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妖精とワイルドな王子様  作者: 爽健茶美
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6 異世界人①






 翌朝、横長のテーブルにギッシリと並んだ豪華なブュッフェスタイルな朝食をネグリジェのままいただいていたレイは、フリードリヒ宰相から突然の訪問を受けた。

 ルカも一応起きてはいたが、いつもの元気は無く、シルクのバスローブを着てボーッとソファに座っていた。


 珍しいこともあるのね

 枕が変わっても寝れないタイプじゃないのに

 時差的な問題でもあるのかしら


 そんなことを考えていると、フリードリヒ宰相が綺麗な姿勢でサッと頭を下げた。


「先ずはレイ様、ルカ様、改めまして光の属性おめでとうございます」


「ありがとうございます。すみません、昨日はご挨拶もなく寝てしまって。よろしければ、こちらにお座りください。あとあの、食べても?」


 宰相は、また軽く一礼してソファーに座ると、レイの前にある山盛りフルーツを見て、何も手をつけないでいるルカを見た。


「はい。私こそ公務の関係上とはいえ、このような時間に申し訳ございません。お気になさらず、どうぞ。ルカ様のお口には合いませんでしたか?」


「いや?俺は朝は飲み物だけで食わねーから」


 レイは新鮮なフルーツをフォークで突き刺し、口に入れるとモグモグした。


「オイ、お前これ着とけよ」


 ようやく目覚めてきたルカは、面倒くさがるレイにカーディガンを無理矢理着せた。

 

 私にレイ様のネグリジェ姿を見せたくないのですね

 昨日も思いましたが、独占欲の強い方だ


 フリードリヒ宰相はルカのレイに対する独占欲を微笑ましく思った。


「今日はこの後、お二人の異世界人と面会していただきます」


 レイは昨日のアルフレッド王子の話を思い出して頷いた。


「日本から来られたという、例のお二人ですね」

「あーあのネーチャン達か」


「はい。そこで少々前置きをさせていただきたいのですが」


 宰相は少し声のトーンを下げた。


「今日のところはまだ、お二人とも属性の話は避けていただきたいのです」


 レイとルカはそれこそ真っ先に話そうと思っていた件だったので、ガッカリした。


「マジかよ」

「わかりました。でも何故ですか?」


「ええ。実は、属性に関しましては、家族や恋人や上司など、基本的に極親しい人にしか話さないのが普通なのです。人によっては自ら進んで話す人もおりますが、特に闇属性の方は、友人が少なくなる傾向がございますので」


