34 エピローグ
本編は完結ですが、明日小話を三話だけ載せます。
よろしくお願いします。
ルカとレイは、暫く結婚しなかった。
あまりのラブラブぶりに、すぐにでもするだろうとの予想を裏切って。
ある日の朝食時のこと、レイは何かを考えて上の空なルカを見つめた。
うーん
これはもしかして
潮時かもね
「ルカ」
「あ?ああ」
ふいに話しかけられたルカは、まだボンヤリしていた。
「何か私に、言いたいことがあるんじゃないかしら?」
「おー?さすが、俺のレイだな!俺の事よくわかってんじゃん」
「まだ、何も聞いてないけど?」
「何だよ、わかってねーのかよー」
「ふふ、嘘嘘、わかってるわ。ルカは、冒険に出たいんでしょう?」
「!!やっぱスゲーな、お前!!」
「もー、あれだけ冒険者アイテムの専門店に通っているんだから、誰でもわかると思うわ」
レイは、紅茶のカップを置いて笑った。
「それで?いつから行くつもりなのかしら」
「そりゃお前、俺は準備できてっから、いつでも行けんだけどよ。レイはどーすんだよ。冒険とかいったって、虫が何とかってつってたらキャンプも出来ねぇし、無理なんだろ?」
「私?私なら大丈夫よ、ここに残って、適当にやるから」
「やるって何を」
「んー?ほら、暇つぶしにハーブガーデンでお茶するとか、聖水の泉でお祈りするとか、懺悔室でお話とか、まぁ色々あるじゃない」
「全部神殿じゃねーか!駄目だ、ナシナシ!!」
それからルカは
「ちょっと長めの旅行だと思えばいーだろ?」
と、半強制的に気分がのらないレイを連れ、護衛なしで旅に出てしまい、三ヶ月後には悪阻でヨロヨロになったレイをお姫様抱っこしながら帰ってきた。
アユミは手を叩いて
「おめでとう!ちょっと……いや、大分早いけど」
と喜んでくれたが、マリーからは
「ルカ。あなたね、旅先でレイに何かあったら、どうするつもりだったのよ!」
と鬼の形相で叱られた。
「レイ、順番が逆になっちまったけどよ、悪阻が治ったら早めに結婚式挙げようぜ」
ルカは、人の話をあまり聞かないヤツだったので、般若マリーの前でも呑気にルンルンしていた。
「俺は、レイに似た女の子がいーんだよなー」
そしてやはりスナイパー化したマリーに、割と強めに頭を叩かれていた。
アユミはそれを見て、アレ?昔もこんな風に誰かがマリーに叩かれていたような?と既視感を覚えた。
レイとルカの結婚式は、ルカの強い希望によって神殿でとり行われた。
悪阻の治ったレイは、もともと細かったのでお腹はまだ目立たず、シルクの純白エンパイアのウエディングドレスを着た。
ルカも白いタキシード姿だったので、クリスタルの神殿にいる二人は光の反射でキラキラと輝いていた。
初恋が結婚、という最終形態まで辿り着いたルカは嬉しくて堪らないらしく、悪阻が治まったが幸せそうにしているレイに今まで以上にキス魔になってかまいまくり、ルカに恋心を抱いていた全ての女性や時々男性のハートも粉々に砕いた。
またレイも、自分がお暇な時間や打算的な理由でお城の騎士達や神官達に愛想を振りまいていたがために、結婚式直前にも関わらず
「冥土の土産にレイ様を抱きしめてもいいですか?」
と、レイが偽の笑顔でお断りするファンが現れたり
「ルカ様と離縁したら、私と結婚して下さい。待っています」
などという内容のファンレターが急増した。
そして、馴れ馴れしすぎるレイのファン達はルカから「お前ちょっとツラかせよ」と呼び出され「私は今日が命日になるのかな?」と覚悟したという。
レイは最初、虫のいないガーデンウエディングを希望していたのだが、どの属性も虫ばかりは完全には防ぎようがないと言われ、渋々諦めた。
また神殿では神父としてエル神官長が、誓いの言葉などを読み上げてくれたのだが、誓いの途中でレイの手を取り「本当に誓いますか?大丈夫ですか?まだ間に合いますよ?」などの確認がしつこ過ぎて、終いには「お前いい加減にしろよ」とルカに手を叩かれていた。
