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妖精とワイルドな王子様  作者: 爽健茶美
5/35

5 属性診断






 「属性診断をする神殿までは近いのですが、馬車乗り場までは少しだけ歩きます」


 フリードリヒ宰相に説明されたレイは、キャリーケースの中からお外でもギリギリ履けるルームシューズを取り出して履き替えようとした。

 ルカがそれに気づいて


「宰相様よ、癒やしの使い手(ヒーラー)とかいねぇの?コイツの足、治療してやってくれよ」


 と言ってくれたのだが


「それは……お医者様のことですか」


 と普通に返された。


「ありがとう。私は大丈夫よ、ルカ」


 レイは柔らかい綺麗めルームシューズに履き替えた。

 その後、アルフレッド王子も途中から合流し、二人は王を支える側近達が待つ神殿へと案内された。


 側近達は、信仰深いフィンレー王国の神官達だった。

 神殿は、丈夫なクリスタルのようなもので出来ていて傷一つなく、壁も床も柱も全てが光を反射して、七色に輝いていた。

 ちなみに神殿の中では、全ての属性は無効化される。

 稀な話だが、属性力が強すぎる子供は、属性診断時に魔法を暴走させてしまうことがあるのだ。


 レイ達が歩いてくると側近達は、いかにも神官です的な白いロングローブに身を包んで立っていた。

 彼らは、レイ達が見た最初の異世界人?であるあの精霊もどきが両手を広げた姿のほぼ原寸大のクリスタルでできた神の像の下で一列に並んでいて、二人を見ると優雅にゆっくりと頭を下げた。


 ノアという神官から簡単にそれぞれの属性の特徴が説明されると、アルフレッド王子は神官達に簡単な自己紹介をするよう言った。


 レイよりも前に歩いて立っていたルカは、控えめに頭をたれた人々の中に一際輝く人を見つけた。

 彼は、他の神官達よりも真っ白に輝く、それでいてシルクのようになめらかで高級そうなローブに身を包んでいた。


 腰まである長い銀の髪。

 大人なのに、天使の輪が出来ている。

 ゆったりとした服を着てはいたが、手を見ると体型は細くて筋肉は少なめの長身細っそりさんだった。 


 やがて彼が面をあげ自己紹介を始めると、ルカはサッとレイの前に立ち視界を遮ると、ヒソヒソと話しかけた。


「俺らの属性、楽しみだな」


「そうねぇ。ルカは、闇じゃないかしら?ピッタリよ」


「まぁな。他でもいーけどよ、光だけはなりたくねぇよな。ダセェし」


「あら、ルカったら失礼よ。一番人気らしいし、闇と一緒で滅多にいらっしゃらないようだけど、もしかするとこの中にも一人くらいいらっしゃるかも知れないじゃない」


 レイはクスクスと笑ったが全くもって同感だった。

 そんなレイの横でルカは冷や汗をかいていた。


 あっぶねぇ

 神官長のエルとかいったか?

 アイツはやべぇわ 


 エル神官長は、外人顔なのに一つ一つの顔のパーツは大きすぎず鼻の高さも丁度よく、瞳は紫で奥二重の切れ長垂れ目の超美人さんだった。


 アイツ

 レイの好みど真ん中じゃねぇーか

 目元に色っぽいホクロまであんじゃねーか

 宰相といい神官長といい

 厄介な世界だな

 

 ルカはとりあえず、レイ好みな美人さんを誤魔化せたことにホッとしていた。

 自己紹介が終わると、神官達は一人の属性診断の神官を除き、後ろへと下がっていった。


 そしていよいよ属性診断の時がやってきた。

 レイはドキドキしながら水晶玉の前に立った。


 闇か風!

 お願いします

 精霊様!!


