はありません」


 私の証言を叩きに来るなら、続けてやってもらったほうがわかりやすくていい。


「では、引き続き検察側の証人を入廷させてください」

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2025/02/28からリメイク版はじめました
パンと弾丸とダンジョンと・Rebake

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