そして、それを見ていたノア神官に「神官長、神官として恥ずかしいので、人妻に横恋慕するのはやめてください」と言われてしまった。
誓いのキスは、神官長が誓いを読み上げる時点で、娘を嫁がせる父親バリにハラハラと涙を流すばかりで先に進まなかったので、やむなくイケメン神官のクラウスが代役を務めることとなった。
勘のいいノア神官は、いつものルカのレイに対する態度から、絶対に長いと予測される誓いのキスが始まる前に、神官長を奥の部屋へと回収していった。
レイとルカ二人の子供は、ルナという女の子一人だけだったが、二人のいいところばかりを遺伝させてもらい、それはもう輝かんばかりの美人さんに育った。
アルフレッド王子などは、ルナがまだ十才になったばかりの頃に「ルナは、後宮に興味はございませんか?」とロリコンといわれても知りませんよ発言をして、フリードリヒ宰相に引かれ、ルナに「御免なさい。あざとい方は苦手で」とバッサリ切られていた。
ある日ルカは、自慢の一人娘と自宅のお庭でお茶をしつつ、珍しく遊びに来ていたフリードリヒ宰相と世間話をしていた。
「いいか?馴れ馴れしい男には気を許すなよ?」
「それはパパのことかしら?」
「ちげーよ!」
「パパと呼ばせているのですか」
「何だよ」
「いえ別に」
「あ!今パパのこと気持ち悪いって思ったでしょ」
「ああ、貴方は闇属性でしたね。迂闊でした」
レイとルカの一人娘は何と闇属性だった。
娘の属性診断で感激しまくったレイは、泉のほとりにお高いキャリーケースを置き、精霊様に捧げてしまった。
ルカは「あんなもん要らねーだろ」と笑ったが、次の日には消えていた。
「あとな、すぐ名前呼びしてくる奴には気をつけろよ?ゼッテーやましい事考えてっから」
「パパのことじゃない」
ルカは、レイの兄ケイもビックリの超過保護となり、ルナに周りの男を寄せ付けなかった。
「それはそうとパパ、私ね、素敵な方を見つけたのよ」
「へぇ、どこのどいつだ?」
人一人◯してしまいそうな目つきでルカが聞いた。
フリードリヒ宰相が片手にカップを持ったまま、プルプルと震え出した。
「本っ当ーに、凄い美人さんなの」
「だからなんてヤツだって聞いてんだろ」
「何かしら、そのお下品な口調。もう、パパには話したくないわ」
「ああ悪かった。なぁ、教えてくれよ、誰なんだ?」
「……あのね、長い銀色の髪がとっても素敵な方なの」
「ほうほう、で?」
「瞳は紫だわ」
「へー、で?」
「パパより少し年上の方なんだけど、神殿でお勤めされていらっしゃるの」
「却下だな」
「まだ彼のお名前も言ってないじゃない。彼はとっても地位の高いお方なのよ」
「いや、地位とか名誉とか百年に一度の天才とか関係ねーから」
「あら!パパったらあの方をご存知なのね?」
「いや、知らねぇし。聞けよ。いいか?いいことを教えてやる。宰相様の前で言いにくいけどよ、ロリコンって言葉知ってるか?」
「私はロリコンではありませんが」
フリードリヒ宰相が僅かに嫌な顔をした。
「ルカ、やめて。大人気ないわよ」
レイが、お菓子のお皿をテーブルの上に置きながら椅子に座った。
「もう彼に決めたんだから」
一人娘は腕を組んでそっぽを向いた。
「だーっ!!レイ、何とかしてくれ!マジで、アイツだけは勘弁してくれ!!」
ルカが頭を掻きむしって騒いだので、レイはため息をついた。
「もう、ルカは誰でも駄目なんじゃない。こないだだって神官のレオ君?あの子がルナに告白してきてくれたのに反対してたし」
「そーよパパ!今回は邪魔しないでちょうだい」
ルカは、この世の終わりのような顔をした。
「は、反抗期なんだよな。そうだな?そうに決まってる」
「「違うわ」」
それから、ことある毎に神殿に通いまくり、エル神官長に迫りまくったルナは、ハーブガーデンでうっかりエル神官長のお心を覗いてしまった。
そして急にレイに冷たくなり、レイは愛するルナから避けられることに激しく動揺した。
「アラ?これは反抗期なのよね?そうよね?」
「違うだろ」