 レイは、キャリーケース教えてあげたでしょう?と、しょーもない事を持ち出しながらお願いしてみた。

 クリスタルでてきた水晶玉に手を当てると、レイには変化がわからなかったが、水晶玉をジッと見たイシュメルという名の神官が言った。


「おめでとうございます!光の属性でございます」


「は?」

「ギャハハハ!よかったなー、レイ」


 レイがこれ以上はないほど絶望的な顔をしてヨロヨロと下がっていったので、神官達は何故そんな顔を?と驚いた。

 ルカはお腹を押さえながらヒーヒーとまだ笑っていたが、何とかフラフラと水晶玉の前に立った。


「よし、次は俺だな」


「は、はい。こちらに手を置いてください」

 

 イシュメル神官は、ルカの見た目が怖かったので緊張してビクついてしまった。

 レイは死んだ魚のような目でルカを見た。

 ルカは水晶玉に手をかざすと聞いた。


「で?どーなんだよ、もちろん闇だよな?」


「え?は、はい。その様ですね」


「ヨッシャーッ!!」


 闇属性と聞いたルカがガッツポーズをしたのを見たレイが、舌打ちした。


「あ、間違えました、光です」


 新米神官のイシュメルは緊張のあまり間違えた。

 ぬか喜びしたルカを見たレイは、手を口に当てクスクスとせせら笑った。


「私をバカにして笑ったからだわ」


「ざけんなよ見間違いだろ。もう一回やってくれよ」


「いえ、間違いではございません」


「なに……?」


「ぼ、暴力反対」


「何もしてねーだろが」


「顔つきが暴力的です」


「知らねーよ」


「何だよ、最悪じゃねーか!」と荒れるルカと共に「確かに二人ともはないわよね」とレイもショックをうけてガーンと音が聞こえてきそうな顔をしていた。

 そのうちしょーもない喧嘩が勃発した。


「よく考えてみれば俺がこのしょーもねー光属性になったのもレイのせいじゃねーか」


「アラ、どういうことかしら?それ」


「あの能面もよ、ボケッとした聖女とかお前みたいな美人じゃ光属性しか思い浮かばなかったんじゃねーかっつってんだよ。俺はぜってー闇の方が似合うだろ?俺はお前に巻き込まれただけなんだよ」


「失礼ね!確かに可能性としては捨てきれないけど、それをいうならルカだってキラッキラの王子様に見えるじゃないの」


「はぁ?王子ねぇ……王子はよく言われるな。でもまぁ、そー言われてみればそうか」


 ルカが顎を触りながら考えた。


「ホラ見なさい」


「つまり俺らだから、光しかなかったってことか」


「そうなるわね」


「八つ当たりして悪かったな、レイ」


「いいのよ」


「こっち来いよ」


「うん」


 二人はギューッと抱きしめあった。

 その場にいた人々は、何この時間、と思っていた。



 光属性を嫌う二人の会話に神官達は驚いていたが、中でもエル神官長は、公には隠していたが人から嫌われる闇属性だったので、闇属性に憧れる二人に感動していた。


 前に来た方は死ぬほど嫌がっていましたが

 このお二人は違うのですね

 


 その後、イヤイヤ光の属性になった二人はイシュメル神官から説明を受けていた。

 

