目録提出
法廷編後編になります。
「それでは、ジトーク子爵殺害事件の公判を再開します」
クラレント裁判長の宣言で公判二日目が幕を上げる。
弁護側に陣取るのは私、被告人ノット・ギルティと弁護人ハフリ法務騎士。
検察側には兄ワーラーに代わって検事弁護士を引き継いだ我が姉レンガ・ギルティ率いるギルティ家検察団が陣取っている。
傍聴人席には護衛官に囲まれたグーセイ皇子にジトーク子爵家のフージン夫人、マーダラー執事、ドシンザン伯爵やスパーラ錬金術師などの姿が見える。
ジショーエス警部はさすがにいないが、覚えのある中央警視庁の刑事の姿も目についた。
「新たな証人、証拠品があれば目録の提出をお願いします。まず検察側から」
「検察側は、事件当時の状況を目撃していた窃盗犯アーキス・ネラウゼを追加の証人として出廷させます。また、前回行えなかった被告人ノット・ギルティへの尋問を要求します」
扇子を手にしたレンガ検事は縦ロールの金髪を揺らし、涼やかな声音で言った。
「弁護側、いかがでしょうか?」
「異議はありません」
私が直接回答をすると、クラレント裁判長は不思議そうな顔をした。
「弁護人はハフリ法務騎士では?」
「はい、ハフリ先生と相談の上、引き続き私自身が自分の弁護をさせていただくことといたしました」
「わかりました。弁護側からの目録の提出はありますか?」
「はい」
証拠品と証人と目録を係官に提出する。
証人としては、錬金術師ケルス・スパーラ師、ナリアガッタ・ドシンザン伯爵、郵便局員トドケル・テガーミ氏、中央警視庁巡査長ガッチー・ガッチ氏。
証拠品としては、事件現場で発見された【パラライズ・マイコニド】の現物と【マイコニドガス】のサンプルと関連資料、20年前に発生した【ヒトキリ事件の捜査資料】などをリストアップしてある。
「質問を」
レンガ検事が挙手をした。
「ドシンザン伯爵や20年前の【ヒトキリ事件の捜査資料】が、本件にどう関わると仰るのですか?」
「弁護側は今回の事件の背景には、ジトーク子爵とドシンザン伯爵の対立があると考えており、そこを解明するためのものとなります。【ヒトキリ事件の捜査資料】は、ヒトキリ事件の犯人とされている刑事キセラレータ・ヌレギーヌ氏の実子である証人、ナリアガッタ・ドシンザン伯爵尋問時の補助資料となります」
「いいでしょう。続けてくださいませ」
レンガ検事は冷静に言った。
「では、弁護側は先述の弁護側証人に加え、検察側証人として指名されているクロイ・マーダラー執事、コロンダ・カネデーメイド長への尋問を求めます」
フージン・ジトーク子爵夫人にも尋問をしようか考えたが、うまい切り口がみつからないので、まずは外しておくことにした。
必要ならば、あとで尋問を請求する手もある。
「異議はありませんわ」
レンガ検事はすんなりと同意した。
「それでは、審理に入ります。本日も検察側からでよろしいですね」
「はい、準備は整っております」
「では、レンガ検事、お願いいたします」
「それでは、被告人ノット・ギルティへの尋問から始めさせていただきます」
早速のご指名。
素直に証言台へと移動した。