ルカはレイがションボリするのが可哀想で堪らず、ルナに仲良くするよう注意してみたのだが「パパって本当にママ命なのね」と暫く相手にされなかった。
しかしそんなルナも、ほどなくして運命の人と出会うことができたので「ママ、今まで御免なさい。これからは、ママみたいに魅力的になりたいの。だから、色々教えてね?」とレイを頼るようになり、ルカを安心させた。
しかし同時に、ルナからコソッと「パパ、神官長様はまだママの事が好きみたいだから、気をつけてね」と教えられ「しつけーヤローだな」と目つきの悪いルカを更にスナイパー化させていた。
一足お先に結婚していたマリーは、トムとの間に超セクシーな息子が一人できた。
その息子は後々、世の女性を何人も虜にしたので、フェロモンと呼ばれた。
ちなみにマリーの結婚式は、お貴族様らしく超豪華で、一昔前のゴンドラ風な乗り物で新郎新婦が登場してきたため、ルカとレイが大爆笑してしまい、常識人のアユミとその恋人のランドルフに他人のフリをされてしまった。
アユミはというと、レイに協力してもらって清楚系大人しめ女子のファッションとメイクで攻め、ランドルフに告白した。
それから、デートばかりしていてしばらく恋人同士だったのだが、ついこの間やっと婚約した。
ランドルフは兄弟が多いらしく、アユミを紹介するのにアッチコッチ挨拶まわりをすることになった。
そしてその度に「異世界人のアユミ様が親戚になるの!?」と大喜びされたり、「すみません、どちら様でしたっけ?」くらい疎遠だった親戚まで「久しぶりだな!なになに、結婚するだって?」と現れる始末だった。
「毎回付き合わせちゃってごめん」
「ううん、全然」
「俺達、年をとっても仲良くしような」
「うん!」
二人はレイとルカに、今時珍しい清いお付き合いのお手本、と言われながらも普通に結婚し、三人の男の子に恵まれ、歳をとっても喧嘩することなく穏やかに暮らした。
フリードリヒ宰相は、婚約者のエリザベスと近いうちに白い結婚をする予定らしい。
エリザベスがまだまだお子ちゃまのため、本人に男女間のアレコレの自覚が芽生えるまで待つのだという。
その報告を聞いたルカは「地獄だな」とフリードリヒ宰相の肩をポンと叩き、レイに至っては「いいんじゃないかしら?最近はお身体の繋がりよりも御心の絆の方がお洒落ですものね」と、嘘で塗り固められた励ましをされたのだった。
アルフレッド王子は、まだ王妃は決めていないものの後宮を解体する予定もなく、王妃候補の側妃達を上手い具合に平等に扱っていた。
そしてレイからは「後宮は古臭いですけど、側妃の皆様のお気持ちがアレでしたら、もうこのままでいいんじゃないかしら」と、適当なお墨付きをもらっていた。
ルカとレイは、ルナが自分達がこちらの世界に来た年齢となってからは、二人でよく旅に出た。
レイが虫問題により野宿を嫌うので、二人が訪れた国の人々は、こぞって自分達の客室に泊めてくれた。
フィンレーの異世界人二人が冒険者風世界旅行をしていることは、世界新聞で有名な話だったのだ。
また、レイが婦人のために書いた小説は印刷はされず、謎に写経のように書き写す女性が増えたことにより、女性が自由に恋愛をする文化が普及していった。
そして世の男性の間で、恋人や妻を大切にしよう!さもないと、説明のつかない謎の空白のお時間とやらに悩まされる事になってしまうぞ!と恐れられた。
ちなみに、レイと仲良しになったご婦人は、小説のモデルで最先端をいく女性として認知された。
レイとルカは、アルフレッド王国になってからも恥ずかしいくらいラブラブなカップルとして有名で、ルナの結婚式では、どっちが新郎新婦ですか?くらいに若くお洒落な姿で登場し
「何かあなた達、いつまで経っても凄いわね」
「うん、ずっとラブラブだね」
と、マリーやアユミを驚かせた。
異世界人カップルのレイとルカは、周囲の人々を常に魅了しながら、生涯エキセントリックにこちらの世界を謳歌した。
二人は、これまた美人でエキセントリックな孫達に囲まれて、末長く幸せに暮らしたという。




