13 アユミ
ある日の談話室。
以前からアユミに
「好きな人がいるから、男性目線で相談に乗ってくれる?」
と頼まれていたルカは、アユミの恋話を聞いていた。
ちなみにルカは
「んな面倒くせーことしてねーで、手っ取り早くアユミがそいつの心を読んじまえばいーじゃねーか」
と言いかけたのだが
「あ、それナシで」
とアユミに先回りをされてしまった。
ルカはアユミから、マリーの異世界人護衛騎士ランドルフが、とある事情によりアユミの専属護衛騎士の代わりによく自分の護衛についてくれたこと、その時にとても親切にしてくれたということ、そして専属護衛騎士が替わった後も気になってしまい、気づいたら初恋の人になっていたという話を聞いた。
「へーそんな事があったのか」
「うん。でも、初恋は実らないってよくいうよね」
アユミが溜め息をついた。
「だから、私も何か駄目そうな気がするんだ」
アユミが自信なさげに言うと
「あー俺それ信じてねーから」
とソファーにふんぞり返っていたルカが偉そうに言った。
「そうなの?」
「あぁ。俺は絶対に初恋を実らす男だからな」
ルカは自信ありげに顎を触った。
「アハハハ何それ。……え!そうなの!?っていうか、レイが初恋なのに、彼女さん沢山作ってたの!?」
ルカの心を読んだアユミがドン引きして叫んだ。
「止めろよ人聞きの悪い。誤解されんだろーが」
ルカが嫌そうに言うと、アユミが反論した。
「だって、レイに彼氏がいたから仕方なく彼女作るなんて!それって何か違うと思う!」
ルカが嫌そうな顔をした。
「そんなもん俺だってわかってんだよ。まぁ俺の事はいーじゃねーか、今は幸せなんだし。問題はアユミだろ?ランドルフって、あの地味でゴツい護衛だよな?いけるんじゃね?思い切って告白してみろよ」
ルカは、例の談話室事件で迷惑をかけてしまったマリーの専属護衛騎士、ランドルフの顔を思い出した。
「地味……かな。でもさ私ね、こっちの世界の女の子と同じように髪も長く伸ばしたいんだけど、時が止まってるのせいで全然伸びてくれないしさ。スタイルだってマリーみたいに出るとこ出てないし、顔だってレイみたく美人じゃないもんだから、全然自分に自信がないんだよね」
アユミが悲観的な事ばかり言って下を向いた。
それを聞いたルカはソファーから少し身体を起こし、またまた偉そうに胸の前で腕を組んだ。
「まぁなあ、俺のレイと比べちまったら、そりゃあお前……」
と何か言いかけたのだが、アユミから使っちゃいけなそうな古代の闇魔法の余波を本能で感じとったため、途中で言葉を切って咳払いをした。
「まぁあれだ、お前もそう捨てたもんじゃないと思うぜ」
「え?そ、そうかな」
美人なルカに褒められたアユミが照れた。
「あぁ。見るヤツが見れば可愛いーんじゃねーの?俺の趣味じゃねぇけど」
「何か傷つくし、説得力に欠けるよ」
「そうか?」
レイ以外の女心は特に気にならない男、ルカだった。
その時
「お待たせー」
と可愛らしい声が聞こえた。
お買い物から帰ってきたレイが談話室に入ってきて、綺麗な紙袋をテーブルの上に置いた。
「はい、これアユミに」
その後ろから自分用にもっと大きな袋を抱えたマリーも入ってきた。
「私の買い物ついでに、レイと私でアユミに似合いそうなものを色々と選んできたわ」
「うわーありがとう!開けてもいい?」
マリーが頷いたのでアユミはワクワクしながら袋から一つづつ中身を取り出し、化粧品やら小物やアクセサリーなどをテーブルに並べ始めた。
「すっごく可愛い!二人ともありがとう!!後でお金返すからね」
「どういたしまして。別にお金は余ってるし、要らないわ」