「へー?こっちの奴らは変わってんな」

「うーん、はい。わかりました」


 返事をしながらレイは真剣な顔で、今度はモチモチのミニパンケーキにベリージャムバターを絡ませた。


 フリードリヒ宰相はそんなレイをジッと見つめた。

 レイは視線を感じ、顔を上げた。


「レイ様は闇属性の者のことを、カッコいいと思われているのですか?」


 レイは持っていたフォークを落としそうになり、ルカもスッカリ目が覚めた。

 ルカがガバッと身体を起こした。


「おい、宰相様、あんたアレか」

「何……もしかして」


「はい。ありがとうございます。とても光栄です」


 フリードリヒ宰相はクスリと笑った。


「マジかよー!なんだよ俺のと交換してくれよ!」

「あらダメよルカ。レディーファーストでしょう?」


 宰相は目の前で繰り広げられている闇属性の奪い合いに苦笑した。


 いつもは嫌われる属性なのですが

 この方々にかかると、こうも違うのですね


「お前ズリーぞ、そんなの今持ち出してくんなよ」

「あら、それこそ今でしょ」


 我先に、とアホなカップルの会話にフリードリヒ宰相はクックッと笑った。

 滅多に笑わない宰相の笑い声に、少し空いた扉付近に立つ護衛がビクッとした。


「申し訳ございませんが、属性の交換はできかねます。精霊様がお決めになることですので」


 それからフリードリヒ宰相が「後で迎えにきます」と出て行った後もレイは食べることを忘れ、ルカと興奮していた。


「闇属性をお持ちだなんて、どこまで素敵なの!」


「あー宰相様とは交換できねぇのかー」


 ルカはガックリと肩を下ろした。


「闇属性って珍しいらしいから特に残念よね」


「俺ら、暫く(しばら)このしょーもない光で生きてく訳か」


「そうなるわね」


「よし!とりあえず今は諦めて光極めるしかねーな」


「えー」


 ルカは前向きに頑張ることを決めたようだったが、レイはまだ不満なままだった。



 フリードリヒ宰相が迎えにきた時レイは、髪を下ろしたままふんわりメイクをし、服はガーリーなワンピースで可愛らしくまとめていた。

 ルカはスーツを着ていたが、ジャケットは脱いでネクタイを外し、ボタンを胸まで開けていた。

 レイはルカの元を離れ宰相の横までいくと、子供のようにチラチラと宰相の様子を伺った。


「フリードリヒ様、今も私が考えていることがわかりますか?」


 宰相はチラリとレイを見て、また前を向いた。


「普段は色々と疲れますので聞かないようにしてますが、意識して聞こうとすれば可能ですよ」


「そうなんですね」

「へー」


 ルカはレイの肩を抱いて自分の方に引き寄せると「レイはいつも俺のことしか考えてねーもんな」と言った。

 レイは「そうねー」と適当に相槌をうっておいた。


「ところで宰相様よ、後で図書室の場所教えてくんね?」


 フリードリヒ宰相は頷いた。


「よろしいですよ。調べ物ですか?」


「そんなとこ。本、部屋に持ってこれんだよな?」


「もちろんです」と宰相が答えると、ルカは「宜しく頼みますわー」と言った。



 フリードリヒ宰相に連れられて談話室に来たレイ達は、大きなソファーに座っていたタイプの違う二人の異世界人を紹介された。


「こちらの方々がマリー様とアユミ様です」


 二人はサッと立ち上がり、レイ達を見た。


 凄い美男美女カップルね

 綺麗な人達だな、恋人同士なのかな


 マリーとアユミは思った。 


「初めまして。私がこの中で一番先にトリップしてきた真理(まり)よ。歳は一応十代。皆はマリーって呼んでるから、よろしくね」


 最初に挨拶をしてきたのは、派手な化粧の勝気そうな女性だった。

 ウィッグだと思うが、金髪で盛りに盛ったヘアスタイルに、これから夜会ありましたよね?的な格好をしていた。


「初めまして、(レイ)です。私も十代。マリーでいいのかしら。私もレイって呼んでね」

瑠加(ルカ)。レイと同じ年、よろしくな」


 ルカの視線がマリーの顔から少し下へ落ちた。

 レイがピクリと反応した。


「ネーチャン、ケバくね?キャバ嬢か」


「出勤前みてぇだな」とルカがニヤつきながら言うと、マリーは「ご挨拶ね。でも正解」と笑った。


「にしてもスゲー胸だな。それ自前かよ」


 お胸が控えめなレイから恐ろしい冷気が出ていたのだが、ルカは全く気づかなかった。


「当たり前じゃない。こっちじゃメンテできないし」


 ルカは「そりゃそーだな」と笑って納得していたが「イテッ!何だよ」とレイに思いっきりつねられた手をさすった。


「アラ御免なさい、指が滑っちゃって」


 顔を見ると、レイはこの上なく無表情だった。

 

「で?もう一人のネーチャンがアユミか?」


 ルカは、手をさすりながら聞いた。

 レイは立ち上がったまま俯くもう一人を見た。


 こちらはマリーと対照的に黒髪ショートの色白で今時珍しい素顔のままの大人しそうな女子だった。

 レイは恒例のお胸どんだけ?チェックをしてみたのだが、胸周りに少しだけゆとりのある服を着ていたせいでよくわからず、うーん?と難しい顔をした。


 一方アユミの方はルカを見て


 名前呼び早っ!

 そして見た感じ怖っ!


 と思っていた。


「初めまして、アユミさん」


 レイは一応、さんづけしておいた。

 アユミは日本人らしく深く頭を下げた。


「……初めまして、(アユミ)です。あの、私も十代だし、呼び捨てでいいから」


「よろしくなー、何か顔が暗れーけど大丈夫か?」 

「ルカ、お声が小さいだけなのに失礼よ。よろしくね、アユミ」



 二人とも私とは気が合わなそう


 アユミは思った。






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