「お二人が何故ここまで嫌そうなのかはわかりませんが、光の属性の方の側にいると、幸せなお気持ちになれるのですよ」


 イシュメル神官は「ですからそんなに嫌わないでください」と言った。


「光の属性の方は光を見ても眩しく感じませんので、何と二つの太陽を肉眼で見ることができるのですよ」


「あのさぁ、ニーチャン」


「は、はい」


 イシュメル神官がまたビクついた。


「眩しいもん見て何が楽しーんだよ。他に何かねぇの?」

「そうよね。私達の側にいれば光とか関係なく幸せでしょうし、普段とあまり変わらないものね」


 その場にいた人々は、何それ、と思った。

 イシュメルはちょっと考えてから言った。


「そうですね、光を操れることは先ほどお話しましたが、実は静電気も大丈夫なんですよ」


「うっわ、地味だなオイ」

「まぁ!それはいいじゃない」


 ルカはシラけていたが、冬になると色々なものでバチッときてしまうレイには嬉しかった。

 ニコニコと嬉しそうにしているレイに元気をもらったイシュメルが思い出した。


「あ!あと、雷に撃たれても感電しませんね」


「それはどーでもいいかしら」

「お、それいーじゃん!雷ん時、外出てみようぜ!」


「いやよ、お洋服がダメになっちゃうじゃない」


 と嫌がるレイに


「いーじゃねーか、雷鳴ったら周りに何にもねぇとこに行ってみよーぜ!」


 と盛り上がるルカを見て、この二人本当に付き合ってるのかな?とその場にいた者達は思った。

 その後、異世界人によく質問されるあるあるについても回答と説明を受けた。




 二人は城内に戻る途中「光か……」と何とも説明し難い気持ちをかかえたまま、某有名ホテルのスイートルームのような部屋へ戻ってきた。


 夕方になり寒色でまとめられた部屋はレイには広すぎて、ルカがいなかったらちょっと怖かった。

 部屋にはお風呂もあり、バスタブは日本人仕様でしっかり肩まで浸かれるよう深めに作られていて、トイレは洋式の水洗トイレだった。


「聖女や魔王、勇者もいねぇのか。まぁ、面倒くせぇポーション作りは無くていーけどよ、せめてダンジョンとかはあって欲しかったよな」


「光じゃ何もできねーけど」とルカが不貞腐れたように言った。


「イヤよ。虫みたいな魔物が出てくるじゃない」


 レイは昔ルカの部屋で、ルカのおトイレタイム中に途中のゲームをやらされ、ダンジョンの中で虫のような魔物が出てきて、あまりの気持ち悪さにコントローラーを投げてしまったことを思い出した。



「御飯の前にお風呂いただいてくるわね」 


「ああ」


 レイは既に準備よく沸いていたお風呂に入り、何かのハーブでできた髪も身体もしっとりする石鹸やオイルを使い、半日分の汚れを綺麗に洗い流した。

 (ひのき)ような香りが漂う浴槽に浸かると、一気に疲れが取れる気がした。


 ふぅー

 素敵な香り

 やっぱりお風呂って最高よね

 ルカと一緒にトリップして良かったわ

 仲直りもできたし

 これから楽しくなりそう

 

 お風呂から出ると、ふかふかタオルにシルクのバスローブが用意されていたが、レイはタオルだけ使うと、キャリーケースから出しておいたお姫様ネグリジェを着た。

 ネグリジェを見たルカが「お、可愛いーじゃん」と褒めてくれた。

 レイは、キャリーケースからドライヤーを取り出し、魔石についたコンセントの形を選んでさして使った。

 ドライヤーは勢いよく風を出した。


「すごーい!ルカ、みてみて使えるの」


「へぇ、スゲー便利だな。俺も入ってくる」


 ルカはカラスの行水でサッとお風呂に入ると、バスタオルで髪を拭きながら出てきた。


「ルカ、シルクのバスローブ置いてなかった?」 


「いらねーよ。俺が寝る時は何も着ねぇの、知ってんだろ」


「でも全裸にタオルはワイルドすぎると思うわ」


「どうせ寝るだけなんだし着る必要ねーじゃん。それに今着たってどーせ後で脱ぐし、な」


 ルカは含んだ言い方をしてニヤニヤした。

 レイは溜め息をついた。


 その後、ルームサービスのようなスープとサンドイッチの軽い夕食が出されたので、美味しく頂いた。

 何だかんだで疲れていたのか急に眠気が襲ってきたレイは、フラフラになりながら何とか歯を磨くと、すぐに倒れるようにベッドにダイブして眠ってしまった。

 急いで隣に潜り込んできたルカが「おいマジかよ」と何か焦っていたような気がしたが、レイはすっかり夢の中だった。



 水 水を操れる 水中でも溺れない

 火 火を操れる 燃えてる炎中でも燃えない 

 土 土を操れる 地中でも窒息しない 

 風 風を操れる 風で飛行できる

 光 光を操れる 眩しくない 感電しない

 闇 闇を操れる 闇で目が見える 心が読める 






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