「これで女前上げてランドルフに告白でもしたら?」
それを聞いたアユミは曖昧に笑った。
「レイ、ここ座れよ。楽しかったか?」
ルカが自分の横をポンポンと叩いた。
頷いたレイがちょこんと隣に座るとすぐ、ルカが腰に手を回して自分の方へグッと引き寄せた。
マリーもアユミ側に座り、アユミにお土産の説明をし始めた。
「お部屋に置いてきちゃったんだけど、ルカにもちゃんとお土産あるからね」
「マジかーお前はいつも優しいよなー可愛いし」
ルカが愛おしそうにレイのこめかみにキスをすると、レイも嬉しそうにルカの頬にキスを返した。
他所様の奏でるチュッという、日本人がおよそ聞き慣れない音に、お土産の説明をしていたマリーとそれを聞いていたアユミの時間が止まった。
「ルカも美人だし、カッコいいじゃない。お土産はね、ルカなら絶対に似合うと思う服を買ったの。もう王子様みたいに格好いい服なんだから。お部屋に戻ったら、すぐに着てみせてね?」
「わかった。あれ?お前こんな服持ってたっけ?今朝着てったのと違わねぇ?」
ルカがレイのワンピースの裾をピラッと持ち上げて聞いた。
「あ!そうなの。これね、マリーと行ったお店で試着した時に凄く気に入っちゃって、そのまま着て帰ってきちゃったの」
「そうか。しっかしお前マジで何でも似合うな。この服もいーじゃねーか。丈が短くてエロいし」
ルカがレイのワンピースの裾から手を入れてレイの白い太ももをスリスリとさすった。
レイはルカの過剰なスキンシップに慣れていたので
「もールカったら、ほんとHなんだから」
と言いつつ平気な顔をしていたが、アユミは今にも血が噴き出さんばかりの真っ赤な顔でフリードリヒ宰相ばりにプルプルと震え、瀕死状態になっていた。
「なぁ、部屋戻るか?」
「来たばっかりじゃない」
そのうちスナイパーのような目つきをしたマリーが苛ついた口調で言った。
「ちょっとあなた達。二人の世界を邪魔して悪いんだけど、この部屋には私達もいるの。そういうことは自分達の部屋でやんなさいよね、うっとうしい」
その言葉を聞いて、マリーの気が強くてよかった!とアユミが息を吹き返した。
「マリーがムラついたってよ」
「ムカついたの間違いね。殴るわよ」
「わかったわかった」
ルカが両手を上げて降参した。
「あら?でもマリーの方がここでもっと凄いこと致してるんじゃなかったかしら」
レイがキョトン顔で聞いた。
「人前ではやらないわよ!」
「そう。でも何故自分のお部屋でやらないの?」
マリーは自分を守るように胸の前で腕を組んだ。
「特別な関係じゃない人と馴れ合いたくないから」
「うーん、Hなことしてるのに特別じゃないの?」
「私にとってはフレンドの一人でしかないわ」
「マリーは都合の良すぎる女か残酷な女かどっちかだな」
「どっちでもいいのよ」
三人がそういう大人ちゃんなフレンド関係についてあれこれ話をしている中、アユミは一人ついていけずに取り残されていた。
みんなまだ十代なのに
進んでいるというか
もうそんなことしてるんだ
十九才のマリーはともかく
レイ達は私より一つ年下なのに
私が遅れてるのだけなのかな?
って違うわ!
アユミは一人で突っ込んでいた。
そして考えた。
私が三人と違うところといえば
皆んな私よりずっと積極的なんだよね
いつまでも受け身ばかりじゃダメなのかも
十七才って日本ではアレだけど
こっちでは結婚している子もいるんだし
皆んなに協力してもらって
ランドルフ様に告白してみようかな
ワイワイガヤガヤと騒がしい三人の横で、アユミは密かに拳を握ぎりしめていた。




